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2005.06.05

英国がアフリカの医療従事者を吸収する

 少し気になったニュース。直接的には日本には関係ないのだが、先日、英国の医療にアフリカ系従事者が増えることで、元の本国の医療が危機に瀕しているというニュースを見かけた。メディア的には、ガーナと英国の関連について扱ったインデペンデント”Medical staff quit for the West, leaving Africa's health service in crisis”(参照同参照)が話題になっていたようだ。


A critical shortage of medical staff who have been lured away to work in hospitals in Britain and the US is crippling Ghana's health service. The rich countries of the West are systematically stripping the developing world of their doctors and nurses in one of the worst acts of global exploitation in modern times.
【意訳】
英国や米国の病院で働きたいと願うことで生じた医療従事者の危機的な不足によりガーナでは医療サービスが壊滅しつつある。裕福な西側諸国は恒常的に途上国の医師や看護婦を引き抜いているが、これらは現代のグローバル化がもたらした最悪の事態である。

 物品の貿易なら比較優位とかで普通の話になるのかもしれないが、医療従事者というのは国家が税を注いで育成補助している側面が大きいので、そうした部分の結果的な搾取にも見える。この問題は次回のG8でもテーマになるらしい。
 同種のより一般的な国際ニュースとしては南アフリカ発ロイター”SOUTH AFRICA: Remedying the medical brain drain”(参照)がある。

JOHANNESBURG, 27 May (IRIN) - The migration of doctors and nurses from Africa has taken a heavy toll of the continent's desperately overstretched health sector, according to a new study published in the British medical journal, 'The Lancet'.

 ここからわかるように話の重要な出所の一つはランセットである。詳細は、同誌 28 May 2005 Vol 365, Issue 9474(参照)にある。参考までに。

Eastwood JB et al. Loss of health professionals from sub-Saharan Africa: the pivotal role of the UK. The Lancet 365: 1893-1900, 2005.

 問題の一般的な背景だが、先進国と途上国の経済差もだが、多少変な言い方だが、英語が通じてしまうということと、英語で専門技術が習得できるということも背景にはあるのだろう。
 Newsweek日本版(2005-6・8)”ロンドン 世界最強のボーダレス都市 移民パワーを起爆剤にしてヨーロッパで唯一人口が増え続ける首都”などでは、多民族流入がもたらすロンドンの活気の、どちらかというと明るい側面に焦点を当てていたが、このような医療の問題についてはふれていなかった。
 と、そこまでは、ニュースを眺めての話なのだが、先日ラジオ深夜便でこの話題について英国からの話を聞いた。主観的な印象とのことだが、病院に行くと医療従事者のほとんどが外国人に見えるそうだ。
 その大半はアフリカ人やカリブ海の島国らしいので、見てわかるというのはまさに一目でわかるという意味なのだろう。

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コメント

一昨年ぐらいにやっていたNHKスペシャル「富の攻防」でアフリカの医療従事者が
英国へ転職する様子とアフリカの医療機関の惨状をやっていましたね。

地球市場 富の攻防 第6回 人材供給大陸~インド&アフリカ~
http://www.nhk.or.jp/special/libraly/03/l0006/l0629.html

投稿: きんぎんすなご | 2005.06.05 16:34

これはまさにフィリピンとのFTAと同じですね。ナースたちは、主に英語圏、特に給与水準の高い北米への希望が多く、優秀な人達はそちらへ行き、次に英国が人気、日本はそれより下で、このような状況では、フィリピン国内に人材が育たず、国内医療がボロボロになる。それでも、外貨を獲得して送金してもらえることで潤う面もある。

日本はこのような制度に加担したのです。日本国内で見ても、仮に10万人がフィリピン人ナースか介護士になると、同じ数の日本人の就業機会が失われます。10万人への教育投資(国としての)を受けた人達は、更にコストの安い産業へと移行して投資効率が悪くなります。10万人が国外送金するだけでも、マイナスになると思います。ですので、単純に海外の専門職受け入れは、メリットが大きくなるとも言えないと思っています。

投稿: まさくに | 2005.06.05 16:43

インディペンダントのこの記事は読んでいました。問題の根はこういう状況を引き起こす本国英国の医療現場にあるのでは。少し話の筋がそれますが、一年以上前であったか、長期的なプランになりますが、ブレア首相は中国からナースを呼び寄せたい意向であると言っておりました。また、パイプカットの手術も医師ではない特定の技術者にさせるとか…。患者からみればさぞやこわい現実が待っていることでしょう。

投稿: 匿名キボン | 2005.06.05 17:23

現在英国に住んでいますが、上の方も書いておられるように、英国自体が医療従事者不足で海外から人材を求めている現状のようです。有色の外国人にとって、医師や歯医者、看護婦の資格さえ有ればビザ・国籍取得がかなり容易になるので、それを目標にする方が多いようです。

一方、英国の場合、コモンウェルス諸国(旧植民地)からの移民希望者が多いと思いますし、実際にそれらの国からの留学生も多い現状です(そもそも英国の言葉や文化に慣れている)。この点は、日本-アジア諸国の関係に単純に置き換えられない部分かもしれません。

投稿: 芝棒 | 2005.06.05 19:46

先日、何年かぶりにロンドンに行きましたが、人種が広がっているような印象をもちました。ライオンキングというミュージカルも見ましたが、南アフリカ出身の俳優が多いのに驚いたものです。現状の国家の存続をマクロでみればマイナスなのでしょうが、そうした人達がアメリカを作ったわけだし、日本人だけでやっている日本のメンタルからは理解しがたいのかもしれません。出張中に、イスラム系の同僚には随分世話になり、グローバル化もいいものだと思った次第です。アフリカに限らず、日本の地方もそうですが、道路を作っている暇があれば、飯を食える産業を作ることが重要かと思います。そうすれば、優秀な人も残るのではないでしょうか。自由にすれば、どこで働いて稼いで住むかは、基本的な権利だと思います。


投稿: 龍 | 2005.06.05 20:06

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受信: 2005.06.11 22:51

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