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2005.04.28

郵政民営化法案問題をできるだけシンプルに考えてみる

 郵政民営化を巡る問題をこの機に、できるだけシンプルに書いてみたい。
 抜本的な認識違いもあるだろうし、この問題は、賛否が明白に分かれるので、もしかするときつい批判を受けることになるかもしれない。
 27日、郵政民営化法案がようやく閣議決定され、国会提出となった。この問題は極東ブログでも以前にも扱ってきた。今回のエントリはこの流れの話というほどではないが、一応過去の主要なエントリは以下である。


 さて、何が問題なのか?
 問題は、郵政がこれまで行なってきた貯金と保険の二つの事業、つまり金融部門を政府から独立させるかどうか、その一点だけだ。郵便事業やネットワークといったことはどうでもよい。
 郵政の持つ金融部門が政府から切り離されないということは、事実上、総務省管轄下に置かれることになり、国債の担保とされている膨大な資金が金融庁の管轄外に置かれることになる。そんなことになれば、金利政策決済の安定性など原則的に不可能になり、そんな市場を世界が信頼するわけもない。であれば、それだけで単純に日本経済の死になると私は思う。そんなことも自民党与党の法案反対勢力はわからないのだろうか。
 自民党与党の法案反対勢力がやっていることは、すでに世間の空気からして郵政民営化の看板自体で争うことはできないので、オモテ向き民営化にしておきながら、この金融事業の実態は政府直轄とするための抜け穴作りである。
 反対勢力がしたいことは、ここに保持される三五〇兆円を支配だ。この金額は、国民の家計部門の四分の一を占め、規模としては四大メガバンクと大手保険会社の合算に相当する。
 今年に入ってから自民党と政府内でもめたのは、民営化を骨抜きにする抜け穴のでき具合だけだ。
 抜け穴はできたのだろうか?
 ここで、メディアの煙幕が立ち上る。抜け穴があるとする例としては今朝の読売新聞”改革の貫徹へ国会審議を尽くせ”(参照)がある。典型例なので引用したい。

 法案には、持ち株会社が保有する貯金と保険の金融2社の株式を、完全民営化までの移行期間中に完全処分することが盛り込まれた。
 ところが、合意文書は“抜け穴”を用意した。いったん市場で売られた金融2社の株式を、持ち株会社傘下の郵便や窓口網の両社が買い取ることを認める。持ち株会社が完全処分の義務を果たさなくてもペナルティーを科さない。
 抜け穴を活用すれば、金融2社は政府出資の持ち株会社の傘下にとどまり、政府の関与が続くことになる。経営上の様々なリスクも生じかねない。例えば、郵便会社が経営悪化に陥った場合、金融2社へ悪影響が及ぶ。利用者が貯金の引き出しに殺到すれば、金融不安を招く。
 抜け穴をふさぐ必要がある。

 これは煙幕だと私は思う。なぜなら、合意文書は法案ではないからだ。法案は玉虫色の性格を持ちながらも、明白な抜け穴はふさがれている。ここで小泉総理は、なかなかのグッジョブをしている。評価したい。
 煙幕ではないが、無責任な放言も目立つ。今朝の毎日新聞社説”郵政民営化法案 後は野となれ山となれか?”(参照)がそれだ。

10年後の姿さえ、当初、小泉首相や竹中平蔵経済財政・郵政民営化担当相が思い描いたものになるのか、保証の限りではない。

 それでは十年後を保証せよというのかと脊髄反射したくなるほど大人げない。この他、煙幕としては、今回の騒動はただの権力闘争の道具だとする話もあるがくだらない。
 以上、現状では、郵政民営化法案は日本の現状を考えるなら可能なかぎり健全に推移している。小泉がんばれと思う。
 あと一点。この点については、私も明確にわからないのだが、気になるので追記したい。
 郵政の金融部門が民営化されれば民業を圧迫する巨大銀行ができるだけだからいかんとする議論がある。この点は私はわからない。というのは、三五〇兆円というと巨大だが、この実態は民営化後も従来の国債維持のために旧勘定となり、事実上自由な運営はできない。むしろ、民営化は日本がこれまでやってきた国債の問題の内情を暴露するもっとも適切な契機となると思えるのだが。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

 郵貯をどうするかは10年後以上先の国の借金のありかた、引いては国のありかたを決めるいわばグランドデザインにあたるはず。政治家はグランドデザインを語れるくらいでないといかんね。

投稿: KEATON | 2005.04.28 10:57

「巨大」な郵便銀行ができて圧迫される「当事者」であるはずの金融業界は、銀行も生命保険も民営化に賛成しています。金融業界が懸念しているのは、自民党の民営化反対派がこだわる表面だけ「民営化」されたことにして暗黙の政府保証が残ることなので、郵政民営化に関しては金融業界は明らかに政府よりです。

そう考えれば、
>郵政の金融部門が民営化されれば民業を圧迫する巨大銀行ができるだけだからいかんとする議論
を展開する人がどの層の利益を代表しているか良く見えてくると思います。

投稿: tomber | 2005.04.28 11:16

>郵政の金融部門が民営化されれば民業を圧迫する巨大銀行ができるだけだからいかんとする議論がある。

テレビで民主党の議員がこれ↑を言っててあきれました。民営化されれば民間企業の筈なのに民業圧迫とはこれいかに??

それを言うなら「独禁法の適切なる運用」を求む、ということではないでしょうか?公取委はその為にある。分割は当然であり、必須だと思います。

投稿: やぶ猫 | 2005.04.28 13:50

>総務省管轄下に置かれることになり、国債の担保とされている膨大な資金が金融庁の管轄外に置かれることになる。そんなことになれば、金利政策など原則的に不可能になり、そんな市場を世界が信頼するわけもない。

金利政策を行っているのは金融庁ではなく日本銀行ではないですか?
2001年の量的緩和政策導入まで日本は長らく金利政策を行っていましたが、郵貯や農協など政府系金融機関の存在がその障害となっていたという事実は恐らくなかったように思います。
個人的に引っ掛かった部分なのでよければ解説をお願いしたいです。

投稿: 一読者 | 2005.04.28 19:38

一読者さん、こんにちは。ご指摘の点、初歩的なミスがありました。「金利政策」ではなく、「決済の安定性」と修正しました。

投稿: finalvent | 2005.04.28 20:54

finalventさん、回答ありがとうございます。
ただやはり疑問が浮かびました。郵貯・簡保資金が国債で運用されている限りにおいて、決済機能については、政府保証のついた最優良債券を担保として日銀が資金供給するという形で、確実に保証されるんじゃないでしょうか。いわゆるナロウバンクという仕組みです。
一般の銀行のようなリスク資産メインで運用しているのなら、日銀も安易に担保を取って資金供給できず、自己資本が毀損する恐れがあるため、決済機能保全の為に金融庁等の検査が必要になってくるんでしょう。
郵貯・簡保の民営化の目的は、金融政策の舵取りや金融システム保全よりも、やはり高リスク運用によって、日本国民の膨大な金融資産に高い収益性を実現することにあるように思います。それは公的部門ではまず破綻が避けられない業務ですから。
とはいえ、こちらはwebで色々と勉強中に見かけた記事へ浮かんだ疑問を投げかけたという経緯なので、一般的だろうと思われるお話をただ繰り返したに過ぎません。細かい話を詰めるともっと違った視点が浮かぶかもしれませんね。これはやっぱり経済系の人の出番でしょうか。
もう少し1人で考えてみたいと思います。重ねてありがとうございました。

投稿: 一読者 | 2005.04.28 22:30

郵政より年金に取り組むべきだという政治家や評論家もいますが、
郵政民営化は日本経済のお金の流れを大きく変える改革なわけだから、
年金問題とも無縁ではないのに、それがわからないなら、無能だし、
わかってて言ってるなら悪質ですよね。

投稿: (anonymous) | 2005.04.28 22:39

初めまして、 finalventさん。
民営化で問題となるのは、先のコメントにもあったように「表面だけ『民営化』され、暗黙の政府保証が残ること」でしょうか。この場合、マーケットが政府保証を実質的に認めると、郵貯は民間金融機関よりも有利(低めの金利)な資金調達が可能になると考えられます。一方で、郵貯は「民営化」を御旗に自力で食えるようになるために運用面で民間銀行と同等に貸し出しなどやれるように要求するはずで、そうなると実質国営銀行が誕生し、徐々に巨大化し、市場原理が歪む可能性はあります。
 実は「金利政策」でも波乱要因になるリスクはあります。金利が正常化した場合の日銀の金融政策の基本は、短期金融市場の資金過不足が中立になるように調節を行うのですが、
この場合、民間銀行は厳格な資金管理の下、余った金はきちんと放出し、足りない銀行はそれを吸収して均衡するのが求められます。この点、民間郵貯が確実にこなせるか不安がもたているわけでして。コール市場でのプレゼンスが大きくなると、日銀の制御が効くか危ぶまれる面もあります。5年前、ゼロ金利が解除された際、資金需給上は民間金融機関に区分けされる預金保険機構が数千億円を抱え込み(日銀はこれが当然放出されるものとの前提で調節)、インタバンクの資金需給が逼迫した事件もありました。ちょっと技術的ですみませんが、ご参考までに。

投稿: 本石町日記 | 2005.04.29 01:54

>以上、現状では、郵政民営化法案は日本の現状を考えるなら可能なかぎり健全に推移している。小泉がんばれと思う。

記事を読み枝葉末節の議論以前に、同じ感性であることをお伝えし賛同の意を表します。

投稿: Mirai Project | 2005.07.05 22:45

郵政民営化に不安な人の中には、地方で、郵便がちゃんと受け取れるのかといったことを理由にする人が多いように感じます。

ですが、問題は、ご指摘のとおり、

「郵政がこれまで行なってきた貯金と保険の二つの事業、つまり金融部門を政府から独立させるかどうか、その一点だけだ。郵便事業やネットワークといったことはどうでもよい」

同感です。

「どうでもよい」というより、「どうにでもなる」ことだと思います。

問題は、そう、金融ですね。

トラックバックさせてもらいました。

投稿: 北見久美子 | 2005.07.07 10:01

結局問題のすりかえが起こっている。
また、あかいけなりあき(ふりがな)というのがいるから、実はこれの責任だ。
細いかお、足の指、格差。
これをみると誰もがほんしょうを出す。千差万別に。このことは覚えておいてほしいわ。
ということで、今回の反対者は、コワいコワいなんて言う恐い奴に違いない。つまりちょっと事情が違うとバリアフリーも優越感差別ってタイプだ。聞けー、死ね、俺たちは格が違うという感じだよね。

投稿: あかいけなりあき | 2005.08.06 01:20

郵政民営化法案が参議院で否決されれば、衆議院の解散は間違いない。
その際およびその後の選挙において、郵政族議員を落選させて国民の利益を守ろう。

投稿: 落選させるべき議員リスト | 2005.08.06 11:56

>国債の担保とされている膨大な資金が金融庁の管轄外に置かれることになる。

これはおかしい。逆でしょ。
国債で担保するということは、われわれの子供たちの収入からお金を取るということ。
そんなことを続けていたら日本に未来はないですよ。
国が管理しているから「安心」という盲目的な神話は今回の選挙で終わりにしましょう。

投稿: やまざき | 2005.09.01 00:57

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