ヒューストン、何かおかしい(Houston, We have a problem)
まとまった話ではない。ヒューストン、なんか変だな的な話である。
23日に財務省が発表した二月の貿易統計で、貿易黒字は前年同月比21.7%減で二か月連続で減少。もちろん、それがどうということではない。読売新聞"貿易黒字2か月連続減少…原油高騰などで輸入金額増"(参照)では次のように説明している。
IT(情報技術)関連部品の生産調整の動きが続いているうえ、日本企業が中国に生産拠点を移し、部品などの現地調達の比率を高めているためだ。中国向け輸出は、同2・2%減の5768億円と、2001年12月以来、3年2か月ぶりの減少だった。
一方、輸入は、原油や鉄鋼、石炭などの値上がりが響き、同11・3%増の3兆7536億円で、2月としては過去最高だった。
まあ、そんなものでしょとは言える。特に原油高は効いたでしょう、と。ただ、同じニュースなのだが、VOA"Japan's Trade Surplus Registers Surprisingly Large Drop"(参照)では少し違ったトーンが感じられた。
Japan's trade surplus for February shrank nearly 22-percent, the second straight monthly drop. The results are worse than forecast by many economists, who say the surprising data shows Japan's exports have not recovered to the extent expected. Some economists say the recent rise in oil prices, making imports more expensive, is partly to blame.
ここでいうエコノミストはVOAの立場から考えて海外エコノミストと見ていいだろう。すると、彼らは、この日本貿易黒字減の連続を意外と捕らえていることがわかる。新重商主義国家日本の稼ぎが予想外に悪化しているな、という含みであろう。
先の読売の報道でも暗に示唆しているのだが、日本の貿易比重はどこから上がっているかというと、中国である。米国ではない。この構造は昨日発表された日本貿易協会「日本貿易の現状2005年版」からわかる。これを伝える日経記事"昨年の貿易額、初めて100兆円超す・対中貿易17%増"(参照)はこう伝えている。
対中国貿易(香港を含む)が前年比17%増の22兆円となり、中国は米国を抜いて最大の貿易相手国となった。日本から部品や素材を輸出、現地の工場で組み立てた製品を日本や欧米に輸出する産業構造の変化が顕著となり、貿易の対中シフトが一段と鮮明になったと分析している。
こうした構造は米国ですら同型であり、日米は中国を生産拠点として貿易の主軸に置いている。そうなると、なにか巨大な異常が発生しうるとすれば、中国発ということにはなるだろう。
こうしたなか、24日ロイターが、ある意味でまたかでもあるのだが、中国バブルの可能性を示唆する報道"中国でバブルの可能性、人民元相場維持に脅威 -- 人民銀行=メディア"(参照)を行なった。
中国人民銀行(中央銀行)の調査部門は、このほど公表した報告書で、不動産や製造業会でバブルが発生している可能性があり、このことが人民元の安定を脅かしているという見解を示した。中国の国営各メディアが報じた。
バブルがはじければ、銀行は巨額の不良債権を抱え込み、現在1ドル=8.28元前後に固定されている人民元の為替相場の維持が危ぶまれると、報告書は続けている。
では人民元切り上げがあるのか? この狼少年話もさすがにうんざりはする。中国としてもこの舵取りが内政に関連して難しい。15日の中国情報局"高まる元切り上げ圧力、対応迫られる中国"(参照)が簡単にまとめている。
しかし一方で、中国側からすれば、これは世界の人民元に対する過剰評価であり、この切り上げ要求に応じられない内部事情を抱えている。高度成長を支える輸出産業へのダメージ、不良債権問題などの脆弱な金融システム、深刻な失業率、農村経済の貧弱さなど、人民元の切り上げはこれら爆弾の導火線に火をつけるほどの危険性もはらむ。
この話がまたぞろ出てきたのは、14日の温家宝首相発言の対応という含みがあるだろう。産経記事"人民元、突然切り上げも 温家宝首相「不意突くことに」"(参照)が示唆深い。
中国の温家宝首相は十四日、全国人民代表大会(全人代=国会)終了後の記者会見で、切り上げ圧力が高まる人民元の為替政策について、切り上げに伴う影響評価を中国政府が進めていることを認めた。その上で、「いつごろ発表するか、どういった方策をとるのかは不意を突くことになるだろう」と述べ、突然の切り上げの可能性を示した。
不意をつくというのはすごい発言だなということで、ニュースにもなったのだろう。公式な発表ではない。しかし、考えてみるに、それって不意打ち以外にはありえないのだろう。ただ、一気にどかんとくるものでもあるまい。
このことはある意味で、織り込み済みとまではいえないにせよ、織り込まれてくる問題ではあるのだろ。貿易黒字減というのは、賢い防衛の体制ではないのかとも思えるし、むしろ、新重商主義的な方策しかとれない日本にしてみると、現状の不況も防衛策かな…ま、それは洒落です。
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コメント
こんな記事を読んでしまうとなぜかユーロの動きが気になりました。
というか老獪なあの距離感こそが欧州の智慧なのか。
普通にユーロの貿易問題はあまり聞かない……。
投稿: to | 2005.03.26 11:31
中国では人が住んでないマンションがポコポコ売れてるようですな。
今のうちに材料売っとけってことでしょうか。
投稿: Cyberbob:-) | 2005.03.26 12:33
勘違いかもしれませんが"Houston"ぢゃないかな?
投稿: Sundaland | 2005.03.26 17:50
Sundalandさん、ども。あ、ミスです。というわけで、修正しました。
投稿: finalvent | 2005.03.26 18:02