三角合併恐怖は見当違いだったか
三角合併と外資に関わること。まいど自分でわかってないことを書くなよでもあるのだが、それもブログってことかなと。
三角合併について私が気になったのはホリエモン騒動の前からだ。その実施で日本はどうなるのだろうと案じていた。例えば、かつては事実上国家の一部に近かった日立なども外資に買収される可能性もあるのだろうとなんとなく思い、危機感のようなものを感じていた。ただ、なぜ危機感なのかというあたりにすっきりとしないひっかかりはあった。
当ブログのホリエモン話の切り出しともなった「新年好! ホリエモン」(参照)のエントリで私はこう書いた。
TOBについては、現時点だと現金を動かせるやつが強い。が、来年になると通称三角合併(参照)、つまり外資による日本企業の乗っ取りが活性化する、というわけで、外資の課税とかなんかより大きな問題になるようにも思う…が、と、そのあたりはなんだかわくわくするようなマネーゲームか、クレヨンしんちゃんの「やればぁ」でもある。
ふざけて書いたのは、単純な危機感ということでもないだろうなという思いもあったからだ。ここで参照としたのは読売新聞の「アット・マネー」”来年にも解禁 三角合併 ”だった。冒頭、こう説明している。
外国企業が日本の子会社を通じて日本企業を買収する「三角合併」が2006年にも解禁される。株式時価総額の大きい欧米の有力企業が積極的に活用するケースなど、国境を越えたM&A(企業の合併・買収)の活発化が予想されるが、日本企業にとっては、敵対的買収からの防衛が重要な課題となりそうだ。
これはそれほど外した説明でもないだろうし、普通にこうした解説を読めば、先に書いたような私の懸念のようなものにもつながるだろう。
しかし、このホリエモン騒動のなかで、なーんか違うんでないか、という感じが強くなってきた。識者にしてみればなにを今更かもしれない。が、一つの大きなきっかけは、立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」(参照)だ。ふっきれない違和感の部分が誇張されているように見えた。特に”第五回 浮き彫りになったアメリカ金融資本“むしりとり”の構図”(参照)である。
立花隆のこれ、なんなのだろう? 環境ホルモン騒ぎのときの立花隆を思えば、洒落だってばさ、で済むことかもしれないのだが、それでも、かなり変な感じがする。変というのは、なんというか、自分の愚かさを鏡で見ているようなこっ恥ずかしさでもあるのだが、きちんと反論なりができるわけでもない(無知だな私ということ)。
昨晩このエントリを書き出した時点では、同サイトは”第7回 フジのお家騒動から浮かび上がる「因縁の構図」”までが掲載され、一旦は掲載された”第8回 フジを追われた鹿内家とSBI北尾CEOを結ぶ点と線”と”第9回 巨額の資金を動かしたライブドア堀江社長の「金脈と人脈」”という二回分が消えたままだった。私の操作ミスかと思ってGoogleデスクトップで調べたらキャッシュが並ぶので単純に非公開になったようだ。
今朝見ると、この二回分は復活しており、さらに非公開についての弁明”連載第8回及び第9回の記事が再度公開になるまでの経緯について”(参照)が追加されていた。弁明は特にどってことはない。見方によってはブログと紙媒体の差の象徴的な出来事ともいえるかもしれない。なお、以前掲載されていた二回分については、よいことか悪いことか判断しかねるが、「ヒートの情報倉庫」”立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」1~9”(参照)で読むことができる。詳細の突き合わせはしていない。
立花隆のこの連載で私が気になったのは、詳細の正否より、この外資の陰謀だみたいな展開や、ある種陰謀論的なところに出口を見いだそうとする思考のパターンのようなものだ。それは、とてもメカニカルな、陳腐なことなのかもしれない。私のブログなども、陰謀論と揶揄されることがある。そうならないように気を使っていてもうまくいかないのかもしれないし、そう見えるということもメタなメカニカルな枠組みがあるだけなのかもしれない。
ひどく単純に言うなら、立花隆の、こうした外部からの陰謀論的な思考は、恐怖というもののリアクションへの違和感なのだろう。国家の外から恐い者がやってくる、みたいなパターンだ。黒船とも比喩される。そして、そこまで単純化するなら、さて、この件で、本当に日本に襲いかかるような恐怖というのはあるのだろうか?
吉本隆明の「共同幻想論」がなぜか書架にないが、その他界論だったかで私が学んだことは(大ハズシかもしれないが)、この手の恐怖というのは共同体の内部に閉じさせようとする幻想の機能でもある。
三角合併など外資の活動の実際はどうなるはずのものだったのだろうか。そうしたことをつらつら思っているおり、先週のニューズウィーク日本語版4・6に掲載されたスティーブン・ヴォーゲル、カリフォルニア大学バークレー校准教授のコラム「外資を困惑させるライブドア狂騒曲」が興味深かった。読みづらいコラムではあるが、会社の買収行為に過剰な防衛を張るのは間違いだとして、彼はこう続ける。
そういう意味で、ライブドア騒動への自民党の反応は、企業買収という難題へのまちがった対処法の手本ともいえる。自民党は、外国企業が株式交換を用いて日本企業を買収する「三角合併」の解禁を一年遅らせることを了承したが。敵対的買収が激増するとの懸念から、企業に防衛策を整備する時間を与えた。
この論理には、致命的な誤りがある。三角合併は敵対的買収ではなく、友好的な買収の手段だ。解禁延期は的はずれな措置としかいいようがない。
類似の主張は同誌「ライブドア 和製黒船が挑む鎖国経済 ペリー来航以来、外圧でしか変われなかった日本に生まれた内なる圧力」にもある。ライブドアの件では、外資が日本の放送会社を買収することなどありえないことだとしてこう続ける。
それでも自民党は、ライブドアの一件を口実に、商法改正に盛り込むはずだった株式交換方式による外資系企業の日本企業買収の解禁を延期した。皮肉なのは、株式交換の解禁は、敵対的買収とはまったく関係ないことだ。「法律を読めばわかる」と、日本でM&AのアドバイスをするJTPコープのニコラス・ベネシュ社長は言う。「株式交換のスキームは本質的に友好的なものだ」
そういうものなのかと無知な私は考える。だが、そうであっても私の無知ばかりでもないかもしれない。こんな話もある。3日付の朝日新聞記事”「堀江社長への十分な抑止力」SBI北尾氏、本紙に語る”(参照)だ。SBIの北尾へのインタビュー記事である。
また、国内における敵対的買収について「銀行が株を売り、安定株主がいない今の危機的な状況で、敵対的買収の防御に法制度がついていっていない」と指摘。「外資はどんどん動いていて、うちにもたくさん話が入ってくる。このままじゃ手遅れになる。政治家と行政の怠慢だ」と強調した。
もちろん、このインタビューだけで北尾って何?と思うまでもないし、三角合併を直接指しているわけでもない。でも、これって、すごく違うんじゃないのか。
さてと考える。こうした問題を素人はどうとらえたらいいのか。というか、素人/玄人と切り分けると逆に話は混乱するかもしれない。どこかに常識的な、簡素な基準がないだろうか。
私の当面の結論は、会社と株主の関係が健全なら、外資がどうのという問題はありえない、というか、それは問題にすらならない、ということだ。とりあえず、そういう視点を基準にしておく。
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コメント
http://guide.cocolog-nifty.com/guide/cat182269/index.html
エントリとは関係ないですけど、ココログの極東ブログ紹介が事実と異なってます。お気づきかもしれませんけど、一応。
投稿: くもり | 2005.04.07 19:19
はじめまして。いつも興味深く拝見させて頂きます。
三角合併の法的な意味での使い勝手という非常にテクニカルな部分に関するものですが、前に検討したことがありますので、僭越ながらTBさせて頂きました。
投稿: 47th | 2005.04.07 23:15