メイドさんの話
メイドさんの話、というと、「え、マジっすか?」と、はてなブックマークされそうな懸念もあるかもだが(ないよ)、このエントリの話のメイドは、実際のメイドさん、つまり、女中さんということだが、「女中」と書いた途端にATOKが「注意:不快用語等」とコーションを出してきた。で、どうせいと? と変換候補を選ぶと、「お手伝いさん」だそうだ。なるほどね。ついでに気になるのだが、「メイド」じゃなくて「メード」だったんじゃないかと字引を確認するとそのようだ。しかし、ここでは時流に合わせて「メイド」としておこう。さらにずっこけるが、「メール」を「メイル」とかワザトラに書く人が世の中にはいるが、英語の発音は「メール」。
先日朝のラジオでシンガポール日本人会のかたがシンガポールの外国人メイド事情を語っていて面白かった。
伝え聞くファクツだが、シンガーポールでは外国人のメイドが十五万人。その外国は、というと、マレーシア、フィリピン、タイ、インドネシア、ミャンマー、スリランカといったところだが、フィリピンとインドネシアの二国で九〇%を占めるらしい。
出身国によって賃金が違う傾向があり、月額で、フィリピン人が三二〇ドル、インドネシア人が二八〇ドルとのこと。フィリピン人が高いのは英語ができるせいらしい。が、家庭的で穏やかなインドネシア人のメイドの人気も高くなっているそうだ。
話を聞いていると、総じてメイドの出費は月額二万円というので、あれ?と思って、これってシンガポールドルかと、最近インプルメントされたグーグルの通貨計算機能を使ってみると、"300 SGD in Yen"のアンサーは"300 Singapore dollars = 20 233.7975 Japanese yen"と出る。なるほど、二万円だから、話は、シンガポールドルということのようだ。
しかし月額二万円で済むわけでもないと話は続く。これに渡航費、食費、医療費が上乗せなり、総じて月額で割ると七万円ということらしい。ふと日本だとどうかなと思うのだが、「じゃ、月額七万円で」とはいかないだろう。住み込みなので専用の部屋が必要になる。住宅事情最悪の日本ではそこでまず無理か。
メイドの規制もかなりしっかりしているようだ。メイド税みたいなものもあるらしい。外国人メイドは二年に一度は帰省させなくてはいけないという規制もある。
メイドの側も条件がある。八年の義務教育を受けていること、二十三歳以上、さらに英語で行う試験もあり、買い物の計算、時計の読み方、安全について(交通安全なども)が試されるとのこと。
私が話を聞いていて、おやっと思ったのは、六か月に一度血液検査が義務づけられていることだ。妊娠とエイズが重視されているらしい。関連するのか、外国人メイドは、シンガポール永住権のある人との結婚は禁止されているらしく、違反は本国送還というのだが、私はもうちょっとその実態に関心を持った。
現状、シンガポールでは全世帯百万戸の一〇%がメイドを雇っているとのこと。多いと見るべきなのだろう。
話はそんなところだが、いろいろ考えさせられた。
なにか思い出すなと思ったら、香港に旅行していたときだが、香港島の広場で夕方ぼんやりしていると、わしわしフィリピン女性がストリートに集まりだした。なんだろと思ったら、メイドの集会らしいというのだ。すごい賑わいだった。一〇年も前の話だが現在はどうだろう。外国人メイドが生活に浸透するということは、こういう集会も必要になるということなのだろう。
もう一つこれも旅だが、バリのウブドに半月ステイしたことがあるのだが、コテージを借りたらメイド付きだった。朝食の用意はしてくれるし、洗濯はしてくれる。それほど頻繁に話をするということでもなかったが、心根の優しげな少女で、一度だったか、洗濯を頼んだジーンズはどこと訊くと、まだ乾いてないのと深刻に私の眼を見つめて話かけてきて、ちょっとくらっときた。やべ。いやいやなんもなかったですよ。
日本に女中さんがそれほど見あたらなくなったのはいつのことだっただろう? 私の記憶にある昭和三〇年代の風景でもまだ米人宅で働く日本人メイドさんとかも見かけたものだったが。
シンガポールでメイドさんが必要になるのは、六割の女性の社会進出とも関係するだろうが、日本社会もいずれそうなるとして、さて、このシャドーワークの部分に外国人メイドが入ってくるのだろうか。という問い以前に、この問題は、社会全体がそうした人を受け入れる体制の変化も伴うものなのだろう。
それでも子供のいなくなった部屋にメイドを住まわせる富裕な老人というのを、近未来によく見かけるようになるようにも思う。
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コメント
私がまだ入社して間がないころ、昭和30年くらいであったが、課長社宅には女中部屋があり、古参課長さんは街中に二号サンを置いて一杯飲み屋をやらせていた。会社からの帰りはそこで一杯ゆっくりと……。
今では考えられないが、私も妾を持ちたいと励んだものである。
投稿: to-inoue | 2005.07.29 17:59
去年のことなのですが、香港島に旅行に行った時に、街角でフィリピン系のメイドさんの集団に出会ったことがあります。ただ、集会ではありませんでした。
現地に住んでいる日本人の方に事情を聞くと、香港ではフィリピン系のメイドは多いものの、社会保障という面ではしっかりしておらず、勤務時間外では雇われている家から追い出されることがよくあるらしいのです。それでメイドさんは、仕方がないから、街角の主要な場所に集まって野宿するとのこと。その理由としては、時間つぶしということもありますし、一人でいると危険だから集団で集まっているとのことで、10-30人ほどのグループが、ゴザを引いて、トランプしたり、おしゃべりしたり、あるいはダンスをしたりしている風景をよく目にしました。集まる場所としては明るいところ&トイレがあるところだそうで、公共施設の近くや、マクドナルドの近くでよく見かけるとのことです。
エントリーとは関係がありませんが、香港のメイドさんのお話で思い出したので書いてしまいました。
投稿: にふ | 2005.07.30 01:46
麻布十番あたりをぷらぷら歩いていると、「MAID SERVICE」とか書いた看板がかかっていたりしますよ。雇われているのが日本人か外人かは知りませんけれど、ニーズのあるところでは営業されているようです。
文豪の小説のように、妻をとるか妾をとるかで悩むような社会がいいのやら、どうなのやら。
投稿: yakumo | 2005.07.30 02:33
家事ロボの方が普及しそう
投稿: | 2005.07.30 03:48
或いはホームヘルパーさんが主流かも。介護保険制度の利用条件が今ひとつ曖昧で、公的サービスとは言うものの現場では利用者との1対1なので、仕事熱心なヘルパーさんほどお手伝いさんになってしまう傾向があるようです。また、利用者さんで富裕な方は、保険制度の利用に抜け目がなく、主張が多くなる傾向があり、業者側は少しでも多くのサービスを提供したい。いろいろな意味で、ホントに富裕な老人が増えることを願います。
投稿: UG35 | 2005.07.30 10:26
うちのおじいちゃんは生前、市がやっていたシルバー人材センターからお手伝いさんを10年近く頼んでいました。週に3日、数時間という物でした。小さいながらも2世帯住宅で2階部分が空いていましたが住み込みというのは考えてもいなかったと思います。住宅事情もあるだろうけど日本では住み込みのメイドさんというのは難しいんじゃないでしょうかね?
投稿: lba | 2005.07.30 12:44
>家事ロボの方が普及しそう
確かにロボ耳とコードと箒と白レオタード
がメイドさんにオプションでついてきたら
一部の人々が狂喜乱舞することは
間違いありませんね…勿論私も含めて(爆
えっ、家事ロボは人間型ではない!?
これまた失礼致しました(^^;
私はlbaさんと同意見で、将来的には
一人暮らしサポートは宅配サービスと
諸々のデイケアが主を締め、
諸外国のようなメイドサービスは極一部の
富裕層以外中々難しそうな感じがします…。
ロマンシズム的にはメイドさんの
いる生活を心より望みたいところですが…。
投稿: kagami | 2005.07.30 13:43
あたしのじいちゃんは、同業者の妾をお手伝いさんに雇ってました。通いだったけど。
投稿: synonymous | 2005.07.30 19:43
シンガポールにいたときは週末にインドネシア系の人たちが集まっている
姿をみましたね。
で、振り返って我が国では医療介護要員としてお願いしたいですね。
私の親父なんか病院ではなく、自宅での介護を望んでいるけどもこっちが
100%面倒みていられないよ。
そうなると介護ヘルパーが必要になるけど、そこをフィリピン、インドネシア
の医療介護要員で対応させる、と。これって密かに需要があると思うの
だけどねぇ。確かフィリピンはFTAがらみで要求していたよね。
(もちろん厚生省の手で骨抜きにされたけど)
投稿: 陳 | 2005.07.31 01:34
辞書の発音記号ではメイル、ですな。(つかそもそも英語で「エー」っていう発音あったっけ?)
http://dictionary.cambridge.org/define.asp?dict=CLD2&key=HW*2168&ph=on
日本語としては別にメールでいいと思うけど。
投稿: き | 2005.07.31 10:15
私アメリカに数年住んでおりましたが、発音はメイルの方が近いかと思います。もちろん「イ」にイントネーションが置かれるわけでないので、強いて言うなら「メェィル」ですかね。これは良く日本人がMainをメーンと発音する誤りに似ていると思います。ただこんなこと言い出したらカタカナ表記の英語なんておかしなものだらけですけど。
>と釣りを狙って書いたのだけど。
finalventさんに限ってそんな2チャネラーみたいなこと言わないでくださいよw
投稿: く | 2005.08.01 20:12
く さん、ども。
日本人は二重母音を二つの母音の連続と見ているかなという洒落のつもりでした。
mail の場合は、末尾のLなので、実際には舌は上顎に接触しないので、どっちかというと、ユの音に近くなるはずです。
その意味では、音ということでは、「メーユ」かなというふうにも思います。
と、ユーモアを込めて。
投稿: finalvent | 2005.08.01 20:29
>と釣りを狙って書いたのだけど。
=「お前らは知らねーだろうが、俺は知ってるぜ」
50歳近くにもなって
こんなことでしか(以下略)
洒落? ふーん
投稿: aten | 2005.08.02 12:08
というか釣りはこっちかと
「伝 え 聞 く フ ァ ク ツ」
投稿: 釣男 | 2005.08.02 22:06
エントリもコメントも、言いっぱなしで掛け合いがないと非常に虚しいね。
投稿: feel | 2005.08.04 21:38
現在,30代後半です。
私が幼少の頃,住み込みではないですが,お手伝いさんがいました。
母を手伝って家事や子守をしてくれました。
私の妻の家でもやっぱり幼少の頃,お手伝いさんがいたそうですから,昭和50年代の初め頃までは,まだ日本でも普通に女中さんはいたのだろうと思います。
投稿: peke | 2005.08.05 10:07