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2005.07.13

六か国協議再開は期待薄だがその先は

 六か国協議についてはあまり気の進まない話題だが、気が進まないで済むことでもないし、ニューヨーク・タイムズのクリストフのコラムが面白いと言えば面白いのでそのあたりにひっかけて少し書いてみよう。
 その前に六か国協議だが、私の見渡せるブログだと毎度のことながら、カワセミさんの「対北朝鮮政策における一提言」「対北朝鮮問題に関する提言(補足)」がわかりやすいといえばわかりやすい。氏の見解に同意というわけではないが、次の表現は六か国協議の重要な側面をうまくついていると思う。


 基本的に私の意見は以前のエントリと同じで、6ヶ国協議は破綻しているという考えだ。外交交渉の場としては、手を尽くしたが失敗したという形を整えるためのものと考えている。

 たしかにそういう印象を受ける。そして、この先にこう続くのも同意しやすい(が同意はしない)。

そして米国の政権内で路線対立があるという事は、日本が軍事的な内容も含めた実質的な負担を負うという決意も含めて意見を表明すれば、その路線決定にかなりの影響力があるという事も示している。

 前提となるのは、米政権内に対立路線があるのかという点で、ある程度米国という国を見ている人間なら、常識的にそりゃあるでしょと言いたいところだが、私はこの点ではためらう。軍事というのはある合理性をもっており、米国は基本的に軍事の合理性においてはそれほど外すことがないと考えるからだ。もっともそんなことを言おうものなら、イラク戦の失態はどうかと突っ込まれそうだが、まさにあの失態こそその合理性の無視でもあった。
 そのあたりの亀裂が北朝鮮政策にも反映しているのか、というふうにも切り分けられるのだが、よくわからない。私はライスを買いかぶりしているのかもしれないが、なにか裏があるようにも感じる。
 カワセミさんの指摘でもう一点、このあたりの国際常識を日本のジャーナリズムが共有してくれればなと思うのは、これだ。

 クリントン政権の時の失敗でも分かるが、通常兵器に大きく劣る北朝鮮が核カードを欲しているのは切実感がある。これはむしろ米国のような軍事大国が理解し辛いことかもしれない。あのような途上国は、核さえ持てば日頃うだつのあがらない状況を大きく改善できると考えるものなのだ。

 それはイラクでもそうだし、ずばり言ってしまえば、イラク戦開戦のときこそこそと逃げ回っていた金正日は核宣言をしたことで、少し安心しているのだ。そのあたりの心理はなかなか現代日本人にはわからないし、そして、やや言い過ぎのきらいはあるが、金正日のこの心理の延長には韓国の国家的な大衆心理もある。中国も日本も恐いので核が欲しいという幻想があるのだ。日本の左翼陣営にもかつてのソ連の核への親和性を思うとそうした思いを共有しているのかも知れない。「主体思想」というのはそういうことなのだ。
 話を冒頭で触れたニューヨーク・タイムズのクリストフのコラムに戻すが、該当のコラムは”Behind Enemy Lines”(参照)だ。クリストフは、今月九日からアーサー・サルツバーガー(Arthur Sulzberger)ニューヨークタイムズ会長のお供という名目で(でないと入国禁止状態)、北朝鮮を訪問しており、副主席や外務大臣(でいいのか)とも直接対談してその内容を掲載している。ちなみにこのあたりのサワリが、夏の爽快感をもたらしている。

General Li said that if the U.S. launched a surgical strike, the result "will be all-out war." I asked whether that meant North Korea would use nuclear weapons (most likely against Japan). He answered grimly, "I said, 'We will use all means.' "

 単純に読めば、米国がイラク攻撃をしたように、直接的に北朝鮮に攻撃するなら、日本に核弾頭をお見舞いしてやるぜということで、ま、毎度の話でもある。ただ、このあたり、韓国とかには別のコノテーションとして伝わるのだろう。これにつられてクリストフはこう書いて締めるあたりが、民主党的な与太だよお前さん、という感じはする。

So don't let the welcome resumption of the six-party talks distract us from the reality: Mr. Bush's refusal to engage North Korea directly is making the peninsula steadily more dangerous. More than at any time since the Cuban missile crisis of 1962, we are on a collision course with a nuclear power.

 洒落はさておき、問題は、端的にいえば、六か国協議がナンセンスという以上に危険な時間稼ぎになっているという点だ。それは、そうなのだろう。

Mr. Bush is being suckered. Those talks are unlikely to get anywhere, and they simply give the North time to add to its nuclear capacity.

Li Chan Bok, a leading general in the North Korean Army, made it clear that even as the six-party talks staggered on, his country would add to its nuclear arsenal.


 問題は、私の見るところでは、要するに核の拡散ということだと思う。

Kenneth Lieberthal, who ran Asian affairs for a time in the Clinton White House, put it this way: "If they get those two sites up, that then creates the potential for them becoming the proliferation capital of the world."

 北朝鮮がプルトニウム胴元になるのだろう。
 率直に言うのだが、日本の左翼や中国様やその他の愉快な仲間たちは、北朝鮮にも平和的な核利用があっていいだろう言い出すのではないか。しかし、それを是認するのが危険なのだ。クリストフが言うように、「その手に乗るな(Don't bet on that.)」ではある。

Officials insist that the new reactors are intended solely to provide energy for civilian purposes - and that in any case, North Korea will never transfer nuclear materials abroad.

Don't bet on that. If Pyongyang gets hundreds of weapons by using the new reactors, there will be an unacceptable risk of plutonium's being peddled for cash.


 話を端折るが、だから、というわけで、クリストフは米国が二か国直接対話に持ち込めというふうに展開していく。どっかで聞いた話だよなとは思う(ケリー大統領候補のあれだよ)。
 私も甘ちゃんかもしれないが、こうしたクリストフのフカシの背後で、実際には北朝鮮と米国の二か国のチャネルは動いているようでもあり、なんとなくだが、本音のところでは金さんが恐いのは中国様かも助けてくれブッシュぅぅというスジが読めないこともない。ま、そのスジで推す気はさらさらないが。
 「極東ブログ: NPTの終わり?」(参照)で日本版ニューズウィーク国際版編集長ザカリアのフカシを取り上げたが、ニューヨーク・タイムズといい、メディア攻勢で北朝鮮の体制転換をぷくぷく吹いているのは、中国へのメッセージというだけのことかもしれない。確かに、朝日新聞とかが泡吹いて、六か国協議の正否は米国と北朝鮮にありと中国様をかばうわけだが、北朝鮮の命運は中国の手の元にある。もともとも北朝鮮は米国の対中国戦略のための恰好のダミーでしかない。そのあたり、中国様もわからないではないので、やっぱここは金さん潰しておくほうが儲け儲けという転換があるかどうかということだ。
 なんとなく考えると、そのほうが儲けのようにも思うが、中国様はがんと動かない。江・フランケンシュタイン・沢民が頑張っているからというスジだけでもないだろう。なんか「お前さんこと陰謀論」とかまた言われそうだが、中国様としても内政を弾圧するためにも米国という敵国が必要なのではないか、まだまだ、当分。

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コメント

ふーん。
金さん潰さないで囲っておくほうが儲け儲けなんじゃないかと思うのですが。戦争また戦争で出費重なりまくりのアメリカと、自滅と紙一重の北が話し合いたい内容って何よ、という私の推測に過ぎませんけど。
先日、北京で軍事関係の展覧会があり、その模様を少しだけウェブで覗いていて今更ながらに感じたのは、中国とアメリカってやっぱり仲いいよねってこと。プラット・フォーム用の米製ロボットが報道されたのはそんなに昔のことでもないのに、すでに中国の国産品が製造されてるのって、世間の報道と随分違った印象で何となくあほらしいと感じました。
で、アメリカと中国の意図はさておいても、六カ国協議は再開に向けてとりあえずレールにのせとかなきゃね、っていうか、イランとEUだって粘り強く交渉してるんだし。時間かけて頑張って、って思ってます。

投稿: jaz | 2005.07.13 15:45

中国の行動原理の中核はまさに「オレ流」な訳で、バルカン紛争時にもアルバニアが台湾と国交があるというだけで国連安保理の行動を阻止した実績がありますわな。
つまり基本的に世界平和や紛争の防止には一切興味が無く、核拡散防止については「パンツが履けなくても核兵器!」で突っ走った国ですから、お笑い草だと思っているでしょう(笑
実際、中国こそ大量破壊兵器やミサイルの「技術交換所」を60年代から延々と主催して来た訳で、まさに毛沢東流の「第三世界の逆襲」です。

こういった行動原理の国をいまだに「平和勢力」と慕い、アメリカを無条件で「傲慢単独行動主義」となじるNHKはじめとするサヨクな皆様というのは、かなりキモいと言わざるを得ません。
(北朝鮮の核武装権を守れ!はサヨク過激派の重要なスローガンです)

それはさておきアメリカ最大の誤算は「中国も北朝鮮の核武装は嫌がるはず」という思い込みにあるのでは無いでしょうか。
冷静に考えれば、朝鮮製ミサイルの製造が人民解放軍傘下工場からの部品供給無しに行えるとは考えられません。つまり北朝鮮は人民解放軍の代理店を営業していると言って良いでしょう。そしてこれは平壌が中南海の指示を守る事を必ずしも意味しません。
ぶっちゃけ、人民解放軍サイドとしては「日米を狙う核ミサイルは良いミサイル」と思うでしょうし、平壌がガラスになろうとも東京を破壊してくれれば願ったりかなったりである、と考えるでしょう。日米の敵は多い程良い、という事ですね。
それに中南海が百%同意はしないでしょうが、まさか人民解放軍の分裂を望むはずも無く、何かしているフリをして時間稼ぎに励んでいる、という事では無いでしょうか。

韓国も同様に「日本を狙う核ミサイルは良いミサイル」という心理が、韓国国民世論に広く存在する事は良く知られた事実です。

結論から言うと
「中国としてはアメリカが同盟国日本を攻撃する北朝鮮の養分補給源になってくれると嬉しい」
(日米安保有害論が説得力を持つ)
(ボーナスポイントとして「朝鮮半島からの米撤退」も得たらもっと嬉しい)
「韓国としては(ノムヒョン政権はとりわけ)北の核開発破棄とバーターで米撤退なら、後に隠れて核開発も進められるので、統一後は核大国として対日本で優位に立てる」
(おまけに「祖国統一の大偉人」の尊称も極めて魅力的だ)
「ロシアとしては大きな利害関係は無いが、大量難民発生や米衛星国化を防げるのであれば北朝鮮の核武装もそれほど問題ではない」
(中国とも利害が一致するが中央アジア核武装だけが問題である)

でアメリカはというと
「実は死活的利害関係は無いが、一応西太平洋の覇権国としてバックれる訳にもいかない」
からやってますが、実際には打つ手無しでしょう。細川バカ殿が逃亡せずにクリントンの爆撃を支持していれば・・・あぁ(嘆

でも一番悪いのは日本なんですよね。
「こーなったら核武装するかもよ」というポーズさえ見せないのだから、中南海にしてみれば高枕で寝ていられるというもの。韓国ノムタン政権にしても同様。

投稿: ぺパロニ | 2005.07.13 17:19

引用恐縮です。

軍事の論理ですが、米国は軍事的に非合理な政治的選択をしないというだけで、政治の延長に軍事があるという順序は変わらないでしょう。そして政治の論理となると、例えばアチソン声明などは今でも変な解釈をする日本人(日本に限らないが)もいますが、民主主義国の伝統として一政治家の意見が絶対の拘束を持つというものでもないです。米国に関して言えば大統領の発言こそが重要でしょうね。そしてその意見は大筋そのまま解釈すべきであり、それを転換するには国内的に説明責任が発生するという、当たり前の話があるだけなのですがこの付近の事も世間での扱われ方は・・・・もちろん6ヶ国協議の破綻は理由に成り得ます。本当にするかどうかは迷っているのでしょう。

またイラクに関しては、米国内の政治的論争を見ると、放置することのリスクと比較考量して、容認可能な範囲のリスクと判断して実行したという経緯は明らかなように思います。現在問題なくてもフセインとその後継者である息子(これも重要)とは対決コースしかないと。なら弱体化している今のうちが相対的にリスクは少ないという論理でしょうか。その意味で北朝鮮は容認可能なリスクではないでしょう。問題は韓国です。そして米韓同盟を切るという選択は、軍事の論理では可能でも政治の論理では無いように思えます。

投稿: カワセミ | 2005.07.13 23:41

金正男がせっかくわざわざ来たんだ・・
六カ国成功させよう。
みんなそう思っている。
アメリカもそう思っている。
イラクで金を食いすぎ、利益もないだろう。バグダッドはバビロニアだ。支配できる見込みはない。虚勢を張るだけだ。
フセイン一家のことで、国際世論からも総スカンだ。捏造だからだ。
よって六カ国協議はうまくいく。いかないことのほうがおかしい。

投稿: ゛゛ | 2005.07.22 00:59

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