世界銀行、世界開発金融2005、雑感
世界銀行(世銀)の年刊報告書「世界開発金融2005(GDF:Global Development Finance)」が6日付けで発表された(参照)。といっても私は原文にざっと目を通しただけで、話の筋は別途”Developing Country Growth Is Fastest In Three Decades, But Global Imbalances Pose Risks”(参照)で理解した。これは日本語でも読むことができる(参照・PDF)。
ワシントン、2005 年4 月6 日 2004 年、世界経済は3.8%と、4 年ぶりの高い成長率を記録した。途上国の成長が高所得国をしのいだ上、一部の地域に偏ることなく、途上国地域すべてが過去10 年の平均を上回る成長率を達成した。しかし、こうした世界的な成長の勢いもすでにピークに達し、途上国の成長は、拡大する世界的不均衡(特に米国の経常赤字6660 億ドル)の調整に伴うリスクにさらされている、と世銀の年刊報告書「世界開発金融2005(Global Development Finance: GDF)」は指摘している。
簡素にまとなっていてわかりやすい。今回の報告書の視点からは余談になるのだろうが、日本の今年度の経済成長率の予測は0.8%。前年の2.6%に比べるとがくんと落ちるので、せっかくの花見シーズンであるが、今年の日本経済はどよーんと暗いだろう。しかも、2006年度も1.9%とのことなので、短期的に見れば、現在のよどんだ世相がまだまだ続くかなという印象もある。ただ投機的なカネ余りはあるのでホリエモン騒動みたいな祭はあるかもしれない。
今回の報告書で重要なのは次の点だろう。米国赤字が原因となるドル急落とそれに連動する世界的な金融危機だ。
「資金動員と脆弱性への対応」と題された同報告書は、米国の金融引き締めと金利引き上げが、途上国の力強い経済成長と共に、世界的不均衡を是正し、米国の経常赤字を削減し始めるという可能性を指摘している。ただし、このシナリオにはリスクが伴うとし、途上国に対しては、予想以上の利上げや予想を上回るドル安により市場心理が変化するのに備え脆弱性を軽減する必要があると提言している。
「金融危機が市場や政策担当者の意表を突く形で発生することは、過去の例が繰り返して示しているとおりだ」と、同報告書をまとめた世銀の開発予測グループの局長であるユリ・ダドゥーシュは述べた。「金融市場と政策担当者には、警告を見過ごしてつい行き過ぎる傾向があるため、実際に危機が発生した場合、より大規模な調整が必要となってしまう。途上国にとっては、過去2 年間に回復した資金フローを、世界的な状況がこれまでの明るさと安定性を欠いても、確保し続けられるかどうかが問題となる」
この点については、同日のフィナンシャルタイムズ”World Bank warns on dollar 'risk' for poor ”(参照)がクリアに書いていた。
Developing countries that have amassed large US dollar reserves face a growing threat of big losses from a sudden decline in the dollar, the World Bank warned on Wednesday.
ドルを貯め込んだ貧国は危ないよというわけだ。それはそうなんだろうが、気になるのはなんといっても中国のスタンスではある。が、世銀関連からはよく見えてこない。フィナンシャルタイムズも次のように言及するくらいだ。余談だが、FTではYUANじゃなくてrenminbiって言うのだね。
Asian countries are also reluctant to allow their currencies to appreciate against China's currency, which is pegged to the dollar. Many economists see a stronger renminbi as central to an adjustment in Asia towards more domestic-led growth and a reduction in global current imbalances. There are also concerns about rising protectionism, in the US, as a result of its record trade deficit.
話はそのくらいだが、すわドル暴落かという話でもない。世銀としてもこれはただの報告であってなんらかの政治的な意図があるというものでもない。世銀総裁となるウォルフォウィッツと米国の緊密な関係はなんであれ必要とはいえるのだろう。
アジア地域と世銀の関わりといえば、ラオスのダムやタイの政治動向とも関連する。これらは今年、ワッチしていく課題になるだろう。
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コメント
>日本の今年度の経済成長率の予測は0.8%。前年の2.6%に比べるとがくんと落ちるので、せっかくの花見シーズンであるが、今年の日本経済はどよーんと暗いだろう。
私はOECDと世界銀行の予想など信用していません。97年のアジア金融危機を予期できず、今年度の日本の成長率ですら四半期ごとに改訂するような予想など信用できるはずがないでしょう。
>renminbi
人民元というのを中国語読みするとこうなるそうです。Den xiaoping =トウ小平など英字だと面食らうときがあります。もっともこの言い方を見かけるようになったのがここ一年ほど(その前は言うまでも無くYUANでした)ですから中国側の圧力でもあったんでしょうかね。
投稿: (anonymous) | 2005.04.09 22:41
>renminbi
人民幣と書くと思う。
投稿: トリル | 2005.04.10 00:07
>人民幣
おう、そうですね。何で元=biという発音になるのかと疑問を思っていましたがそういうことだったんですね。
投稿: F.Nakajima | 2005.04.10 00:22
YUAN /元、は日本での円にあたる平価単位名称。
renminbi/人民幣、 は実際に流通している平価自体の名と思います。中国では自国平価をさす時、レミンビーを使ってます。15年前でもそうだったし。
投稿: (anonymous) | 2005.04.10 20:58