行け、行け、中国海洋石油!
行け、行け、中国海洋石油(CNOOC)! 川口浩隊長と共に未知なる世界に大金もって突撃。BGMは当然、中国人お気に入りの「軍艦マーチ」(参照)。というわけで、”中国海洋石油、米ユノカルへの買収案提示を最終決定=関係筋”(参照)ということになりました。すっかりその気のようです。
昨晩までは”米ユノカルに対する買収提案、役員会は最終決定しておらず=中国海洋石油幹部”(参照)ということだったので、そういうあたりで落ち着くというのもありかとも思ったけど。別分野でもあるけど”中国国際コンテナ:憶測報道に対して反論”(参照)という一幕もあったりしたし、”極東ブログ: すごいぞ、中国国際ビジネス”(参照)ということでもあるし。
と、中国人の熱気に当てられたもののこのエントリの話はごくしょぼく、備忘メモみたいなものとしたい。わけわかんないし。
時系列で。ユノカルといえば春暁ガス田(参照)。昨年の秋の時点では、今年中に年二五億立方メートルで生産を開始し海底パイプラインで中国東部にガスを供給するという話もあった。
が、”東シナ海の中国ガス田 欧米2社が開発撤退 「境界問題」で日本に配慮か”(読売2004.9.30 )が報じるように、ユノカルは引いた。
日本が東シナ海の排他的経済水域(EEZ)の境界として主張している「日中中間線」近くで中国が進める天然ガス田(春暁ガス田群)の開発に関して、プロジェクトに参加していた英・オランダ系石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルと、米石油大手のユノカルは二十九日、天然ガスの開発プロジェクトへの参加を打ち切ると発表した。
二社は昨年八月、中国国有会社の中国海洋石油総公司、中国石油化工集団公司と、春暁ガス田群の探鉱、開発、販売などの契約を結び、一年間の評価・分析の後に本格参入するかどうかを決めることにしていた。
パイプライン計画の一部は進んでいたようでもある。
ユノカルが引いた理由は採算性らしい(「商業的理由」だそうだ)のだが、よくわかっていない。中国国務院側も外資との協調が重要だとしていたふうでもある(陰謀もあったかも)。
なんだろねと思っているうちに”中国企業、米石油大手の買収検討 海洋探査・採掘技術獲得へ”(読売2004.9.30 )という話になってきた。ユノカルがやらないならユノカル買っちゃうよと中国様。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙アジア版は七日、中国の国有石油大手、中国海洋石油が130億ドル(約1兆3600億円)以上を投じ、米石油大手ユノカルを買収することを検討していると報じた。
FT紙によると、中国海洋石油はユノカルを買収後、米国内の事業は売却し、海外事業を傘下に収める方向で検討中という。アジアでの権益や海洋探査・採掘技術などの獲得が狙いとみられる。
蛇足ながら、春暁ガス田群だけが中国様の眼中にあるわけでもない。そうこうしていると、”米石油大手シェブロンのユノカル買収 M&Aで資源量拡大狙う”(読売2005.4.6)という、よくある話かなとなってきた。
米石油2位のシェブロン・テキサコが、9位のユノカルを買収するのは、時間がかかり、リスクも大きい新たな油田・ガス田の開発より、資源量の拡大や地域基盤の多様化を一気に実現できる買収の方が得策と判断したためだ。
シェブロン・テキサコが東アジアにどういう関心を持っているのかわからない。が、そのあたりで落ち着くといいのだけど、中国様すっかり本気という流れで、米国様の一部もちょっと本気になりかけ。”中国海洋石油のユノカル買収提案報道で、米議員が政府に調査要求=WSJ”(ロイター2005.6.20)。
中国石油大手、中国海洋石油(CNOOC)<0883.HK>が米石油大手ユノカルに買収提案する、と報じられていることをめぐり、米議会の共和党議員2人が、ブッシュ政権に差し止めも視野に置いた調査を要請した。米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が19日、伝えた。
CNOOCは、米メジャー(国際石油資本)のシェブロンテキサコに対抗してユノカルに買収提案しようとしている、と報道されている。
しかし、それってどうよとツッコミ。”中国海洋石油のユノカル買収案、米議会は干渉すべきでない=エクソン”(ロイター2005.6.22)。
米石油大手エクソンモービルのレイモンド会長兼最高経営責任者(CEO)はロイター・エネルギー・サミットで、中国国営の中国海洋石油(CNOOC)<0883.HK>による米石油大手ユノカル買収案に米議会が干渉するのは、「大きな誤りだ」との見解を示した。
かくして冒頭の流れになってきた。
流れを見ていると、中国お得意の中国内部の軋轢がありそうでもある。
一般論的に見れば、産経系”中国企業による米企業買収が活発化 中国海洋石油→ユノカルなど ”(参照)のように資源を求めてということでもあるのだろう。マネーゲームとすればちょっと信じがたい手のようにも見える。
英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」によると、同社のユノカル買収方針は、中国経済の急成長を維持するために、原油などのエネルギー資源を確保しようとする中国政府の政策に沿ったもの。原油価格が高騰し、今後、原油需給が逼迫(ひつぱく)するとの見通しを受けた動きとみられている。
そうなのかちょっと疑問も残るが、同記事では私にはちょっと意外な話もあった。中国は北米のオイルサンドにまで手を出していたのかということ。
すでに、同社を含めた中国の石油大手3社が今年4月以降、相次いで大量の重質原油の埋蔵が見込まれるカナダのオイルサンド事業への参入を決めており、中国のエネルギー政策は、国内外を問わず、原油・天然ガスの確保を最優先課題としている。
ある意味でよく知られていることだが、米国はいざとなれば、自国からまだまだ原油を汲み出すことはできる。問題は技術とコストであり、つまりは、コストということだ。しかし、中国様はさすがは社会主義国だけあってコストを考えないのか?
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コメント
今度日本から1兆円貰う気でいるみたいですからコストは問題ないのでは?
投稿: r-ib | 2005.06.23 12:46
オイルサンドは原油価格が50ドルを超えると採算が合うと言われてました。最近の状況がこのまま続けば使えるのかも。
東シナ海のガス田にしても、オイルサンドにしても、中国にとって自由に採掘できる資源の確保は、経済コストだけの問題ではないのでは。
それにコストが高いか安いかは、同じ条件で比較して初めて言えることでは。中国が果たしてわれわれと同じ条件で経済活動してるのかどうか。
投稿: ■□ Neon □■ | 2005.06.23 13:44
元切り上げ幅を少しでも小さくしようと、力の限り対外投資ですか。涙ぐましい努力ですね。昔、Big Front 先生が円高を回避するために石油を買い占めろと仰っていたのを思い起こさせます。
投稿: 粘着電脳研究家 | 2005.06.23 14:26
この対外投資は元切り上げ幅を縮小に繋がるのか?
まともな神経なら今、石油会社買うなんてあほとしか思えないんだが、中国必死だなって奴ですか?
中国人はアメリカ以上に私腹肥やすし、平気で嘘つくからなー。しかも嘘ついている事を逆ギレ笑える。でもまあコリアンよりはましだけど。
投稿: a | 2005.06.23 18:00
かつて、石油公団が力の限り金をばら撒いていたことを思えば、支那人を嗤うわけにもいかず。(突出した備蓄は有益でしょうが)地政学的には(米国に対抗するどころか)日本だけでも詰んでいる支那としては、必死にならざるを得ないのでは。
投稿: 粘着電脳研究家 | 2005.06.24 02:36
半分大東亜戦争肯定論者な私ですが、そんな私でもどうしても納得できないあの戦争の一番の嘘は、「石油輸入をストップされて、やむをえず開戦した。」ですね。蘭印交渉でも190万キロリットルの妥結に成功してますし。
秦郁彦によると、当時三井の商社員が証言として、米系メジャーからは規制をかいくぐる形での売り込みのオファーがいくつか寄せられていたが、それをつぶしたのは、アメリカ国務省ではなく帝国海軍さんだったそうで・・・
投稿: eternalwind | 2005.06.24 10:36
シナの発想を知らねばならない。
軍事テクノロジーの面では当面、中国は米に対抗出来ない。
よって日米安保があるかぎり日本を地球上から抹殺できない。
だから石油・ガス資源を日本に渡らない様にする事が肝心だ、と。
投稿: ペパロニ | 2005.06.24 12:22
>流れを見ていると、中国お得意の中国内部の軋轢がありそうでもある。
どうもfinalventさんの推察が当たっているようです。
まず、中国では石油業界では3つの会社が存在しており、そのうち中国海洋石油の所属しているグループはその中でも最弱です。
それでも中国国内で支配的地位を取りたいと焦っている海洋石油の首脳陣が世界中で売りに出ている採掘権を買い漁っているというのが実情のようです。(中国のほかの2社はこれほど目立った買収を行っていない)
しかも買収の金の出所は中国側の国営銀行からですが、彼らの心配している採算性の計算を「国策」ということで握りつぶしているような節も。(現に今回のユノカル買収も自己資金では足りずに銀行融資をとりつけている)
おかげでこの会社の格付けがBBB+から格下げされる可能性もあるようで(下がったらジャンクだ)中国株ファンとしては別の意味で目が離せません。
投稿: F.Nakajima | 2005.06.25 10:23