« 郵政民営化の十年後 | トップページ | カトリーナ被害からブッシュ叩きの世相について »

2005.09.18

中秋の名月

 今日は旧暦の八月十五日、十五夜である。日本人は中秋の名月と呼ぶが、「名月」の表記は室町時代以降のことらしく、それ以前は定家の「明月記」のように明月であったようだ。確かに明るい。昨晩も「疑うらくは是れ地上の霜かと」といった趣きだった。また「仲秋」とは宛てないようだ。
 昭和三十二年生まれの私は、子供の頃十五夜祝ったものだ。薄を飾り、月見団子を供える。家には中山晋平のソノシートがあり、証城寺のたぬきばやし、兎のダンス、雨降りお月様、などを歌った。月見の喜びが子供の思いとまだ結びついていた時代だった。
 この月を朝鮮では秋夕(チュソク)として祝う。私が知る在日のかたは「お盆」と言う。確かに祝いかたを見るにお盆のようでもある。してみるとこれもまた日本統治の名残かとも疑うが、違うだろう。中国の中秋節に日本統治下の風習がかぶさったものではないか(と言えば朝鮮人は嫌がるだろうか)。いずれ中秋が基本にあったには違いない。松餅(ソンピョン)を食べる習わしも、その形状を見るに中国の月餅と同じ趣向であろう。
 私は子供時代を過ぎてから名月を殊更に祝ったことはない。二十代後半、ちと連歌などに凝ったこともあり、月を愛でるはよろしき、みたいな感じではあったが、その程度だ。沖縄に暮らすようになって、当地の観月会の盛況なことに驚いた。うちなーんちゅは観月会が好きである。飲み会の名目といえばそうだが、それでも月は欠かせない。いずれ沖縄は十月まで本土の夏のような季節が続く。アウトドアがよろしい。
 沖縄では月見団子は食べない。月餅も食べない。松餅も食べない。ふちゃぎを食べる。ふちゃぎは、ブログ「~沖縄で暮らしたい!~」”「ふちゃぎ」お届け~!”(参照)の写真を見るといいが、こんな感じの餅である。語源は吹上餅であろう。吹上が暗示するように、これは蒸し上げる。沖縄では近代内地文化の起源でなければ杵搗き餅はない。そういえば内地の月見団子も杵搗きではない。当の月では兎どもが杵搗きをしているのになぜであろうか。
 私はふちゃぎが好きになった。もっとも、もったりとしてそう喰えるものではない。しかも味はないに等しい。なので若いうちなーんちゅも好まない。が、私は小豆の香りが好きなのでそれだけで充分。以前、マクロバイオティクスに凝っていたころ、甘味なしのお萩を好んだが、そんな感じもする。そういえば、ふちゃぎとお萩は似ている。内地の彼岸のお萩とふちゃぎにはなにか関連があるのだろうか。むむむ。お萩もうちなーぐちで言えば「うふぁぎ(うふぁじ)」なので「ふちゃぎ」にも似ている。ついでに、先のブログのコメントでふちゃぎが南大門でも売られていたとあった。そ、そうなのか?


月餅 横浜中華街重慶飯店
 中国はもちろん月餅である。そしてもちろん月餅とは賄賂のことである。日本人の感覚からいえばのし紙のようなものだ。なので、今年はかなり規制が厳しいようだし、厳しくて当然だろみたいな笑えないような笑い話もよく聞く。月餅のおまけに別荘や外車が付くのだよ。
 私は月餅も好きだ。特に重慶飯店のが好きでよくオーダーしたが、ネットを見回しても通販はなさげだ。どうしたことか。重慶飯店の飯はイマイチだが、菓子類はけっこういける。月餅もずしっと重い。ちょっとこの歳になると一個は喰えないなというのが、月餅の原義である「円」の分かち合い精神によろしい。小さくカットして中国茶とともにいただく。餡は、私は、ナッツなんかのも好きだ。追記:コメント欄にて教えてもらった。「素材にこだわり指定銘菓 月餅:横浜中華街重慶飯店」(参照)です。
 中国茶といえば、この形状の分類で餅茶というのがある。餅にどう関係するかというと、餅の形にかちかちに固めてあるということだ。で、餅の形だが、これは柔らかなアダムスキー未確認飛行物体が重力算定を間違えて着地したような、あるいはエアーマックのような形だ。丸餅である。というか、餅とは丸いのが原義である。そういえば、沖縄の駄菓子でよくコンペンというのを食べたが、これの語源は薫餅であるとも聞いた。宛字のような気もするが、ペンはペイではあろう。
 中国の中秋といえば、月餅ともに忘れていけないのは、西瓜である。蓮華に彫った西瓜を捧げる。どちらも、「円(ユアン)」つまり丸いということからの連想ではあろう。が、こういう伝説もある。
 中国四千年というしょーもない嘘があるが、中国というのはしばしば遊牧民族の植民地になる地域だ。近いところでは清朝は漢民族の国家ではなく、モンゴル継承国家であった。なのでその領土が漢民族のものか、孫文はどう考えていたのかとかいった話もあるが、そんな無粋な話はさておき、モンゴル支配下の漢民族はなにかと陰に回っていろいろ呪詛をエンジョイしていたのだが、それにこの中秋の西瓜もあるらしい。西瓜を食えば種が出るものだが(中国人の西瓜種吐きを私も練習したことがあるが)、この種をただ一つだけ残すというのだ。これは日本の弘法大師の柿とは逆に、そのようにモンゴルの種よ、この一つをもって絶えよというのだ。
 なかなかの執念ではある。とか感じ入っているようでは中国人は理解できない。そういう理念とか言葉とかディスプレイ行動とかに悦に入りたいだけで、実際の西瓜の種はどうするかというと、なーに、月餅に入れて喰うのである。

|

« 郵政民営化の十年後 | トップページ | カトリーナ被害からブッシュ叩きの世相について »

「雑記」カテゴリの記事

コメント

http://www.rakuten.co.jp/jukeihanten/
こんなん出ましたよ。

投稿: hermit | 2005.09.18 16:41

hermitさん、こんにちは。ありがとう。あ、これこれ。

投稿: finalvent | 2005.09.18 17:24

初めまして。
偶然からこちらにお邪魔致しました。
「明月」と「名月」の表記に関する件、勉強になりました。勝手ながら、私のブログで引用させていただきましたので、一言ご挨拶させていただきました。

投稿: kobe77 | 2005.09.18 22:22

重慶飯店ですが、先の楽天のWEBの他に、
http://www.loonmoongroup.com/
(龍門グループ)があります。他に重慶としてのWEBも。
たしかに、ここの飯は本店と支店(別館およびローズホテル新館 -- 旧ホリデーイン)で味が全くことなりますね。本店とローズホテルの新館とは目と鼻の先だけど、そのギャップのひどさはあきれるほどでした。さらに、調理人がころころ変わるので本店でも味が変わるのはたしかです。でも、中華街はどこも金儲けに走って質は確実に低下していますね。

投稿: 胡桃 | 2005.09.19 18:16

 自分の何の気もなしに、「名月」と使っていたのに気づきました。「何の気もなく・・・」って恐ろしいですね。

投稿: wannwann | 2005.09.19 20:50

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 中秋の名月:

» 月餅 [天網快快]
今日は中秋節ということで、月餅の話。写真はうちのスタッフ宛に上海の会計事務所か... [続きを読む]

受信: 2005.09.18 12:11

» 名月でした。今日は敬老の日。 [販促コンサルの「販促ヒント集ブログ」]
お天気もよく気持ちのいい三連休。 昨日は珍しいほどの名月で、新聞各紙もそういう話題で賑わいました。 私は、父の仏前に供えるお花を買いに花屋に行ったのですが、しっかりお月見用のススキの入った花束が並んでいて、風流な感じでした。 ところで今日は敬老の日...... [続きを読む]

受信: 2005.09.19 07:40

« 郵政民営化の十年後 | トップページ | カトリーナ被害からブッシュ叩きの世相について »