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2005.08.08

インドにおける野良牛問題

 問題は、野良牛である。今世界の人々が注目しているのは、まさにこの問題だと言っても過言ではない。いや日本国内では九月一一日の衆院選挙のほうが重要だという意見もあるかもしれない。しかしここは世界を大局的に見る必要がある。BRICSを代表するインド。その首都ニューデリーの未来に立ちふさがっているのは、街に溢れる野良牛である。
 野良牛をどうしたらいいのか。それは依然大問題であるとともに複雑な問題でもある。日本の野良犬処分のようなわけにはいかない。日本人なら誰でも知っていることだが、インドの多くの州では野良牛を殺すことは法律によって禁止されている。
 現在ニューデリーには約四万頭の野良牛がいると推定されている。もちろん、その他の動物もいる。猿(その潜在的な危険生について別途エントリを起こしたい)、羊、犬、そして公園にはリスなど、仏陀の涅槃に集まったこの敬虔なる衆生はそこにずっと同じ衆生である人間と共存しているのである。だが、問題も起きる。まず、彼らと人間とでは交通ルールが違う。交通事故も起きる。もっとも私がコルカタで見た野良牛たちはきちんと交通ルールを守っていたと証言しよう。
 人間と野良牛とには、双方に共存を理解しえない勢力が存在する。人間と人間ですら共存は難しいのだからしかたがないことだとはいえ、今年に入って野良牛が人間を突き殺すという悲しむべき事件も起きた。裁判となり高裁判決も出た。
 野良牛の弁護側の反応については書類を見てないのでなんとも言えないのだが、ニューデリー高裁の判決は明快だった。市に対して野良牛の退去を命じたのである。なので、市としても野良牛を市街からの撤去に乗り出した。しかし、事は順調に進んでいない。撤去しても戻ってくるらしい。
 野良牛をどうしたらいいのか。今月に入って、斬新な展開があり、世界が注目した。ブロガーなら欠かさずワッチしているはずのエキサイト、世界びっくりニュースでもこの六日に”野良牛を捕まえた人に賞金 インド”(参照)はこう伝えている。


町を徘徊している野良牛を捕まえ、州が管理する収容所に連れてきた人に対して賞金2千ルピー(約5,140円)が支払われることになった。

 懸賞付きということだ。なお、ニュースのオリジナルは”Earn easy cash in your spare time!”(参照)である。
 BBCも大きく取り上げていた。”Cash bounty on stray Indian cows ”(参照)。ところで、記事を読んでいただくとわかると思うが、おカネが儲かる牛(cow)なので、cash cowといういう駄洒落のオチがあるのかと期待すると虚しい。
 以上、世界のニュースから現在の野良牛の深刻な状況が伝わってくるのだが、それにしてもなぜ? なぜ、かくも野良牛がいるのか? 昔からいたけど、それが近代化に伴って問題とされるようになったのか。
 先日のNHKラジオの話では、どうも真相はそうではないらしい。
 私が理解したところでは、問題の真相は牛乳と財投債のようだ。とはいえ財投債についてはこのエントリでは触れない。
 なぜ牛乳なのか。
 十分な放牧地を持たない零細な酪農業者が、市街で草を食わせてその場で牛乳を売る、という生産と販売のありかた、つまり広義の産業構造と福祉の構造が、一見野良牛問題に見える問題の背後にある。
 市当局としても郊外に放牧地を用意しているのだが、その費用やなんだかんだでこうした業者と牛の移転はうまくいってないとのこと。なにより、そうして解決できる頭数は五千頭くらいなので、全体的な解決にはなりそうにない。
 ふと思ったのだけど、野良牛を捕まえる賞金というのは零細酪農業者の援助金なのではないか。

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「雑記」カテゴリの記事

コメント

どうコメントせよと?W

finalventさんの気持ちもわかるような気もするが
どうリアクションするべきか少し困る。

投稿: nabe | 2005.08.08 18:15

どうコメントせよと?W

finalventさんの気持ちもわかるような気もするが
どうリアクションするべきか少し困る。

投稿: nabe | 2005.08.08 18:15

> どうコメントせよと?

ただ一言、重複してるよ、と。

投稿: (anonymous) | 2005.08.08 18:30

野良牛のゲップのメタンが温暖化を促進している、というエントリの伏線ですよ。刮目して待て。

投稿: (anonymous) | 2005.08.08 20:18

↑ あはは。

投稿: jaz | 2005.08.08 20:44

はじめてですが、野良牛の記事があんまり面白かったのでコメントします。私がインドをおとずれたのは既に13年も前でしたが、そのときでも「あのうろうろしてる牛を捕まえて食べたら、がりがりのインド人ももっと健康に太るだろうに」などと、西洋人が言っておりましたが、本当に街中にいっぱいですよ。最近、世界丸みえなどの情報バラエティーで野良牛をつかまえている映像をみたりしましたが、世界の人々が注目してるなんて半分おもしろニュースですね。しかし捕まえて撤去するのもいいことです。わたしは暴走した野良牛に突っ込まれそうになって凄く恐い目に遭いましたから。
すみません。雑談でした。

投稿: nudaveritas | 2005.08.08 21:28

現実逃避キタコレ

投稿: (anonymous) | 2005.08.08 22:07

先月デリーへいったときはクラクションをならすと一応どくのをみて、共存できてるなぁとおもったものですがそうですか共存できてないんですね。

投稿: 猿小玉 | 2005.08.09 01:28

野良牛が八百屋の野菜を食べようとして、
親父が必至に棒で追い払おうとしていた姿が
微笑ましかった、パハールガンジの夕暮れ。

投稿: チョロ | 2005.08.09 10:37

奴らは野良牛じゃねぇ、街なかで放牧されているんだ。
とだれかが言っていた。

田舎で飼われていた牛が、歳をとって役に立たなくなってきたら、
野に放つらしい、そしてそれが街へと集まってくるとも聞いたことがある。

どちらにせよ、デリーもカルカッタのように牛のいない街になるのでしょうか。

投稿: チョロ | 2005.08.09 10:48

牛が暴徒化して人を襲うという例が農場でもありました。以前テレビで見た救急再現番組(あ、犯罪だったかな? よく覚えてません。スミマセン^^;)の一部で、牛の群れの近くを散歩する時は気をつけてねというような警告付きで放送されたのですが、牛も集団になると怖いそうです。
でも、田舎道で牛が車の前を横切っていくのを見るのは楽しいですが♪ ドライバーは皆んなアイドリング状態で車を止めたまま牛が全員道路を渡り終わるのを待ってます(私も♪)。微笑ましい事でもあるので、危険さえ防げればインドでも牛と共存できそうな気がするのでけどね…。
牛だっていつかは歳を取って死んでいくわけですから、必要なのは記事中にあるような放牧できる土地か、産児制限への取り組みではないかなぁと思います。

投稿: jaz | 2005.08.09 17:37

数日前にブログを始めたばかりで勉強中です。これからも参考にさせて頂きます!頑張って下さいね。

投稿: sayaka | 2005.08.11 00:22

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» 野良牛 [鳥新聞]
大型犬を散歩させるご婦人を見かけると、金持ちだと思う時代ではないだろうが、野良牛を抱えているインドのことを考えると、「武士は食わねど高楊枝」という語を想起する。インド人は食わねど牛は育つ。 極東ブログ「インドにおける野良牛問題」によると、首... [続きを読む]

受信: 2005.08.11 01:09

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