モーソーモーソーとホリエモンは言う
「ホリエモンは、LBOをモーソーモーソー」って言っているよと、周りの者から言われた。ほぉ、そうか。私は、金曜日から土曜日にかけてはブログだのニュースを基本的にお休みにする。TypePadにはオートアップロードの機能があるのでたるいネタをセットしておくこともある。が、予定エントリを落として、昨日のエントリの続きを書く。
ちょっと複雑な心境ではあるな。踊らされていたじゃんと言われても、簡単に返す言葉はない。後出しじゃんけんをする気もない。筏声援隊と読まれていたフシもあるかもしれないが、そうでもない。ま、話を続けよう。
毎度ながら、本人はなんと言っているか? ホリエモン自身がなんと言っているか。毎日新聞記事"ライブドア:堀江社長、フジ買収検討を「妄想」と否定"(参照)を引用する。
「妄想、妄想。妄想ですって。何回言わせるんですか。妄想ですよ。妄想ですから」と答え、レバレッジド・バイアウト(LBO)による資金調達やフジテレビ株の公開買い付け(TOB)をライブドアが検討しているとの一部報道を否定した。
発言は18日の日本テレビの番組とのこと。この報道は間違いではないようだ。妄想の内容は、LBOだけではなく、TOBも含まれる。友軍朝日新聞もなんか言うはずだと見ると"ライブドア「フジ株TOB」の観測広まる 来週にも?"(参照)がある。
ライブドアは、経営権獲得を目指し、少額の自己資金で巨額買収が実現できるLBO(レバレッジド・バイアウト)方式での買収を検討しているが、市場で買い進めるとフジ株が高騰し買収額が膨らむため、市場外で大量の株を一定価格でまとめて買えるTOBの実施が有力視されている。
ということで、なにげにLBOを引っ込め、火曜日以降のTOBの話に移している。ホリエモンの言葉から考えるとLBO騒動は情報操作臭い。
話を少しトラックバックして、そもそもLBO話は情報操作だったか?
そうかもしれないなとは思う。情報操作を見破るというほどの炯眼は私にはないが、臭い話は、それって誰のメリットか、と考えると構図が見えることが多い。今回のケースでは、この話をリークすれば誰がメリットを得るか。答えは、一部投資家とフジテレビ。そもそも増配も、株価をつり上げてLBO/TOBに耐えようとしての策だった。もっと急速に効かせる点でLBO話には効果はあった(短期的かもだが)。ちょっと後出しじゃんけん的に言うと、LBOを宣戦布告するバカはない。が、ホリエモンならやるかもという空気が逆手に取られたのはホリエモンの”人徳”だろう。
とはいえ、昨日のエントリに書いたように、フジの構造はまさにLBO無防備に近い状態だったし、それを恐れてもいただろう。ホリエモン側にその策がなかったと考えるのも幼稚過ぎる。このあたりは、ライブドア・PJニュース"ライブドア、フジテレビ買収か?【埼玉県】"(参照)が絶妙な味を出している。
以前、テレビでLBOのことを堀江社長が、金さえ貸してくれるところがあるならば、誰(だれ)だって買収できる手法ということを話していた。もしも、このLBOが実現すれば、フジテレビがほとんど確実に手に入るということになるだろう。「ライブドアに金を貸してくれるところが現れた」という時点で、経営手腕を買われたことにもなるのだろう。
ライブドア・PJニュース"ライブドアはライブドアの大本営でもないというあたりが、ホリエモン”経営”の面白いところだが、ざっとみて、LBOの仕込みはもたついていただろうし、そのうだうだが”経営手腕を買われた”結果でもあるのだろう。
LBO砲がライブドア側ではないとして、このままこの話がなし崩しになり、フジ側のプロテクトが堅くなったとすれば、そこに策士の影を感じないわけにもいかないだろうし、策士がいるならその思いに多少なり共感しないものでもない。あるいは、単にライブドア側の要人がずば抜けたアホタンであるのかもしれない(その可能性が否定できないのが面白い)。とはいえ、このエントリを書き出した私は私。私のブログは私のブログである、と、禅問答みたいだが、そのあたりのスタンスとして休みを中断して書く必要も感じた。誰も気にしなくても私は私。カモメはカモメ。
まぁ、しかし、そんなことはどうでもよろし、大勢の流れはどうなる? つまり、ホリエモンはフジを乗っ取るのか?
劉備・関羽が老いて張飛が爆走しても、諸葛孔明ありせば蜀攻めはきつかろうとも思うが、大局の構図が変わってるわけではない。貯め込み利益はそのまま。ホリエモンが人物ならこの戦いに勝つだろうし、傍から見ればどんなスラップスティックでも面白いなでもある。大局の構図が変わらなければ、昨日のエントリでも触れたように、この件については、別の次元の問題になるリスクは依然高い。そこまでは読み切れない。
ブログ的にも気になるのは、こうした渦中にあるライブドア・PJニュース"新聞はインターネット・ユーザーの差別化を考え始めた【東京都】"(参照)だ。ちょっと爆走気味も味わいのうち。
毎日の記事は、ライブドアが時間外取引で買った株の内、テキサスのファンドが売った株について当局に適切な報告書類を出していなかったため、金融庁がこれを「問題視している」といった内容だったように記憶している。
他紙が「ライブドア、LBOでフジ株の買収を検討」と書いていた中での記事だが、ライブドアにとってこれはもっとも重要な情報である。つまり、時間外取引の当該ファンドが売った分が無効になるかもしれないのである。これまで好意的な発言をしていた麻生総務大臣も、LBO報道に不快感を示したそうだ。当然だろう。
この話の先も面白いのだが、そこまで引用するのは礼儀に反するようにも思うのでしない。
さて、このエントリにオチはないなと思って物憂く最新ニュースを見たら、日経系で"ライブドアとフジテレビ、提携協議を開始――役員が初会合"(参照)があった。
ニッポン放送の経営権争奪戦を繰り広げているフジテレビジョンとライブドアは提携を巡る協議を始めたことが18日、明らかになった。
そりゃ穏当でよかったと言いたいことだが、経営というのはそういうものでもない。ホリエモン騒動は、木戸銭もなく見られる極上のエンタテイメントのように思えるが、そういうわけにも行かなるのだろうなとは思う。
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コメント
>ということで、なにげにLBOを引っ込め、火曜日以降のTOBの話に移している。
「LBOで資金調達して、TOBで買い付ける。」という意味だと思います。
投稿: tonmanaangler | 2005.03.19 16:28
>利益剰余金が2600億円くらいある。キャッシュでね
決算書を見るかぎりではそのうちすぐに現金化できるのがいいところ2/3です。LBOで3000億調達できたとしても残り1200億をどうするか?ライブドア+ニッポン放送の利益は千億単位の話ではほとんど計算外なのでフジテレビがいくら稼げるかですが、去年のB/Sを見る限り利益は年200億です。配当率50%x全株式の半分として買収会社に入ってくる利益は50億。利回り4.16%といったところです。まあ大雑把な計算では一応のつじつまは合っています。売れる財産もまだまだあるでしょうからさらに利回りは上がるでしょうし
一応のつじつまは合っています。
但し、今回の最大の問題は今後フジテレビの株価がどこまで上昇するかです。おそらく今後も上昇を続けるでしょうから、
ライブドアのLBO調達金額が3000億よりはるかに必要になる→借金がそれだけ増える→払わなければならない金利総額がそれだけ上昇する。
つまりリスクとリターンの関係が釣り合わなくなってしまいます。
投稿: F.Nakajima | 2005.03.19 19:30
私がフジの社主で本当に防衛したいのだったら作戦としては簡単です。投資等有価証券1100億のうち半分取り崩して臨時配当を実施すれば決着します。これですぐに現金化できる資産を減らしてしまえば実質的にライブドアが調達しなければならないLBO債権の金利を高くさせることができます。リスクとリターンがつり合わなければ出資者を募ることもできなくなるでしょう。
投稿: F.Nakajima | 2005.03.19 19:50
なんかすげー間違いを書いているので訂正。BS→P/L
投稿: F.Nakajima | 2005.03.19 20:25
>F.Nakajima
日本の金融システムが安定しないから
日本の企業が内部留保を蓄積して言ったのが
ここ五年ぐらいの流れのわけで
臨時配当で金融資産を取り崩すのは愚策もいいところ。
現に年間100億の配当増だけで株価は爆上がりしてるわけだシィ
投稿: eternalwind | 2005.03.19 22:37
>内部留保を蓄積
そりゃ安定性を確保するために最低限度の自己資本比率は必要ですよ。しかしそれと同時に株主から預かった資本から高い自己資本利益率を実現するのも同時に要求されます。
そこを勘違いして安定性第一主義で利益を内部留保で貯めるだけ貯めて配当をケチり、内部留保額と時価総額の関係がおかしくなると企業買収の的にされます。
私は別に低配当が悪いと言っているわけではないのです。実際この間までMSやDELLでも無配当で内部留保を溜め込んでいましたし、今でもBRKAは無配当です。その代わり彼らは毎年毎年内部留保によって増大する自己資本を、新しい投資案件に投入してそのままROEを前年度並みにすることを要求されています。
ライブドアなどの成長期にある企業ならともかく(その投資案件の是非についてはここでは触れません)、フジテレビクラスにまで成長した企業にとってはこれは非常に難しいことです。それが出来なくなった企業は配当金を増やし、これまでリターンが少ないのに支えてくれた株主に対して償還を始めるべきでしょう。
それが出来なければ、今後「その資金を私に預けてくれればもっと高いリターンを上げてみせる」という乗っ取り屋が目の前に現れるのを阻止できません。
投稿: F.Nakajima | 2005.03.19 23:24
そもそも不治の筆頭株主のニッポン放送をホリエモンがとった以上、
不治の株が上がろうが、配当が増えようが、
ライブドアが買収によって得られるリターン(=LFの資産)が増えるわけだし、
逆に下がれば本丸を買収しやすくなるので、
藤の株が上がろうが下がろうがライブドアの利益になることに変わりはないはず。
投稿: 生扉儲 | 2005.03.19 23:35
すみません。ちょっと子供の質問なんですが、
ライブドアがニッポン放送の株式を買ったように
「フジテレビがライブドア株を買って、自分の支配下に置く」
というようなことはないのでしょうか。
それなりの金額を出せば、あの何とかという外資の会社は
うってくれるとおもうのですが。
投稿: (anonymous) | 2005.03.20 18:55
>フジテレビがライブドア株を買って、自分の支配下に置く
出来ます。というよりこの手法は「パックマンディフェンス」といわれる企業防衛方法です。
その手もありましたね。ニッポン放送とフジテレビがLDの株を25%ずつ買ってしまえば商法の規定で議決権を潰してしまえるし、75%条項に引っ掛かるまで買いすすめばバブル化しているLDの株価も暴落してうまく潰せる。
投稿: F.Nakajima | 2005.03.20 21:21
>ニッポン放送とフジテレビがLDの株を25%ずつ買ってしまえば商法の規定で議決権を潰してしまえるし、75%条項に引っ掛かるまで買いすすめばバブル化しているLDの株価も暴落してうまく潰せる。
そういうことをして、上場廃止で株価が暴落したら、
バブル化されているライブドアの株を買ったCXとLFが一番損するのでは?
アホルダーの損失補てんをフジサンケイグループがするようなものですね。
なんのために企業防衛をしているのかもう一度よく考えた方がいいと思いますよ。
投稿: 生扉儲 | 2005.03.20 22:49
>藤の株が上がろうが下がろうがライブドアの利益になることに変わりはないはず。
やっぱり一番効果的なのはフジ本体の増資でしょうね。なんかすでに検討してるようですけど。
投稿: (anonymous) | 2005.03.21 00:01
>F.Nakajima
高配当がいけないといってるんじゃなくて
あんたの650億円の臨時配当という案がばかばかしいといってるんだな。
つか、最初の記述ではLBO阻止のために内部留保を切り崩しといっておきながら、間違いを指摘されたら、高配当での株価維持に問題を摺り返るのは笑止なんだな。ファンダメンタルにそこまで影響を及ぼすような臨時配当をやったら、その時点での株主の利益になる代わりにPBRがあがるから逆にのちの株価が下がるんだな。こんなことは常識なんだな。ちみのような知ったかぶりは痛すぎるんだな
投稿: (etenalwind) | 2005.03.21 19:53
>高配当での株価維持に問題を摺り返るのは笑止なんだな。
>その時点での株主の利益になる代わりにPBRがあがるから逆にのちの株価が下がるんだな。
私は「高配当で株価を維持せよ」と言っているわけではありません。私が言いたいのは「剰余金を取り潰してフジテレビの資産価値を下げろ」と言っているわけです。少々長くなりますがどういう意味なのかお付き合い願います。
さて、名無しさんがはどうやらファンダメンタルでの理論株価の出し方をご存知だと思います。正直言って私はあまり計算が得意ではないので間違いがあったら指摘してください。
理論株価=一株あたり利益x配当性向/(Rf+事業RP+財務RP)-ROEx(1-配当性向)
これをフジテレビにあてはめると
324000=22765x10%/Rf-5.13%(1-10%)ということになり、Rfは4.62%になるはずです。
さて、この式の面白いところは配当性向を高めてもさほど理論株価は上昇しないところです。(実際にシミュレーションをお願いします)
この式において理論株価を上昇させるには、ROEを上げるかもしくはRfを下げるかしかありません。
投稿: F.Nakajima | 2005.03.21 21:14
さて、堀江社長がもしLBOで多額の金を集める場合、いくら金余りの時代といえどもかなりの好条件が必要なはずです。できるだけ短期間で高金利であることを要求されるでしょう。しかし、今フジが内部留保を流出させてしまえば財務RPは上昇し、LBOの際にRfの上昇により堀江氏に要求される金利はさらに上がるはずです。
つまり、フジテレビの買収を「割の悪い賭け」にしてしまえば出資者を募っても出し手はいなくなり、結果的に買収は防げるはずです。
投稿: F.Nakajima | 2005.03.21 21:45
前回名前を付け忘れていたんだな。
理論株価の算出式によっては、配当性向を上げても理論株価は上がらないかもしれないが、配当性向をあげて配当利回りが高ければ、現実の株価は上がるんだな。実際に現実の株価は上がってるんだな。株価が理論で決まるなら、株式市場は要らないんだな。
投稿: etenalwind | 2005.03.22 02:24
でも、今日の株価は下がってるんだな。(笑)
>株価が理論で決まるなら、株式市場は要らないんだな。
これは本質を突いた一言です。その通り、あの式で確かに理論株価は算出できますが、その中に入れる数字を恣意的に動かせば多少無茶な株価でも正当化できるんです。
投稿: F.Nakajima | 2005.03.22 19:37