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2005.09.24

胡耀邦名誉回復の背後にどんなパズルが潜んでいるのか

 このエントリはいつもよりちょっとウ的思考に踏み出す。読まれるなら、ちょっと洒落かもよというのを念頭に置いていただきたい。というのも、この胡錦濤パズルは私には難しすぎる。
 話の発端は今朝の朝日新聞社説”日中ガス田 海でにらみあうよりも”(参照)がいいだろう。私はこれを一読して、ハテ?と思い、再読して、ほいじゃこのパズルが解けるかなとチャレンジしてみたくなった。
 表向きの話は、愚にも付かない日中友好論である。いわく、日本の排他的経済水域の境界で勝手にガスの抜き出しにかかっている無法者中国とこの際仲良くしーや、というのである。この日本国を舐めた平和主義こそ朝日新聞の真骨頂と言えないこともないし、あのなぁその北の領域にもっとやばいのがあるんだよという話は「極東ブログ: 日本の排他的経済水域に関連して」(参照)でも触れた。ま、朝日新聞の言うことなど真に受ける必要もないのだが、ちょいと気になるのは、表向き中国様に批判しているような修辞があることだ。大丈夫か。あとで、中国様にオシリペンペンされるよとか心配する向きもあるかもしれない。


 両国政府は共同開発以外に解決策はないと見て、協議を重ねてきた。それをよそに既成事実を積み重ねる中国側の姿勢は容認しがたい。
 中国側は、いったん作業の手を止め、協議に真剣に向き合うべきだ。幸いなことに、月末ごろに協議を再開することで両政府は合意した。日本も打開に向けて具体的な提案をすべき段階だ。


 中国側には、小泉首相の靖国神社参拝などに対する反発から、簡単には日本に譲歩したくない気持ちもあるようだ。だが、これは純粋な経済問題であり、利害の調整は可能なはずだ。
 日本との幅広い協力を進めた方が建設的だし、長期的な協力関係の支えにもなる。中国の戦略的な決断を見たい。

 朝日新聞もさすが言うべきところはちゃんと中国様に物を言うじゃないか…なーんて信じられるわきゃねーだろ、朝日新聞なんだし。
 こんなの中国様(現政権)が中国内部の政治勢力に向けて外回りに批判するために、日本のケツをツンとやってみたというだけ。中国様の本音は、日本と仲良くしてさっさとガスを中国のために掘ろうよというのと、この対立勢力である軍プラス江沢民系にもっと圧力を加えてやろう、ということだ。朝日新聞のこの社説の冒頭はこういうふうに問題が軍だと書いてあるし。

 東シナ海で中国が開発を進める海底ガス田の近くで、中国の軍艦が盛んに動き回っている。上空には自衛隊のP3C哨戒機が偵察飛行を続ける。なにやら物々しい雰囲気だ。

 ほんとにあそこからガスが出るのかよという根本的な疑念はさておくとして(ユノカルはさっさと手を引いたし)、問題は天然ガスということもだが、中国様の息のかからない「中国の軍艦」だ。こいつら、胡錦濤や温家宝が国外に出るといちいち日本と悶着起こすのがお役目っていうやつらだ。
 というわけで、パズルの一手、二手をまとめると、まず、朝日新聞は中国様の代弁をしているだけで、その代弁は中国内部の軋轢で中国様を優位に持っていくこと。そして、どうやら中国の内部に中国様の息のかからない軍勢力がいること。って、多分、江沢民+曽慶紅(参照)といった上海閥なのだろう。
 というわけで、れいの反日デモと同じ構図というかまだまだ内部でドンパチやっていてるし、中国史を見ればわかるけど中国人というのは外部が唖然としても内部の政争しか関心なくその割に外部からの見てくれを内部の権力に使う。そもそも朝貢なんてものも皇帝(中国様)が内部の批判者に圧力をかけるための行事だった。
 さて、それだけなのかこのパズル?
 というのは、この構図だけで見ると、胡錦濤=ゼンダマンじゃん、みたいに見える。もっとも日本の長期的な国益を考えると上海閥がのさばってくれたほうがなんぼかマシかもしれないのだが…。
 ここでちょっと別件みたいだが、来たる十一月二十日、北京でド派手に胡耀邦(元中国共産党総書記)(参照)の生誕九十周年の記念式典が行われる。あと十年待たないのだ。で、誰がやるのかって、胡錦濤がだね。天安門事件の引き金とも言える胡耀邦が名誉を回復するのだ。な、なぜ? 日本語で読める話としては産経系”「改革・開放」機運再び盛り上げへ 胡耀邦氏の名誉回復進む”(参照)が詳しいが、なぜへの答は次のようにへなちょこ。

 胡氏の業績が正当に評価され始めた兆しで、“名誉回復”が着実に進んでいる表れといえ、これを機に、再び改革・開放路線の機運を大きく盛り上げ、今後の経済発展に弾みをつけたい、中国政府の思惑が見え隠れしている。

 そんだけのわけねーだろ。まぁ、完璧にその線はねーだろとまでいうわけでもないが…。
 これは言うまでもなく胡錦濤の権力闘争でしか、あ・り・え・な・い。じゃ、どんな闘争か? まさか、これで天安門事件以降の江沢民フランケンシュタインの恐怖時代を転換させる、わきゃねー。
 まずかなりはっきりしているのは、指標は胡耀邦じゃなくて、趙紫陽(参照)だ、絶対。趙紫陽が十分に名誉回復すればそりゃ、中国のこの暗黒の十五年の転換はあるかもしれないが。が、そういう兆候は今のところない。ないどころか。逆がある。
 六月一日付ウォールストリートジャーナル”Still Afraid of Zhao”(参照)が趙紫陽の現代的な意味をうまく表現している。

Even five months after his passing, China's leaders remain terrified of Zhao Ziyang. Or, more precisely, of what havoc the former Communist Party chief might wreak from beyond his grave. The source of the fear this time is a samizdat manuscript that delivers his final verdict on the party that purged him and placed him under house arrest for supporting the 1989 Tiananmen protesters.

 中国の現在の権力者は依然趙紫陽を恐れているというのだ。この場合の権力者は歴史的に見れば江沢民と仲間の愉快な上海閥ということだが、この記事が示しているように、胡錦濤も該当する。

The document, secretly written by close associate Zong Fengming on the basis of extensive interviews with Zhao during his 15 years of house arrest, is believed to include denunciations of former Chinese leaders Jiang Zemin and Li Peng.

 このあたりよくわからないのだが、なんか趙紫陽文書というべきものが存在しているらしい。れいの天安門文書(参照)みたいに、そ、それがばれたら中国トホホみたいなものなのだろう。読みたいぜ。というか、すでにどっかにあるのか?
 このスジで見ていって、どれだけ信頼性があるのかわからないだが、The Jamestown Foundationというサイトに”HU BOOSTS POWER AS HE SCRAMBLES TO MAINTAIN SOCIAL STABILITY ”(参照)という記事をめっけ。ざっと読んだのだが、ようは胡錦濤も趙紫陽文書の隠蔽に絡んでいるようだ。ついでにこの記事では、胡耀邦の名誉回復は上海閥対抗と胡耀邦人材の取り込みという点を指摘している。
 というあたりで、アショーカ王である。中国情報局九月五日付”特別インタビュー:日本僑報社 段躍中氏”(参照)を思い出す。

――4月には上海などで過激な反日デモも発生しました。靖国神社問題などに関して、中国政府は日本政府をきびしく批判していますね。
段:ただ、中国政府は対日関係を非常に重視しているのですよ。胡錦涛政権樹立後の2003年、新日中友好21世紀委員会が発足しました。中国側の座長は、胡耀邦元総書記の秘書を務めたことのある鄭必堅氏です。
 胡錦涛国家主席は共産主義青年団書記を務めた経歴がある。胡耀邦氏も共産党青年団書記を長く務めました。その胡耀邦氏の秘書が21世紀委員会の座長になったということは、日中関係に臨む胡錦涛主席の意欲のあらわれと考えてよい。

 つうわけで、中国様=胡錦濤は、日本内の胡耀邦シンパを吸い寄せるように鄭必堅を置いているわけで(朝日新聞もこの関連のツテでしょうな)、先のThe Jamestown Foundationの記事のように、そういう配置を要所要所に繰り広げてきているわけだ。
 ちなみにそのシフトで中国様が日本になにを求めているかって、資源と技術とカネですよ。田中直毅21世紀政策研究所理事長もこう言っている(参照)。

 4月9日の北京、4月16日の上海での反日デモの暴徒化は、間違いなく胡錦濤政権を追い込んだ。その後5・4運動記念日をはじめとして反日デモが起きる可能性の高い日時を想定して、鎮圧への踏み出しを明らかにしてきた。政府の予算が多額に使われたわけはないが、中国政府を取り巻く内情からすれば政治的資源を相当程度使い尽くした可能性がある。
 そこまで踏み込んだのは反日デモの暴徒化は、これをきっかけとして共産党批判の声に転化しかねないという危うさを秘めているからである。1月の趙紫陽の死去以来、1989年6月4日の再現を回避するための努力が行われた。89年の場合は胡耀邦の死去に際しこれを悼む形をとった政権批判がきっかけとなった。現政権は歴史の古知から学んでいる。

 中国様の、むふっと鼻息が聞こえるようだ。
 以上、すげー杜撰なお話でした。

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コメント

趙紫陽文書といえば、
今年6月、シンガポールのストレーツ・タイムズの記者、程翔が中国から、趙紫陽の回顧録を国外に持ち出し、公表しようとした結果、中国当局に拘束された事件がありましたね。
趙紫陽文書が日を見る日はあるのかな。

投稿: zhenyan | 2005.09.25 02:12

さすがだなあと思いながら読ませていただきました。以前から、中国の民主化がどのくらいの開放度で始まるのか予測がつかないでいたのでとても参考になりました。

投稿: jaz | 2005.09.25 03:16

すいません、内容とは直接関係ないのですが、ウ的思考ってなんですか? ぐぐってもこのページしかヒットしなかったのですが……

投稿: 名無しさんだよもん | 2005.09.26 10:57

端的に言えば「陰謀論」

投稿: シャイロック | 2005.09.27 20:52

多極主義ですよ

投稿: うーたん | 2005.09.28 01:26

うがった思考、憶測を自由に飛ばしてみることじゃないのん?

投稿: トリル | 2005.09.29 03:18

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