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2005.10.15

EUが移民労働者を必要としている現実

 エントリのテーマは、昨日の「極東ブログ: セウタとメリリャの不法移民問題」(参照)の続きである。昨日のエントリを書いたあと、日本人はこうした問題に関心を持たないだろうな、セウタとメリリャについてもモロッコが返還を求めるならそうすればいいのくらいの感覚だろうかとも思った。そのことが日本人の感性の問題なのだとちょっと締めに書いてみて、削除した。無駄に関心を喚起する必要もないだろう。
 そのあとぼんやりとセウタとメリリャの不法移民問題を考えていた。「なぜ」という件については、背景には世界の貧困問題があり、直接的な理由としてはスペインのレグラリサシオンとモロッコの対応がある。しかし、なにかふっきれない思いが残った。なぜ、スペインは他のEU諸国から批難を浴びてまでレグラリサシオンを継続したのか。また、なにか重要な論点忘れていたような感じがした。
 思い出した。忘れていたのは、十二日付のテレグラフ”Welcoming migrants”(参照)である。右派典型のテレグラフが「移民を受け入れよう(Welcoming migrants)」という標題を掲げたので気になってざっと読んだのだった。だいたいにおいて、右派というのは、移民に否定的なものではないだろうか。いや、日本社会の実態を見れば、労働力という点で一番移民に厳しいのは日本の労働団体かもしれない。先進国において左派は自国労働者の既得権維持に努める。
 右派・左派はしかし、どうでもいいことだ。テレグラフは示唆的なことを言っていた。セウタとメリリャの不法移民問題について私の昨日のような内容に触れたのち、しかし、問題は、複雑なのだと言う。


The reality is more complex. The latest wave of northward movement has been encouraged by the amnesty granted to 700,000 illegal immigrants this year by the Spanish government. That pardon both removed an anomaly and was an acknowledgement of Spain's need for migrant labour as its economy boomed. The shortage is not unique to the Iberian peninsula: in a report last year, the European Commission concluded that higher immigration flows were increasingly necessary in an enlarged union with a shrinking working-age population. The problem is that what the economy requires is often difficult to digest culturally. That is why politicians are reluctant to admit their country's dependence on foreign workers to sustain economic growth.

 昨今の不法移民の増加にはレグラリサシオンがあるとして、その背景には、スペイン経済が移民労働者を必要としているというのだ。そして、そうした状況はEUも同じでしょ、と。
 つまり、移民を受け入れることでEU各国は国内で各種のトラブルを抱えているものの、経済成長の側面だけで割り切ってみるなら移民労働者に依存しているというのだ。そうなのか。
 このあたりの問題は非常に複雑だ。今、テレグラフの示唆を読みながら、EU内で低賃金の労働者が少なくても、東欧やトルコなどから十分に供給できるのではないか、つまり、アフリカからの不法移民の問題とは別ではないか、という思いもする。しかし、私がその実態を数値上で確認しているわけではない。
 テレグラフの結語はある意味では単純だ。

But a balanced approach to this sensitive subject should also acknowledge the EU's continuing need for foreign labour.

 EUは外国労働者の必要性を認めるべきだというのだ。
 私の関心はEUの状況ものだが、日本についても、"a balanced approach to this sensitive subject"、このやっかいな問題に対して中庸な解決策というのが必要になるのだろうと思う。
 そういえば、二〇〇〇年ごろ国連が日本の労働力を維持したいなら移民を大量に受け入れなさいという変なレポートを出したことがあった。すっかり日本社会は忘れているし、ネットなどを見るに、昨今は、少子化なんか問題ではない、それに見合った社会にすればいいだけだ的な議論が正論のようなふりをしてまかり通っているし、それに頷いておくのも安心といったところだろう。
 だが、現実にはEUは外人労働力を必要している。日本がそうではないという理由は私にはよくわからない。

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「経済」カテゴリの記事

コメント

いつも拝読しております。
ヨーロッパ内の移民は、私の住む国には、これでも食らえ、というほどたくさんいます。

スウェーデンなどにも信じられないくらいいるようです。

しかし海に接する国のヨーロッパの国々は、小さな島がたくさんあって、過疎化された村の沿岸に、村民以上の人たちが上陸することもあります。

数年前老人だけの村に、色の浅黒い人達が上陸したので鍵を閉めて家の中に入ると、家の周りをグルグル回る異国人たちがときどき窓から覗き込んだりして、警察が来るまで大変です。

新聞やテレビでは人権だから、彼らに食べ物と健康診断をと言います。しかし、彼らは招待されてきたのではなく自分の意思で来ました。

昨日は○△島、今日は◆×島、もぐら叩きです。 

戦争難民ではなく経済難民です。そして彼らはこの国は待遇が悪い。もっと良い国へ行くといっていますが・・・。

投稿: madoka(lemonodasos) | 2005.10.15 17:40

>昨今は、少子化なんか問題ではない、それに見合った社会にすればいいだけだ的な議論が正論のようなふりをしてまかり通っているし
ヨーロッパを見ると、出生率の上がってる国というのは婚外子を公認している。10代で子供が出来ちゃったから結婚せずに生んじゃって結婚してまた生んでという感じ(フランスとか)イタリアなんかだとカソリックが多いから、基本的にセックスは子供を作るためという考え方。日本が婚外子を公認するという方向に動くかどうか…

投稿: nami | 2005.10.15 18:17

>少子化なんか問題ではない、それに見合った社会にすればいいだけだ的な議論

むしろ韓国なんかは日本よりも少子化は激しいのに、外国人の意見には隣の韓国から人をもっと入れろとか言うアホなのが多くて、あまり物事を真剣に考えてないフシが。単に儲かるエンジンをもっと回せという吹かしに過ぎない気がするのです。

投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2005.10.15 19:52

ボクは移民は日本に人種差別があるから難しいのではないかと思っています
移民問題は結論から言うと経済成長を求めるのか否かに尽きるのではないでしょうか
確かに経済成長は求めたいですね、でも日本という国の文化を失ってまでも求めるものではないと思うのです、如何でしょうか?

投稿: マルセル | 2005.10.15 22:54

私も、日本には強い人種差別意識があるので、今後しばらく移住者が急激に増えるような事態はないと思います(今のペースで十分)。
ただ、日本に移住者がいくら入って来たとしても、それも文化の一部と言えるようになるのではないでしょうか?

投稿: gosxi | 2005.10.15 23:36

日本では富裕層が大したことないから
メイドさんとか案外雇えないのよね。
民族問題は、オランダみたいな寛容主義じゃだめだッてことはわかったよね。在る程度の統制は必要かと。

投稿: 名無しさん@ネット右翼 | 2005.10.16 00:35

bewaadさんとこに少子化は全く問題がないみたいなことが書いてあった気がする。

投稿: 通りすがり | 2005.10.16 01:06

日本だって、いわゆる3Kの職場を中心に日系人や研修生は年々かなり増えていますよね。数が少ないから社会的には認識されていないのかもしれませんが。

投稿: ヘルシア | 2005.10.16 01:09

いまから10年くらい前の一時期、内閣官房のスタッフが、移民問題についての意見を、パソコン通信などでひんぱんに集めていたことを思い出しました。

あまり、肯定的な意見が集まらず、どうなるかと思って見ていましたが、結果的には非常になだらかな、ある意味、容認策をとったのかなと思っております。

栓をしめつつ、完全にはしめない、みたいな感じ。

今日、秋葉原にいってきました。帰りに、アメ横などにもいきましたが、移民浸透は、都心部分に関してはきわめて偏在的で、東に厚く、北に厚く、西に薄く、南に薄く。

繁殖力の低い民族は、まあ、ガスト・アルバイターのお世話になるしか選択肢がないと思います。議論の余地なし、ということ。

個人的な好奇心としては、国内の、比較的左派的な立場を標榜している朝日新聞の販売店などが、どの程度、こうした海外出身者を雇用しているか/していないのか、というところ。

どうなんでしょうね。

投稿: miyakoda | 2005.10.16 02:40

すでに、我が県は最早短期間に人口を回復することができません。(日本の多くの県が同様の状態になっているはずです。)
だから、移民は大歓迎です。それで我が国が日本人の日本でなくなったとしても全く構いません。私たちの「町」が維持されることの方が重要です。
ところが、移民(不法を含む)の大多数はより豊かな生活を求めているのですから、日本国内で比較優位をもたない過疎地に留まるとは思えません。
仮に我が県だけ一方的に外国移民を積極的に受け入れたとしても、ほとんどの移住者は大都市部への通過点として利用するばかりで、我が県を見捨ててしまうでしょう。

これでは何にもなりません。

移民を受け入れるのならば、現在の住民と対等な条件で受け入れて定着させるべきです。
受け入れないのならば、貧困国の経済成長を促して我が国の商品を買うようにしむけるべきです。
そうでなければ、我が国のほとんど大部分をしめる「地方」が生きていくことは難しいでしょう。

投稿: vodka | 2005.10.16 09:38

日本が移民を受け入れるとしても、初めから日本に悪意的な人たちがゾロゾロと来てしまうというのは、あまり望ましくないように思います。元々移民というのはトラブルの種でしょうが、移民を受け入れるか否かという話題でいつも皆の頭にあるのは西の3カ国ではないでしょうか。戦前戦後、半島から来た人たちがどんな事をしたか。それが単に移民に共通して生じる問題だったのか、どうなのか良くは判りませんが、半日運動が盛んな国から来る移民と、親日的な国から来る移民で前者がよりマズイだろうとは思われます。

投稿: ドーバー海峡 | 2005.10.16 11:11

まず、移民というか外国人労働者は受け入れなくては駄目ですね。問題は規模ですね。
数百万が最善(私も、この程度を希望)。
次に、労働力は安くなくてはいけません。
従って、外国人が母国で生活しているのと同じ環境を作るべきですね。
日本語を習得するのは高コストです。そんなことをしたら、安い労働力は手に入りません。
日本には、高度成長期の国内労働移動の際にできた施設資産が残っていますから
これを活用すべきです。
外国人労働者の母国語で教育して、まともな人間を育てることを目標とすべきです。
日本語を話して常識的レベルの教養の日本人と同じ人材を求めるのは
非現実的ですね。
後者の、常識的レベル教養を持つ人材を求めるべきです。
労働者の母国語で、初等教育を行い、その中にカリキュラムで、日本のルールを入れて教えるべきです。
大部分の外国人労働者は、本国と日本を行ったり来たり。締めると、本人も望まない「移民」が増えますね。
いわゆる本物の移民は、この中から10%程度自然に定着するというような想定でいくべきだと思いますね。

投稿: 本物のネット右翼 | 2005.10.16 11:18

あのですね。日本の労働団体が、移民受け入れに否定的などというのは、前提が間違ってます。表向きはともかく、実際のところ「組合員」「非組合員」の二重構造が明確な日本では、下部構造を支える労働奴隷を一番大歓迎するのが「組合」です。単純労働者受け入れの旗を振ってる団体を見てくださいな。そこに名を連ねる学者先生のほとんどが、労働組合幹部から、地方の大学にもぐりこんだ人たちです。

投稿: eternalwind | 2005.10.16 19:39

どこの世界でも移民というのは都市に集うもんであって過疎地振興と絡めるのは愚策です。だいたい過疎地は仕事が無いから過疎になるのであって。

それと日本人に人種差別があるというより、これはむしろ宗教的差別ではないかなー。日本人が日本教を自覚してないから人種差別と誤解されてる。その辺山本七平の分析は正しいと思う。

つまり、人種が違うからではなく、日本教のプロトコルに従わない者は人間「的」な存在ではない、と日本人は見なしてしまうわけです。

投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2005.10.16 20:35

人種や宗教がどうこういうより、社会が階層化して特定職業が特定グループに特化してゆくという状況自体が僕には受け入れがたいです。中期的には社会の活力も失われそう。
80年代の山谷で、50代の労働者が「仕事はみんなイランにとられちゃってよ~」と言っていたのが心に残っています。キオスクのおばちゃんがインド人に置き換えられたら、おばちゃんはどこで食い扶持を稼ぐのだろうと電車を待ちながら良く思います。もし日本人と同等で、かつ階層化を招かないなんていう条件をつけたら、そもそも移民なんか必要ない。労働経済学では、嫌われるシゴトは高賃金や労働環境改善でバランスさせるのが資本主義の偉いところと習ったが、移民入れたらホメオスタシーが働かないじゃん。だいたいそのまえにフリーターやニートや引きこもりを社会復帰させる方が、コスト削減、メリット増大で正攻法だろうと思うのですが。。。

投稿: あすく | 2005.10.18 00:10

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 なんか、刺激されたので、シンクロしたエントリをば。と言っても、ほとんど  すでに書きたいことを書かれてしまってるんですけどね(^^;  嫌こそ国の上手なれ  で、小飼さんは、国が発展すればするほど、嫌な仕事は国に押し付けられる、  と書かれているのですが、それって移民にやってもらっている国が多いよな、  と思いました。  となると、国(経済)が発展すればするほど、移民にきてもらう必要があるのか、  ということにつながるわけです。  そんなことを思っていたら、 ... [続きを読む]

受信: 2005.10.16 00:25

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