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2005.09.08

郵政民営化法案余話

 このエントリでは郵政民営化は正しいかみたいな話をする気はない。雑談というかトリビアといった類。ぶくまをかせぐ、郵政民営化をわかりやすく説明するといった話でもない。もっと、なんというか、たるーい話である。では、ゆるゆると。
 先日四日付のニュースだが、日本経済新聞の二日付朝刊に掲載された、郵政民営化法案に関する民主党の全面広告について、自民党は翌三日、広告内容に事実に反する間違いがあるとし、訂正と謝罪を求める通告書を民主党の岡田代表あてに送付した。ニュースの扱いとしては些細なものだった。そんなものだろう。
 自民党にかちんときたのは民主党の次の主張のようだ(参照)。


(自民党の郵政民営化法案は)『民営化』の名に値する法案なのでしょうか。民営化会社は今後10年間100%政府出資の会社であり、新たな国有株式会社をつくり出すことになります。

 これに対する自民党の言い分はこうだ(幹事長談話)。

 郵政民営化によって新たに設立される郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式については10年の移行期間内に段階的に全部処分することが法律(郵政民営化法案7条2項及び同62条1項)で義務付けられています。
 したがって、「10年間100%政府出資の会社」が設立されるわけでないことは明らかであり、民主党の広告は全く事実に反します。

 くだらねとか率直な意見を言うのは控えることとして、重要なのは新規の国有会社は十年で消滅するという点。株式が全部売却されて国営というのは語義矛盾。
 とすると民主党のツッコミ所というのは、その十年が問題だということか(余談だが売却されるから外資に乗っ取られるとかいうトンデモ話にはついてけませんってか日本の株における外人の状況を見れ)。
 民主党から反撃があった。日経”民主、自民の民主広告批判に反論”(参照)より。

民主党の枝野幸男幹事長代理は4日、(中略)「持ち株会社が100%政府出資であり続ける可能性が残っている。記述に何の問題もなく、批判は的外れだ」と反論する回答書を送付した。

 話を真に受けると、十年後にも政府持ち株会社である可能性があるから、自民党から言いがかりをつけられたが、もとの主張のままでよいのだ、というのだ。ほぉ。つまり、民主党の要点は、十年後も国有会社が存続するという点にあるわけか。
 思わずくだらねとか呟くのは控えることとして、これで話は終わりかなと思ったら、六日だがくすぶっていた竹中御大は吠えた。日経”竹中氏、民主に広告の訂正要求”(参照)より、民主党広告について。

「国会で株式の完全処分について質問していながら虚偽の広告を打った」と批判した。民営化法案は2017年3月末までに政府の保有株式を段階的に処分するとしており、「訂正と謝罪を求めなければならない」と強く抗議した。

 渦中の人、竹中としてはどうしてそう曲解されるのかと思ったことではあるのだろう。
 この問題は、郵貯・簡保が国の持ち株となる可能性があるのかとかいう問題とも見られる。
 こうした話は二日付の読売新聞社説”[郵政改革]「資金の流れを変える案はどれか」”(参照)にもあった。

 与党案は政府出資の持ち株会社を設立し、傘下に郵便、郵便局、貯金、保険の4会社を収める。貯金、保険の金融2社の株式は10年以内に完全処分する。民営化をテコにして資金を民間で循環させるという内容だ。
 問題点もある。持ち株会社は金融2社の株式を買い戻しできる。買い戻せば、政府による2社への関与が復活する。資金運用に政府の干渉が続き、資金の流れが大きく変わらない恐れもある。

 こういうのになんと言っていいのか迷うのだが、郵貯・簡保の買い戻しの可能性というのは自民党の党内合意であって、法案の内容ではないというのを読売新聞社説子はわかっていないのだろうか。
 っていうか、もしかすると、民主党もそのあたりをごちゃごちゃにしているのではないだろうか。
 どうなんすかね。
 先日コンビニに買い物に行ったら民主党のマニフェストを貰ったので郵政改革について読んでみたが、十年で郵貯・簡保の株が売却されるという話はなく、依然この国営会社から国債にカネが流れるという解説図があった。そりゃ、流れますよ。第二の国家予算を一気にストップできるわけはない。旧勘定は依然国債消化になるだろう。
 でも、民主党のマニフェストは旧勘定と新勘定の違いがわかっていないか意図的に曖昧にしているなという印象は受けた。この話の要点は旧勘定が固定されてもう増えないという点とそれが事実上の禁治産者扱いになるということだ(敗戦処理だな)。言うまでもないが、旧勘定が市場に流れるという話はないので、そのカネが原因で民間が潤うという話もない。
 そういえば衆議院解散は憲法違反だとかいう愉快な話もあった(参照)。お笑いはさておき、衆院を解散させるのではなく、参院で摺り合わせはできなかったという話も聞く。が、摺り合わせの内容とは、衆議院のどんずまりのどたばたで見たように、買い戻し可能という自民党内の合意を法案に盛り込むということなるのはわかりきったことだ。それを法案に盛り込めば、この法案は否決されるまでもなく死ぬ。今後重要なことがあるとすれば、自民党にその党内合意を実現させないことではあるのだろう。
 が、すでに自民党内合意は法案と同じだと見ているからこそ出てくる議論というものもあるのだろう。世の中いろいろではある。

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コメント

リンク先の「解散は衆院の不信任が前提」って所には爆笑しましたね。最高裁の判例も含めて、「内閣の解散権行使の原因は、単に衆議院の内閣不信任決議に対して考えられるだけでなく、広く内閣が政治を民意にもとづかしめるという民主主義の原理に即して必要な限り、その裁量によって解散権を行使することができる」(日本国憲法講義Ⅱ中原精一 成文堂)いわゆる内閣裁量説が判例通説であるなんて事は大学一般教養レベル以上の憲法学をかじった人間なら常識なんだとばかり思ってましたよ。こうなると民主の広告といい、もう書いたもん勝ちですね。

投稿: | 2005.09.09 10:23

衆議院解散の基準って、
現在の義務教育・高等学校級の社会(公民)では
どう教えているんでしょうね?

投稿: 無粋な人 | 2005.09.09 12:11

>>無粋な人
3年ほど前の中学生の時、内閣総理大臣は内閣総辞職し、衆議院を解散できるとだけ習いました。要するに解散権を持っているというだけです。その基準には触れていませんでした。高校では公民をやっていないので自分には分かりません。

投稿: あああ | 2005.09.09 12:51

解散に関してはっきりと条文に書いていないのは憲法の不備と言ってもいいと思います。まあ、不備を運用によって補うのはしょうがないでしょう。
ところで、7条を根拠とした解散ができるのなら、同じく7条を根拠とした憲法改正だってできたりして…

投稿: ROYG | 2005.09.09 20:10

憲法改正は96条にあれだけはっきり規定があるから無理でしょう。
それと確かに不備と言えば不備ですが、基本法の憲法は元々一字一句の文言で解釈する類の法じゃないですし、どうしたって慣習法的な意味合いが強いものですし・・・というか、慣習法的な憲法解釈を認めないんなら、つべこべ言わずさっさと9条改正しなきゃって話ですし。牧太郎さんが「内閣の解散権」に言及している、としてる69条だって、よく読めばわかるけど、どこにも「内閣の解散権」になんて言及してない。解釈上これは内閣の解散権を表してるとしてるとしてるだけで。
もっと言っちゃうと、そもそも素直に字面だけ負えば衆院の解散権はあくまで天皇にあるんですけどね(7条)。厳密には憲法には解散権規定は7条しかないし。いくらなんでもそれはまずいだろうって事で、それこそ解釈でそうじゃないって事にしてるだけで。

投稿: | 2005.09.10 01:03

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