精子銀行が心の支えになるという話
男性の癌患者にとって自分の精子を精子銀行に保存しておくことは精神面での援助になる。そういう記事がロイターに出ていた。標題は”Sperm banking gives cancer patients emotional lift”(参照)というだけなのだが、冒頭読み出して、ちょっとびっくりした。話は日本の話なのだ。てっきり米国とかのことだろうと予断を持っていた。
Sperm banking may not only preserve young cancer patients' ability to have children, but their emotional well-being as well, according to Japanese researchers.
【試訳】
精子銀行は若い患者が子供を持つ能力を保持するだけのものだけではなく、彼らの気分を快活にする上でも役立つと日本の研究者が明かにした。
日本のニュースなんだから日本語版のグールグニュースを「精子」で検索したけど、この話題はひっかからなかった。明日にはネットのどこかに掲載されるのだろうか。研究は横浜市立大学医学部附属病院のもので、研究者名はゴルゴ13を連想させる「さいとうかずお」とあるのだが、漢字名はわからなかった。追記:コメントでいただいた情報では、横浜市立大学付属市民総合医療センター泌尿器・腎移植科の齋藤和男先生とのこと。また、オリジナル情報は、アメリカ癌学会誌「Cancer」8月1日号に掲載とのことです。
癌の化学療法の結果、精子を作る能力が失われることがあるので、その対応として保存しておくというのは、心の支えにもなる。そうなんだろうなと思って読んでいくと、むしろ化学療法中の人にとって有益という示唆があり、そうしたことまで思い至らない自分のうかつさを恥じた。
とはいえ、現状ではこうした場合のそれほど精子銀行の利用は普及してないようだ。せいぜい一割から二割というところらしい。
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それでもエピソード1でアナキンが発見されるときも、血が問題になっていた。つまり、精子の問題でもある。ちょっとこのあたりの感覚は、歴史的に血統を無視している日本人にはついてけないものがあるなとも思った(日本は養子縁組の文化)。
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コメント
昔台湾人と話したときに、養子の問題をどうみるか聞いたのですが、彼は台湾だって同じだと言ってました。我々と同じ世代ですから、本省人としてでなく、華人としての教育のみ受けた人なのですが。
確かに中国人も血統を重視するとはいえ、祖先を祭らせるために養子を取ることは珍しいことでもないようで。もっともこの辺は中国人の死生観、つまり個人=死者の救済の問題であって、必ずしも子孫存続の問題ではないようにも思えます。
ですから、我々が血統擬制としての家を重視するのに比べ、彼らは擬制ではなく血統そのものを重視するのも確かですけど。
投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2005.08.26 11:59
血統第一の天皇家があるから、一般の日本人は安心して血統を無視できるのかも。
投稿: s | 2005.08.26 13:30
ワタシは日本人の死生観、或いは霊魂というか祖霊に対する感覚は、波動理論的なんじゃないかと思うのです。あるいは植物的というか。
一方、一神教とか中国人の死生観は素粒子というか、個はどこまでも個なんですね。だから自分の子孫は自分という遺伝子情報の伝承者に過ぎないのではないかと。
多分血統に対する感覚の違いは、父系的か母性的かというより、上のようなところにあるのではないかなー、と。
投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2005.08.26 13:35
男系はY遺伝子の特異性(まさに男性化)を、女系はミトコンドリア遺伝子(エネルギー効率?)を、それぞれ暗黙に選択している、という説、あってもよさそうな。
投稿: Sundaland | 2005.08.26 15:19
こういうのはブックマークでいいんじゃないでしょうか?それより極東ブログが断固として主張する郵政民営化推進の説明が不足してませんか?ちゃんとした論陣を張ってもらわないと賛成派として困ります。。。極東ブログが賛成側の議論を引っ張ってくれないと。。。
投稿: Taylor | 2005.08.26 15:59
私、少なくともここ300数十年(家系図無し、口伝を信用するなら500年前後)は男系嫡系嫡統の家系の跡取りですが。何か?
投稿: うんこ | 2005.08.26 21:17
ウチは少なくとも10代連続長男跡取りで貫徹してますが。
>我々が血統擬制としての家を重視する
というのは、分家筋とか途中廃嫡子・養嗣子が出てわやくちゃになった家系のみでしょ。続いてるところでは、台湾同様、重視してますがな。
投稿: うんこ | 2005.08.26 21:21
天皇家でさえ一血統が続くのは300~400年程度で、適宜次男以下の血統が接ぎ木して成り立ってるわけですが、なんでもない土民家系のウチが「ん? ウチは500年続いてるよ?」とかサラッと言っちゃったら、それはそれで不敬罪になるんでしょうかね?
ふと考えると、ひそかに勝ってて嬉しいですな。どうでもいいことですが。
投稿: うんこ | 2005.08.26 21:28
>ちょっとこのあたりの感覚は、歴史的に血統を無視している日本人にはついてけないものがあるなとも思った(日本は養子縁組の文化)。
あ、私って日本人じゃないんだ。ふーん。
投稿: うんこ | 2005.08.26 22:15
うんこの地方は儒教色濃かったの?夜這いとかの文化無かったの?ふーん。
投稿: bywordeth | 2005.08.26 22:27
断定的な書き方が釣りっぽい感じもしますが、ヨーロッパの王家で養子でつなげた例がありませんでしたっけ?
投稿: 通りすがり | 2005.08.26 22:43
>夜這いとかの文化無かったの?
そりゃ土民以下の愚民文化だわ。
投稿: うんこ | 2005.08.26 23:54
>そりゃ土民以下の愚民文化だわ。
貞操観念とか純血とか染み付いてなければ別に愚民でもないし300年前とか500年前から「血統」を重視してたかどうかの常識なんて、一部を除けばわからんでしょ。
そういえばローマ時代あたりは養子あけっこうあったようなことを読んだ記憶が。
投稿: bywordeth | 2005.08.27 01:28
>というのは、分家筋とか途中廃嫡子・養嗣子が出てわやくちゃになった家系のみでしょ
血統擬制の話は、もちろん相続争いになったとき、あるいは相続争いを回避する段階で、血統より優先される価値観がある、という話。
ですから、お家騒動には縁のない家系はそもそもこの議論に関係ないわけです。つまり相続問題が生じなければオタクの家系のようなケースも日本では全然珍しくはないでしょう。
ただし商家のように実務能力優先のところでは、必ずしも血統が最優先じゃないし、職人や相撲もそうですね。娘婿に後継がせたり、息子を差し置いて弟子や番頭に後継がせたり。
投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2005.08.27 01:34
主題の論文ですが、第一著者は横浜市立大学付属市民総合医療センター臓器移植科の齋藤和男先生(「たかお」ではなく)のようです。アメリカ癌学会の「Cancer」という論文誌の8月1日号に掲載されています。
投稿: ma | 2005.08.27 01:57
こういうのって、本当に自分の子を残したいという本能的なものなのか、それとも遺伝子というものを知ってしまったがゆえの感情なのか。
投稿: 自由の敵 | 2005.08.27 02:28
自身の存在証明に不安を持ってる場合は一応の気休めになるんじゃないでしょうか?
家庭なり業績なりで足跡を残している本人が精子銀行にどうのこうのと想いを巡らす度合いは少ないと思います。
日本の場合だと、周囲が血統的な正当性を必要としているかというと、実は御輿としての大義名分だけで良いと思うので、どこぞの貴統を貰い受けても、組織としての独立性が保てるなら組織及び要員としては別に構わないんじゃないと考えてるように思います。
投稿: トリル | 2005.08.27 03:14
この研究成果は、
・不治の病故のものなのか
・失われる能力ゆえのものなのか
で意味が違いそうですね。
それはそうと現代の日本農家が純潔血統嫡子相続主義だとするとそれはそれで興味深いです>うんこ
投稿: bywordeth | 2005.08.27 09:29
昔から「商家は養子で家が保つ」と言われてますからな。いまどきみたく商家&サラリーマン全盛期になれば、血統にこだわらなくても自然じゃないかと。
>純潔血統嫡子相続主義
おかげさまでみなさまのように好き勝手働けません。くそぅ。
投稿: うんこ | 2005.08.27 11:32
maさん、有益なコメントありがとうございます。勘違いの部分を修正し、いたいた情報を追記しました。
投稿: finalvent | 2005.08.27 13:10
度々すみません。齋藤先生の現在のご所属は「泌尿器・腎移植科」のようです。先日の臓器移植科というのは少し古い情報で、現在は泌尿器科と統合され、前述のようになっている様子です。
かえってお手数をかけてしまって申し訳ありません。
投稿: ma | 2005.08.30 03:46
maさん、こんにちは。いえ、正確な情報を記すための努力は惜しみません。今回のご指摘も感謝しています。
投稿: finalvent | 2005.08.30 08:26