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2005.06.22

原油高騰とロシア周りの雑駁な話

 原油高騰とロシア周りの話。今朝のラジオでもふれていた。そういえば、このところのこの関連の動向で心に残っていることがいくつかあるので、このあたりをメモしておいてもいいかもしれない。例によって間違いも多いかもしれないし、きちんと資料に当たってまとめるべき内容ではあるのだけどごく簡単に。
 まず、基本。ロシアの現在の原油生産は八〇〇万バレル強となり、すでにサウジに匹敵している。ロシアとサウジの二国だけで世界の原油の二〇%になる。この構造が世界にどういう影響をもたらしているのかというだけで大きな課題ではあるのだが、簡単には議論ができない。総じて見れば、地政学的リスクはロシアのほうが少ない。しかも、ロシアはOPECからもIEAからもフリーな王様でもある。
 サウジとロシアに着目して、近未来的に今後はどうなるかだが、まずサウジがよくわからない。「極東ブログ: 原油高騰の背後にある石油枯渇の与太話」(参照)でふれたように、全体像から見ればサウジについては近未来での原油枯渇という問題は言われているほどにはないにせよ、現状すでに高水圧で汲み出すほどなので現行の油田にはそろそろ無理があるようだ。当然、新規の油田開発などが必要になるのだろうが、そのあたりの動きが見えない。この問題は精製の問題とも関連しているのであとで少し触れるかも。
 ロシアのほうも現行の西シベリアの油田は老朽化している。サウジほどの潜在的な問題はもってないのかもしれないのだが、この機に新油田の開発を行う必要性があるだろうし、もともとロシアでは20ドル程度の採算ラインがこのところ50ドルという高騰でウハウハに外貨を貯め込み、少し前なら不可能と思えた海外債務返済も前倒しで進んでいる。
 しかしこのまま好調に進むわけでもないようだ。れいによってロシアにイヤミ入りの産経系”原油落ち込み露経済減速、成長見通し5.5%に下方修正(FujiSankei Business i. 2005/6/20)”(参照)のようにロシアの原油生産の劣化が目立ちつつある。
 で、ロシアも新油田開発となるのだが、そこもどう動くのかがよく見えてこない。輸送という面でのパイプライン側の話で見れば、日本が大きく関与しているのだがそのあたりは、ちょうど一年前に書いた「極東ブログ: 宣戦布告なき石油戦争の当事者は日本と中国」(参照)や「極東ブログ: ユコス国有化が暗示するロシアの大望」(参照)でもふれた。後者の欧米からのロシアへの厳しい視線も今後の火種にはなるだろうが。
 その後のこの分野の動向なのだが、私などから見ると、日本はなにやってんだという状況でもあり、そのあたりの苛立ちもあってか、ロシアは中国とインドをウラジオストックに呼び出して結果的に日本に痛烈なメッセージを発しているが、日本はわかってなさげ。いずれ、中国体勢はどうころんでもあれだけの人間が生きて行かなくてならないのだから、石油の潜在的なニーズはある。問題はロシアがそこでどう商売していくかということだが、日本が傍観できるわけもないだろうに。
 ロシアの極東のパイプライン問題や天然ガスのサハリンプロジェクトなど、つい極東という観点から考えがちだが、地球儀を上から見るとわかるように、これらのロシアのエネルギー戦略は北米も視野に入っている。対応する形で、米国もなんらかの戦略はもっているのだろうが、そこもあまり見えてこない。
 話をロシアの西側に移すと、端的に言えば、ロシアとしてはエネルギーという強力なカードでいざというときにEUを締め上げてやれということはあるだろうし、先月末にできたロシアをスルーするBTC(アゼルバイジャン・バクー、グルジア・トビリシ、トルコ・ジェイハン)パイプラインももとはいえば、対ソ連・そして対ロシアの一環でもあったことだろう。具体的には、英BP(British Petroleum)などの企業連合に日本も加わっていたが米国の旧世界戦略でもあった。
 現状、西側諸国はまだその枠組みにいるし、追米ポチ日本もそこにぼけっといるのだが、このあたりが今後どういう意味を持つのかあまりに微妙。長期的な原油ニーズから見た世界経済の今後の発展は、やはり中国やインドにあるのは明らかだし。
 米国としてはBTCパイプラインは原油の中東依存をさけるメリットもあるだろうが、この地域の中央アジア諸国にヘンテコな幻想が広まる原因にもなりかねないし、すでにやばい兆候が多い。ちょっと気になるだが、いわゆる「不安定な弧」というのはついインド洋側から見やすいのだが、これは中央アジアを含めた地域でもあるので、パキスタンやイランといった地域もそちらに強く関連している。もろやばい。
 ロシアの新規油田開発がそうした意味で、いよいよクリティカルな問題でもあるのだろう。
 現行の原油高騰でロシアの内政もうまく行っているかというと、そうでもない。ロシア市民にしてみるとガソリンは高値だし、経済全体もインフレ(10%)の状態にあるし、旧共産党系の老人の保護というか貧困層をどう扱うかはイデオロギー的なくすぶりにもなている。
 もう一つのクリティカルな問題は石油の精製問題だ。ロシア国内での石油の流通にこれが噛んでいるだろうこともだが、国際市場においても、そこがボトルネックになっている。サウジなども、現在の原油価格高騰は米国の石油精製能力の問題だといきり立っているが一理はある。なぜメジャーは動かないのか。理由は、それだけのインセンティブというかメリットがないだけだろう。
 中東に新規油田を開発するための原油の高騰ラインは80ドルというふうに記憶している。そのあたりまで高騰て高止まりしないと開発の機運はないだろうし、精製についても同様なのではないか。陰謀論を撒く意図はないが、メジャーとしては現在の状態を馬鹿げた投機と見ているとしていいように思う。
 ただ、その間、サウジもだが、OPECもジリ貧に弱くはなっていくのだろう。今回のOPECの五〇万バレル増産アナウンスも闇生産の追認ですかという冗談にしかならなかった。
 日本の立ち位置についてはすでにふれた部分以外でいうと、やはり80ドルくらいまでけっこう平気な状態であり、石油精製能力の優位はあるだろう。あまり奇矯な意見を述べる気はないが、冷戦とも違った奇妙な持久戦の時代にはなっているだろうし、中長期的には日本はかなり有利だろうとは思う。ただ、対露政策はもうちょっとなんとかならないのだろうか。

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コメント

>旧共産党系の老人の保護というか貧困層をどう扱うかはイデオロギー的なくすぶりにもなている。

にもなっている。
でしょうか?

投稿: ななし | 2005.06.22 21:31

>日本の立ち位置についてはすでにふれた部分以外でいうと、やはり80ドルくらいまでけっこう平気な状態であり

逆に言えば、80ドル出せばどこの国でも日本に輸出してくれるわけですから、無理にロシアにこだわらなくてもよいのでは?

投稿: F.Nakajima | 2005.06.22 23:27

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