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2005.07.19

錬金術師ニュートン

 古ネタにして、たるいネタ。ちょっとネットを見るとあらかたニュース・サイトでは消えていたが、日刊スポーツの七月四日付けで残っていた。”ニュートン自筆の錬金術覚書見つかる”(参照)である。


 ロイター通信によると、近代科学の祖と言われる英国のアイザック・ニュートンの錬金術に関する自筆の覚書が、英王立協会でこのほど見つかった。
 この覚書はもともと、ニュートンが亡くなった1727年に発見されたが、1936年に競売で落札されて以降、行方が分からなくなっていた。今回、研究者が同協会で文献を整理中に発見した。

cover
錬金術師ニュートン
ヤヌス的天才の肖像
 というわけで、新発見というものでもない。ニュートンが晩年錬金術に凝っていたことは現代ではよく知られている。このあたりの話は、「錬金術師ニュートン―ヤヌス的天才の肖像」に詳しいのだが、なんせこの本は高い。これこそ図書館とかに入れてもらいたいものだと思う。「ぬい針だんなとまち針おくさん」なんか一つの図書館に三十五冊も公金で買わなくてもいいからさ。
 ニュートンと錬金術の関わりについては、現代ではあらかた、上記のドブスの本に尽きている印象もあり、つまり、科学者ニュートンと頭のいかれたニュートンという二面性というより、ある種統一された何者かであったのだろう。それがなんであったかというのは、すでにあるパラダイムの定着した現代ではわかりづらくなっている。しかし、ドブスの考察に引きずられてしまうのだが、ニュートンにとって、物質を構成するもの間に働く力の解明という問題意識はまさにその錬金術的な研究に継承されており、その意味では「プリンキピア」の意味論といった意味合いもあるだろう。
 余談だが、ニュートンは光学にも関心を持っていた。光や色というものも、現代ではただ電磁波の周波数としてしか特定されないのだが、なぜ「赤」という色が「赤」なのかという理由は答えることができないようになっている。一昨日、はてなでこんな質問が出ていた(参照)。

赤い色が何故「赤く」見えるのか教えてください。赤色が波長700nmに対応していることは知っています。そういうことではなくて、私が知りたいのは、700nmの光が、何故、青や緑ではなく、この「赤」という色に見えるのかということです。ずっと疑問に思っているので、納得のいく答えにはできる限りポイントを出します。できれば難しいURLではなく、わかりやすい説明文でお願いします。

 このエントリ執筆時点でこの質問には各種の回答が寄せられているが、質問の核心には触れていないような印象を受ける。この問題は私も若いころ考えたことがあるが、やはり一種の神秘論のようなものに行き着かざるをえないように思う。もちろん、そうした私の思考はすでに現代の科学的なパラダイムからずっこけているのだが、人間の思惟にはそういう特性はあるのだろう。
 元のニュースに戻ってだが、今回の文献は再発見ではあるが、新発見ではない。なので、それほどの重要性はないのだろうとも思うが、海外の報道を見ていて、少し考えることはあった。たぶんこれが各種ニュースのネタ元になるロイターの記事ではないかと思うが、”Found! Isaac Newton's lost notes”(参照)にはこうある。

The text was written in English in his own handwriting, but it is not easy to decipher.

At the time, alchemists tended to record their methods and theories in symbols and codes so others couldn't understand.


 というわけで、まだこれらの文書が十分には解明されていないようではある。もちろん、そのあたりも写本なりがあるだろうから研究には影響しないかもしれないとも言えないこともないが、やはり原典は重要だろう。
 ただ、人類の未来においてというか、科学の発展というか、そうした流れのなかで、ニュートンの残した錬金術文書の解読っていうのはどんな意義があるのだろうか。たぶん、なんの意義もないというようにも思えるし、そのあたりが、「ふーん」といった程度の話題にしかならないのだろう。
 恥ずかしながら、私は若い頃西洋神秘学に関心を持ったことがあり、そうした文脈でいうなら、錬金術とは魂の成長の技術の暗喩であると言えないこともない。しかし、あと数十年たらずしか生存しそうもない自分の魂にどんな成長を期待するものでもないなぁ、という脱力感はある。

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コメント

ニュートンは表の顔とは別に
異端アリウス派の魔術師として
相当高位の秘教魔術知識に通暁した
練達の魔術師だったことは確かなようですね。

異端アリウス派(のちのユニテリアン)は
当時のヨーロッパに大きな影響を
持った西洋オカルト史の源流の一つで、
そこにはキリスト教以前の神性の歴史が
流れており、こたびの文書の研究解読
には私はオカルティスト、一魔術研究者と
して心からワクワクするロマンを感じます。

投稿: kagami | 2005.07.19 20:32

>赤い色が何故「赤く」見えるのか

光の波長が何故色の質感を伴うのか、という意味でしょうか。
生物誕生と同じくらい謎ですね。

投稿: Cyberbob:-) | 2005.07.20 10:29

「自然哲学の数学的諸原理」(プリンキピア)は有名ですが、「自然哲学の神学的諸原理」という本もNewtonは執筆していたようです。この本は公刊されなかったようですが。
この本の中でNewtonは当時のヨーロッパで一般的に信じられていた普遍史観にのっとり、世界がいつ破滅(ハルマゲドン)を迎えるかを考察しています。Newtonはハルマゲドンを2015年と結論しているようです。1999年を無事に迎えてしまったオカルト業界では2015年に注目している人もいるようです。

西洋ではいまだにNewtonという人物の影響は大きいらしく、Newton学を専門とする研究者
がイギリスのみならず大陸側にもかなりいるみたいです。

投稿: hdk | 2005.07.21 10:03

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受信: 2005.09.24 18:37

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