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2005.05.30

EUが終わった

 EU憲法がフランスの国民投票で否決された。ようするにEU、つまり大欧州という未来が瓦解した。欧米の報道では予想通りということではそれほど衝撃的ではない。私も、今日の日が来ることは一年前に極東ブログ「大欧州がコケるに賭ける」(参照)と早々に賭けておいた。当時は、あなたはヨーロッパの現状を知らないね、と思われていたフシもあったが、また私が正しかったのだ。
 と、威張りたいわけではない。逆だ。その正しさが虚しいものだと思っている。最近の極東ブログ「EU(欧州連合)憲法お陀仏の引導を渡すのはフランスとなるか」(参照)でも同じ主張のままだが、トーンは変わってきていた。どっちかというと、ここでEU憲法が成立してもいいのではないかという思いに傾いてきたからだ。
 このブログを書き始めたころ、つまり、イラク開戦の是非が問われているころ、私はシラク大統領が大嫌いと言ってよかったが、このところ、シラク大統領の敗色が濃くなるにつれ、こういう男の生き様というかフランスの理念というのを通す政治家というのは肯定してもいいのではないかという同情心が沸いてきた。親日家だし、相撲好きだし、なにより、EU憲法成立にフランスの国民投票の必要もないにつっぱしってドツボるその立ち会いの様に、なんというか彼のフランスなるものへの疑い得ない愛のようなものがある。
 しかし、予想は予想だし、結果は結果だ。私は賭けと表現したが、なるべくしてこうなった。EUは壊れた。もちろん、経済統合がなくなるわけでもないし、今日のフィナンシャルタイムズ”France's No is not all bad”(参照)のように、プランBがないとしても、希望がないわけではない、絶望のスパゲティだって腹一杯になるものだ、といった論調もないわけではないが、凝った英国流アイロニーかもしれない。


There was never an instant Plan B on how to respond to the French decision. All 25 members have signed the treaty, and all are committed to debating and ratifying it by November 2006. Several more may say No, including the Netherlands where a referendum is to be held on Wednesday. But that is not a good reason to stop the process. Nine states have already said Yes, including two of the largest, Germany and Spain. Their views should not simply be dismissed because France has voted No. Nor should those of the countries yet to decide.

 ま、がんばってくれ。
 ちょっと余談に逸れるみたいだが、今回のフランスの否決は日本ではあまり報道されなかったようだがフランス国内での16日の休日返上大騒ぎなどという珍妙などたばが案外強く影響を与えていたようだ。あれがなければここまで大差で転けることもなかったかもしれない。
 この後だが、オランダも転ける。間違いなし。こちらの理由は、極東ブログ「テオ・ファン・ゴッホ映画監督暗殺事件余波」(参照)が関係している。そして、英国でも転ける。そして、いよいよブレア首相も終わりとなるだろう。時代が終わるのだ。
 話はEUの終わりというだけでは終わらない。先日の中国で奇妙な反日デモがあったが、中国当局側では日本にばかり目を向けていてEUの視線をややおろそかにしたきらいがあった。日米など軽視する覚悟でいたかもしれないが、中国の貿易比率を増しつつあるEU側でも、おかしいんでね?みたいな声があがってきたのには少し怯んだだろう。
 EUが理性的であり、ある政治・軍事的な統合性を持てば、中国の非理性的な運動へのバランスともなりうる可能性はあった。日本が国連で重要な位置を占めるに際して、米国の視点以外にEUはもう一つの視点を打ち出せる可能性はあるにはあった。
 しかし、もう世界はそうならない。終わったことだ。
 米国が衰退して世界は多極化を迎えるとか主張する人も世の中にはいるが、政治軍事面では、かなり、しばらく、そうなりえないのではないだろうか。
 基底にあるのは、経済のグローバル化は進むが、その反対の力も強くなるということだろう。EUの構想を実際的に否定した少なからぬ要因はフランスの失業者であっただろうし、ドイツの実は混迷の基盤にもそれがある。これらは、保護としての国民国家を志向するが、その力は、経済のグローバル化とせめぎ合う形になるだろう。
 そうした軋轢のなかで、具体的な国家がどういう関係と位置に置かれるのか。美しい夢が美しくても、そこから覚めて、新しい絵を描いていかなくてはならないだろう。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

>EUが理性的であり、ある政治・軍事的な統合性を持てば、中国の非理性的な運動へのバランスともなりうる可能性はあった
ある意味危険なかけではあると思います。

>ドイツの実は混迷の基盤にもそれがある
そうなのですね。来るべき結果が分かっていてYESとは言えないものです。

>プランB
話合われるのでしょうが、現実にそうしてしまったら非難は必至です。拡大EUは、政治家が派手に宣伝するほど、中国、インドに対して強大なブロック圏になれるとは思いません。考える事は山ほどあるのですが、基盤になる自国が大事です。。
されど欧州。finalventさんの言うとおり、消えてなくなるわけではなし、朽ちかけてはいてもまだまだ続きます。

投稿: むぎ | 2005.05.30 19:04

うほほ、こういうお互いオヤジの自己満足ブログというのは見ていてあまりに惨めなもんですねえ!!「また正しかった」って、欧州にいるひとに聞けばEUに憲法なんていらね、当座、経済の自由だけで十分って意見、当たり前にいくらでも聞けるでしょうに。
んでもってオヤジのプロ野球ウンチクなみの国際政治ウンチクですかぁ~。いまどきクリームシチューの上田でももっとましなウンチク垂れてますぜ!!ハ・ゲ・オ・ヤ・ジのウ・ン・チ・・・ク。
結局切り込み隊長や上のURLと同様、この
種の「法螺吹き」「知ったかぶり」「賢者ぶりっこ」の3つ揃ったウンコ・ブログがあたかも自分たちがBlogのパイオニアみたいに自己宣伝してる弊害が実に大きいわけですな。実世界での裏づけが全然ないやつがネットで自我を開陳して喜んでるのは見苦しいでえ。こんな知ったかぶりの表層的なディレッタントのオヤジなんかいらねえ。いい加減ハゲにワックスでも塗って太陽でも反射させてましょよ。

投稿: Hashimoto-Chan | 2005.05.30 19:55

梅雨間近、蛆も湧きます。
嫉妬がその身一杯にたまり、夏ごろにはハエとしてうんこにたかっているのでしょう。
というか、たかがアルファブロガーごときにマジ嫉妬するとは、どこまで貧相な人生を送っているのやら。

投稿: くれふ | 2005.05.30 20:25

>実世界での裏づけが全然ないやつがネットで自我を開陳して喜んでるのは見苦しいでえ。

これって、 Hashimoto-Chanさんのことですがな(w

投稿: むにゅう! | 2005.05.30 20:30

ああ、ちょっと高度な表現を使うと必ず湧きますからなぁ

この問題、ルペン騒動を考慮するとどう見れば良いんでしょうかね
あのころからずっと失業者層の不満が溜まり続けていたってことでしょうか
何年も前になるような気がするんですが状況は悪くなる一方だったんですかね

投稿: 名無しさん@ネット右翼 | 2005.05.30 21:05

名無しさん@ネット右翼さん、こんにちは。一般的には知識人はルペンはキワモノ扱いしていますが、私などが見る感じではそう単純なものではないように思います。今回の大衆的な意味での否定の大半は失業問題、労働者の既得権問題(労働時間)ですが、それについで異民族・異文化問題があります。オランダではこちらがクローズアップされるでしょう。このあたりがルペン支持との関わりでしょうが、ルペン自身については、シラクと同じように終わりが見えるわけです。が、サルコジと共に次世代が重要になるでしょう。そのあたりは、極東ブログ的には以下に示唆したことがあります。

極東ブログ: 親日家ブリュノ・ゴルニッシュ(Bruno Gollnisch)発言の波紋
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2005/03/bruno_gollnisch.html

投稿: finalvent | 2005.05.31 08:40

お互いを尊重し合える距離を保つのって重要だねっ
を再確認しただけなんでしょうか
失業対策でゆっくりと元の形に戻るような気がします
リスクの集中化?も引き起こした
NATOのようなもので十分だった
とか色々な後悔や反省の弁を聞くことになるかも
中国に関しては昔日本があったような袋叩きに会うんじゃないかと
日本が対応を遅らせて損害を被りそうな予感がありますが

投稿: 脇 | 2005.05.31 13:03

Hashimoto-Chanって奴が良い例になっている
彼に得にならないし関係ないのに、彼はなぜこれだけ下劣な行為に走ったのだろうか?
 
欲得が絡まないでもコレだ
欲得が絡んだらどうなるだろう?

EUという21世紀最初の理想については解らない、ここでは空気を感じられないから
しかし理想を描き計画をつくる人間が陥りやすい間違いがある。強くて正しく最適に動く人間を想定し、それをモデルとして計画してしまう
でも理想の多くはHashimoto-Chanのような
日刊現代系の下劣な馬鹿が無意味に足を引っ張る。意味無く汚し貶める。
いやだいやだ

投稿: SIN | 2005.05.31 14:44

はじめまして:

EU憲法はまだ終わってはいないと思います。「プランBがない」って言ったのはいいけど、憲法でEUをより強くしたい政治家がまだたくさんいるし、たとえばオランダ国じゃ政府は「NOの比率は55パーセント以上じゃないとみとめない」と言ってます。ヨーロッパじゃエリートたちしか力を持ってないから、そのエリートのほしい憲法は遅かれ早かれ実現となると私は思います。

投稿: Adam | 2005.05.31 23:58

英国を除き、パスポートなしで国境を越えて行き来できる世界が現実にここにあります。
国民投票は、憲法の中身について皆が知り、議論するいい機会だったと思います。そこにやる意味があったのだと思いますよ。今回の提案について理解が得られなかったことは汗をかいた方々にとって残念なことでしょうけれど、また汗をかけばいいのですよ、今度はもうちょっと若い方々で。例の議員数の件や各組織の設置の問題など課題はいろいろとある訳ですから、各国の政権の足並みが今のように揃うかどうかは定かではありませんが、機会はまた訪れるのではないかなと思います。
日本から見ているほど、文化の差というものは大きくはなく、そして、各国の交流が今後逆行するというのはこちらに暮らしていてとても想像がつきません。

投稿: B☆antiECO | 2005.06.01 05:42

B☆antiECOさんにもう一票
(どうでもいいけど蚊帳の外は英国だけじゃなくてスイスもね)

投稿: き | 2005.06.01 20:37

まぁ統合自体に反対してるわけでもないでしょうから結局は進むんでしょうが、結局はアメリカ化するってことなんじゃないのか?と思ってるんですがどうなんでしょう?

投稿: 通りすがり | 2005.06.02 10:48

アメリカみたいに先住民を絶滅して作った実験国家じゃなくて、もともとの分厚い保守層がそのまんま残った状態での統合だから、アメリカ化はないと思いますよ。そのまんま残ってるだけにここまででも50年もかかってるしこれからも長いことかかるわけだけど、それはそれで面白いと思います。

投稿: き | 2005.06.02 16:43

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