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2005.03.30

止まらないGMの転落が暗示する世界の先には

 昨日の朝日新聞記事"トヨタ、08年に970万台生産へ GM超えも視野に"(参照)では、標題どおり、トヨタ自動車(ダイハツ工業と日野自動車を含む)グループが2008年に生産の計画を970万台とし、米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて、自動車メーカーとして世界一になるとあった。朝日新聞、そう来たか。
 GMは確かに大変なことになっている。業績不振である。30%代を維持してきた市場シェも25%まで落ちる。転落が止まらないように見える。同記事にはこうある。


 GMは04年の世界生産台数を明らかにしていないが、ほぼ同規模の販売台数(小売りベース)は899万台。トヨタの04年の世界生産は754万台にすぎない。
 しかし、GMは主力の北米でトヨタなどに押され、多額の販売奨励金をつぎ込んで販売台数を確保しているのが実情で、経営悪化に苦しんでいる。

 やや旧聞だが今期GMは赤字に転落した。17日の日経記事"GM、1株利益が赤字転落"(参照)が詳しい。

 同社は1―3月期について収益トントンになるとの見通しを示していたが、前提となる北米の生産が過剰在庫圧縮を狙った減産で予想を大幅に下回っている。価格競争も激化した。通期の一株利益予想は従来の4―5ドルから1―2ドルに落とした。従業員・退職者の医療費・年金負担も財務を圧迫し、有力格付け会社の一部はすでに長期債の格付けを引き下げる検討に入っていた。

 金融市場にも影響が出てきている。28日の日経記事"米投資家心理は委縮、GM業績悪化や原油高懸念"(参照)ではこう伝えている。

米金融市場で投資家心理の委縮が目立っている。自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)の業績悪化を機に浮上した企業の信用問題や原油高への懸念などが続いているためだ。

 とま、そういうことなのだし、この分野のビジネスに関わりのない私などがどうコメントすることもないのだが、いくつか思うこともある。
 まず、リストラ。赤字転落前に、GMは当然いろいろとリストラした。売れない車種は整理した。そのあたりはごく普通のことだ。気になるのは、金融子会社(GMACコマーシャル・モーゲージ社)の処分だ。GMは自動車ローン関係から金融子会社をもっており、以前はそれがけっこうな稼ぎ手でもあったのだが、これもリストラした。結果的にではあるが、GMほど大きな企業でも本業は何かと問われるものなのか。経営というのにはそれなりに王道というか根本原理というか倫理というかが、やっぱりありそうだな。
 倫理と思ったのは、近年のGMのリコール問題もある。もともと米国市場シェアが高いせいもあるのだがGMのリコールが目立っていた。作りに気合いが入ってなかったのかとも思うし、このあたりことは、物つくり好きの日本人には小一時間問いつめるネタになるかも。
 マーケティング的にもGMはつまづいた。2001年のテロ以降、販売店のインセンティブを高める目的でGMは高額なキックバックを行なっていた。短期的なカンフル剤的な効果はあったのだろうが、米国でありがちな値引き合戦とともに収益の圧迫原因になった。こういう、とにかく目先で売っちゃえ、という感じの経営って、いかにも米国的だなと思うし、この失敗は日本にとってもいい教訓であるのかな。
 GMは雇用もリストラした。一万三千人を整理。GM全体の20%ほど。先の日経の記事にもあったが、ただ雇用調整したというだけでなく、重要なのは「従業員・退職者の医療費・年金負担も財務を圧迫し」ということのほうだろう。医療費はGMにとってかなりの財政的な負担だったようだ。
 このあたりの、いわば企業の福祉切り捨てという動向は、GMだけとは限らない。とすれば、現在ブッシュ大統領が進めようとして逆風を受けている年金改革なども、クルーグマンがいろいろ理屈をこいても、いずれ順風ということになるような気もする。日本人にしてみると米国って社会保障の面では索漠とした国だなという印象が強まる。
 私はそういう国のあり方は少し違うのではないかとも思う。GMの件でも、社会の福祉を担う会社の雇用のありかた、つまり広義の経営が問われてくるようになる、ということなんじゃないか。社会と企業経営の関係において、よい経営がより強いのだという話にまとめるのはちょっとムリメでもあるが。しかし、福祉的な側面について国内的に切り捨てるほうが効率的な経営だぜ、という方向に進めば、結局、社会と国がじわじわ駄目になっていくっていう悪循環ではないのかと。
 別の言い方をすれば、利益を高めるには社会保障の薄い中国で自動車を効率的に生産できる体制にすればいいわけだ。それって、国内の雇用の差分の利益じゃないのか。もちろん、マクロ経済学的には…、などと私がいうのもまたも失笑であろうが、しかし、そうしたシフトはただの産業構造のシフトに過ぎない。そのシフトは、米国も日本も、いわゆる物つくりじゃないサービス産業に向かえ、ということなのかもしれない。
 私としては、内心ではこっそり、米国人や日本人にまだ欲しいものやサービスってあるのかよと思うのだ。質素な生き方という選択でもいいのではないか。その分、社会保障と雇用を考える国家のほうがいいんじゃないかと。

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コメント

みんな無職になって、買えない。

投稿: ハンバーガー昼 | 2005.03.30 10:32

90年代中頃にホンダが販売奨励金増やしすぎて、やばかったような。

お手伝いロボットが欲しい。。。

投稿: バイス | 2005.03.30 12:11

 なぜ販売奨励金を多めに出すかというと……商品そのものに魅力がないからです。一方、トヨタさんのハイブリッドは需要が多く、顧客は待たなければ購入できません。すなわち生産が追いついていない状態です。

・商品の魅力が無ければ、物が売れなく、
・物が売れなければ、収益が無く
・収益が無ければ、首切り、福祉の低下
 が起こります。

 福祉の低下を選択したということは、その分首切りを減らしたということで、人道的には評価できますが……

 経営的にはどうかなと。なぜならば、有能な人間ほど、いい条件の会社へ行きますので。いいかどうかは?判断が問われる所だと思います。

投稿: kekeke(y) | 2005.03.30 12:44

大変興味を持って読ませて頂きました。
小生も、「矢島慎の社会を切る」(ホームページから選択)で書いております。覗いてみてください。最近では「無料紙とライブドア問題の今後」があります。
http://blog.yahoo.co.jp/sweetcreationjp/271173.html

投稿: 矢島慎 | 2005.03.30 12:47

面白く読ませていただきました。
もしトヨタが1位を取ったら、再び政治戦略としてジャパンバッシングが起こすかもしれません。GMの経営を見ていると、財務・マーケティング部門の影響が強すぎて、技術部門が弱いのではと感じます。政治・販売戦略に頼りすぎるとこうなるぞという教訓がえられると思います。
グローバル生産体制というものも中国の賃金が上昇したときは、中国の次を捜していくのでしょうが教育水準・治安・投資環境を考えたときになかなか見つからないでしょう。基本的に現地調達・現地生産な社会を目指すべきなのでは?
また、経営状態によって変わっていまい、永続性を保ちにくい企業の福祉などというものは、そもそも幻想だったのではないかと思います。かといって、日本(ex.社保庁)のように役所にも任せられないことは明白ですが…。

投稿: citora | 2005.03.30 19:38

>米国人や日本人にまだ欲しいものやサービスって>あるのかよ

消費する台所を預かっているのが主婦であることを思うと、まだまだサービス業は穴だらけと思ったりします。

投稿: (anonymous) | 2005.03.31 00:38

GM に限らず、ビッグスリーは、どこも調子悪いんじゃないですか。北米市場は、日本の自動車会社の草刈場になってますね。利益率の高い一部の車種で食ってきたのがついに限界にきたんでしょうか。
XEROX が低迷して、キヤノンやリコーが絶好調ってのとなんとなく重なるような気がもします。

医療費については、アメリカは何故かすごく金をかけていて、患者一人当たり日本の三倍の人手をかけているとの話を聞いたことがあります。
日本のような悪平等と厚生省によるコストカットが必ずしも正しいわけでもないでしょうけど、適正化されるのは仕方のないことでしょうね。
メディケアによってかかることのできる病院が違うってのも日本人には想像できないし。

自動車の製造については、人件費が安いだけではコストの削減にならないってのは常識だったような。実際、中国での製造コストの方が日本より高いはず。

投稿: 粘着電脳研究家 | 2005.03.31 00:49

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