不味そうな中国素材をどうブログ風に仕立てるか
話は米国防総省が一九日に議会に提出した中国軍に関する年次報告書のネタだが、さてこれをブログではどう料理したものか。
新聞の社説では読売新聞だけが扱っていた。”[中国軍事力]「『脅威』を浮き彫りにした米報告」”(参照)より。
軍拡路線をひた走る中国の脅威を浮き彫りにする内容だ。
米国防総省が中国軍事力に関する年次報告書を発表した。
報告書は、「急速な軍近代化が続けば、周辺地域の確実な脅威になる」と結論づけている。昨年までにはなかった、踏み込んだ表現だ。米国の強い危機感を示す内容と言える。
とりあえずはそうことでもある。そして大衆紙の社説としてはこんなところかなという線の話が続く。
ニュースとしては朝日新聞”中国軍「確かな脅威」に 米国防総省が年次報告書”(参照)が一見詳しい。
公表されている05年の国防予算は299億ドル(約3兆3800億円)だが、実際には2~3倍で、最大900億ドルにものぼるとして、軍事費の透明性の欠如を批判した。
報告書は、中国軍が台湾の対岸に短距離弾道ミサイル650~730基を配備し、年間100基のペースで増強していると指摘。その上で「中国の経済成長、外交上の影響力の拡大、軍事力の増強などによって、台湾海峡をはさんだ(中台の)軍事均衡は中国に傾きつつある」と警告。
読んでいてあれれ?と思った。ヌケがある。読売新聞記事”中国軍事費は公表の2~3倍、周辺脅威に…米国防総省”(参照)では明記されている。
軍事力の近代化では、特に空海軍力について詳細に報告。このうち、台湾対岸に配備している短距離弾道ミサイルは、650~730基に達すると明記。昨年の報告書で指摘した「500基以上」を大きく上回り、年間100基以上の増強で、射程や精度の向上も図られているとした。
また、短距離弾道ミサイルは移動式だと指摘し、ミサイル戦力の残存能力が高まった点に注目している。
単純な話、核弾頭ミサイルとかあっても、移動式でなければ、最初に叩いてしまえばいい。問題は、それができなくなったので、逆に中国が台湾を叩ける状態になったということでもある。それと、今後図に乗って、米国本土を移動式ミサイルや原潜で射程におさめることができるかということでもある。
そこまでするかなぁ、中国がという印象はある。エリートたちがそんな儲けにもならない突っ走りをするだろうか。ただ、大衆的な意識はどこの国でも同じだが、突っ走るものだ。ちょっとひどいことを言うと、中国人にしてみると日本人はもともと東洋鬼と蔑視の対象であり(このあたり朝鮮も真似っ子)、かつての連合国幻想で反日構図では親米的な素振りを見せる。だけど、日本の敗戦から中国が学ぶべきは黄色人種というものへの白人の強烈な敵意だと思うのだがな。
いずれにせよ、台湾の軍事バランス上、米国も対処が必要になり、愚かしい結果になると思うのだが、案外、冷戦時の対ソ戦略を考えると、米国としては長期的にはソ連型の自滅へ中国を誘導したいのかもしれない。
今回の報告書発表の一連で、いくつか変わった流れがあった。まず、中国がけっこうメディア戦略に乗り出してきていること。日経”中国、米に異例の抗議・国防総省報告に反発”(参照)からも伺える。
中国の楊外務次官は20日、米国のセドニー臨時代理大使を外務省に呼び、中国軍の近代化に警告を発した米国防総省の報告書について抗議した。
中国外務省は同日、ウェブサイトで抗議内容を詳細に紹介した。新華社や華僑向け通信社の中国新聞社も速報した。
問題は、しかし、そうしたぐぐればわかる程度の表層的な情報戦略ではなく、ロビー活動のほうだろう。中国の台頭につれて米議会へのロビーが活発になってきている。対日本の場合は、窓口がちょっととろいのでしばらくしてからなんかキャンペーンが始まるのではないか。ちなみに、こんなしょぼいブログにも宣撫班的な活動が出てくる気配も感じる。
もう一点は、ロビー活動にも関連しているが、今回の報告書は国防総省と国務省でもめたようだ。そのあたりは中国様寄りの朝日新聞”中国軍は「脅威」か 報告書巡り米政府内で攻防”(参照)が詳しい。もっとも。ライスの訪中の時期を避けたというのが遅れた最大の理由ではあろうが。
さて、このネタをどうブログ風に仕立てるか、と。
中国問題の基本は内紛である。中国人がなんでそんなに権力闘争が好きなのかは博打好きと同じで国民性かもしれないしそうでもないのかもしれない。システム的には他に政治のシステムを持ってないという根本的な後進性ではあろう。が、いずれにせよ、軍部を完全に掌握しているとは思えない胡錦濤側としては、カネをやるしかないでしょ的状況があるだろう。基本構図としては資本主義からずっこけた部分の人々への国家的な福利というか依怙贔屓ドブ捨て投資でもあるのだろう。つまり、実際にはあまり戦略的な軍事投資にはまだ現状なってないのではないか。
それと、これも中国問題の基本であるが、まずは脅せ脅せである。最近は上海人まで脅しているようだ。稚拙な戦略のようだが、けっこう台湾にも効いてきているようなので、この路線で行けと。このあたりの脅しは、日本にも向けられてきているのだが、私としては、台湾人も日本人もそんな脅しに最終的には乗らないと思う。そのくらいのキ※タマはあるが、問題はそれに見合う狡猾さがあるかなぁ。
ってなところでいかが。
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コメント
>米国としては長期的にはソ連型の自滅へ中国を誘導したいのかもしれない
得意技かも。
投稿: コンドリーサ | 2005.07.21 22:11
そこで MD ですよ。
いま、DoD が作った件の年次報告書を読んでるんですが、なかなかボリュームがあるので、ちょっと時間を食いそうです。
その中国、Su-27SK のライセンス生産を終わりにしたとか、ロシアが Su-30MK2/MK3 の追加分を売り込もうとして失敗こいたらしいとか、なんか妙な話がチラチラと聞こえてきています。
投稿: 井上@kojii.net | 2005.07.21 22:56
自滅しても中国様はしぶといんだろうなぁ、なんていうようなことを↓を読んで考えた。
http://home.hiroshima-u.ac.jp/cato/jinkou996.html
投稿: synonymous | 2005.07.22 12:17