イラン大統領選挙雑感
イラン大統領選挙について簡単に触れておきたい。一七日に実施された選挙では、七人の候補者のいずれもが当選条件の投票総数の過半数に達しなかったため、上位二位のラフサンジャニ前大統領(穏健派)と現テヘラン市長アフマディネジャド(最高指導者ハメネイ師に近い強硬派)が二四日に決戦投票で争うことになった。
一七日の投票では、投票率は62%(前回は67%)。CNN日本”イラン大統領選、決選投票へ”(参照)によると、ラフサンジャニ616万票に対してアフマディネジャド571万票ということなので、これだけ見れば、ラフサンジャニが有利かと思えるが、他候補が消えた現在、それほどの差とも思えず、どちらが大統領になるのかは予想が付かない。
欧米の論調では、今となってはやや滑稽な感もあるが、一二日付けロイター”イラン大統領選、モイーン元高等教育相が支持率2位に”(参照)のように、改革派のモイーン元高等教育相への期待もあった。とはいえ、Newsweek日本版6・22”改革派なき改革選挙”で断言されているように、モイーンが勝つ見込みなどあるわけもない。
なのに、毎日新聞”モイーン氏「ボイコット」克服できず”(参照)ではやはりモイーンに注目したお話を展開していた。もちろん、論点は、モイーンよりボイコットに移さざるをえない。
改革派支持層が大挙して保守強硬派に票を投じたとは考えにくく、多くの改革派支持層が投票をボイコットしたのは確実だ。
モイーン氏を支えたハタミ大統領の実弟でイスラム・イラン参加戦線のレザ・ハタミ党首は毎日新聞に対し、「真のライバルは他候補ではなくボイコットだ」と語っていた。選挙結果は「ボイコット」というライバルを克服できなかったことを示している。
また、ラフサンジャニ氏を支持した市民の多くが「実行力」を投票の基準に挙げており、改革の成果を思うように上げられなかったハタミ大統領に対する失望感は想像以上に大きく、改革派支持層からラフサンジャニ氏に流れた票もあったとみられる。
その読みはどうなんだろうか。その読みが正しければ、決戦投票ではラフサンジャニに目が出てくるということになる。そうなるだろうか。確かに、一七日の選挙での非強硬派の票が固まれば、ラフサンジャニが勝つ可能性は高い。
とはいえ、ラフサンジャニが勝って大統領に返り咲いても、それによって改革が進むわけでもないのは、現在のハタミ大統領の無力状態でもわかる。
イラン国民の状況についても、大衆はある種の政治的な無気力感に覆われているだろうし、若者は特にそうだろう。マイルドに改革を希望していても、それが実現できないという挫折感は強硬派に吸収されるだろうし、米国が表面的にいきり立ってもその動向を進めるだけだろう。
先のNewsweekでは、「誰が選挙で勝ったとしても、イランは変化への道をたどってる」として、緩やかながらにも改革は進むのだろうとしている。
私もそれに同意したいのだが、できない。現行の斬新的な変化では、ある決定的な変化をもたらすことはできないのだから、その閾値は奇妙な逆転を誘発する可能性のほうが高いようにも思われる。むしろ、危険なのはイランの内部ではなく…とつい考えてしまう。
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コメント
ラフサンジャニ、負けちゃいましたね。
奇妙な逆転ってこういうことだったんでしょうか?
投稿: Baatarism | 2005.06.25 13:08