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2005.03.25

横須賀基地キティホークの後継艦はなぜケネディ(JFK)か

 横須賀基地を母港とする通常型空母キティホークの後継艦について、軍事関連の概ねの予想では原子力空母かという声が強かったように思う。しかし、この数日のニュースでは、他方噂の強かった通常型空母のジョン・F・ケネディ(JFK)配備という報道が流れた。
 理由としては、地元の原子力空母反対の声を考慮したとの見方が多いようだ。23日共同"通常空母JFK配備へ キティホーク後継で米海軍"(参照)ではこう伝えている。


 後継艦をめぐっては当初、原子力型空母起用が半ば既成事実化していたが、地元横須賀市の反対などを受け、イングランド海軍長官は議会証言で、空母JFK起用の可能性を示唆していた。地元や日本政府の意向に配慮した形。
 いったん予備役にして艦載機や装備を新型に取り換えることで、通常型でも戦力向上を図れると最終的に判断した。

 この報道と同時に共同はやや奇妙とも思える報道"「正式決定でない」と慎重 後継艦にJFKで横須賀市"(参照)を流した。標題を見ると、JFK決定が覆る米側の可能性でもあるのか、共同が飛ばしたと自覚しているのかと思うが、そうではない。

政府に原子力空母の配備反対を強く訴えてきた横須賀市基地対策課の江指長年課長は「正式決定ではなく、手放しで喜べる状況ではない。予断を許さない状況に変わりはなく、引き続き政府などへの働き掛けを強めたい」と述べた。

 原子力型空母反対派の意見を考慮したというだけのことだ。実際の空母配備がJFKで本決まりなのか米側の明確なソースは見あたらないように思えた。"U.S. to replace Kitty Hawk with another non-nuclear carrier"(参照)などを見ると、むしろ米側が共同をひいている様相でもある。
 問題の背景を補足する意味で三月九日とやや古いが毎日新聞"空母キティホーク:後継艦、早急に日米協議を 米司令官"(参照)も引用しておきたい。

 クラーク米海軍作戦部長は2月10日の上院軍事委員会で、キティホークの後継に原子力空母を配備する方針を表明したが、イングランド米海軍長官は同月17日の下院軍事委員会で、退役後のケネディを予備艦にして、日本が原子力空母を受け入れない場合に再配備する可能性を示し「選択の余地はある」と述べている。


 公聴会では、マケイン上院議員(共和党)が「空母ケネディが退役すると、通常型空母はキティホークだけになる。(キティホークの退役後)日本は原子力空母を受け入れないのではないか」とただしたのに対し、ファロン司令官は「(日本は)世論としては核を嫌う傾向はあるが、(原子力空母を受け入れないという)宣言をしたことはない」と説明。その上で「どういう選択肢があるか、早急に日本政府と話し合わなければならない」と述べた。

 概ねこの原子力空母を既成事実化する方向で話は進んでいたのが、日本の国内事情が配慮されたと見る向きが日本国内では強い。
 軍事的に見れば、原子力空母の路線であっただろう。というのも、空母の配置は海軍のみならず米軍戦略の主軸となるからだ。緊張する台湾海峡と中国原潜が跋扈しはじめる東アジア海域に米軍の強いプレザンスを示すには、時代遅れともみられる通常型空母ではまずかろう。軍事評論家江畑謙介も朝日新聞"空母キティホークの後継艦は?"(参照)で、ケネディを否定していた。

 キティホークをのぞくと唯一の通常型空母であるジョン・F・ケネディ(母港・米フロリダ州メイポート)を、米海軍が06会計年度(05年10月~06年9月)に前倒しで退役させる計画を打ち出したが、たとえ退役しなくても横須賀に配備することはないだろう。ラムズフェルド国防長官が町村外相に「キティホークの後継艦は決まっていない」と答えたのは、運用上、どの原子力空母にするかは決まっていないという意味であり、横須賀に通常型のケネディが来ると考えるのは早計だ。

 結果としてこの予想がはずれた形になるのだが、むしろ、ラムズフェルドの凋落を暗示しているのかもしれない。
 軍事アナリストの神浦元彰は、やや後出しじゃんけん的な解釈にも思えるが、次のコメントをしている(参照・24日)。

これを普通の人なら、アメリカが日本人の核アレルギーに配慮した結果と考えるだろう。しかし軍事を知ればそうは考えない。やはり米海軍は無給油で高速航行できる原子力空母を、象徴的な配備の横須賀に置かないで、いつでも実戦に使える配備に決めたと考える。

 つまり、原子力空母の性能が上がったので横須賀配備が不要になったというのである。私は批判という意味ではないがこの指摘には疑問を感じる。もう一点。

 それと比較して、JFKの横須賀配備は北朝鮮や中国に対する象徴的な配備となる。それなら通常型空母で済ませるというのが軍事流の考えである。

 象徴的な配備にすぎないとの指摘だ。が、これは結果的にはそうだということかもしれない。
 加えて軍事アナリストの神浦元彰は整備の拠点を米軍は日本に置きたいと見ている。これに対して、軍事評論家江畑謙介はハワイか米本土だろうとしている。どちらが正解かということに私は興味はないが、日本が整備の拠点となる可能性は日本の将来を大きく変更することにはなるだろう。
 いずれにせよ、通常型空母JFKの配置ということは、日本を含むこの地域の軍事的緊張が一時的に緩和されていることを示しているとは言えるだろう。この点については極東ブログ"「反国家分裂法案」を引っ込められなかった中国"(参照)でも指摘したが中国の対応のまずさ(加えてシラクの内政のどたばた)から、結果的にEUを硬直化させ、その対中武器禁輸措置の解除が延期させたことも関連しているのではないか。
 もっとも、こうした状況の傾向は短期的なものに留まる。JFKが実際に横須賀に配置されるのは現在のキティホークが退役する2008年以降なのだが、この三年間に状況の変化がないと想定することは難しい。実際上、JFKの配備するとなれば短期的なものとなるしかない。ちなみにJFKの退役予定は2018年とされている。やや矛盾を感じないわけにもいかない。
 以上、日本サイドの情報が多いのだが、この問題は米側から見ると別の様相もあった。一端は"Navy defends decision to retire carrier "(参照)などからでもわかる。
 日本ではJFKは2018年まで現役という情報のもとで報道・考察されているが、米海軍は二月の時点で突然のようにJFKを年内に退役させるというアナウンスを出した。理由は改修費用が高すぎるというのが最大の理由だ。日本が負担するという裏はないのかとも疑問に思う。
 それ以上に米国内で問題になったのは、JFKを母港とするフロリダの状況だった。フロリダではJFKによって年間三億ドルのメリットを得ている。フロリダと言えば今回の大統領選挙を想起すればわかるが、ここにブッシュがしょっぱい乾燥梅干しを投げるわけにもいかない。フロリダでも弟ブッシュも即座に率先して反対運動に乗り出した。こうした米国内事情を考えると、実は、JFK決定は、ブッシュの都合でしょ、というのが正解、と見えてくる。なお、原子力空母に関連した内情については"Navy wants Mayport as base for nuclear aircraft carrier"(参照)が参考になる。

追記(2005.10.29)
 JKFではなく原子力空母の配備が決定された。
 朝日新聞マイタウン・神奈川 (2005.10.29)”原子力空母が来る 地元「納得できぬ」”(参照


 横須賀基地への原子力空母の配備案が浮上したのは7年ほど前にさかのぼる。だが、市をはじめ地元にはまだ余裕があった。
 米海軍が保有する空母12隻のうち、原子力型でない通常型空母はキティホーク以外はフロリダ州を母港とするジョン・F・ケネディしかない。しかし、キティホークの退役予定は08年だが、もう1隻のジョン・F・ケネディの退役予定は18年とまだ先だ。被爆国で「原子力」施設に抵抗が根強い日本が反発すれば、米国も容易には原子力空母に変更しにくい、との読みもあった。
 ところが、今年2月に風向きが変わった。クラーク海軍作戦部長(当時)が米議会でケネディを年内に退役させる意向を表明したのだ。当時の沢田秀男市長は、後継艦は通常型とするよう真っ先に外務省に出向いて要請した。地元の反発を懸念したのか、イングランド海軍長官が、日本が原子力空母を拒んだ場合に退役したケネディを予備艦にして再配備することが可能という見解を示し、通常型空母の配備に含みを持たせた。沢田市長も歓迎の意向を示した。今年6月に沢田氏の後継者として新市長となった蒲谷氏も7月に外務省、10月には米国大使館に同様の要請をした。
 その3カ月後の突然の決定である。28日朝、蒲谷市長への初めての連絡は町村外相からのたった一本の電話だった。しかも、時間はわずか1分間弱。シーファー駐日米大使からは午前10時前後に電話が入ったという。

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コメント

JFKの退役は米空母戦力のリストラとセット(12隻体制から11隻体制へ)の話なので、米「海軍」側としてもいや〜んなところはあるはず。私は原子力空母配備の話が出た当初から、思いやり予算削減と絡め、日本側の米軍支援の新しいカタチを模索する、つまり通常動力型空母改修費を日本側へ転嫁する口実作りではないかと思ってました。

アメリカのリップサービスもあるにしても、キティ改修で日本の造船所の能力を米海軍は非常に高く評価しており(そりゃー、米本土より遥かにマシですから)財布の都合さえ付けばJFKを日本で改修というのは願ったりのはず。

今までの原子力空母配備濃厚論は、そういう日本の反応を探るためのアドバルーンとして敢えて本気っぽく流されてた可能性も高いのでは。なんといっても米国防費は圧縮基調ですからねぇ。

後、神浦氏については、少なくとも海軍関係は・・・

投稿: ■□ Neon □■ | 2005.03.25 13:10

私も直感的にはNeonさんのような印象を受けました。

JFKの退役に伴うリストラを回避しようと、日本の反核感情を利用しようという構図と思います。実際の日本政府の見解としては、より強力な艦船の駐留を望んでいたと思いますが。

というか、佐世保にもう一隻という手はないのかな?
これを機に20年くらいは徹底的にコミットしてもらうのがいいと思うんですが。

投稿: カワセミ | 2005.03.25 21:01

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