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2005.10.08

「人生を変える巨大プロジェクト」について

 電車の吊り広告の写真をぼんやりみていると、こりゃあ風呂に溺れた白人の赤ん坊か、あぶねーな、慣れない風呂なんぞに入れるからだよ、と一瞬思う間もなく、キャッチコピーが目に入る。「人生を変える巨大プロジェクト 母になる!」
 CREAという雑誌である。ふざけた企画だなと思う前に嫌なことと同じ記憶のカテゴリーに放り込んで忘れていたが、ふとしたことで「これ笑えるわよ」と言われ、CREAをめくってみた。ありゃま。
 ハリウッド・セレブの妊娠写真だのに続いて、ともさかりえと書いてある写真がある。女子高校生さん、その後結婚して子供産んだんだっけか、今、おいくつ? 二十六歳。というわけで、ファッショナブルに子どもを生んで育てるっていうネタが続く。さすがオヤジ文化の文藝春秋だな。こんなもの女性が読むのか。読む。そうですか。
 さらにめくっていくとこれは、タマゴクラブヒヨコクラブかという展開もあり(それほどビンボ臭さはなさげ)、なんだかわかんないなと思っていると、酒井順子の見開きエッセイがある。リードがすごい。泣いちゃいそ。


「子供は授かりモノ」時代は終わった
普通にしていては母になれない
晩婚化が進む一方のこんなこんなご時世、
そもそも私たちは母になれるのか。
『負け犬の遠吠え』の酒井順子が解説する、
負け犬予備軍の私たちの結婚・出産問題!

 内容はというと、テンプレ以上のものはないので読むだけむだっぽい。締めはこんな感じ。

あなたの身の回りには、「自然に結婚、自然に出産」というラッキーな道を歩んでいる人ももちろんいることでしょう。しかし「だから私もできるはず」と思うのは、もはや危険。「自分は本当は何がしたいのか」ということについて早くから真剣に考えなくてはならないのは、仕事のことだけではないのです。

 文中には彼女が集めたデータなのか編集部が封筒に入れて先生ご参考になってなのか、イラストに混ぜてグラフがいくつが掲載されている。ありげといえばありげなのだが、あらためてみるとふーんものではある。
 結婚に利点があるという統計を見るとこの二十年近く女性の意識はあまり変わってない。男性がジリ貧、だが、一九八七年に六九・一パーセントが二〇〇三年に六二・三パーセントというのは、それほど変化してないじゃんとも言えそう。
 母親の年齢別に見た出生数の変化というのが、想定の範囲内だが…、平成十三年に二〇歳から二四歳の出生数が十五万七〇七七人だが、平成十六年に十三万六五〇五人に減少。これに対して、三五歳から三九歳がこの間、十二万七三三六人から十五万〇二四二人と増加。そこだけ面白ろ可笑しく取り上げたというのもあるのだろうが、今後はスパムメールの標題のように「女は三十歳から」という傾向にはなるのだろう。要するに晩婚化ということ。
 国立社会保障・人口問題研究所とかの予想だと、文脈上女性についてということだと思うが、三〇歳未満の結婚が五割、三五歳までが三割、四〇歳では一割とのこと。生涯未婚者も多いのだろうが、これは要するに婚期は三五歳から四〇歳ということだ。そしてこの年代の結婚だと子どもを産むなら急げ…ということで今回のような企画が出てきたのだろう。
 こうした動向がマーケット的にはどうかなとちと考えたがまるでわからない。昨今街中でスリングに入れた赤ん坊をよく見かけるが、どういうマーケット的な変化なのだろうか。
 と、このあたりで私はCREAを放り出す。たいして面白い企画でもないし、なんか気分的にもわっというか不快に近い感じがする。気分を変えて、メールのついでにはてなを覗くと、どういう因果か、「結婚したい30代前半の独身男性です。私が結婚できない問題点を教えて下さい。…」(参照)で始まる質問に出くわす。質問中こうある。

私の結婚観は、「基本的な図式としては」夫は家族のために精一杯働き、妻は家庭を守り夫を支えるというものです。


昨今、男女同権が声高に叫ばれる一方で、昔ながらの結婚生活を望む女性も多いとも聞きます。本当に多いのなら是非私と結婚して頂きたいのですが(笑)私はそういう女性には選んでもらえないのでしょうか?

 ふーんと思うが回答は私には当然ない。まったく思うことがないわけでもないが、うまく言葉にならない。なぜなのだろうか、もどかしい。また考え込む。
 先のCREAの話でも、ようは半数の女性は二〇代で結婚しているということであり、たぶん、少なからぬ男女は結婚後「夫は家族のために精一杯働き、妻は家庭を守り夫を支える」ということだろう…もちろんそう明確に意識してはいないだろうが。
 とすると、こうした問題がある種、言葉として意識された問題として浮かび上がってくるのは、そういう五〇パーセントに属するタイプの人が、ややずれ込んで三〇代になってきたということなのだろうか。それでも現状では婚期では三五歳から四〇歳という線がありそうには思える。つまり、その線までの、いわゆる専業主婦的家族が実際にはマジョリティとしてはあるのだろう。国の年金改革は迷走しているが基本的にはこの制度は専業主婦的家族の存在が前提になっており、それが現在崩れたかというと、なかなかそうとも言えないかもしれない。
 一般的な婚期は私が二〇代だったころに比べて十歳分くらいシフトしているわけだが、人生コースというかそういう構造の基本はそれほど変化せず、見た目の変化は案外長寿化社会の派生というだけのようにも思える。老いた親たちは、統計的に平せば、働かない子どもを食わせるカネを持っているわけだし、子どもから青年期が延長しているだけといってもよさそうだ。 
 なんとなくだが、昨今の日本社会のだめだめ化現象のようなものは、戦後がもたらした世代的な現象で、豊かな社会が継続すればけっこうレギュラーな日本人というか市民が主流になり、社会は常識的にそして沈静化するのではないか。そういえば、最近の子どもたちは子どもらしく早寝早起きだというニュースも見かけた。以前問題視されたゲームなどもあまりしないようだ。インターネットとかにのめり込んでいるローティーンもそう多くはないだろう。
 結婚問題とかでも、酒井順子が息巻いて真剣に考えろというほどでもなく、普通の人は、男女とも、四十歳くらいまでにはなんかなんとなく結論が出る、つまり、それなりに結婚するというのが今後の日本社会の落とし所か。

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コメント

こういうテーマを取り上げると、いつも論点がズレるのよね(笑
>これは要するに婚期は三五歳から四〇歳ということだ
>一般的な婚期は私が二〇代だったころに比べて十歳分くらいシフトしているわけだが
今の平均初婚年齢は、男で29歳、女で27歳くらいだったと思う。
いわゆる団塊ジュニアの女子が、30代に突入して出生数が増えるチャンスとしてはここ数年間しかないってことなのよ。

投稿: nami | 2005.10.08 22:47

気のせいか外で遊んでる子供をよく見かけるようになりました。
外で遊びなさいと言われてというよりも、放っとかれてるのかなという印象。

投稿: Cyberbob:-) | 2005.10.09 08:40

有効な少子化政策を出すタイミングとしては、待ったなしの状態なんだけど、選挙のマニフェストを見る限りどこの政党もどんぐりの背比べって感じで先行き暗いワ。

投稿: nami | 2005.10.09 10:24

≫ 日本の結婚のカタチ from Rashita's Style Blog
http://www.doblog.com/weblog/myblog/6947/1936419#1936419
極東ブログ「「人生を変える巨大プロジェクト」について」へのトラックバック。 記事は結婚の年齢や出産についての時代的なシフトについてで、フーンと思えるところもあるが、若干違和感を覚えなくもない部分もある。文中より引用する。 とすると、こうした問題がある種、言葉として意識された問題として浮かび上がってくるのは、そういう五〇パーセントに属するタイプの人が、ややずれ込んで三〇代になってきたということなのだろうか。それでも現状では婚期では三五歳から四〇歳という線がありそうには思える。つまり、その線ま...
受信: 2005年10月 9日 午前 11時31分

投稿: (Rashita) | 2005.10.09 20:22

当方38歳男ですが、ようやく子供が出来ました。
不妊治療を2年間続けた成果ですが、費用はトータルで300万を超えています。
この年齢の経済力があればどうにか出来ますが、不妊治療~出産費用ということで考えると
もう少し若い世代では厳しい金額になるかと思います。
不妊治療の技術自体は非常に発達しているようで、社会的なバックアップさえ充実してくれば(具体的には保険の適用です)
出生率が上昇する可能性は十分にあるのではないかと思います。

でも、それを国が率先してやっていないところを見ると、何となく「小さな国家」を目指しているのかもな、とも思えます。

投稿: 匿名 | 2005.10.09 22:48

トッラクバックしました。記事を読んでいます。考えさせられる内容です。

負け犬の出現は、離婚が簡易になったことも関連しているように思います。
今後とも宜しくお願いします。

投稿: いちろう | 2005.10.28 10:36

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