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2005.04.15

外国人との婚外子と国籍の問題

 今朝の大手新聞各紙社説では、朝日、毎日、産経が国籍法をテーマにしていた。話は、13日の地裁判決を受けたもの。訴訟は、日本人男性を父とし、フィリピン国籍の女性から生まれ、日本で暮らす男児の日本国籍の確認を求めた行政訴訟である。地裁判決としては日本国籍が認められた。詳細を調べたわけではないが、このケースに限って言えば、個人的な感想としては、妥当なものでないかと思った。
 ただ、その感想にはかなり心情が混じる。たまたま私はこの男児を地裁判決前にテレビで見てしまった。すらすらと日本語をしゃべっている。その瞬間、私はこの子が日本人にしか見えない。やばいなやられた…やられたというのは映像メディアの威力を無防備に浴びてしまった。
 話がまどろこしくなるが、日本はアジア地域では珍しく家のシステムに血縁の原理がない。親子に血のつながりがなくても家族が構成され社会そして国家が構成される仕組みを持っている。現代日本人の常識からすると、嘘、と言いたくなるだろうが、客観視すれば現実だとわかる(養子ばかり)。そしてその現実と実態のゆがみを正すべく血縁幻想が天皇家に集約されている。天皇家ですら南北朝史などを見るに複雑な状況があるが、それが意識に表面化しないのは、この幻想が十分にイデオロギー的に機能しているからである。反面、庶民レベルでは、この非血縁原理がきちんと今でも機能しているので、親子の情といったものが社会的に認知されれば血縁の原理性が破棄される。話がうざくなったので切り上げるが、この男児もきちんと日本語を話し、日本の挨拶や所作を身につけていけば日本社会にそのまま受け入れるだろう。相貌もジャピーノ(差別語?)と言われればそう見えるが南方系の相貌の日本人は実際はかなり多い。日本の歴史は実際には千二百年程度でありそれ以前の雑婚的な状況は歴史からは見づらくなっているためだろう。
 今回のケースについては、父親も同居しているようだし、日本国籍を否定すると日本人の人情としても受け入れにくいものがあるだろう。また、朝日新聞記事”日本男性と比女性の子ら9人、国籍確認求め集団提訴”(参照)を見ると事態の根にはたんなるフィリピン人の無知もありそうだ(率直にいうと援護団体も気にはなるが)。


 ロサーナさんは姉妹で異なるパスポートを掲げ、「認知の時期が国籍取得にかかわるとは知らなかった。日本で生まれれば国籍がとれると思っていたのに」と話した。

 と、そのくらいに私は考えていたのだが、社会問題としてみるなら、これはそういうことではまったくなく、国籍法の規定を憲法違反と認めた判決というのが重要になる。産経新聞”「非嫡出子も日本人」 国籍法規定は違憲 東京地裁”(参照)を引用する。

 鶴岡稔彦裁判長は「日本国民を親の1人とし、家族の一員でわが国と結びつきがあるのに、法律上の婚姻関係がない非嫡出子に国籍を認めない国籍法の規定は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反する」として男児の請求を認めた。

 鶴岡裁判長というところが案外ポイントかもしれない。国側の反論はこうだったようだ。

国側は裁判で「仮装認知が多発するおそれがある」と反論していたが、鶴岡裁判長は「仮装認知が横行するかどうかは疑問がある」として退けた。

 鶴岡裁判長は仮装認知の横行が疑問であるとしているが、このあたりは世相を知っている庶民としては苦笑するしかない。すでに横行していると見てよさそうだからだ。NHKクローズアップ現代でもこの話題を取り上げていた。ただ、私は、横行といっても国は実態をかなりすでに掴んでいるのではないかと思っている。
 同記事には過去判例の示唆があるが、読み方によっては、高裁で覆る可能性とも受け取れるだろう。

 国籍法をめぐっては、別の規定が違憲かどうか争われた訴訟の最高裁判決(14年11月)で、原告側の敗訴が確定したものの、2人の裁判官が「国籍法3条1項は憲法違反の疑いが極めて濃い」とする補足意見を述べている。

 今回の判決に所謂日本の右派はどういう意見を持っているのか気にはなる。私としては、こうしたケースでは日本国籍を認めるべきではないという意見を持っているわけでもない。反面、毎日新聞社説”国籍法違憲判決 子の地位を国会が考える番だ”(参照)のように、もはや司法の問題ではない、とまでするのは勇み足だろうと思う。

もはや司法で解決すべき問題ではない。立法府の国会が、時代の変化に対応する改善策を練り、法整備を進める必要がある。最高裁の補足意見も踏まえ、下級審の判断とはいえ、違憲とされた国籍法を早急に見直さねばならない。

 国籍法の違憲性については、高裁判決まで待ってもよいのではないかとは思う。ただ国籍法自体については、幅広い視点から再考も必要だろう。それより、こうした問題の背景となる実態について、日本国と国民がどう向き合っていくかという問題は見えてこない。私自身もこのエントリで書いたようによくわからない。

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コメント

マイドオセワになっております。

状況はともかく、フィリピン国籍の女性の「日本で生まれれば国籍がとれると思っていたのに」のヒトコトは、ある意味、重みを持っているような気がしてなりません。

国の言うように、そしてまかり通っている仮装認知の問題もあるでしょう、でもそれは今のようなアジアや世界の動きを考えれば、次代へこの国が進むためには避けて通れない問題になってゆくはずです。こういうニュースを聞く度に、国籍ってなんだろ、国って単位はなんなんだろって思ってしまします。そして、その国に生まれるってどういうコトなんだろうと、あらためて思ってしまいます。

確かに国際法云々の問題ではないでしょう。

戦後、紆余曲折あってマクロ的には世界に受け入れられつつある日本。今度は日本人が日本人として、日本がどうあるべきであるかミクロな視点で考えなければならない時期が来ているかも知れませんね。

P.S.
天皇家の「幻想が十分にイデオロギー的に機能しているからである」は、現代日本では声を大にしてナカナカ言えない部分。言ってもらってスッキリしたのはアタシだけでしょうか。。。

投稿: Nagarazoku | 2005.04.15 10:03

最後のパラグラフの国際法というのは国籍法ですよね?

投稿: とおりすがり | 2005.04.15 11:26

とおりすがりさん、こんにちは。ご指摘ありがとうございました。修正しました。

投稿: finalvent | 2005.04.15 11:29

こういう意見を見つけました。

シングルマザーや独身の悲惨さから、男女は成人して結婚して子供を作るという、保守的な生き方が主流になると、私は思っています。

http://www11.ocn.ne.jp/~ques/diary/diary.html の[2005.4.13]

 この問題を解決する手段は、婚前交渉による妊娠には、出産前の認知があっても日本国籍を付与しない方向への国籍法の改正が必要であるし、法制度上の矛盾を発生させない為には、婚外子の不利を復活させる必要がある。
 子供の為、将来の為と口にする方は多いが、思いつきの大部分は浅慮であることを忘れてはならない。結婚して子供を産み育てるという行為は社会制度面で不利になるばかりであるが、年金や医療保険では世代間負担を正当化させようとしている。善意でコーティングした浅慮を改められない政治の状態は、社会に対する不信を増大させるだけである。


投稿: 名無し | 2005.04.15 16:17

問題の根本は、嫡出子と非嫡出子で法的あつかいが違う事。(世間でも風当たりは全然ちがってるし)。国籍、認知の時期がからむのは少数のケースでしかないしね。結婚、出産そのものを国籍法であつかうことに国際的には多少の問題(というより無理)があるようにも思う。

。。。嫡出子と非嫡出子で法的あつかいが違うのは差別ではないという見方があれば、そっちのが不自然。「嫡出子」とか「非嫡出子」なんてことばがまだ生きてることに驚きを感じます。

仮装結婚、偽装結婚、虚偽の認知etc.によって得られた日本国籍はやっぱり剥奪、でしょ。まあ、ここでも杓子定規にはいかないはずだけど、政府が実態をつかんでいるのなら何とかすべし~!! 結婚なら、実態がともなうはすだし、認知にしても、同居とか、子どもに定期的に会っていなくても、養育費の動きが銀行明細に反映されているのがふつうじゃないのかなあ。

投稿: むぎ | 2005.04.15 18:27

あ、ごめんなさい。仮装結婚なんてないですよね。

投稿: むぎ | 2005.04.15 18:45

いっそ、国籍法を改正して、
日本国籍保持者から、生まれた子供は
無条件に日本国籍としてはどう?
こうすれば、出生地主義みたいな怪しさは
少ないし、永住者も悪用しにくい。

そもそも5年合法的に住めば日本国籍を
申請できるのに、永住権は10年住まないといけないってのは、変。
永住権は3年住んだらよし、と改正するべき。
あと、国籍が欲しければ、勝手に2年後取るだろうし、永住のままでいたかったら、そうするだろう。

投稿: なし | 2005.04.15 19:27

>日本国籍保持者から、生まれた子供は
無条件に日本国籍としてはどう?

それが今の日本の制度です。

だから、北朝鮮国内には多くの日本人がいると思われます。

投稿: むにゅう! | 2005.04.15 22:29

単純に日本で生まれたら日本人でいいと思うけれど。国籍をとるために無理やり日本で産む人が増えたって別にいいでしょ。どうせ、これから子供は減るんだし。

よく分からないんですけど、出生地主義だと何が不都合になりますかね。

投稿: 米国在住 | 2005.04.16 06:05

不法移民が増えると思う。
私は移民受け入れ賛成派ですが、不法入国者には同情できません。

投稿: (anonymous) | 2005.04.16 08:28

親側の勝手な都合で生まれてくる子供の立場が変わるべきではないですね。
そういう意味で婚外子差別は有り得ません。

ただ、国籍は難しいですね…今回の判決は妥当だと思いますが。

投稿: ins | 2005.04.16 11:03

現にいまでも韓国人が米、カナダ、濠などで子供を産んで国籍を得ています。
これ認めると不法移民がまた増えそうだな。
今でさえ偽装結婚が横行してるのに。

投稿: ash | 2005.04.16 15:10

日本国憲法には、国民の意思としてつぎのように明快に示されている

第十条【日本国民の要件】
 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

法律「を厳密に執行して、それが「憲法違反」になるという、判決構成は論理的にありえない
最下級審で、憲法判断を安直に下している上に、憲法のどこをよんでも、憲法違反など出てこないのである。論理的にあり得ない馬鹿判決である

投稿: hayena | 2005.04.16 19:00

 憲法は法律の上位規範なので、法律そのものが違憲となりうる以上、法律を厳密に執行して憲法違反になるということは論理的に充分あり得ることです。

九十八条一項
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅お呼び国務に関するその他の行為の全部または一部は、その効力を有しない。

 hayenaさんはどうお考えかわかりませんが、憲法はその本質において国家権力に対する制限規範であるということを知らない方が読売新聞や産経新聞などを中心にあまりに多いように思います。

 また、違憲審査権は下級審にも否定されていません。日本には憲法裁判所という特別裁判所は存在せず、違憲審査権が司法権の機能の一環とされている以上、司法権を担当する下級裁判所にこの権限を否定する理由がないからです。条文上も最高裁が「終審裁判所」とあるのみで、下級審について否定されていません(八十一条)。

 この事件について詳細に検討していませんが、「憲法違反」が出てきそうな条文を挙げます。

十四条一項
全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。

 この「法の下の平等」がおよそ外国人に適用されないとする説を知りません。(なお、憲法の人権規定は「国民は」と「何人も」という文言を用いていますが、この区別に意味を認めると外国人に国籍離脱の自由を認めることになるなどおかしな点があることから、文言にとらわれることなく個々の規定の性質ごとに解釈がなされています。)
 また、ここでいう「法の下に」とは立法者をも拘束し、法律の内容の平等をも意味すると解されています。日本国憲法は英米法の系譜にあり、いわゆる「法の支配」の理念が妥当すると考えられています。(長くなるので端折って書いている点、ご容赦ください。)

 話題を法律論の局面に限定したコメントですが、このようなコメントにも意味があるかと思い記しておきます。

投稿: hayenaさんへ | 2005.04.16 21:12

どうしてわからないのでしょう

第十条【日本国民の要件】
 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

これが根幹です

ここで言う日本国民こそ、国家に対する憲法の契約を履行させる国民であり、それは「法」によって限定されているのです

今回、訴えをおこされた人自身は、1国民とは「法」によって認めららないという、10条の明確な規定(国民意志)によって、未来永劫日本国民ではありません

帰化申請をすれば、良いですが、戸籍法等で
認められていない以上、この判決、そのそのものが。国民の意思(憲法10条)を踏みにじった、不可思議な判決です。

81条の規定は了解しました
しかし、14条および91条に関しては
すでに10条で不適格性が明白です

日本国民が国家に対して、守らせるべきは
10条の明白な規定を守らせることが最大の
問題であり、10条規定を判断外においた、判決など無意味です

この問題について10条が示す法の執行こそが国民生石であり、今回問題となる行政措置が国民の意思に反している
「10条違反」は成り立ちません

わかっった? w

投稿: (anonymous) | 2005.04.17 00:24

国籍を定める法律が憲法10条に反することは論理的に有り得なくても
他の条文に反して違憲と判断されることは十分有り得る、という話でしょう。

投稿: ins | 2005.04.17 00:47

憲法10条が、日本国民の要件としているのは
実体的には国籍法の規定であり
「国籍法」上日本国民と認められていなければ、国民の要件を満たしていないと考えるのが筋道

日本国憲法(つまり法律の上位規範)が
国籍法該当者を国民としている以上
憲法の他の条文に書かれた、国民の
権利は「戸籍法」上国民であるか否かに
かかっている

どうして、こういう単純な事実が分からないのだろう

憲法10条は最上位規範を求める権利を有する人間が誰なのかを示しているのだよ

たとえば
憲法9条以外に戦争を政治解決の手段とする
ことを否定することが、他の憲法条文から
引っ張ってこれるなら、引っ張ってきてみな

投稿: AMS | 2005.04.17 01:15

憲法すら、まともに読んだことのない
人間が、憲法違反を熱く語るという
この倒錯

病が深いなー

なにが最上位規範だ
そんなことは当たり前
その上で、最上位規範を求める
国民の要件を調べてからものいいな

投稿: AMS | 2005.04.17 01:27

>十四条一項
>全て国民は、法の下に平等であって、人種、>信条、性別、社会的身分または門地により、>政治的、経済的または社会的関係におい>て、差別されない。

この国民は10条に規定された
国民でしょ(爆笑)

投稿: AMS | 2005.04.17 01:55

憲法という最上位規範を国家に守らせるのは
10条に該当する人間です
これ以外は憲法を国家に守らせる「権利」を持っていません
その意味で、国民という言葉は厳密に使われいています
そうして、国民とは戸籍法上に認められる
個人を言うのです
これは憲法学のイロハです

投稿: AMS | 2005.04.17 02:06

しっかし、この裁判官、憲法読んだことあるのかなあ?

投稿: わかっった? w | 2005.04.17 02:12

国籍法の問題を憲法違反から
アプローチするのは不可能ですから
別の方法を考える以外にない

憲法違反を持ち出したところで
最下級審ならではの香ばしさが
出たというお話

投稿: hayenaさんへ | 2005.04.17 02:25

上のコメントのものは
hayaneのコメントです
間違って記入しました
ごめんなさい

投稿: hayane | 2005.04.17 02:26

整理すると
まず根本に

第十条【日本国民の要件】
 日本国民たる要件は、法律でこれを定める
があります

九十八条一項
この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅お呼び国務に関するその他の行為の全部または一部は、その効力を有しない。

そこで
 「hayenaさんはどうお考えかわかりませんが、憲法はその本質において国家権力に対する制限規範であるということを知らない方が読売新聞や産経新聞などを中心にあまりに多いように思います。」

とあるわけですが
今回の場合,そもそも国籍法3条ゆえに日本国籍を有しない人間が,国籍を取得できるかどうかは帰化申請を行えばよいのであって
それを厳密に執行することが,行政の責務でしょう

そのような,きちんとした管理をしてくれと憲法で明言させているのが,国民の意思であり
これは法律一般と憲法の違いでしょう

ここで議論展開されているのは「制限規定」ということを十分踏まえたうえでの議論で,「憲法はその本質において国家権力に対する制限規範であるということを知らない方」というのは,人を小ばかにした愚論だと思いますよ

投稿: 通りすがり | 2005.04.17 10:26

ところでこの鶴岡裁判長は前に「クルド人の難民不認定処分を取り消し」をしている人ですが。
陰謀論みたいになってしまうんですが、この人に当たるまで提訴→取り下げ→再提訴ってやったんではないでしょうか

投稿: (anonymous) | 2005.04.17 11:59

鶴岡稔彦ワールドですね

・難民認定を求めるイラン人青年に一審判決が出るまでの間、強制退去・収容の執行停止
・クルド人の難民不認定処分取消
・アフガニスタン男性の難民不認定処分取消、退去強制令書取消
・ボビー・フィッシャーの一審判決まで国外退去を差止
・退去強制処分を受けたタイ人女性の処分取り消し
・ラーメン店を経営する中国人男性の収容・送還停止

投稿: 通りすがり | 2005.04.17 14:37

青臭く言うと法律は多数派の意思なんです。では、多数派の意思による決め事だから常に遵守すべきかというとそうでもない。少数派の重要な権利を多数派の意思が侵害しているような場合にはその意思を排除できる。これが違憲審査であり、その限りで民主主義も国会の立法権も制約されているんです。

確かに憲法10条には「法律で決めろよ」と書いてある。しかし、これは法律=多数派意思で決定しさえすればいかなる内容であってもよいという話ではないんです。

という訳で、この論点に限って言えば「hayenaさんへ」氏が正しいです。尤も、朝○新聞や赤旗(あるいは聖○新聞?)購読層が法の精神をより深く理解しているかといえば、甚だ疑問に感じますし、国籍法の該規定が明白に違憲かというと、個人的には違う意見ではありますが。

投稿: 久々 | 2005.04.17 22:02

 いくつか補足します。「14条1項によって国籍法が憲法違反と判断されることが論理的にありえないかどうか」がテーマですよね。なお、私も「久々」さんと同じ疑問を抱いていますし、「必ずしも」国籍法の当該規定が違憲とまでは思いません。

 まず、憲法十条は国籍要件を法律で定める旨示していますが、このことから「国籍要件を定める法律はどのような内容であってもよい、およそ憲法適合性を判断されることはありえない」と解釈することはできません。
 たとえば、四七条は国政選挙に関する事項を「法律でこれを定める」としていますが、憲法の他の条文との関係で選挙法の憲法適合性について判断がなされた裁判は最高裁を含めていくつもあります。

 国籍要件を定める法律も、憲法上の他の規定との関係で当然制約を受けます。この意味で、国籍法が違憲であるとの判断は論理的にはありえます。


 次に、繰り返しになりますが、14条は「すべて国民は」と定めているものの、外国人にも当然に適用されています。個々の条文の「国民」と「何人も」という文言によって形式的に人権享有主体を区別する学説は現在存在しないと思います(理由は既に書きました)。
ただし個々人の差異を無視して絶対的・形式的平等を貫くとかえって不平等となるため、14条は合理的差別(区別)は許容しているというのが学説上圧倒的多数説です。〈国籍法の規定によるとある境遇で生まれた子は日本国籍を取得し、別の境遇で生まれた子は取得しないことになるが、その具体的な境目は「合理的」かどうか〉という枠組みで考えることも十分可能でしょう。もちろん結論は合理的→合憲、不合理な差別→違憲のどちらも考えられます。

 要するに、14条1項によって国籍法が憲法違反と判断されることは論理的にありえます。

 念のために付言しておきますが、外国人はおよそ日本国憲法上の人権享有主体たりえないとまでお考えの方もいらっしゃるようですが、それはまったくの間違いです。最高裁もいわゆる「マクリーン事件」判例で「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり(後略)」と述べています。つまり、例外をのぞいて日本人と同じように人権が保障されます。
 14条の定める法の下の平等が「権利の性質上日本国民のみをその対象としている」とする学説は聞いたことがありませんし、頭の体操としても説得的な理由は思いつきません。平等権、つまりおよそ不当な差別を受けない権利というのは前国家的な権利です。

投稿: (「hayenaさんへ」と名乗って最初にコメントした者です) | 2005.04.17 23:10

ご丁寧ありがとうございます
大変、勉強になりました

しかし、国籍法第8条
第八条 次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第
五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの
二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であつたもの
三 日本の国籍を失つた者(日本に帰化した後日本の国籍を失つた者を除く。)で日本に住所を有するもの
四 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しない者でその時から引き
続き三年以上日本に住所を有するもの

とあるので、この方の場合、十分、帰化する条件をもっていらっしゃるのではないかと思います。通常であれば行政行為として国籍を付与するのではないでしょうか?

そのような意味も含めて、憲法10条で、国民要件を法にゆだねることを国民の意思として国家に要求しているのではないですか?

投稿: hayena | 2005.04.18 00:32

 hayenaさん、こちらこそ。不毛な感情の行き違いにならずに済んで感謝しています。

 国籍法8条により帰化申請が可能なことが、国籍法の合憲性に影響するかどうかですが、影響すると思います。上に書いた枠組みで言えば、要素としては「不合理ではない」という方向に働くでしょう。

 ただ、帰化は法務大臣の「許可」によるものなので、かなりの裁量の幅があります。現在の政府にたてついて気にくわないから認めない、という判断もなされるかもしれません。現に出入国に関しては、日本人と結婚して日本に居住しているアメリカ人女性が海外旅行し、日本に戻ろうとしたら法務大臣に入国拒否、という事件もありました(森川キャサリーン事件)。なお、これは「品位を傷つける」として指紋押捺を拒んでいたからのようです。

 行政権の執行として法の恣意的な運用は許されないというのは行政に向けられるべき事柄ですが、「救済手段として機能する帰化申請の恣意的な運用を許すような法律はそもそも充分な救済手段を置いているとはいえず、結局合理的な区別とはいえない」という判断もまあありえるのでしょうね。
 今回の事件については詳細に調べていないので、高裁の判断を待ちたいと思います。

 憲法10条が国籍要件を法律に委ねた趣旨については、私としては以下のように考えます。
 人の出生やそれにまつわる価値観、また人の流出入の動向は時代によって変化するから、国籍を具体的にどのような場合にどのような人に認めるかということは、永い期間にわたって通用すべき規範である憲法で決めるよりも、そのときどきの国会の判断によって細部を決めるほうがふさわしい。
 この点は、ちょうど国政選挙に関する事項を法律で定めるとした47条とパラレルに考えてよいように思います。
 ただし、上のような範囲を超えてまったくの白紙委任をするというほどの意味は認められないし、「憲法上存在が予定されている法律といえど他の憲法上の要請との関係でさまざまな制約をうける」という点においても47条と同様と考えます。

投稿: (「hayenaさんへ」と名乗って最初にコメントした者です) | 2005.04.18 11:37

ashさんのコメントに補足。
そういうこともあってカナダでは中国や韓国からの移民が増えていて、
それに起因するネガチヴな問題も増えてきているという話も。

投稿: ひとやすみ | 2005.04.19 17:51

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