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2005.10.11

ウーメラで超音速小型機の飛行実験が成功

 昨日十日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)がオーストラリア中南部ウーメラ実験場で超音速小型機の飛行実験に成功した。私は最初BBCのニュースで知った。
 報道写真を見るとまるでロケット打ち上げみたいで、いったいどこが超音速小型機なのかという印象を与えるが、よくみるとロケットには紙飛行機みたいなというかでっかい矢尻というかコンコルドのちっちゃくてとんがったみたいのが、ロケットと一緒に二匹の雌雄の昆虫のようにつくっている。そう、それが無人実験機で、それ自体には動力はない。全長十一・五メートル、幅四・七メートル、重さ二トン。JAXAのサイト(参照)で動画が公開されているがずどーんと打ち上げる。その後、地上から二十キロメートルあたりで切り離して落ちる。というか、滑空してマッハ二となる。どうやって着陸するか? 最後はパラシュート。ちょっとトホホ感はある。
 私が最初に読んだBBC”Japan tests supersonic jet model”(参照)にはそれほど大した内容はないが、読み進めるとわかるようにコンコルドが意識されている。国内の報道はというと、私には意外だった。ボケているように思えたのだ。
 ということで見直してみると、朝日新聞”「次世代」超音速旅客機の飛行実験、宇宙機構が成功”(参照)の記事は今日付になっていて、そう悪くない。前日の”小型超音速機、飛行実験に成功 豪州で宇宙機構”を書き換えたのだろうと思うがすでにネットにないので比較しづらい。
 読売新聞”小型超音速機、飛行実験に成功…豪州で宇宙機構”(参照)はボケ記事。毎日新聞”超音速旅客機:無人機の飛行実験が成功 JAXA”(参照)もボケ。産経・共同”超音速機の実験に成功 宇宙機構、豪州ウーメラ実験場で”(参照)もボケ。ロイター”日本宇宙機構、小型超音速機の飛行実験に成功”(参照)もボケ。日経”宇宙機構の小型超音速機、15分の飛行実験に成功”(参照)がややまし。意外とサンスポ”次世代の夢のせて飛ぶ!宇宙機構、超音速機の実験に成功”(参照)がややまし。
 どこで判断したかというと、今回の実験の意義はなにかということがきちんと書かれているかという点。ボケのテンプレ(型)はこんな感じ。


JAXAは、今回の実験機が得たデータを今後のSSTの設計に生かすとともに、ジェットエンジンを使った実験機や低騒音の実験機による新たな技術開発を目指すという。

 間違いではないけど、今回の実験について触れたことにはならない。その点、朝日新聞のリライト記事はわかりやすい。

 実験機は、スーパーコンピューターにより、空気抵抗を受けにくい形状に設計された。今回のデータを解析して、設計が適切だったかどうか検証する。今後、軽量の機体材料の研究を進めるほか、エンジンを載せた実験機で飛行実験ができないか検討する。

 しかしこれもちょっと常識を働かすと、あれ?と思うはずだ。動力がなく「空気抵抗を受けにくい形状」というのは、つまりメインは矢尻のような翼のことだ(もちろん胴体もだけど)。そして、それをなぜ実験したかというと、スーパーコンピューターに依存した新設計法が有効だったかという検証が重要だったからだ。日経はやや曖昧だがこうまとめている。

機体に設置した約800個のセンサーを使って、日本が得意とするコンピューターを使った設計技術で開発した機体に対する空気抵抗など様々なデータを集めた。

 繰り返すが、今回の実験ではスーパーコンピューターに依存した翼の設計手法が問われていたというのが重要なポイントだった。そこが日本が今後売り物にできる技術だからだ。
 JAXA自身の説明はというと、わかりやすいようなわかりづらいような理科系ですね的な話にはなっているが、要点は明確になっている。”次世代超音速輸送機の研究”(参照)より。

実験の目的
(1) CFD逆問題設計法による自然層流翼設計とその実証
(2) クランクドアロー翼、エリアルール胴体、ワープ翼の設計技術の獲得
(3) 無人機による飛行実験技術の蓄積

 問われた設計法はCFD逆問題設計法(参照)である。
 ところでなんでこんな実験を日本がやっているのか。そんな意義があるのか。というとBBC報道を読むと暗黙の内に「あるよ」というのがわかるはずだ。が、それはポスト・コンコルドという文脈である。すでに日本航空宇宙工業会フランス航空宇宙工業会は今年の六がつにポスト・コンコルドの共同開発に乗り出すことで合意をしている。
 しかし、「極東ブログ: 飛行機売ります的なお話」(参照)でも少し触れたが、航空業界では運航効率のよいボーイングB7E7型機に人気が高まっており、コンコルド・タイプの高速機の市場は見えない。ヨーロッパの威信に付き合って算盤抜きというわけにはいかない。
cover
コンコルド・プロジェクト
栄光と悲劇の怪鳥を
支えた男たち
 しかも、JAXAは二〇〇三年に九年ぶりの航空科学技術分野研究の見直しでジェット機を使う実験が凍結されるまで、コンコルド的な夢をもっていた。というのも一九六九年三月に初飛行、七六年に商用が始まったコンコルドは当初から、騒音、燃費、乗り心地といった改善が求められており、これに折しも冷戦という燃料投下があり、米国などもけっこう本気だった。ちなみに米国は現在でもX43Aという極超音速実験機の技術を持っている。日本もその流れに乗り、しかもバブルはそうした反省を遅くした。
 当時の記事を読み返すと、笑える。読売新聞”夢の超音速旅客機、実験機公開 マッハ2以上、乗客300人/三菱重工”(2001.02.09)はこんな感じ。

 コンコルドを上回る速度と輸送能力を持ち、経済的で騒音もジャンボ機並みという夢の超音速旅客機の小型実験機が9日、愛知県の三菱重工名古屋航空宇宙システム製作所で公開された。
 これは文部科学省の航空宇宙技術研究所が開発中の次世代超音速旅客機で、マッハ2以上で、乗客数がコンコルドの約3倍(300人)、航続距離は約2倍(1万1000キロ)、大気汚染物質の窒素酸化物の排出量は約4分の1という想定。

 ところで、今回のウーメラの実験でも実質的な主体は三菱重工だったはずだ。そのあたりのことは、私の見たかぎりでは今回の報道にはなにもなかった。

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