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2005.09.19

カトリーナ被害からブッシュ叩きの世相について

 カトリーナ被害からブッシュ叩きというのは、米国の現在の政治的な状況では、しかたがない面はあるだろうと思う。クローズアップ現代でも連邦緊急事態管理庁(FEMA)のリストラに根幹の原因があったふうな誘導をしていたが、当たっている面も多い。
 ただ、それをそのまま日本にずるっともってきてブッシュ叩きから米国叩き、はては小さな政府はだからイカン論とか、イラク戦争の是非とかにまでなんでもかんでもガーベッジにしてしまうのも変な感じがする。別に私はこの件でブッシュを弁護する気はさらさらないが、ちょっと違和感だけは書いておこう。
 まずブッシュ叩きは、単純に米国メディアのお商売という側面がある。十三日付TBS”米メディア、「ブッシュ叩き」の理由は?”(参照)はそのあたりをこう伝えている。


 カトリーナ関連の報道で、アメリカのテレビ局は軒並み、視聴者を増やしました。ニュース専門チャンネルCNNの視聴者は、災害前の実に3.5倍に膨れ上がったと言います。そして、その数字とまるで反比例するかのように、ブッシュ大統領の支持率は、就任以来最低の38%まで下がりました。
 「イラク政策や一向によくならない経済について、腹を据えかねていた国民が、今回、カトリーナの被害にあった貧しい人たちを助けられなかった政府に怒りを感じているのです。国民が説明を求めている時に厳しい質問をするのは、メディアの役目です」(NBCテレビ デビッド・シュースター記者)
 「9.11」以来、ブッシュ政権が掲げてきた強いアメリカ。それが国内で崩れ去るのを目の当たりにしたアメリカの人々のショックは計り知れません。そして、その衝撃がメディアの政府への批判をこれまで以上に強いものにしています。(13日18:30)

 それはそうだろうし、そしてそれは米国の事情というものだ。
 今回の人災的側面には、FEMAの機構上の問題がよく指摘される。確かにそれはそうなのだが、この機構改変にはテロ対策があり、この文脈における連邦政府と州政府の関わりはちょっとやっかいだなと私は以前思ったことがある。ちらとネットを見ると、二〇〇一年のワイヤードの記事”米司法長官:「連邦と州が協力してテロ対策の強化を」”(参照)が参考になるかもしれない。このころ連邦政府側がテロ対策に強く乗り出した。

 だが州政府は、こういったテロの脅威をさほど大きなものとは見ていない。それよりも、連邦政府がこのところ力を入れだした諸政策が、州政府の管轄権を侵すのではないかといらだちを見せている。
 「どんな攻撃も地方から発生する。そして(州政府は)連邦政府が高圧的に介入してくるのではないかということに非常に敏感だ」と、政府資金によって運営されているテロリズムに関する諮問委員会の副委員長、ジェームズ・クラッパー中将は語った。

 基本的な構図として、州政府はその管轄権の保持の点で、連邦政府の介入の権限について敏感であるということがある。まして、州政府が民主党であると、共和党色の強い連邦政府には違和感を持つだろう。この構図は今回のカトリーナ被害にもあるように思える。
 そうした視点でネット少し見回したのだが、どれほど権威があるのかわからないが”Don't blame (only) Bush”(参照)という「ブッシュだけをそんなに責めるなよ」というコラムは示唆的だった。
 まず、ふーんと思ったのだが、今回の被害に対するブッシュの態度もその政党支持でけっこう分かれる。

Asked about Bush's response to Hurricane Katrina, Americans are very partisan in their views. Among Republicans, 74 percent approve of Bush's handling of this catastrophe. Among Democrats, 71 percent disapprove. Among independents, 44 percent approve, and 48 percent disapprove.

 というか、そこから先、政党のイデオロギーが意見に反映していると見てもいいのだろう。
 おやっと思ったのは、次の部分だ。

The mayor of New Orleans had hundreds of school buses he did not use to evacuate citizens. His entire evacuation implementation was a disaster. The governor of Louisiana did not mobilize National Guard troops soon enough, and she quibbled with the president for a precious 24 hours over whether federal troops would be under the command of the Department of Defense, rather than herself. FEMA was totally inept initially at getting food, water, and medicine to hurricane victims. Homeland Security demonstrated bureaucratic paralysis in its handling of the crisis. Only the Red Cross seems to have come out of this unscathed in its reputation.

 単純に言えば、災害当地の施策のミスの指摘と言っていいだろう。そういう声はネットに他にあるだろうかと探すと、BBSにこういう意見があった(参照)。

If FEMA was paralized it was by the state of Louisiana, specifically the gonernor. What a crock, FEMA didn't turn away the Red Cross, the governor of Louisiana did stating that they wanted no incentive for the people to stay in the Superdome. FEMA's statement not to respond unless asked was because that is what the governor (who is the local authority) requested, not FEMA's policy.
 
And the people were "dying for lack of water and food" because the governor of Louisiana specifically refused to allow the water, food and supplies through for the reason stated above, that they didn't want the people to want to stay in the superdome. The governor was the one who tried to starve them out. The governor is the one with authority unless martial law is declared and the feds take over.
 
Some people just won't let the facts into their narrow minds. In spite of all the arguements, the Federal response to Katrina, as bungled as it was was, it was faster, more timely, and stronger than any response by FEMA in history. Now is this an arguement that the glass is half empty, or half full?

 こちらは明白に州政府側の問題点を指摘している。もちろん、BBSなので同ページには反論もあるので、こうした問題を考える上では示唆になる。
 ブッシュ擁護ですかみたいな単純な揶揄にうんざりしていることもあるが、この問題はこれ以上は立ち入らない。理由は、今回の事態と機構が私にはよくわからないからだ。少なくとも、連邦政府権限と州政府権限、また、FEMAの機構と運用とくにそのガイドラインがどのように適用されどのような限界があったのかなど、私自身としては、ベーシックな部分が整理できていない。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

日本のメディアは、あまりに日本が中央集権になってしまったんで連邦国家というものの生態に凄く鈍感になってる気がします。
しかもアメリカが「合衆国」つまり「連邦国家」であることをとかく忘れがちですねー。
国家体制の崩壊が噂されてるのは中国ばかりではないだろうに。

投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2005.09.19 12:59

神戸地震の時、救助の初動作が遅れました。社民党の村山首相が自衛隊を出すのを渋った経緯からでしたね。
何かカトリーナの件と少しダブって見えます。
社民党はこの後滅亡の危機まで転落しましたが、共和党の場合はどうやって盛返すのか、お手並み拝見といきたいです。日本人としては民主党(米)の政権は好ましくない。

投稿: NZ | 2005.09.19 14:24

はじめまして。いつも楽しみに読ませていただいてます。さて、テーマからずれて申し訳ないですが、いまだに被害規模が分からないのはなぜでしょう。現地でも報道がないのか、それとも日本で報道されていないだけなのか。「数千名におよぶだろう」ということが話題の起点だと思うですが、そのこと自体わたくしには信じがたいです。

投稿: 技術系 | 2005.09.20 09:00

>技術系さん
もう遺体の収容もかなり進んでいるはずですが、確か確認された死者はまだ千人にもなっていないですよね。
数千人なんて数字が出たのは、元々、人口の把握がいいかげんだったからなのかもしれないですね。

投稿: Baatarism | 2005.09.20 09:48

今回の災害をめぐる日本の関連報道は、あいかわらず日本のマスコミの弱点(アメリカのことが本当はよく判ってない)が出たものと思います.まあ、それは諦めるとして、次ぎの2点には注目.ブッシュがリコンストラクションと言っているが、アメリカに詳しい人なら、これが共和党による南部再建(南北戦争後の)のアナロジカルなフレーズであることはピンとくる.つまり共和党基盤強化(災い転じて福となす)政策の追求を彼が指向していること.これに関連して、ニューディールと言う言葉も躍っている.ブッシュが尊敬する大統領がFDRであることは日本では以外に知られていないが周知のこと.ただ、ニューディルといっても手法がまったく違うようで、復興資金や事業の免税、ファンドの運営、特定事業者への優遇措置などなど.要するに、これは災害復興事業の民営化.さっそくクルーグマンがニューディルと似て非なるものと毒づいたが、リベラルからの批判はブッシュさんには馬耳東風でしょう.むしろ伝統的共和党(財政均衡派)からの反発が注目される.結果として、カトリーナは、米国政局の文字通り台風の目となると考えます.くれぐれも日本のマスコミの報道には惑わされないよう.(このブログを読んでいる方には自明でしょうが)

投稿: M.N.生 | 2005.09.20 13:25

>今回の事態と機構が私にはよくわからないからだ。少なくとも、連邦政府権限と州政府権限、また、FEMAの機構と運用とくにそのガイドラインがどのように適用されどのような限界があったのかなど、私自身としては、ベーシックな部分が整理できていない。

ちょっと基礎資料の収集を手抜き過ぎてやいませんか?
日本語でも、

http://www.page.sannet.ne.jp/mkimura/tawagoto/01/0212FEMA.htm
http://www.lij.jp/cgi-bin/sdoc.cgi?page=koen/record/074/koen

などの示唆に富んだサイトが見受けられます。
これらを見たとき、

>注目すべきことは、これらの上下の組織において、実務的に最も重要視されているのが、迅速な対応と、個人的信頼関係であるということである。これは、「普段から災害準備に当たり上下機関の連携が密であり、信頼関係を構築することを重要視しているため、支援の必要性が、危機管理官の連絡だけで判断できるというのである。」驚くことに、カリフォルニア地震の際には、広範囲の災害地区のうち、地域の危機管理官から連絡が無いということが、通信の途絶を含む大きな混乱を表していると判断できたというのである。また、オフィスにいる職員に緊急事態宣言の必要性の判断権限が順位化されており、迅速な発動例として、オクラホマ連邦ビル爆破事件においては、テレビ放送から事態を補足し、現地の状況を確認し、その時オフィスにいた優先順位第6位の方が大統領に緊急事態宣言をするよう進言したという。この際、災害現場のすぐ前のビルに現地本部を設営しているが、数時間で一連の対応が出来ている。(括弧は引用者挿入)

「連邦政府と州政府の関わりはちょっとやっかいだな」という壁を乗り越えるためにFEMAは組織されたはずです。それが出来ない時点でFEMAの存在意義はなくなります。

投稿: F.Nakajima | 2005.09.20 20:58

F.Nakajimaさん、こんにちは。ご指摘の資料ですが、古くないですか。

投稿: finalvent | 2005.09.21 07:49

確かに、これらの文章は現体制(the Department of Homeland Security)発足前のFEMAの活動について書かれたものであり、現在のFEMAについてではありません。
しかしながら、これらのサイトは今回finalventさんが指摘した全ての疑問点について、ウィット長官時代には、何らかの解決策をFEMAは準備し、優れた対応をしていたことを示していると思います。

今回アメリカのマスコミが叩いているのはあれだけ輝かしかったFEMAがなぜ今回これだけの醜態を示すことになったかということも一因なのです。

投稿: F.Nakajima | 2005.09.21 20:30

F.Nakajimaさん、こんにちは。

>しかしながら、これらのサイトは今回finalventさんが指摘した全て
>の疑問点について、ウィット長官時代には、何らかの解決策をFEMAは
>準備し、優れた対応をしていたことを示していると思います。

いえ、到底そうと思っていません。スクールバスによる避難時期についてガイドラインではどうだったでしょうか? また、スーパードームへの避難はガイドラインで示されていたでしょうか。こうした問題に直接的でないせよ、答えていません。

>今回アメリカのマスコミが叩いているのはあれだけ輝かしかった
>FEMAがなぜ今回これだけの醜態を示すことになったかということも
>一因なのです。

いえ、FEMAには天災に対する本質的な欠陥があったと思えます。これを
参照してください。

FEMA's Woes Were Merely the Beginning
http://www.latimes.com/news/printedition/la-na-disarray18sep18,1,2581544.story

投稿: finalvent | 2005.09.21 20:42

>スクールバスによる避難時期についてガイドラインではどうだったでしょうか? また、スーパードームへの避難はガイドラインで示されていたでしょうか。

>FEMAの役目というのは、FEMAがすべて出ていって何もかもやるということではなくて、それぞれの州が持っている資源、例えば州の軍、もしくは町や市が持っている消防組織、そういうものがばらばらに動いていると、ダブってしまったり、むだが多い。そういうロスをなくすためにコーディネーションをするというのがこのFEMAの最大の役割です。統括・連絡調整、これがすべてFEMAの活動の中心になっています。

示されていないから揉めたんです。但し、これらの記事を読んでもよくわからないのですが、これのガイドラインを作成するべきなのはFEMAだったのでしょうか?よくよく考えると避難計画もスクールバスの利用もルイジアナ州とニューオリンズ市が計画すべきことだったように私には思えるのですが。

投稿: | 2005.09.21 22:59

無名コメントですが、たぶん、F.Nakajimaさん、ではないでしょうか。

>FEMAの役目というのは、FEMAがすべて出ていって
>何もかもやるということではなくて、それぞれの州が持っ
>ている資源、例えば州の軍、もしくは町や市が持っている
>消防組織、そういうものがばらばらに動いていると、ダブっ
>てしまったり、むだが多い。そういうロスをなくすために
>コーディネーションをするというのがこのFEMAの最大
>の役割です。統括・連絡調整、これがすべてFEMAの活
>動の中心になっています。

当然です。だから、FEMAはこれらをスムーズにするべくガイドラインを出しているのですが、その検証がなされているだろうかということなのです。

そして、ロスアンゼルスタイムスにはこうした問題についてこの災害を契機に根幹的な問題が提起されているのです。

>これのガイドラインを作成するべきなのはFEMAだったので
>しょうか?よくよく考えると避難計画もスクールバスの利用
>もルイジアナ州とニューオリンズ市が計画すべきことだった
>ように私には思えるのですが。

いえ、それを決めるのは米国の連邦政府と州政府の関わりであって私たちではありません。そして、このような疑問を提出されるということは、そのことを考察するうえでの基本的な情報が充分に伝達されていないことを意味していることでしょう。

私のエントリの指摘はご理解いただけましたでしょうか。そこが現状よくわからないのです。

投稿: finalvent | 2005.09.21 23:10

なるほど、了解しました。

投稿: F.NAkajima | 2005.09.22 11:48

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