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2005.07.05

同じ遺伝子の双子が違うわけ

 先日トリビアの泉で、双子の女性の男性趣味(見た目)は同じかというくだらないネタがあったが笑ってナンボなんなでくだらないというのも野暮だし、こりゃ一致するでしょとういう選択限定だったが、それでも後から考えると、ヤラセとまでは言えないにせよこの誘導を排除しても、意外に一致してんじゃないのかとも思った。顔の好みと遺伝子的な関連はゾンディ・テストといったろくでもない洒落を混ぜるまでもなく単にわからないといったもので、基本的にまだ議論の条件もできていない。
 が、一卵性双生児は同一のゲノムを持つのになぜ身体的に違った点があるのかとなると、よくわかっていないのレベルが異なる。と、書くと失笑される向きもあろうが、ま、一般的にはその問いでいいだろうし、専門的にも突き詰めればよくわかっていない。
 という背景もあって、五日付けニューヨーク・タイムズ”Explaining Differences in Twins”(参照)は興味深い話だった。


Identical twins possess exactly the same set of genes. Yet as they grow older, they may begin to display subtle differences.

 一卵性双生児とはいえ後年は異なる。一応、生活環境が変われば違うでしょくらいに一応理解されてはいるのだが、遺伝子学的な研究が進んでいる。

But a whole new level of explanation has been opened up by a genetic survey showing that identical twins, as they grow older, differ increasingly in what is known as their epigenome. The term refers to natural chemical modifications that occur in a person's genome shortly after conception and that act on a gene like a gas pedal or a brake, marking it for higher or lower activity.

 というわけで、キーワードは「エピゲノム(epigenome)」である。
 同じ遺伝子でも成長するにつれ、その発現のあり方が変わるというのだ。
 ま、そんなの常識でしょというのもあろうが、曖昧な環境適用という説明よりは、より遺伝子学的な説明の可能性が開けてきたわけだ。
 科学的には、ヒストンのメチル化(参照)とアセチル化(参照)が鍵ということで、そのあたりは別段この分野の科学者には、ふーんといったものだろう。が、それでも、この分野、つまり、エピジェネティクス(参照)がポストゲノムの話題なのだろうなとは思う。
 専門的にはその具体性のほうに関心が移るわけだが、ニューヨーク・タイムズなどを読む普通の教養人としてはそこまではあまり突っ込まない。もっと一般的になぜこの変容が起きるかというのは、こんな説明になる。

There are two possible explanations for Dr. Esteller's findings. One is simply the well- known fact that epigenetic marks are lost as people get older. Because the marks are removed randomly, they would be expected to occur differently in two members of a twin pair.

A second possible explanation is that personal experiences and elements in the environment - including toxic agents like tobacco smoke - feed back onto the genome by changing the pattern of epigenetic marks.


 一つは、歳を取ればエピジェネティクス的な要因は増えるものだということ、もう一つは有害物質などで遺伝子が傷つくということ。
 しかし、それじゃ、いわゆる老化の酸化学説(by Denham Harman)みたいなもので、なんだかなという感じはする。
 というわけで、このあたりのポスト・ゲノム研究の動向と一般社会での理解の枠組みというのがうまく噛み合ってこない。
 それと、ちょっと気になるのだが、雑駁すぎるがメチル化は病気などにもいろいろ関わるわけで、このあたりなんか間違いがあると、あるいは誘導があると、ヘンテコな話題が世間に沸騰するかもしれないなとは思う。

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「環境」カテゴリの記事

コメント

同じ設計図で、同じ職人さんが同時に作ったらさて同じ建物になるかしら?
という話なんですかね。

それとも、同じ建物(完成済み)だったんだけど、住んでる人たちが違ったんだよ、的な展開なのかな。

つーか。そもそも遺伝子がどの程度、身体条件に作用するのかを調べないと、砂上の空論になってしまうような気がするんですが。

投稿: 紅玉石 | 2005.07.08 18:53

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» エピジェネティックというよりも [ある大学院生の日記]
元ネタは今日の極東ブログ 同じ遺伝子の双子が違うのはエピジェネティックというより [続きを読む]

受信: 2005.07.05 23:08

» [weblog]同じ遺伝子の双子が違うわけ [花は朽ちなし、死人に口無し]
またfinalventネタなわけだが。いくら双子でも何もかも一緒というわけにはいかない。いくら遺伝子が一緒でも二対の遺伝子は[http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%9F%E7%B2%92%E5%AD%90:title=フェルミ粒子]の集まりなわけで、左右に並んでいたとしても右と左の違いはあるわけだ。例え統計的にランダムな配置をしたとしても[http://gc.sfc.keio.ac.jp/class/2004_... [続きを読む]

受信: 2005.07.06 05:24

» [diary][web]同じ遺伝子の双子が違うわけ [Knock It Out!]
極東ブログ経由 一卵性双生児は同一の遺伝子を有しているのに、完全に同一とならないのはなぜか?人間のレベルでは様々な要因に影響され非常に複雑であるため、そして遺伝子決定論的な空気を消すために、後天的要素によって支配されているからだと言うことで一般的には落ち着くと思います。 で、極東ブログで紹介されたエピジェネティック(epigenetic)という要因も、ジェネティック(genetic)以外の要因という以上に具体的な現象を詳らかに出来ていないんですよね。もちろん、ヒストンのメチル化とかアセチル化とかはそ... [続きを読む]

受信: 2005.07.07 22:20

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