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2005.04.17

国連アナン事務総長と英米との反目

 国連不正問題関連で多少気になる動向があり、例によって国内報道が薄いので、簡単に触れておきたい。話は、この枠組みの中で、国連のアナン事務総長が英米に反撃に出たということ。それに加えて、英米がアナンに批難の応戦していることだ。英米側の応戦については、国内報道を見かけない。
 国連不正が自分の息子にまで及びバックレようもなくなったアナンだが、依然辞任の噂も聞かれない。将棋で言えば、あと二手くらいで積みそうだったのだが米国側の思惑が入り組んだこともあり、アナン続行の小康が続いている。状況から見れば、アナンは米国に懐柔されたかとも思うのだが、今回の反撃からは、なかなかアナンの気骨も感じさせる。ようは、この強気ってなんだよ、ということもあるのだが、まず、事態を見ておこう。ロイター”イラク石油交換疑惑、米英にも責任の一端=国連事務総長”(参照)はこう伝えている。


 アナン国連事務総長は14日、イラクの石油・食糧交換プログラムの疑惑について、米英にも責任の一端があるとの考えを示した。
 事務総長は、国連とメディアが参加したセミナーで講演し、フセイン元大統領が獲得した資金の大半はヨルダンとトルコへの石油輸出によるもので、国連のプログラム外の取引だったと指摘。これを阻止する力があったのは、米国や英国のような国に限られていたのに、「同盟国だったためにトルコとヨルダンに対しては目をつぶった」と述べた。

 ロイターの記事の割には話が錯綜している印象も受ける。国連不正とフセイン下の石油密輸は必ずしも同一ではない。
 この話は当然ながら反米的なトーンを持っているので、中国がすぐに釣られて脊髄反射している。CRI”アナン事務総長、米英はフセイン政権下の石油密輸に責任を負うべきと示す ”(参照)がそれだが、こちらの報道ほうがやや詳しい。

 国連のアナン事務総長は、14日ニューヨークにある国連本部で、「アメリカとイギリス両国はイラクのフセイン元大統領が国連の制裁下で、石油を密輸を通して、巨額の不法資金を受け取ったことに責任を負うべきだ」と述べました。
 アナン事務総長は、「イラクのフセイン元大統領が、20世紀の90年代に不法資金を得た主なルートは、石油の密輸であり、国連の"石油と食品の交換計画"ではない」と述べ、さらに「アメリカとイギリス両国は本来ならフセイン政権の石油密輸を制止できるところを、自らの利益から、フセイン政権とトルコやヨルダンとの石油密輸貿易を放任した。

 余談めくが、CRIはダルフール問題などの報道も多いのだが、中国に都合のいい偏った報道しか流していない。同程度に中国に都合の悪そうな外信も日本語で流しているところがあると面白いのだが見あたらない。
 話をアナン反撃に戻すと、アナンの言い分は概ね正しいと私は思う。つまり、この密輸問題の全貌がよくわらかないし、大枠として見れば、米英が関わっているとしか思えない。この点については、私の見落としかもしれないが、反米左翼的な言論でもうまく取り上げられていないのではないか(ブログ興隆に比して反米議論が粗くなっている印象がある)。
 この英米系の密輸のルートは、私の勘違いがあるかもしれないが、基本的にイラクの油田と英米メジャーと深い関連にあるはずだ。イラクの油田の利権について、英米系のメジャーはキルクークを中心とした北部、つまりクルド人の地区にある程度限定されている。石油利権という点でいえば、英米系はあまり南部には関心を持っていない。その面から見れば、英米にとっては、クルドが安定こそが重要で、シーアやスンニの地域がある程度荒れていてもそれほど問題はなかった。
 この問題はクルド側からも見ることができる。ある意味出来レースで大統領となったクルド愛国同盟(PUK)出身のジャラル・タラバニだが、昨年国連に敵意のある発言もしていた。読売新聞(2003.5.23)”イラク決議採択 米の勝利、国連が認知 「占領」にお墨付き”では次のよう伝えていた。

 対イラク国連経済制裁は、一九九〇年の湾岸危機をきっかけに、フセイン体制の弱体化を目指して発動された。だが、これによって、イラク国民の生活は極端に窮乏、医薬品不足で乳児死亡率が著しく増加するなどの事態も発生した。
 その一方で、フセイン大統領、親族、政権中枢らは、トルコやシリアを経由した石油密輸や石油販売先からのリベート徴収などで巨額な富を得ていた。
 こうした経済制裁の非合理性は、イラク戦争の前からすでに明らかになっており、国連組織の官僚的体質と相まって、「イラク復興には国連を介した援助は必要ない」(クルド愛国同盟のタラバニ議長)との声まで出ていた。

 こうした背景からすると、英米責任論は結果論であって、タラバニ大統領がむっときているように国連の不合理と無力が根にあると見てもいい。そうした視点からすれば、今回のアナンの反撃は、八つ当たりという印象も受けないではない。
 アナンの反撃に英米側はすぐに対応したのが、日本国内での報道は見かけない。話としてはVOA”US, Britain Reject Annan Criticism on Oil-For-Food Scandal”(参照)が比較的読みやすいのだが、当の英米側の対応はそれで十分かというと、私は釈然としない。例えば次のような言い訳は妥当なものだろうか。

"There's a fundamental difference between oil smuggling, illegal oil smuggling that was done under the table and behind closed doors, and the very public process that the American government went through to exempt certain countries. Don't forget that this exemption came before the oil-for-food program was even established," he noted.

 もともとこのアナンの反撃はオフィシャルな発言ではなかったこともあるのかもしれない。
 合わせて、ライス国務長官が国連改革に圧力をくわえるような発言を出している。表向きはボルトンがらみでもあるのだが、タイミング的にはこのアナン発言の小競り合いの渦中にある。VOA”Rice Says UN Cannot Survive as Vital Force Without Reform”(参照)はこう伝えている。

Ms. Rice said that with the United Nations facing scandals over the Iraq oil-for-food program and the conduct of peacekeepers in Africa, it in her words "cannot survive as a vital force in international politics if it does not reform its organizations, secretariat and management practices."

 以上、話をうまく整理してない部分も多いのだが、日本としては、今、国連常任理事国入りでアナンに期待している手前もあり、米国と国連の問題にあまり触れたくないのが実情だろう。中国の暴動も基本的には、この関連の枠組み(アナンの国連ということとその後の改革)にあるはずなのだが、そうした言及もあまり見かけないように思う。

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