今回の選挙は女性の選挙だったなぁ
衆院選が終わって二つ心にひっかかっていることがある。一つはちょこっと書いたけどそれ以上に展開するのはためらうものがあり、書かないかもしれない。もう一つは、「今回の選挙は女性の選挙だったなぁ」というものだ。
このブログも昨今の流れだけで読まれて奇妙な誤解をされることもあるし、誤解だなんだっていうのもブログの世界では野暮なことだとは思うが、過去エントリは「極東ブログ インデックス」(参照)から日付単位だがアクセスできるようにしてある。昨年の七月参院選後のエントリもインデックスからアクセスできる。「極東ブログ: 参院選であまり問われなかった女性議員の問題(2004.07.12)」(参照)というエントリでは、私は各国における女性議員の比率について触れ、こう締めくくった。
話が散漫になったが、ただのスローガンではなく、もっと大きな潮流として、日本でも女性がいっそう政治に大きく関与しなくてはならない時代になってきているのだろう。
だが、率直に言えば、おたかさんのイメージではないが、女性の政治家であることがある種のイデオロギーの傾向を含むかのように見えるのは日本の問題だろう。もっと端的に問われなくてはいけない中絶問題や低容量ピルといった問題などは、女性問題のなかから置き去りにされている。原因はマイルドな左翼イデオロギーがブロックになっているようにも思えるのだが、それだけの問題でもないだろう。
飛躍した言い方だが、女性が社会コミュニティの質を変化する主体とならなくてはならないのだろうが、今の日本の傾向としては、優秀な女性がむしろ、経済的な勝ち組に吸収されるような構造があるように見える。
予言とかいうつもりはない。今回の衆院選で過去の自分の期待が当たっていた面とそうでもない面もある。ただ、この側面の世の中の流れを見つめていたとは思う。
そうした点で気になるのは、経済的な勝ち組に吸収されたかにみえた優秀な女性が政治の側に回ってきたかもしれないし、そうした兆候を社会の女性が支えつつあるのかもしれない、ということだ、…そう見ることは一部から強い忌避感を受けるのだろうけど。
選挙後の情報や総括などを見ていて、どれも女性の政治参加という視点では、あまり納得したものがなかった。基本となるのは今回の選挙での女性票の動向だが、それほど資料が見あたらない。NHK「あすを読む」での話では、男性の自民・民主の差が四十二パーセント対三十六パーセントと六ポイント差だったのに対して、女性では四十三対二十八と十五ポイントも差があった。それだけでも、今回の衆院選では女性票の流れは大きな意味をもったはずだ。
もっともこの差については、男性層の自民支持比率と数値を比べるとわかるが、女性層において自民支持が強かったということではなく、民主党の支持が低かっただけだ。その意味では、この動向については、小泉マジックだの、単純な争点がよかっただの、ヨン様ブーム的な動向だの、といった推論は成り立たない。明確に、女性は民主党を選択しなかったのであり、マーケティングがどうのというのは洒落として、端的に民主党の政策が女性層に支持されなかったと考えるべき問題だろう。
この女性層の支持は、いわゆる「刺客」「くのいち」という揶揄を浴びせられた女性候補への支持でもあったのだろうし、ちょっと勇み足で言うのだが、こうした下品な揶揄を繰り返した日本のマッチョ・メディアへの否定でもあった。
今回の衆院選挙では、女性の当選者は四十三名で戦後最多となった。その半数以上を占める二十六人が自民党だった。この政治戦略もただ大衆迎合のように受け止められることがあるが、彼女らを比例上位に置いていたことは、単なる選挙イメージではなく、明確に自民党のなかにこの女性達を取り込む意志があったと理解すべきだ。しかも、彼女たちにきっちりどぶ板回りをさせている様子もうかがえた。
女性の政治参加という点ではこれでもまだまだ途上という段階でもあるし、二大政党と言われながら、女性票が自民・民主党以外に流れる構造の意味もまだよくわからない。その流れは、もしかすると、現状の自民・民主党という枠を押し流すものになるのかもしれないのに。
| 固定リンク
「時事」カテゴリの記事
- 歴史が忘れていくもの(2018.07.07)
- 「3Dプリンターわいせつデータをメール頒布」逮捕、雑感(2014.07.15)
- 三浦瑠麗氏の「スリーパーセル」発言をめぐって(2018.02.13)
- 2018年、名護市長選で思ったこと(2018.02.05)
- カトリーヌ・ドヌーヴを含め100人の女性が主張したこと(2018.01.11)
コメント
類似ネタということで。有名どころのようなので何ですが、この方何もんなんでしょhttp://critic.exblog.jp/3477364。
鋭い視点と読み、その知性にして奇妙な左翼イデオロギー。「奇妙な」はよけいですか。
コブシな方面?
投稿: Sundaland | 2005.09.16 12:13
>この動向については、小泉マジックだの、単純な争点がよかっただの、ヨン様ブーム的な動向だの、といった推論は成り立たない。
テレビをほとんど見ないそうなのでわからないかもしれませんが
テレビの騒ぎ様とその影響力を見くびりすぎだと思いますよ。
「改革に賛成か反対か」
「殺されてもいい」
こういった発言がテレビで繰り返し流されたのは小泉自民「圧勝」に大きく貢献してますよ。
9.11後のブッシュの「テロリスト側につくか、我々につくか」と同じ。
まあこれがなかったからといって民主が勝ったとは言いませんけど。
民主党の「政策」が支持されなかったのではなく(当然そういう人もいますが)、
自民党の「イメージ」が支持された結果だというのは間違いないと思うのですが。
そこをなぜ必死に否定されるのか疑問です。
既存メディアへの対抗でしょうか?
投稿: ms | 2005.09.16 16:17
ずっとROMってる者ですが。
>Sundaland氏
私も最近チラと拝見。私の印象も「奇妙な」
気にいらんTBは削除し倒してるあたりはさすが?
>ms氏
選挙前の各種世論調査をご覧くださいませ。
イメージも無視できるほど割合が少ないわけでは無いけど、
主に「政策」で投票行動が決まった、と見るのが妥当かと。
さてROMに戻ります。
投稿: tomama | 2005.09.16 16:46
はじめまして。
>msさん
失礼ながら少し読み違えておられるのではと思いました。
「この動向について」は女性の民主支持率が男性にくらべて顕著に低い(自民支持率は同じなのに)という動向のことで、これに関しては小泉劇場は主因とならないでしょう。
で、女性の民主支持率の低さですが、これは元々なので今回の特徴というわけでは無いように思います。以前民主党が「われわれは何故女性にもてないか」のレポートを作成していたなんてことがありましたよね。
投稿: galleon | 2005.09.16 20:07
わが妻によれば、岡田より小泉のほうが断然よいのだそうである。妻は小泉の続投はなんとしても避けたいと言っていたが、それはそれとして、この2人を比べると岡田に対する嫌悪感はとても強く、民主党が人気がないのはひとえにこのせいであり、ついでに言えば管ならそんなことはなかったと言う。個人的な好みの問題であるようにも思うが、全ての有権者が政策を吟味して態度決定するのではない以上、党首の印象がどうであったかという点を欠落させてもしょうがないのではないか。身近な女性に聞いてみるとよい。あるいは最近首相でなくなったチモシェンコの人気について男性として思うところを内省するとよい。
投稿: 厘斗 | 2005.09.17 00:32
女の人は初手のイメージとそこからくる好き嫌いで全体の8,9割判断しますからな。
初手のイメージ悪い人が一発逆転狙いでなんかアクション起こしても、「見直す」ということをあんまりしない。というか、まずしない。
魚の腐ったような目をした岡田代表は、見た目で絶対アウト。っていうか、あの見た目を支持する人間って、多分女社会から超絶浮くタイプかと思われ。
そもそも、一事が万事そういうモノの見方ばっかりするから、いい歳こいても化粧を止めないし悪口叩くとそれだけで毛嫌いするんでね。
女は徹頭徹尾自分しか見ない(若しくは自分がされたら、を最大限考慮する)から、そのへんの機微が分かんない(分かってても対応できない)人は、まずダメでしょ。
ちなみに、ホリエモンが都市部で票を伸ばすも農村部でまったくダメだった原因は、公共建造物をクソミソにけなしたことと、創価に堂々と支援をお願いしたこと。あの2点で、農村部…とくに農業に関わってる人間は、未来永劫敵に回る。
都市部の人間は利得やイメージ戦略で簡単に右往左往するけど、農村部の人間はそういう部分であまり動じないだけに、あの2点は致命傷かもしれんね。本人そこまで思ってないかもしんないけど。
投稿: うんこ | 2005.09.17 02:36
マッチョメディアに流された結果が、今回の結果に思えるのですが・・・。
今回の自民の圧勝をは、民主党なんかは関係なく、公明との連立でブレの多い自民党を否定したように見えるのですが。
単独に為った自民が、ブレずに結果を残せるかが明確になる。
二大政党制自体が公明の存在で難しい以上しかたがない結果に思えるのですが・・・。
投稿: YO | 2005.09.17 03:25
>galleonさん
民主の政策が支持されなかったことを否定するつもりはありません。
(というか私自身もまずいと思った)
ただ、女性の支持が少なかったからといってそこまで
「政策」が重視されたかどうかは疑問です。
厘斗さんがおっしゃるように「イメージ」が大きく作用したのを
無視はできないのではないかと思ったものですから。
それに郵政法案に反対する人々を自民反対派も民主党もひとくくりに
「守旧勢力」とレッテルを貼る手法は
民主のマイナスイメージに大きく貢献しているでしょう。
「郵政反対」もひとつの政策だと言われればそうですが
女性の民主不支持が多かったことの理由として
政策の問題を重く見るのは
「イメージ」の作用を無視しすぎではないかと。
投稿: ms | 2005.09.17 05:47
はじめまして。
政策を見て民主党に入れた女です。
元々世間からはぐれてると思ってましたが、今回もはぐれてましたか…。
ただ、民主党が女性に人気ないのはやはりイメージのような気がします。
おぼれてる時にわらをもつかもうとする自民党と、そんなんじゃ助からないからとつかまない民主党、みたいなイメージ。
女は「どんな時でも生き残る能力」がありそうな方を選ぶのではないでしょうか?
自分ははぐれてるので当たってるかどうかわかりませんが。
投稿: konami | 2005.09.17 11:39
>msさん
書き方が悪くて申し訳なかったのですが、私も今回の全体の選挙結果はイメージによるところが大きいと思っています。
しかし女性票において男性より自民、民主の差が大きい理由を女性がよりこのイメージに影響されたからとするなら(「この動向」の原因が小泉劇場と考えるなら)、男性に較べて民主が低い分、自民が高くなっているはずで、でもそうなっていない。
じゃあなんで?というところをfinalventさんは民主政策への不支持やマッチョ・メディアへの否定であると指摘され、私はこの傾向は元々そうだったのではと思ったわけです。
投稿: galleon | 2005.09.17 12:19
ここ10年「イメージ」が選挙結果の第一にならなかった国政選挙があっただろうか?
投稿: mn12 | 2005.09.17 15:33
そういう意味で、
前原新代表の採択は興味深過ぎるというか、
今選挙してほしい(笑)
投稿: 無粋な人 | 2005.09.29 09:58