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2005.06.17

[書評]「ビルとアンの愛の法則」(ウィリアム・ナーグラー&アン・アンドロフ)

 小学校の国語の教科書だったと思う。ある日学校行くのをさぼってみたという「ジルダンとぼく」という少年の話があった。三十年以上も前になるのだろうが強く心に残っている。ブラジルの話だったかと思う。
 主人公の「ぼく」とジルダンは学校をさぼってみたらどんなに楽しいだろうと思って実践した。しかし、一日中遊んで疲れて途方に暮れ、結局、下校の同級生たちをこっそり見に行く。そして、こう思うのだった。彼らは今日もしかしたらぼくたちが一生の間に学ぶことのできない大切なことを学んだのかもしれない、と。
 そんなことはあるわけないじゃんというのが常識だろう。実際、山村幸広エキサイト社長が熱心に新入社員に「時間を守る、会社を休まない」と訓辞をたれても(参照)通じるものではない。でも、たぶん、社長の言っていることも正しいし、人生には「ジルダンとぼく」的なことはあるものだ。学校とは限らないにしろ、ほんのちょっとの知恵を学ばないがために、その後人生に無意味に近いトラブルが増える。
 前フリが長くなったが、「ビルとアンの愛の法則」という小さな本には、え、それを知っていたら人生楽だったのという知恵がぎゅっと詰まっている。先日、実家の書架で見つけた。1991年初版だが、こういう本って今でもあるだろうかと思ってアマゾンを見たが、あるようなないようなという感じだ。古書としては購入できそうでもある。オリジナルの英語の本は売っているというか、やはりというべきかロングセラーのようでもある。ちょっとリストにしておく。


 この本を買ったとき、私は「ベスト・フレンド―新しい自分との出会い」をまねた体裁としてブックデザインされたのだろうと思ったし、その手の内容かなとも思った。が、違った。原書の標題が"Dirty Half Dozen"とあるように、ラッパーならすぐピンとくるだろうが、"dirty dosens"(参照)の洒落だ。といっても、会話のノリの良さというより、この本では、悪口の言い合い状況への対処という含みがある。
 つまり、人間関係の、特にはてしない口喧嘩のような状況への対処の知恵というのが本書の目的なのだが、そうした状況の典型例は夫婦関係や恋愛関係でもあり、本書でもそこに焦点が置かれていることから、「ビルとアンの愛の法則」というマヌケな標題がついてしまった。それでも副題、「60分で読めて、一生離せない本」というのは嘘ではないと思う。
 短い本だし、一句一句が知恵のかたまりでもあるのだけど、ちょっとサワリをご紹介しておくとわかりやすいだろう。もっとも、どれも当たり前の話ばかりで、なーんだと思われるかもしれないのだが。たとえば、

相手を絶えず喜ばせ、満足させ、魅惑することは不可能だ。
 :
ふつう、人の頭の中には二〇~三〇時間分のネタしかない。
 :
目新しいことを言ったり、おかしなコメントを吐いたり、新奇な行動に出たりするのにも限度がある。

 あたり前なんだけど、これがわからない人を私は知っているし、私もそう見られがちではある。
 多くのブログが熱死してしまうのは、この法則でもある。と気が付くのだが、ブログも対人関係のようなもので、コメントスクラムとかも"dirty dosens"ではある。

フェアプレーは禁物である。
 :
フェアに闘っていいのは、映画の中だけだ。
 :
争いを放棄せよ。降参せよ。それも意識的に。

 そいうもんですよ。

大したコトでない些事について、何か素敵なことを言ってやること。
これが大したコトなのだ。

 これがさりげなくできたら、大人です。
 というわけで、全文引用しそうになるけど、もっとも重要なチャプターである「カネを支配せよ」についてはふれない。このチャプター・タイトルは誤解を招きやすい。表面的な意味ではない。このことを知らないと、人生はかなりつらい。
 人生というのはお釈迦様がいうように本質的につらいものだろうとは思うが、無駄につらいことはありうるので、そこが「ジルダンとぼく」的問題でもあるし、そして、こうした知恵は数多く蓄積すればいいものでもない。Half Dozenくらいでいいのではないか。

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コメント

クスクス♪ 「30分で読めたよ」というレビューもあったので、図書館で借りて読んでみます。

投稿: jaz | 2005.06.17 10:50

(付け足し)
そういえば、国会中継を見ていてもplaying the dozensになっていて面白いですよね。

投稿: jaz | 2005.06.17 17:47

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