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2005.03.23

ウォルフォウィッツ世銀総裁ですか

 ちょっと話が古い。ウォルフォウィッツ国防副長官が世界銀行の総裁候補に指名されたという話を聞いたとき、私は、うへぇと思った。ネオコンだからというより、実務的にどうなのかと思ったからだ。しかし、考えてみると、やはり「ネオコン」という言葉のマジックにひっかかっていたのかなと思う。たいしてまとまった考えがあるわけでもないが、反省がてらに少し書いてみる。
 ウォルフォウィッツ=ネオコン=だからダメ、を強く出してきたのは例によって朝日新聞である。21日の社説"世界銀行――米戦略の道具にするな"(参照)がちょっと読むと標題からしてアレなんでやけに際立っている。


ふたりともネオコン(新保守主義者)と呼ばれ、世界を民主化するのが米国の使命だとして、イラク戦争を正当化し、欧州との亀裂をつくった人たちだ。世界が驚くのも無理はない。


 国連を軽視する発言を繰り返してきたボルトン氏に、イラク戦争で傷ついた国連を修復できるのか。ブッシュ人事を危ぶむ声は大きい。しかし、それ以上なのがウォルフォウィッツ氏である。世銀総裁は、米国の利益代表ではなく、途上国の発展を助ける国際組織のトップであるからだ。

 証拠がはっきりと出るまで国連疑惑にシラを切りとおし、反米デマみたいなのを撒き散らしてきた朝日新聞にこう言われるのはボルトンにとって名誉というものだろう。
 が、問題は、ウォルフォウィッツだ。途上国の発展を助ける国際組織のトップじゃだめというのだが、何故? 朝日新聞のここまでの言い分を聞くと「イラク戦争を正当化し、欧州との亀裂をつくった人」というのだが、それって単純にスジ違い。
 朝日新聞もさすがにめちゃくちゃ言っているという自覚はある、というか、普通あるでしょ。

 同氏には、駐インドネシア大使として経済発展を助けた経歴がある。ベトナム戦争を指揮したマクナマラ国防長官が世銀総裁に転じて、途上国の貧困対策に尽力した例もある。
 ウォルフォウィッツ氏が不適格だと決めつけることはできないが、こういう人事を見せられると、世銀の総裁は米国から、国際通貨基金(IMF)の専務理事は欧州から、という発足以来の「慣例」の見直しが必要だろう。

 マクナマラを持ち出すあたりが一定年代以上の人には微妙な味わいがあるのだが、いずれにせよ、論理的に考えて、実績もあり、類似の事例もあり、さて、ウォルフォウィッツのなにが悪いのか、朝日新聞は論理破綻し、とばっちりに、IMFの慣例批判をするのだが、むちゃくちゃでんがな。
 とま、それは毎度のユーモア新聞である朝日新聞の芸でもあるのだが、次の箇所でそういえば…とひっかかった。

ブッシュ氏から人事構想を聞かされた小泉首相は、すぐに支持を表明したという。しかし、支持するにせよ、世銀やIMFの大口出資者である日本は、こうした機会を活用して、国際機関の改革への同意を取りつけるべきだった。

 引っかかったのは「大口出資者」という点だ。これって… leading shareholders …あ、そうか。ワシントンポスト"A New Boss for the Bank"(参照・要登録)がこの朝日新聞社説に対応しているわけか。

The bank's leading shareholders -- principally the Japanese and Europeans -- should welcome Mr. Wolfowitz's nomination, not use their positions on the World Bank's board to obstruct it.

 ワシントンポストに言わせると、日本と欧州はウォルフォウィッツの世銀総裁指名を歓迎せよというのだ。
 実績についても朝日新聞より詳しく書いている。

Unlike several of his predecessors, Mr. Wolfowitz would come to the World Bank presidency with real knowledge of development. He served as U.S. ambassador to Indonesia in the late 1980s, when that country was one of the World Bank's biggest clients and a poverty-reduction success story.

 というわけで、実務的には問題はないのだろう。「ネオコン」という言葉とイラク戦争のイデオロギー的な評価を実務面の評価とごっちゃにすると朝日新聞みたいな頓珍漢になるというだけか。
 ただ、ウォルフォウィッツ世銀総裁万歳かというと、私はそうでもない。その点、ワシントンポストも気にしているようだ。

Moreover, Mr. Wolfowitz will have to modulate his admirable passion for democratization, the idea that has animated his thinking since his experience, as a State Department official, of the people-power uprising against Filipino dictator Ferdinand Marcos.

 フィリピンのピープルズパワーというのは私の世代にはけっこうインパクトがあるが、天安門事件ともバランスして、奇妙な思いを残している。率直なところよくわからないなと思う。
 が、ウォルフォウィッツがピープル・パワーみたいな経験から民主化の推進をマジで考えているのだとすると、つまり、イラク戦争はただの算盤というだけじゃないというのだとすると、それもなんだかなとは思う。その面でやばいかなと。私の念頭にあるのは、ミャンマーである。ラオスを入れてもいい。非常に複雑な問題だなとは思う。ま、東南アジアに発想が向くあたり私もいかにも日本人。
 実際的にはそれよりアフリカ問題に世銀が力を入れてくれるといい。こちらのほうが世界的にはより大きな問題だからだ。なんでも朝日新聞にやつあたりすればいいといわけでもないが、朝日新聞などもアフリカ問題は実は視野にはないのだろう。いわゆる左派からはダルフール問題などについて現実的な声が聞こえないのもそうした関連なのかもしれない。

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