ニートについて
ニートについてなんだか、どうも踊りたくなるほどスカな話になりそうな感じもするのだが、もやっとしたあたりをもやっと書いてみたい。
語義は、NEET: Not in Employment, Education or Training から。直訳すると「就職してないし、学校に行ってないし、職業訓練も受けてない」ということ。洒落元は、neat。米語と英語で語感が違うが、「こざっぱり」「身ぎれいに」ということで、無職でだらしなくしてんじゃないよ、という皮肉でもある。英国で使われてきた概念らしく、英国政府系 info4local"Young People not in Education, Employment or Training: Evidence from the Education Maintenance Allowance Pilots databas"(参照)にもこの概念を使った調査がある。ざっと見た印象だと就労より教育に主眼が置かれているようでもある。
小杉礼子著 フリーター という生き方 |
日本では労働政策研究・研修機構の小杉礼子副統括研究員あたりが言い出したらしい(参照)。なんかこの言葉は突然世間に躍り出たという感じでもある。
定義は…というのがよくわからない。内閣府青少年育成ホームページに”「青少年の就労に関する研究調査(中間報告)」<就業構造基本調査特別集計>”(参照・PDF)というのがあるのだが、そこにはこう書いてある。
いわゆる「ニート(通学も仕事もしておらず職業訓練も受けていない人々)」とは、非求職型及び非希望型の無業者として、日本では通常理解されていると思われる。
ヲイ、「思われる」ってどうよ、とツッコミたくなるのだが、ようするに内閣府的にはニートという言葉はなさげ。
いったいどこでわれわれはニートを実体的にあるように思いこんでいるのかよくわからない。生活実感としては、学校を出ても就職しねー若者を「あれがニートだべ、んだ」ということなのだろうとは思うのだが、報道でもかなり実体的である。例えば、先月二三日の産経新聞”「ニート」再集計したら85万人”(参照)はこんな感じ。
内閣府は二十二日、十五歳から三十四歳のうち、就職の意思がない人と意思があっても求職活動をしていない人を合わせた「ニート」と呼ばれる若者が約八十五万人に上るとの調査結果を発表した。
ニートに括弧がついているのは実は定義なんかないんだよ照れるなオレ的な表現なんだろうと思うが、この括弧付けが実際には括弧が付かないと恰好付かないほどでもないというのが現状だろう。
この報道では、総務省が平成十四年に実施した就業構造基本調査のデータを再集計して言い出したとある。オリジナルはこれでしょ、”平成14年就業構造基本調査について”(参照)。これには用語集(参照)がついているのだが、「ニート」なんていう用語はない。古いデータをマーケティング的に新しく見直してみました的な発表なんだろうが、ようするに新しい事実が出てきたわけではない。
奇怪な印象も受けるのは、ニートが話題になったときは、厚労省周りからだった。
厚生労働省が昨年九月に発表した労働経済白書は十五年のニートを約五十二万人と試算したが、家事手伝いを含んでいない。内閣府は家事手伝いに相当数の若年無業者が含まれるとみて、今回の調査では加えた。
保育園と幼稚園で厚労省と文化省が対立しているの同じように、省庁間のゲームなのだろうか。いずれにせよ、内閣府は、通称カジテツ、家事手伝いをニートにしちゃったわけだ。さっさと嫁に行け、という意図か、など書くと陰謀論だとか批判されちゃう?
カジテツをニートにするのはどうかなと思うが、先の「青少年の就労に関する研究調査(中間報告)」に戻ると、ここに「表1 無業者とその類型についての定義」というのがあって、ニートに相当は非求職型及び非希望型の無業者の解説がある。
非求職型無業者
無業者(通学、有配偶者を除く)のうち、就業希望を表明しながら、求職活動はしていない個人
非希望型無業者
無業者(通学、有配偶者を除く)のうち、就業希望を表明していない個人
そして、無業者の定義はこう。
無業者(通学、有配偶者を除く)
高校や大学などに通学しておらず、独身であり、ふだん収入になる仕事をしていない、15歳以上35歳未満の個人(予備校や専門学校などに通学している場合も除く)
あらためて定義を見ると、ツッコミたくはなる。
ポイントは「独身」かぁと思う。ニートやめたきゃ、職探しより、所帯を持て、と。所帯をもてば、貧乏人なら親がかりってわけにはいかねーぞ、と。ちなみに金持ちの子供は昔からニートです。
もう一つポイントは、ここに三五歳って年齢制限があるわけだね。つまり、三二歳くらいの通称ニートはあと三年で目出度くニートじゃなくなると。で、どうするってツッコミはここではしない。
通称ニートはわれわれの日常生活で目にするので、あ、あれ、ということだが統計上の実態はどうかと…とブログを見てたらブログ「そーろんの憂鬱 f(^^;」”フリーター、ニートの実際値を求めよう(^O^)”(参照)が絵文字とともに示唆深かった。っていうか、パクラしてもらいます。
学生を除いた就業者の状況を知りたいので、学生を除いた総人口は、26,417,800人
男性:13,205,900人
女性:13,211,900人
◇
これで就業率を計算して見ると、79.69%
男性:90.62%
女性:68.78%
◇
あら……やっぱり、だいたい国が発表している数字って正しいのかなぁ…
(発表している失業率よりかはかなり多いけどね(--;)
これから見るとこの年代の男性の失業者って、10.32%なんだねぇ。
この先にも考察があって、これが結論でもないのだが、いわゆるニートは男性で見ると、10%弱くらいなんじゃないかと思う。
これが全然違うということもあるかもだが、仮にニート率10%とすると、豊かな社会ってそんなものじゃないかと思う。インドネシアで闘鶏に興じてるオッサンとか見ても、無業者はそのくらいいても不思議ではない。
あと、日本には自衛隊はあるけど、国軍といったものでもないし、州兵・予備兵といったものもない。そういうものがあれば、10%くらいの無業者はすっと吸収されるんじゃないかという気もするが、別に軍政になれっていう意味じゃないですので、変な思い込みの批判はご免。
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コメント
毎度お世話になっております。
「仮にニート率10%とすると、豊かな社会ってそんなものじゃないかと思う」ってあったケド、ホントだよね、アタシもそう思う。ニートが居てもいいじゃないと思う。必要に迫られたらなんとかしなきゃなんないのは本人だし、そういった過程で彼らも何かを見出すだろうし、そのコトが本当は大切なんだし。マスコミやなんやらで騒ぎすぎな感もあるような気がする。弱いものイジメじゃないんだから。。。
「ちなみに金持ちの子供は昔からニートです」の一文はワロた。毎度のコトながら正に的を射抜いておられる。
投稿: Nagarazoku | 2005.04.12 12:32
自衛隊、あるいは憲法改定後の自衛軍と言ったものに吸収させなくても、
政府開発援助の名の下に、スコップや安全靴を支給し、
備蓄米を持たせて途上国へ送ればよいのではないか。
同時に、「そんな援助は要らん」と言える発展した国へは、
政府開発援助を打ち切る、そんなきっかけを作れる一石二鳥。
と言う妄想。
10%遊んでる豊かな国なので、
その豊かさ、遊び部分を他国へ分けてあげましょう。
投稿: at | 2005.04.12 14:55
日本中の杉と檜を切って他の樹を植林、雑木林にするなら手伝います。
投稿: ニート | 2005.04.12 15:20
トラックバックしていただいて…っていうか、引用までしていただいてありがとうございます(^^)
あれを計算していて、たぶんフリーターとニートを合わせると400万人くらいかなと思っています。
多いか少ないかの判断は人それぞれなので、僕は特にコメントはありません。
昨日の記事ですが…
http://newsflash.nifty.com/search?action=1&func=2&article_id=tk__yomiuri_20050411it05&csvname=305723954
なんか、日本経団連の奥田碩会長、日本商工会議所など経済界のほか、労働組合の連合、学識経験者らで構成した国民会議を作るらしいです。
フリーターやニートの気持ちがわからない人たちがいくら騒いでも机上の空論…そう感じているのは僕だけなのでしょうかf^^;。
投稿: そーろん | 2005.04.12 16:18
>日本経団連の奥田碩会長、日本商工会議所など経済界のほか、労働組合の連合
これまで低賃金のフリーターによる利益をさんざん享受してきた人たちですね。w
投稿: Baatarism | 2005.04.12 17:33
フリーターやニートとカタカナで言うから
いけない。
短時間労働者と生活に余裕がある人
と書き改めるべき。
そうすることで、日本がいかに豊かなのかが
よくわかる。
失業率をゼロにしようなんてのは、
本当は、社会主義の貧しい国が言うこと。
(北朝鮮とか)
一人当たりのGDPが一万アメリカドルを
超えると、失業率なんて、5%から10%に
なってもたいしたことなくなる。
(例:少し前の日本、アメリカ、ドイツ
カナダ、オーストラリア)
そういう国には、海外移住の自由や海外留学の自由や海外長期旅行の自由があるから
それで、失業者を事実上減らしている。
ちなみに、仕事が見つからなくて、
失業保険に頼っている人も失業率の
統計に入っているけど、彼らも「ニート」です。
投稿: あ | 2005.04.12 19:58
経団連の奥田碩会長ってトヨタの人だよね、トヨタ自動車は純利益が一兆円あるから。年収五百万円の正社員を二十万人雇える計算になりますね、すげー。とりあえず、一年だけなら目標が達成できる。
投稿: アマウーリ | 2005.04.12 21:53
問題はその後の社会が国際的に立ち遅れる可能性があるというところで、しかしながら常に余剰を今の価値観で投資し続けないといけないかどうか定かでもないんだけど。
暇があるなら何か文化的なことでも蓄積しておいて欲しいなあ。ゲームしたり映画見るだけでも世の厚みが増すと思う。出来ればそれらをまとめてみたり創作してみたりしてくれると良いんだけど。分類学は人が居なくて困っているという話があった。ガツガツしなくてもいい社会なら興味に任せてそういった金になりそうに無いトコロにリソース割けるといいね。
世の中不景気で貧乏ってことになっているから妬みがひどくて身動き取れないってのも良くないよ。デフレは巨額の借金した金持ちはそりゃ涙目だけど庶民の影響は限定的。小説も権威が邪魔で今更なんで漫画を描いてみたらいいんじゃないかと。国策にも合致するし。
投稿: papepo | 2005.04.12 22:34
ニートについては、結局景気が良くなれば議論にならない程度まで減少するんだろうなあとしか思えないんですが。
ニートが問題になったのも、1998年以降の日本がデフレ不況に沈んだ時期だし。
だからニート対策なんて考えるよりも、リフレ政策を導入して景気回復を目指す方が、よほど有効だと思います。
投稿: Baatarism | 2005.04.13 11:10
我が国でも社会主義がすたれて、自由化が進んだ結果、富めるものは2割の頭数で8割の年収を稼ぐ、80:20の法則(べき乗分布)が個人にも働きはじめているという印象です。
投稿: akiller | 2005.04.13 20:05
NEETの問題って、国が Training 環境を整えてもなお、NEETで居続けてしまう人たちが発生することにもあるはずなんですよね。Training 環境が形ばかりスタートしただけの日本ですから、無業者・失業者の枠で語ればそれで十分かなと思います。しかし日本の若者は、10年ほど前に流行した映画「トレインスポッティング」よりもずっと酷い状況に置かれていて、クスリや犯罪行為に手を染めないという彼ら自身のマジメさによって平安が保たれているだけかも。いやでもそういえば、闇金なんかは結構就職志望者が多いらしいですね。
投稿: スープ | 2005.04.14 18:39
>経団連の奥田碩会長ってトヨタの人だよね、トヨタ自動車は純利益が一兆円あるから。年収五百万円の正社員を二十万人雇える計算になりますね、
正社員(ここ重要ね)に年収500万(税込みでもいいかな)を払うために、幾ら必要か解っているのでしょうか?
正社員なら、社会保険、年金の積み立て、福利厚生etcetcで500万で済みません。
投稿: RS | 2005.04.17 22:48
予備役に関しては、ちゃんと予備自衛官補というものがありますよ。
今の若者は仕事をしたくないという理由で無職を選択しているだけです。私もいわゆる今時の若者世代なのでわかります。
それでいて保証してくれと叫ぶことは許されないでしょうね。働かないということを選択した責任は、きちんととってもらわなければ困ります。
今までのえせ平等教育の悪影響が出てきたということでしょうか。平等なんてものは理論上にしか存在しないものだということが理解できていないのでしょうね。
共産主義や社会主義ですら現実には平等ではありませんよ。平等だと思いこんでるだけです。
投稿: BBB | 2005.04.18 15:56
ニートの味方です
http://blog.livedoor.jp/hide5972/
投稿: kkk | 2005.11.25 20:48
>ニートやめたきゃ、職探しより、所帯を持て、と。
いや、全くその通りなんですけどね・・・。「引きこもり・ニート」問題の90%は、彼らが本気で、「恋愛」できるかどうかにかかっている気がする。
しかし、最近これって、社会に余裕があるとかそういう問題じゃなくて、もっと根深いような気がして来ました。・・・家の周りの、引きこもり&ニート持ってるお宅をみると、大抵の場合、親御さんがものすごいダブルスタンダードです。つまり、「俺より偉くなって欲しい」という期待と、「俺より成功したら許さない」という嫉妬のダブスタ。・・・これがあると、子どもは一歩も動けなくなります。
「引きこもり&ニート」の問題は、子どもの甘え&依存だってよく言うけど、実際には、親世代もまたどこかで変わらないと駄目だと思う。・・・何故なら、もし子どもが頑張って「回復」しても、「人に迷惑をかけないで出来るだけ金を稼ぐ」という価値観しかないと、必ずや次世代に、同じ問題が持ち越されると思うからです。
投稿: ジュリア | 2010.03.14 14:11