寄らば大樹の陰
些細な話でしかもちょっと思いもよくまとまらないのだが、気になることでもあるので簡単に書いておこう。先日の「極東ブログ: 長谷川憲正参議院議員の反復横跳び」(参照)の続きでもある。
話は大樹(特定局長OBによる政治団体「大樹全国会議」)と、田中康夫長野県知事が代表の新党日本を巡る反復横跳び長谷川憲正参議院議員の余談でもある。メインの話題ではないが産経新聞記事”旧橋本派、15億円超不明 宣誓書で異例の釈明”(参照)がわかりやすい。
先月の衆院解散のきっかけとなった郵政民営化関連法案をめぐる衆参両院本会議での造反劇。民営化反対の旗振り役だった長谷川憲正参院議員(国民新党)の政治資金収支報告書からは、特定郵便局長OBらでつくる「大樹」による文字通り「丸抱え」の実態が浮かび上がる。
資金面と並んで目を引くのは「大樹」と同後援会の一体性だ。長谷川憲正後援会の事務所、事務担当者は大樹全国会議と同一。さらに長谷川氏の東北、東海、北陸の地域ごとにつくった後援会と大樹の各地方本部は住所、代表者、会計責任者、事務担当者、その連絡先、さらに政治資金収支報告書の届け出時期までが同じで、筆跡もうり2つだった。
つまり、長谷川憲正参院議員は、カネの面から見ると大樹、つまり特定局長OBそのものだったわけだ。
具体的なカネはこう。
政治団体「大樹全国会議」は2004年参院選で、旧郵政省OB長谷川氏の擁立を決めた直後の同年1月、長谷川憲正後援会に2000万円を寄付。東北、東海、信越、北陸の各地方本部が1―4月に計470万円をその地域の長谷川氏の地方後援会にそれぞれ寄付している。
カネの流れ自体については図解している朝日新聞記事”郵便局長どっと献金 法案阻止資金準備、大樹向け14倍”(参照)がわかりやすいだろう。というか、面白い。
とはいえ、長谷川憲正参院議員を巡るカネの流れをどう読み解くかはそれほど簡単でもないと思う。基本的には、前回当選後に所属した旧橋本派からの資金援助がないので、大樹から吸い上げるしかなかったとは言えるのだろうが、はたして主体は大樹だったのか長谷川憲正参院議員だったのか。ちょっとうがった言い方をすれば、結果的に見れば大樹は下手を打ったのだが、そのシナリオを描いていたのは誰だろうか。
個人的に気になるのは、「極東ブログ: 長谷川憲正参議院議員の反復横跳び」(参照)でも触れたが、公選法上の政党要件を満たすと、寄付金の限度額が変わる。結局、国民新党から田中康夫長野県知事が代表の新党日本へ移籍さらに、反復横跳びで国民新党へと長谷川憲正参院議員はひらひらしたわけだが、国民新党にいるなら別に公選法と寄付金限度額についてはそれほど問題はない。が、助成金目当てということだけかもしれないが、他に理由があるなら、なぜ新党日本へ横跳びしたのだろうか。というか、そこまでして大樹の化身長谷川憲正参院議員御大自らがひらりと横跳びした。しかも、それは、国民新党というより田中康夫長野県知事が代表の新党日本を利することが目的でもあった。なにか解せない。大樹の旨味がなくなったので、潤沢そうな綿貫民輔の国民新党に戻ったということだろうか。しかし、綿貫民輔とても旧橋本派なので今後のカネ入りはしょぼいだろう。
大樹の今後も気にはなる。「最強の集票マシン」と言われ、全国津々浦々に二十四万人の党員党友を集めていたわけだが、そのまま地方利権ということだけになれば、国政への影響といった見地からすれば崩壊に近いだろう。そうなのだろうか。
![]() 自民党の研究 |
「おかみっちゃん」こと岡光序治前厚生次官が、彩グループという福祉利権屋が受けた「まる投げ」の発注工事から浮かせた金を吸い取っていた事件は記憶にまだ新しいが、一部の利権政治家や官僚を結びついた業者は、話を仲介した政治家には阿吽の呼吸で「返して」くるのだ。
つまり、そのような工事は、政治家や官僚にキックバックしても儲かる金額で落札されているのだ。高すぎる工事・建設費が指摘されるのは、このためである。
一般に、土木・建築工事の契約を取ってくれた政治家へのリベートは、三パーセントと相場が決まっている。一〇〇億円で三億円、一〇〇〇億円で三〇億円だ。バブルのころ、いかに建設関係の族議員や、それを束ねる大物政治家が儲けたかはいうに及ばない。官僚はそれを知っていて、工事の契約を政治家の関係先に回す。これではまるで、政治家に直接金を渡すのと同じである。工事の金は税金であるが、そんな意識は毛頭、持っていない。
道路関係は今後の旨味は減ってくるだろうし、旧橋本派は弱体化するだろう。こうした箱物媒介の寄付金構造はどの省庁と限らないが、基本的な構図として今回の選挙で財務省が強化され、難しくはなったことだろう。ま、その財務省が問題だよねというのはそうなんだが。
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