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2005.07.22

ほいじゃ、人民元切り上げ

 昨日の人民元切り上げには驚いた。想定の範囲外かというとそれほどでもないのは、「極東ブログ: ヒューストン、何かおかしい(Houston, We have a problem)」(参照)で三月の温家宝首相による、「いつごろ発表するか、どういった方策をとるのかは不意を突くことになるだろう」という発言を受けて、こう書いたとおり。


 不意をつくというのはすごい発言だなということで、ニュースにもなったのだろう。公式な発表ではない。しかし、考えてみるに、それって不意打ち以外にはありえないのだろう。ただ、一気にどかんとくるものでもあるまい。

 今回の切り上げは、二パーセントということなので、切り上げというより微調整というか、米国向けのポーズというか、G8のお約束というか、グリーンスパン彦左衛門の諫言を聞くというかそのあたりで、日本企業もすでにシフト体制が出来ていたので、それ自体は、上期経済成長率九・五パーセントに続くお笑いかなという感じでもある。
 それでもアナウンスには不意感はあった。大方は、九月に予定されている胡錦濤主席の訪米スケジュール前の八月か、米国で小一時間の後の十月かといったところではなかったか。毎度お笑いの”「ミスター円」榊原英資・元日本大蔵省財務官”は年内切り上げはないとふかしていた。グル・ブロガー散人先生の”「人民元切り上げは年内は無い」(榊原英資)”(参照)も読みようによってはハズしたかな感はある。

 日本のエコノミストとかアナリストとかは、政治家の発言を軽視しがち。膨大な量の観測論文を読み過ぎるのか、逆にそれに惑わされてしまっていることが多い。ナショナリスティックな希望的観測がそれに加わる。要は本の読み過ぎ。国際政治情勢でもそうだが、各国政府の公式発言を丹念に継続的に分析してさえおれば、ほとんど間違うことがないのである。
 日本人には政治家の発言をハナから信用しない人が多いが、そういう風土は日本の政治家が作り上げてしまっただけで、他の国では(特に中国のような全体主義国家では)政治家が提示した原則が覆ることはほとんど無い。榊原氏の言うとおりだと思う。

 ある意味ではこれは正しいのかもしれない。中国語が極めて難しいせいもある。というのも十九日の時点で中国人民銀行(中央銀行)がこう明言しているのである。”今後も人民元レートの基本的安定維持 中国人民銀行表明”(参照)より。

 中国人民銀行(中央銀行)は19日、「今年下半期、外国為替管理体制改革を一層深め、人民元為替制度改革を段階的に推進し、人民元レートを均衡のとれた、合理的水準に基本的に安定させ、引き続き通貨と信用の安定した伸びを維持する」と表明した。
 同行は18、19の両日、支店長会議を開いた後新聞発表を行い、次のように強調した。

 と、これに続いて三点強調されているが、これはようするに日本語にすると、人民元を切り上げますよ、という意味で、それに温家宝の「不意打ち」を足せば、翌々日の夜ばい、じゃない、満月の夜というのは間違いないということだったわけで、中国語は難しい。
 今後の動向だが、榊原英資の想定の範囲内でもあり、こんなの切り上げにもなんにもなっていないので、いっそう人民元切り上げ圧力が高まり、外貨がどどっと流れ込む、そして、バブル、いやすでにバブルというのをどうするかが一番問題かなとは思う。短期・中期的には、これまでのレートで保護されていた中国農民が苦しくなり社会不安の圧力が増すことかもしれない。このあたり事実上の地方軍閥をなだめるカネは…あ、それは昨日の話。
 この関連では、あぶく銭によって深刻な中国銀行の不良債権問題がより深刻になるという読みスジもあるかと思う。最近の状況は、”主要金融機関:不良貸付比率3.95ポイント減”(参照)ということらしい。

中国銀行業監督管理委員会(CBRC、銀監会)の劉明康主席が明らかにしたところによると、全国主要金融機関の6月末時点の不良貸付残高は1.5927兆元と年初より5542.6億元減少した。不良貸付比率は10.15%で、年初より3.95ポイント下落した。14日付で香港・経済通が伝えた。

 ほんまかいなと思わず偽の大阪弁が口をついてしまうが、私には反証データはない。ちょっと前までの状況は、新華社通信ネットジャパンサイトの”4大国有銀行の現状と不良債権”(参照)によるとこんな感じだった。

中国銀行業監督管理委員会(CBRC)が05年1月18日に公表した資料によると、不良債権比率は03年末から04年末までの間に、中国銀行が16.3%から5.1%へ、中国建設銀行が9.1%から3.7%へ低下した。自己資本比率は、不良債権処理を積極的に進めたにもかかわらず、同期間に7.0%から8.6%へ、7.6%から9.4%へそれぞれ上昇している。04年末の貸倒引当率は、中国銀行が71.7%、中国建設銀行が69.9%に達し、貸倒引当金の計上も進んだ。

 ただ、ちょと面白いオチは付いていた。

しかしながらこの低下は、06年の金融市場開放や05年以降の上場を前にした経営体質を強化することを目的として、傘下の資産管理会社AMCに移管したためである。

 この時点でのチャイニーズ・マジックのタネを明かすとAMC(金融資産管理公司)ということだが、毎度ながら、「福」の字をひっくり返したような愉快な話はつきまとう。最近のニュースでは”中国、金融資産管理会社の監視を強化へ=金融時報”(参照)がある。

中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は、不良債権を抱える銀行セクターを建て直すため、政府系の不良債権処理会社である金融資産管理会社(AMC)の監視を強化し、不正行為があった場合に担当者を罰することを明らかにした。金融時報が伝えた。


 AMCは1999年、国有商業銀行が保有する不良債権1兆4000億元(約1690億ドル)を引き継いだが、インサイダー取引や虚偽の入札などの問題を抱え、透明性が欠如していることが銀行監督当局から指摘されてきた。
 アナリストらは、中国の銀行は少なくとも2000億ドルの不良債権を抱えているとみている。

 ざっと概算すると一兆七千億元の不良債権があることになる。
 それがどのくらいの問題なのかがよくわからないし、あまり話題になっている印象は受けない。大したことない話のかなと経済に疎い私は思う。
 中国が潰れてしまうと大変なので世界の援助も進められているようだ。例えば”スイス銀:中国銀に資本参加か、資本比率は未定”(参照)といった話もある。

なお、米大手銀行のバンク・オブ・アメリカが中国の国有四大銀行の一つである中国建設銀行に資本参加することを明らかにしている。バンク・オブ・アメリカは中国建設銀行の親会社である中央匯金投資有限責任公司から25億ドル分の株式を買収、建設銀行株9%を取得する。

 二十五億ドルがどのくらいのインパクトかわからないが、方向性としてはいいんじゃないかと思う。うまく行かなければ、ホワイトバンドを真似てゴールドバンド(シリコン素材・中国製)でも作って、経済学者につけてもらって、アピールするという手もあるし。

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コメント

素人が榊原氏のようなの読みができるわけがありませんけども、しかし今回の切り上げでわからないことがあるんです。

「米ドルに対して2%切り上げ」というところは強調されていますが、それと同じくらい重要な政策変更であるはずの「通貨バスケット制への移行」について円・ユーロ・米ドルをどのくらいの割合にするのか未だに発表がない。
ここを先に詰めておくのが「定石」だと思うのですが、未だに詳細を発表できないということはもしかしてタイミングだけを見たぶっつけ本番だったか?。97年の「東南アジア通貨危機」という先例もあることですし、そんな脇の甘さを投機筋に付け込まれないか気になります。

投稿: F.Nakajima | 2005.07.22 23:54

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受信: 2005.07.22 12:06

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受信: 2005.07.22 20:29

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