« 財務省理財局はどうよ論についての雑談 | トップページ | 朝日新聞「虚偽メモ」事件に思う »

2005.08.31

喘息患者の脳は喘息を連想する言葉に反応する

 二十九日付で海外に出ていたニュースなのだが国内報道はあっただろうか。喘息についてのニュースで、喘息の患者というのは、喘息を連想させる特定の言葉を聞くとそれに脳が反応して、喘息発作の引き金になるようだ。読みやすいところでは、BBC”How emotions spark asthma attack ”(参照)がある。
 喘息の被験者に提示された言葉は、"wheeze"、"loneliness"、"curtains"で、wheezeが喘息のぜいぜい、lonelinessは孤独、curtainsはカーテン。wheezeに脳が反応したということ。最近はやりのfMRIを使った研究だ。
 日本語だと、wheezeに相当する言葉はなんだろうかと思うが、ぜいぜいという感じだろうか。呼吸ができないよぉ、くっ苦しい、ボンベはどこどこ…といった感じか。そう、私は小児喘息だったので、こうした問題はまるで他人事ではない。
 同じく小児喘息だった人や大人になって喘息を抱えている人となんとなくこの話題で話すことがあるのだが、どうも、わかるよね、というのがある。あーこの人、喘息持っているなぁという雰囲気がわかるのである。神経質とかひ弱なという感じとは違う、なんかある種の感じだ。ちょっと言い過ぎかもしれないけど、ある物事に対する切迫感の込め方になんかある、というのともちょっと違うのだが。
 こういう話は誤解されやすいかもしれないが、小林よしのりが小児喘息だったらしく、彼はその思い出を漫画のあちこちに書き散らしている。あの感じは、現在の政治漫画以前の東大一直線とかにも表現されていたような気がする。
 小林の話で身につまされたのは、彼の幼友達で同じく小児喘息だった子の話だ。それが直接の原因というわけでもないかもしれないが、死んだ。あの子が喘息で死んだのに自分は生きているというあの感じはわかるなと思う。なんとなく、私も、自分が心のどこかで不正に生きているような気がする(そりゃそーだろとかツッコミはなしね)。
 なぜあの苦しみがあり、そしてなぜそれを自分が克服したのか? 私の場合、内面では、ある時、ある意識の持ち方をがらっと変えたような感じがするのだが、小林もそうなのではないかと思う。映画「ブリキの太鼓」の最後で主人公オスカルが、ええい大人になろうと決心するシーンがあるがああいう感じだ。もっとも、喘息患者がそうした内面の決意でよくなるということが言いたいわけではない。むしろ、そうした感性はある結果なのだろうとも思う。
 BBCのニュースに戻ると研究者のこんな会話を引いている。


"We have always known that asthma and a patient's personality and emotions are very intrinsically bound up with each other.

"We do need further research into this."

For example, whether increasing the dose of medication might help to cover tough emotional times.


 今回の研究では、直接的に喘息を連想されるキーワードが重視されたが、研究者は、喘息患者の感情の持ち方に関心を持っている。もちろん、当面は、有効な治療方法を模索するという側面ではある。
 が、これもいろいろ思い出すことがある。たしか、吉本隆明の奥さんが喘息持ちで、吉本がそれを観察したエッセイを読んだことがあった。夫としては、あーくるなという感じがわかるのだそうだ。奥さんのほうもわかっていてそれを止められないのだろうな、と夫としての吉本は見ているというものだった。このあたりの話は、吉本ファンなら誰もがしっている奥さんからの吉本評である、「あんたの背中には悪魔の羽がばたたしている」というにもつながるように思う。そして、ちょっと言いづらいのだが、この感じはある種のエロスにもつながっているように思う。
 話が散漫だが、天理教を開いた中山ミキについて以前少し調べたことがあったのだが、今でも天理教では、たすけせきこむ、という表現をしている。ミキが喘息であったかどうかは違うのではないかと思うが、このたすけせきこむ、というのは、喘息の切迫感のような不思議な表現だなと思ったことがある。こういう心のあり方が人類には必要だったのではないかなと夢想することもある。喘息は多分に遺伝的な問題なわけだが、この遺伝が人類にどういう意味を持つのか、あるいはそういう問い方は違うのかもしれないが、心に引っかかっている。
 そういえば、喘息は悪い話ばかりではない。喘息患者はがんの死亡率が低いそうだ。先月のニュースなのでネットにはもうあまり残っていないが、”Cancer deaths lower among asthma, allergy patients ”(参照)という話があった。

One good thing about having asthma or hay fever, if such a thing can be said, is that it apparently reduces the overall risk of dying of cancer, compared with the odds for people with neither of these allergic conditions, according to a new report.

 このニュースを詳細に調べると、そう言えたものでないかなという感じもするが、ま、喘息にも少し良いこともあるかもねと思ってもいいかもしれない。

|

« 財務省理財局はどうよ論についての雑談 | トップページ | 朝日新聞「虚偽メモ」事件に思う »

「雑記」カテゴリの記事

コメント

どうも。

私はぜんそくではなくてアレルギー性皮膚炎と鼻炎を子供の頃に患っていましたが、なんか、いまとなっては、まぁ「トンデモ」になってしまいますが、「親の関心を引きつける、本能的な身体反応」だったんじゃないかと思っています。
大人になったら自然に治ると言われていて、実際そうなった訳ですが、finalvent氏が気持ちの持ち方で小児ぜんそくを乗り越えたような気がしているという部分で、ちょっと思い出してしまいました。
「ええい、大人になろう」ってところ、なんか分かる気がしました。

では。

投稿: ken | 2005.08.31 10:41

んー、自分の感覚としては、交感神経と副交感神経が切り替わった時とか、そういうきっかけがあったときに発作が起こる感じですね。
あと空気の問題。
煙系等の汚い空気がダメなのはもちろんのこと、異様に乾燥した空気、逆に湿りまくった空気も、吸うと発作が起きる。
なのでこの季節に雨でも降られると、かなりキツイ。
温泉もダメだし、だから風呂もなるべく温度の低い水で、さっと入る。

投稿: くれふ | 2005.08.31 13:40

たしか、クリシュナムルティも、喘息もちだったはず?
で、大人で喘息状態になると、神秘的な力もつくみたい?

今は、どうも、ワタシ自身の場合、
肝臓が疲れたり冷えたりすると、喘息になるのではと?

投稿: 野猫 | 2005.08.31 19:08

以前、ある事を考えていて急に不安になり息苦しくなって咳き込み、
いてもたってもいられない状態になった事がありますが
そういうのと似てる気がします。

投稿: kaze | 2005.08.31 20:53

喘息とがんの関係。
そういえば痛風もちも長生きが多いって言う話を聞いたことがあります。

>野猫さん
大人で喘息状態になると神秘的な力が、、

激しい呼吸を意識的にして生まれる瞬間を思い出すセラピーなどもありますよね。
ゆったりした呼吸同様、激しい呼吸にもいろいろな作用があるんでしょうね。
呼吸、おもしろい。


投稿: 蛸舟 | 2005.09.01 00:29

ひとつ上の人(kazeさん)へ
それは喘息というより過換気症候群とか過呼吸症候群と呼ばれるものじゃないかと思いますよ(違うかな……)。いちおう調べてみてください。

投稿: 通りすがり | 2005.09.01 00:31

>通りすがりさん

いや、「言葉に反応する」という部分が何となく似ているな、と。
って全然違うのでしょうけど。
とりあえず、お気遣い頂きましてありがとうございます。

投稿: kaze | 2005.09.01 01:02

友達のいないagapeは喘息ではないのかな?

投稿: でんすけ | 2005.09.01 07:29

泣きました。父を喘息で亡くし、私も喘息。
コントロールが悪くて医師を怒らせる。
看護婦は「あなたってA先生の前で上手に発作起こすのよね」と。「夫婦喧嘩すると上手に起こす人いるのよ」と言う。あれこれ言う気にもならない。どうしてかわからないけれど、どうしてもステロイドの吸入を使えない。苦しいのはイヤ。死にたいわけでもない。私が重責発作で死にかけたほんの数日前、大学時代の友人がくも膜下出血で死んだ。35歳。私と違って本当にすばらしい人だった。私は母親に虐待され続けた。結婚してやっと人並みの幸せ。でも、自分がつらくていつも夫に罪悪感みたいなものを持っている。今喘息は小康状態。でも、発作を起こすことも、治癒することも、私は怖い。喘息と名の付くものが怖い。治りたいと言うよりも、忘れたい。

投稿: つらい | 2005.11.10 17:55

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 喘息患者の脳は喘息を連想する言葉に反応する:

» [Web][レビュー][雑記]喘息の記事を読み、『IT』、『幸福否定の構造』、肉体の棘を思った [夏のひこうき雲]
 昼の休憩時間に[http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2005/08/post_49cf.html:title=極東ブログ: 喘息患者の脳は喘息を連想する言葉に反応する]を読みました。エントリのコメント欄に少し書こうと思っていたところ、長くなり始めたのでここに書きます。  その前に少しお断りをしておきます。  少なくとももう少し一般的な言葉を用いるのでなければ、あまり理解されやすい話でもないと思うので、その点は読者に申し訳なく思いま... [続きを読む]

受信: 2005.08.31 13:10

» [吹毛]煙草と刺客 [oooooh日記]
こちら([http://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C478131471/E20050829215746/index.html:title=”「喫煙規制は日本のムラ社会的な異端排除の論理だ」(千葉大教授、広井良典) ”])を読んでなんだかなぁと思ったので書いてみます。日経は読んでないんであんま強くいえないけど。でも異端排除=少数派排除なんてニッポンのスタンダードじゃん。なして煙草?とか思うけどな。 ま、ともかく。 受動喫煙の防止が義務づけた(努力... [続きを読む]

受信: 2005.08.31 14:27

» アレルギー患者の憂鬱 [猫は勘定にいれません]
今日はものすごく辛気臭い話を書きます。申し訳ない。 読売新聞サイトの「大手小町」で アトピーの子どもと死んでしまいたい。誰も助けてくれない。 というトピックを見て身につまされてしまいました。かくいう自分もアトピーとは生まれた時から付き合っています。幸い症状はたいしたことがなく、軟膏と内服薬でほぼ症状は抑えられている…と思います。たまにコンタクト入れて鏡を観たときがっかりす�... [続きを読む]

受信: 2005.09.01 07:52

» ぜんそく [TotoroWiki (PukiWiki/TrackBack 0.3)]
TotoroWiki ぜんそく(喘息) ■宮川医院■喘息死について■ 読み物 極東ブログ: 喘息患者の脳は喘息を連想する言葉に反応する 極東ブログ: スポーツ選手にも喘息患者が多いらしい [続きを読む]

受信: 2007.11.26 16:23

« 財務省理財局はどうよ論についての雑談 | トップページ | 朝日新聞「虚偽メモ」事件に思う »