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2005.07.06

最新のイランの話題をイタリア料理風に

 このブログでピックアップする種類の話題かどうかちょっとためらうものがあるのだが(タルネタでもなし)、内外報道に差が出つつありそうなので、とりあえずメモがてらにふれておこう。話は、今回のイラン大統領選挙を制したアハマディネジャド次期大統領についてである。
 イタリア料理に例えるなら、選挙のどたばたが前菜と言ったところか。私はアハマディネジャドが勝つとまでは読み切れなかったが勝ちの目はあるだろうな、あったらろくでもないなとは思っていた。しかし、現実、どうなるものではない。むしろ米国がさらに不用意にガタガタ掻き回して変なことにしなければいいがくらいのものだった。単純な話、れいによって中国が大きくからんでいるし、トホホ大国日本も絶妙にからんでおり、どっちかというとこの件では中国に近いのが本音。
 しかし、前菜の後はプリモピアットと決まっている。ここはブッシュというかライスもパスタというか出るでしょと思っていたが、出ました。米国側に言わせると、アハマディネジャド次期大統領が一九七九年テヘラン米大使館占拠事件に関わっていたとのこと。元人質が大統領選報道の写真を見て、実行グループの1人に間違いないと証言した。よくイラン人の顔の区別が付くもんだといった不謹慎なツッコミはなしとしても、これは単なるやらせじゃないかもという感じはした。国内報道では毎日新聞一日付け”イラン:次期大統領、米大使館占拠事件に関与の疑惑”(参照)が比較的詳しい。同報道でも早々に打ち消し情報も込みにしているが、アハマディネジャド次期大統領も青春の思い話はなしよという趣向でもないが、そんなことはねーよと釈明に乗り出す。
 国内報道では同じく毎日新聞の翌日”イラン:次期大統領の米大使館占拠事件への関与を否定”(参照)がおあつらえである。標題は否定とあるが、内容は、とてもそうは読めないのがよろしい。


 AP通信によると、アフマディネジャド次期大統領は事件当時、23歳でイラン科学産業大の学生だった。複数の現地ジャーナリストは「次期大統領が事件当時、イスラム革命を支持する学生連盟の中心的メンバーで、事件を支持していたことは確か」と語る。
 しかし同通信によると、事件を指導したアッバス・アブディ氏やモフセン・ミルダマディ氏らは次期大統領の関与を明確に否定。両氏は事件を指揮しながらも、現在は改革派としてむしろ米国と近い関係にあり、保守強硬派の次期大統領を擁護するとは考えにくい。

 欧米ジャーナリスムの流れでは、この件はほぼ決まりといった印象をうける。あまり補助にもならない右寄りテレグラフだが”A 'head case' in Teheran”(参照)を参考までに。

Details of his past have since emerged, confirming him as a true foot-soldier of the Islamic Revolution. They include participation in a student organisation set up by a confidant of Ayatollah Ruhollah Khomeini, the cleric who overthrew the Shah; membership of the Revolutionary Guards, the shock troops of the revolution; and building up the radical group Abadgaran, which won municipal elections in 2003 and parliamentary ones the year after.

 ましかし、プリモピアットはそんなもの。先の毎日新聞記事では、旧ソ連大使館の占拠も計画にアフマディネジャド次期大統領が関わっていたかもと散らすが、たいした話ではない。日本人にしてみると、イタリア料理はパスタで終わりということでこのまま終わるのかと思ったら、ちゃーんと、セコンドピアットが、まいりました。
 内容は、アフマディネジャド次期大統領が一九八九年のクルド人指導者殺人事件に関与したという疑い。やってくれたのは、オーストリア、ウィーン検察当局だ。これ、国内で報道すんのかよと思ったら、日経が今日付で出した。”オーストリア検察、イラン次期大統領を殺人関与で捜査”(参照)が肉の味わいをあっさりと仕上げた一品です。

検察当局はオーストリア緑の党のピルツ議員の告発に基づき、捜査に乗り出すことを決めた。ピルツ議員は89年7月にイランの反体制組織「イラン・クルド民主党」の幹部3人がウィーンで銃殺された事件で、アハマディネジャド氏が実行犯に武器を渡したとしている。殺害された幹部らは米国でイラン反体制支持者との面会を控えていた。

 というのが現状。話はBBC”Austria probes Iran's Ahmadinejad ”(参照)のほうがやや詳しい。

Austrian politician Peter Pilz said there was "credible evidence" to link Mahmoud Ahmadinejad to the murder of Iranian exile Abdul Rahman Ghassemlou.

 話はロイターのほうが淡々としている印象を受ける。”Iran's Ahmadinejad linked to Vienna murder probe”(参照)より。Witness Dはこの件の重要な証人である。

Witness D's information came from one of the alleged gunmen, who contacted Witness D in 2001 but later drowned, Pilz said.

One of the reasons that Witness D appeared credible is that he knows details that only someone with access to Austrian investigators' classified files could know, he said.

Pilz said Witness D had no ties to any exiled Iranian political groups in France.

Many members of the National Council of Resistance of Iran (NCRI) and its militant wing, the People's Mujahideen Organisation, are based in Paris.


 さて、どれほど裏がありそうかということだが、率直に言うとよくわからない。外交的に見ると、こちらの話にどれだけ米国が噛んでくるかということでもある。
 いずれにせよ、ことはフカシの領域を越えつつあり、実証可能な問題でもあるのだが、さて、日本のジャーナリズムがどれだけこの問題に関心を払うかというあたりが、二の皿を喰いきれない弱々日本人のデザート待ち状態にも近い。

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