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2005.07.04

南の島のゲンジツ

 南の島のゲンジツについては人間関係というか政治というかそういう側面はあまり書きたくないのだが、人間という存在をよりマクロな視点に移した場合のゲンジツについては、少しふれておいてもいいかもしれない。
 まず、蟻だ。人間はこの地球全体の視点から見れば蟻に等しい存在だと言うのは蟻のことをなんも知らない人だろう。蟻はその生物的な社会性において人間より高度な発達を遂げている。なかでも、生殖と労働を分化させ、実質労働を第三の性として身体具現化した点において人類がその途上にあるとはいえまだまだ到達できない地点にある、といった、高度な与太話はどうもでいい。
 蟻は、南の島のゲンジツを構成するかなりの重要な要素なのである。想像してほしい。あなたはビジネスとかで一花咲かせるとか国際ソムリエコンクールに優勝するとか、あるいは喰いつぶしてなんとなくとか、南の島の午後、のんびりと寝ている。IT機器はすべてオフにした。もう誰もあなたをディスターブする存在はない…と信じてる。なんという間違いだろう! そこに、かーならずぅデデデはやって来る♪じゃない、蟻がやってくるのだ。
 南の島の蟻はただの蟻ン子じゃないのだ。キロロが本土で活動してなにが一番驚いたかというと、蟻のでかいことだった、と感嘆の声をあげて浮きまくってしまったほど、本土と沖縄の蟻は異なる。形状ばかりではない。噛むのだよ。ちくっとね。蟻に噛まれたってどってことはない……オリジナル鉄人二八号に出てくる巨大蟻(だったっけ)じゃないのだがどってことはない……なんてことはないのだ。イテーのだ。蚊がチクっとするなんてもんじゃないのだ。すげーイテーの。なにが起きたのか、というくらい飛び上がる。あたりを見渡すとキロロが馴染んでいた小さい蟻が不機嫌にいるだけ。これの存在に沖縄県民は苦しめられてきたのかと思うが、うちなーんちゅに訊いてみるとそうでもない。「ちょっと、アガっとか言う」とのこと。そうなのか、沖縄で暮らし続けるとそうなるのか。ちなみに私は八年暮らしてそうならなかった。そういえばバリにいたときは、腕と足が真っ赤にただれた。なんだこれというと、ファイーアントと言うのだそうだ。火蟻かよ。たしかに火傷みたくなった。
 蚊も洒落にならない。西ナイルウイルスが沖縄に上陸したのか疑惑というのが数年前ローカルな話題になったかならないくらいだったが、上陸しちゃうとちょっと洒落にならないのだが、あー、かゆいってことでは沖縄の蚊は洒落にならない。すげーかゆいの。しかも、よくわかんないのだが、小さい蚊のほうがかゆい。
 大きい蚊もいる。え、これは蚊かよ、ちょっとサイズでかくねとかのろのろ飛んできて、腕に止まってエンダーのルートビア飲むみたいにちゅーーと始める。おい、オマエやっぱり蚊だったのか、というころで、ええい、真っ赤なトマトになっちまいな、と超能力を発揮するじゃないや、ばちんと叩きつぶすと、ほんとにトマト潰したみたいにぶちっと血の跡が出来て不愉快です。なんでこんなにこのでかい蚊は鈍いのか。
 鈍いといえば、ゴキブリも鈍い。御器ぶりってなものではなく、現地では、ヒーラーとかピーラーとか言う。ジャガイモの皮でも剥いてくれるというわけでもないが。で、これが内地と比べると鈍い。そしてでかい。やあ、元気っ、ボクの食い物どれどれ、ていう感じで、のそっと食卓に上ってくる。ばちんと潰すと、潰れる。
 しかし、それが沖縄の暮らしというのか、いちいちヒーラーなんか殺していてもしかたないので、あっち行けよ、と指さすとサイザンスかと踵を返すようになる。悪友みたいなもんだな。だからっていうわけでもないが、ヒーラー君にやめてもらいたのは、夜ばたばた飛ぶことだ。これがトロくてばたばた飛ぶのだ。歩いていてもぶつかってくるし。あるとき、危うく口に入りそうになったことがある。これが、似たような形状の香港だか広東だかの食用タガメの味がするとわかっていたらムシャラクって感じかもだけど、たぶん、まずいのでしょう。喰わんかったが。
 ごきぶりが悪友といえば、そう悪気もないのが、海の生き物たちである。アーマン(やどかり)とかカニとか。こいつら、ちっこいとかわいげはあるんですよ。おい、何していると問えば、いやねもうすぐ満ち潮なんでこうしちゃいられないと答える、みたいなコミュニケーションも楽しいのだが、こいつらもでかいのがいる。お、おまえホントにアーマンなのか、聖ヨハネの手じゃないのか、みたいにでかい。そして、これは図体のわりに速いこと。一度だったか、十センチくらいのカニが玄関を開けたら、そっと入ってきて大暴れ。あれです、ナイチャーはカニっていうと、ゆであがっているか、道頓堀んのそのそ手足を動かしているディスプレイなイメージを持っているだろうけど、違う。速い。おい、そっちに行くな、トムとジェリー♪、出口はこっちだ、と諭すというか追いつめると…忘れもしない、飛んだ。カニが飛ぶのだ。ほんとだ。一メートルくらいジャンプしてきた。ごつごつと棘のある硬いのが高速に顔面に飛んでくる。恐ぇ恐ぇ。
 と、ウチナー暮らしについて滔々と語りだしたきらいはあるので、あと一つ。
 あれだ。沖縄の夜というのは街は明るいそりゃね二時以降が全開だしではあるが、田舎は暗くなる。しんみりと暗いのだ。
 暑く寝苦しくて暗くなった部屋でじっとソファーにもたれて「月と六ペンス」的な感慨にひたっていると、というか、泡盛に沈没していると、沈黙が巨大な黒いスライムのように思えて、心底恐くなるのだが、そんなとき、あいつは、「ケケケケッ」と言うのである。笑うかよ、このシーンで。というと、「ケケケケッ」とさらに言う。オメー全然孤独じゃないよ、というのだ。ヤモリだ。ウチナーグチでヤールーである。バリ島ではガジャとか言っていたような。
 灯りを点すと、壁に、エッシャーの絵のジグソーパズルのワンピースみたいに、いる。動かない。おいと言うと、「ケケケケッ」と答える。結局、そいつに心というか魂を救われたことはあるように思う。

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コメント

え、ヤドカリ飛ぶんですか。今日のお話は、きみが悪いような、恐いような、おかしいような・・・。文章お上手ですね。普通こんなに沢山字が並んでいたら読まないんですが、文章のりズムが良いんでしょうか、最後まで読んでしまいます。分かる内容のときには!ですが。勉強になります。有り難う御座います。

投稿: カズ姫 | 2005.07.04 13:08

昨日、冷蔵庫あけたら、ゴキブリが居やがりましてびっくりしました。冷蔵庫でゴキブリ見たのはこれで3度目くらいなんだけど、なんでわざわざ冷蔵庫に?

ワタシは離れで一人住まいなので、冷蔵庫といっても母屋の予備みたいな使い方しかしておらず、開閉頻度も少ないのでかなり冷えてたはず。

排水穴から進入したに違いないのですが、確かに冷蔵庫は外側は温いけど、扉の最上段までくればかなり寒いだろうに。

ワタシのゴキブリ捕獲&暗殺法は、中性洗剤のピンポイント噴射。奴らはコレで確実に窒息死します。

投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2005.07.04 14:17

南の島のゲンジツを読んで、南の島で暮らす夢はスッパリ捨てました。夢を壊して下さってドーモです。
蟻対策には水を撒けばよいのではないかと、ふと思ったのですが(水?泳ぐよ、なんて言わないで下さいね~)。可愛くない大きさの虫とか、巨大ヤドカリやカニに襲われる現実は洒落になりませんし…。自然との共存は口で言うほど容易ではないということなのでしょうね。

>■□ Neon / himorogi □■さん、
>冷蔵庫あけたら、ゴキブリが居やがりましてびっくりしました
そのゴキブリ、冷蔵庫内で孵化したのではないかな、と^^。多少の低温くらい平気だったりして。

投稿: jaz | 2005.07.04 16:26

20うん年前、那覇の壺屋の隣の牧志に住んでたけど

蟻やデカい蚊に刺された憶えはないな~

壺屋のスラム街が取り壊される前で、バラック小屋に湧いた白蟻の羽蟻が5月から6月にかけて飛び回って凄かった。夜、窓が羽蟻でビッシリ覆われるんだよ

ゴキブリといえば、4月から12月にかけて、早朝に桜坂社交街を歩くと、30cm間隔でゴキブリの死骸が転がってたね。スナックで殺したヤツを店の前の路上に捨ててるわけさ~

あと、本土に居ないのは、アフリカマイマイとカタツムリかな
雨の後にドブの横を男の拳骨ぐらいの殻のアフリカマイマイがのぺ~としてるのは気持ちわるかったね。カタツムリ自体は本土のと同じだけど、梅雨になると直径5mmぐらいのが道にビッシリ5cm間隔で居て、歩くとブチブチ踏みつぶすことになる。

ヤモリの鳴き声が「ケケケ」とは……w
オレには「キュンキュン♥」と可愛らしく聞こえたけどね


投稿: ないちゃ~ | 2005.07.04 17:30

南の島の生活かぁ。
確かに虫が多そうですねー。
ハエなんかはどうですかね。大きかったりするんでしょうか。
ところで沖縄本島にはカラスがいないみたいな話を聞いた事があるんですけど、もしかしたらガセですかね。

投稿: 路傍の石 | 2005.07.04 17:34

久し振りにコメント致します。ゴキブリの味。昔読んだゲテモノグルメの本では著者が卵を取ってきて育てて食ってましたっけ(衛生上の問題)。肝心の味の記述を忘れてしまったので(←ボケ)ググってみました所、あったあった↓
ttp://www.ne.jp/asahi/ymgs/hon/aiueo_folder/aiueo_su02.htm

結構美味しいらしいですね(汗)
それから他の虫の味わいに関してはこちら↓
ttp://www.plaza.across.or.jp/~manami-o/ryouri/untitled.html

finalventさんは「その日の楽しかった記憶すべてを忘れてしまうほど強烈」な体験は御座いますでしょうか?(滝汗)

投稿: TDF-III | 2005.07.05 03:55

TDF-IIIさん、こんにちは。

>>finalventさんは「その日の楽しかった記憶すべてを忘れてしまうほど強烈」
>>な体験は御座いますでしょうか?(滝汗)

これって思い起こすのはないのでたいしたことはないのでしょうね。ただ、あまり雄大な自然というのをなんどか見て、心の深いところに残っています。そんなのがいくつかあります。それと、人生の転機は大きいですね。あと、うまくいえないのだけど、無意識のなかの信仰のようなものがある日声を上げるような内省というのがあります。静かに強烈です。

投稿: finalvent | 2005.07.05 10:16

や、finalventさんに真面目なレスを頂いてしまった…故に私もおそれかしこみつつレスを。

たいしたことはないと仰るのは、「カメムシなんか食べた事は無い」と言う意味なのか、「それほど起伏に富んだ経験をしていない」と言う意味なのでしょうか。おそらく後者かも?
内なる声のインパクトと言うのはそういうのとはまた関係無く人を揺さぶるものなのでしょうか?私も御多分に漏れず割と平坦な道を辿っていた一人でしたが、内なるモノに突き上げられてフラフラしてしまったり。

山月記をデーモン小暮の朗読で聞いたときは正直凹みましたね。と言ってもそれほど才能に溢れていたわけでもないんですが。

因みに「その日の楽しかった記憶すべてを忘れてしまうほど強烈」な体験と言うのは、私が御紹介したサイトからの引用です。カメムシを生きたまま噛んだりすれば、それはもう苦虫どころじゃないでしょうねぇ…

投稿: TDF-III | 2005.07.09 03:32

カニ、どういう感じで飛ぶんですか?

投稿: quip | 2007.05.07 21:09

quipさん、こんにちは。ジャンプですよ。野球のデッドボールが飛んでくる感じです。

投稿: finalvent | 2007.05.07 22:27

えー私も虫をたべてみたい...んですけどなかなかたべれない
あとカニ...とぶんですか(゚m゚*)すごすぎです。

投稿: よもぎandブーグ | 2009.02.06 14:00

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