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2005.06.11

ハイゼンベルクの新しい不確定性原理

 またネタですか的な話でもあるかもしれないのだが、先日のBBCのニュースがなんとなく気になっていて、これは日本ではどう報道されるのか、ブログとかではどうネタになるのかと思っていたが、私はあまりブログ界を熱心に眺めないせいもあり見かけなかった。ベタ記事で読み落としただけかもしれないし、このネタはグーグル様が嫌うのでみなさん避けたのかもしれない。いや、東京新聞三月二六日のベルリン・熊倉逸男名による、サブリード”独歴史家が新説”の外信ですでに話題になっているので、それで折り込み済みということでもあるのだろう。
 先日BBCのニュースはというと、東京新聞の該当記事とは少し趣が違う。話は今月一日付けのBBC”Drawing uncovered of 'Nazi nuke' ”(参照)である。BBC以外でも報道はあったので、外信を原語でなんとなく聞いている人なら、ふーんというくらいのリアクションはあったことだろう。ニュース的には、該当のBBCのページを見ればわかるように、ナチが書いた原爆の設計図(参照)が発見されたというものだ。発見したと吹いているのは、レイナー・カールシュ(Rainer Karlsch)という歴史学者。これがネタの本も出たことは日本でもベタ記事になった。今回のBBCニュースの元ネタは該当記事にあるように、"Physics World magazine"という雑誌。オリジナルの概要などはネットにあるだろうか、ちょっとめんどいので調べていない。
 今回の設計図の発見をどう受け止めるかというのが当然ネタとしての醍醐味である。結論を先に言えば、概ね、やっぱネタでしょ、マジレスはまずいでしょ、「広島原爆はナチス製だった」ですかぁ(同書はウラン説なので今回の話とは矛盾する)、という雰囲気でもある。私なども、作成日時すらわからない文書から歴史のIFを想像するほどタフでもない。
 それでも、BBCなどが報道するように、今回の「発見」に関連していろいろ考えることはある。やや滑稽なのは、この設計図を見るとわかるように、当初から隣の金さんみたいにロケットに組み入れることが前提になっていることだ。そのあたりは逆に当時を思うとSFチックでもある。
 問題は搭載性よりも搭載された当のシロモノだ。筒井康隆「アフリカの爆弾」といったものでもない。カールシュによれば、戦争終結前日には試験段階としては完成したということだ。それがマジなら歴史というものの色合いはだいぶ変わりはするだろう。
 BBCの記事を読んで私が関心をもったのは、ネタ的なそういう面白い話題ではなく、ハゼンベルク(Werner Heisenberg)への言及だった。そういえば、この問題を考えることを心のどこかで忌避していたことに気が付いたからだ。もしかして、ハゼンベルクと聞いてピント来ない世代もいるかもしれないので、Wikiの「ヴェルナー・ハイゼンベルク」(参照)をリンクしておくけど、日本語の解説は薄いものだなと思う。英語の解説はそれよりはましだが、やはり薄い印象はある。
 BBCの記事にもあるように、当時ドイツでこの研究の筆頭にあったのは、ハゼンベルクだが、現状の史学では、彼は核分裂の連鎖反応については当時十分に理解していなかったとされている。それは今回の「発見」でも見直しされるふうではないが、彼以外はどうだっただろうか。そのあたりを、BBCは"Heisenberg's uncertainty "と洒落で表現している。
 カールシュによれば、ハイゼンベルクとライバルにあったカート・ディーブナー(Kurt Diebner)はプルトニウム型の実験に成功すらしていたのだいうのだ。いずれハゼンベルクは無罪ということに変わりはない。そして、BBCの記事は、やはり、そこを締めで強調していた。そういうものなのだ。

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コメント

不確定性原理と原爆はほとんど関係ないんじゃないですか。

投稿: tomo | 2005.06.12 01:38

↑タイトルはBBCの"Heisenberg's uncertainty "という洒落の話でしょう。
 ブルーバックスの「原子爆弾」によると、ハイゼンベルクはアメリカの原爆製造を心配していたそうです。夫人の話だからソースとしてはどんなものか分かりませんが。ドイツでの製造は困難だと考えて最初から手を出さなかったのだとか。

投稿: _ | 2005.06.12 03:58

「当時ドイツでこの研究の筆頭にあったのは、ハゼンベルクだが、現状の史学では、彼は核分裂の連鎖反応については当時十分に理解していなかったとされている。」というのは、ドイツ敗戦後、占領軍が最優先で確認したことから明らかにされた事実と違います。核分裂の発見から連鎖反応の可能性までは、当時の物理学者には広く知られていました。自己持続的連鎖反応(Self-sustaining chain-reaction)をどう実現するかが競争だったのです。ドイツはハイゼンベルクの指揮下、持続的連鎖反応と原爆開発の可能性を調べる実験(指数炉とか臨界実験炉)を進めました。ある洞窟の中に実験跡が見つけられています。この実験からハイゼンベルクは、原爆開発は早急にはできそうにないと結論し、開発計画は中断されたようです。
 この話題を深くえぐったドラマが数年前に上演されています。「コペンハーゲン」というドラマで、新国立小劇場で江守徹らによって演じられました。紹介を以下に書いていますから、ごらんください。
http://homepage2.nifty.com/aquarian/Art/Copenhagen.htm

投稿: アク | 2005.06.12 10:15

これもひどい記事じゃね?
自己満全開のオジサンじゃね?

投稿: れれれ | 2005.06.13 05:52

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» ドイツのウラン・クラブが爆弾のスケッチ描いていても当然では [Tociyuki::Diary]
ネタにマジレスするのもなんだかなと我ながら思いつつも、BBC Newsの例のが原爆のスケッチを書いていたのだよという話を取り上げている極東ニュースへちょっとコメント。 ⇒ http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2005/06/post_3810.html ⇒ http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/4598955.stm まず、1938年のオットー・ハーンの核分裂現象の発見から即座に、当時の科学者の多くは、核分裂... [続きを読む]

受信: 2005.06.11 14:18

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