ソニー経営陣刷新、ふーん
ソニーの出井伸之会長兼CEO(最高経営責任者)と安藤国威社長が退任し、出井の代わりにハワード・ストリンガー副会長が、安藤の代わりに中鉢良治副社長が就任した。衆目の集まるニュースであった。が、私は、ふーんと思った。特段の感慨はない。むしろ、今朝の新聞社説を含め、このニュースを受けた国内の反応をネットなどで見て、違和感を感じた。
出井たちの退任の理由は極めて簡単。業績が悪いから。他に何か? 今期もソニーの業績は下方修正となり、お得意の10%営業利益率も達成ができそうにない。株も下がる…困るよ、こんな経営、という以上に何か?
何か言いたい人もいる。日本の新聞の社説とか。今朝の朝日新聞社説"ソニー――「理想工場」に戻れるか"(参照)。
ソニーは03年に米国流の「委員会等設置会社」に移っている。商法の改正で導入された制度で、取締役の指名や監査といった事柄は委員会にゆだねられ、社外取締役が大きな発言力を持つ。
毎日新聞社説"経営陣刷新 ソニーらしい進取性の復活を"(参照)も類似。
また、ソニーは委員会等設置会社に移行し社長人事などを決める指名委員の過半数を社外取締役が占めている。このため今回の経営陣の刷新は社外取締役が主導したともとらえられている。
それって、当たり前のコーポレート・ガバナンス(corporate governance)なんですけど。何か?
今回の人事でCEOに外人が立ったことも話題になったようだが、出井が言ってたけど、ソニーという会社の社員の日本人の比率は三分の一くらいなのだから、外人がトップに立ってなにか不思議でもあるのか。
国内での話題のもう一つの軸が、エレクトロニクスとか「物作り」とかなんだけど、はぁ?という感じ。先の朝日新聞社説の標題が"ソニー――「理想工場」に戻れるか"だったけど、朝日新聞って…(人権配慮的伏せ字)…なのか。
「真面目(まじめ)ナル技術者ノ技能ヲ、最高度ニ発揮セシムベキ自由闊達(かったつ)ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」。59年前に書かれた設立趣意書だ。新経営陣が求められるのは、半世紀余にわたって培ったブランド力を支える物作りの伝統の復活だろう。
ぶぶぶ、ぶぶ漬けいかがどすか? ぶぶ漬けを勧めないといけないのは毎日新聞社説も同じ。
また、巨大なエンターテインメント部門を抱え情報商社的な役割を担っていることもマイナスに作用した面があるのではないだろうか。情報商社として著作権管理に厳密になり過ぎた結果、音楽のネット配信事業に出遅れアップルのiPod(アイポッド)の大ヒットを許してしまった。
まいった。笑い飛ばすはずが頭痛がしてきそうだ。週刊新潮に連載の野口悠紀夫"21世紀のゴールドラッシュ(46)"のほうがなんぼかマシだと思うのだが。
日本の企業の問題は、依然として「モノ作り」に執着していることだ。実際、日本でITというと、半導体生産やエレクトロニクス機器の生産などの、製造業を指すことが多い。
いま求められているのは「ものの考え」を変えることだ。
野口悠紀夫はネットでは批判者が多いみたいだが、このあたりは、当たりってことでいいんじゃないのか。と、もうちょっと言葉を足そうかと思ったけど、なんか無駄な気がしてきた。
毎日新聞社説ではiPodのキーワードが出ているけど、社説書いた人、使ってる? 確かに音楽配信事業の側面の問題はあるけど、iTunesの開発とかも関係している。それと、iPodなんて、モノ自体の観点から見たら、たいしたことないんだよ。それがあの価値ではない。
もちろん、ICF-SW7600GRを使っているややラジオマニアの私にしてみるとソニーさんにまともなラジオを作り続けてもらわなくちゃねとは思うけど、それだけがソニーへの期待ではない。
![]() RDR-HX70 |
話を戻して。ソニーというのは、しかし、現実的に言って、そういうもの作りの企業というだけでもない。先日ラジオ深夜便でやっていたけど、スパイダーマンでソニーは800億円の売上げを上げていた(映画界ではトップ収益)。なるほど、ハロウィンでみんなスパイダーマンになっちゃうわけだ。
ついでにその話にあったのだが、米国の映画産業というのの映画館での収益は全体の20%ほどらしい。じゃ、他はというと、DVDが40%、海外輸出で20%、残り20%がテレビ放映の権利とのこと。つまり、映画っていうのは、もう最初から、メディア製品なんだな。むしろ、映画館はそのプロモーション的な位置づけ。そして、今後はこの海外部分とDVDが増えていくわけで、ソニーもそのスジできちんと経営すれば成長が見込まれるわけだ。じゃ、そういう経営しましょう、と(PSPだって、そういうDVDみたいなメディアを売りまっせの流れにすればいいじゃん)。
そーゆーことなんじゃないの。つまり、今回の退任劇って、ふーん、ってことでしょ。
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コメント
現状、東芝の圧勝のような。http://www.kakaku.com/sku/pricemenu/dvdrecorder.htm
操作性は五十百歩、使い勝手(ネット/PCで運用できる)で他社比頭二つリードというところでは。
ちなみに私も東芝を使ってます(って勝ち組勝利宣言か?)。ところで「勝ち組」の意味が逆転したのはいつなんでしょうね。
投稿: Sundaland | 2005.03.08 15:49
↑ありますた。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BE%A1%A4%C1%C1%C8%A1%A6%C9%E9%A4%B1%C1%C8?kid=14330
これであってるのかな。ゴミコメすみません。
投稿: Sundaland | 2005.03.08 15:55
「iPodなんて、モノ自体の観点から見たら、たいしたことない」のような出鱈目な物言いに力も抜けてしまいますが、iPodの例で言えばそれこそソフトとの連携や環境の整備などの企画力を含めたiPodのような「もの作り」を皆が期待しているのは当然で、逆にスパイダーマンが当たったからといって、他人に作らせているソフトのほうに主軸を移せというのはバブル期の投機と同じ種類の博打を勧めているようなものでしょう。
「皆が騒いでいるニュースに対して涼しい顔をしてやれ」「新聞を馬鹿にして逆のことをいってやれ」というスタイルが限界にきていることを認識したほうが良いのではないでしょうか。特に国内の問題に関してはお得意の「俺はワシントンポストとNYタイムズを原語で読んでるぜ」的なオドシがきかない分余計に痛々しいです。頑張ってください。
投稿: S | 2005.03.08 19:52
>Sさん
「iPodなんて、モノ自体の観点から見たら、たいしたことないんだよ。それがあの価値ではない。」
ですから、Sさんの考えるiPodの価値はfinalventさんが考えるiPodの価値と同じではないですか?
スパイダーマン云々はシナジー効果(笑)に言及してるのだと思うのですが...
それに、映画会社を買ったのはバブル期の投資の中ではかなり優秀な方ではないでしょうか。
後半は根拠が分からないのですが...
私も新聞の社説に対して「よく書けている」はないだろうと思うことがあります(笑)
「これはいい社説だ」が適当かと思うのですが、年配の方には返って気恥ずかしいものでしょうか。
投稿: Lou | 2005.03.08 20:26
ワシントンポストにNYタイムズに関しては、アメリカのある種リベラルよりのそれなりの知識人の典型的な見方を紹介する以上の意味は無いでしょう。もちろんいい記事もあるから引用してるのでしょうが。
それはともかく、モノ作りといっても製造業で完結してる話ではなく、ソフトとかビジネスモデル全般、全てある種のモノ作りと認識するべきではないでしょうか。そして単純に最近のSONYはいいモノを作ってこなかったと言うに過ぎないでしょう。未来予測がことごとく裏目だったいう運の悪さもあるでしょうが。
投稿: カワセミ | 2005.03.08 21:29
PSPもDVDみたいなものを売るための道具ですよ。消費者が受け入れるかどうかは分かりませんが。
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20050217/spe.htm
投稿: しま | 2005.03.08 22:29
PSPについては、Appleがあえて参入を避けている携帯機器によるビデオ視聴に、どのくらいの需要があるのかが見物ですね。
そこに十分な需要があればPSPは成功するでしょうが、需要がなければDSとiPodで十分なので、PSPは失敗するでしょうね。
投稿: Baatarism | 2005.03.09 00:18
出井さんってすかしてるけどクールだよね。
投稿: 和魂 | 2005.03.09 08:39