ファルージャに入った反米フランス人が捕まっているという話で
すでに国内の朝日新聞でも報道されているが、イラクのファルージャで反米武装勢力に参加していたフランス人3名を米軍が拘束していることが明らかになった。最初に報道したのはフランス時間4日付けフィガロ紙(すでにアーカイブ済み)で、他の報道はすべてこれに拠っている。朝日新聞記事"反米武装勢力に参加の仏人3人を米軍が拘束 仏紙報道"(参照)ではこう伝えている。
同紙によると、3人は昨年11月、米軍などが行ったファルージャ総攻撃後に拘束された。うち2人は22歳と19歳で、それぞれ中東系とアフリカ系のフランス人。2人はイラクに「義勇兵」を送り込んでいた容疑で仏当局が捜査中の在仏イスラム過激派組織に参加、昨年4月にシリア経由でイラクに入ったという。残る1人の身元は不明。
「昨年4月にシリア経由でイラクに入った」というくだりが、昨年の4月の状況(参照)を思い出すとなかなか含蓄が深いものがあるが、もう少し事実を見ていこう。日本語で読める記事としては毎日新聞記事"在仏過激派が暗躍 米軍と戦闘"(参照)が詳しい。
フランスのテロ担当情報機関・国土監視局(DST)は先月下旬、在仏イスラム教徒の若者をシリア経由でイラクに送り込んでいたとみられるグループを摘発、11人を逮捕した。
さらに、仏紙フィガロなどによると、同グループに所属するとみられる若者3人が昨年末、イラク中部ファルージャなどで米軍との戦闘に加わり、拘束されたことが分かった。現在はイラク南部の米軍基地の刑務所に拘置されているという。3人は昨年3月、イラク中部で昨年後半にテロや戦闘で死亡した別の3人とともにパリを出発したという。
この記事がよく出来ているのは、フィガロの特ダネの背景を暗示させる情報が含まれている点だ。この点はCNN日本版の記事"仏のイスラム教徒3人を拘束、イラク武装勢力に合流と"(参照)が短いながらもさらに補足になる。
3人はいずれも、フランスにある密航ルートを通じて、イラクに潜入。うち、パリ居住の22歳と19歳の2人は2004年春にイラクに入国、同11月に米軍などが攻略した中部ファルージャの戦闘で捕まった可能性が高いとしている。
残る1人が拘束された経緯などは不明。フランス情報機関は先月下旬、パリ東部に本拠があるイスラム強硬派のイラクへの送り出し組織を捜索、イラクへ向かう直前だった2人と、ネットワーク首謀者とみられる人物1人を逮捕し、組織を壊滅したと述べている
問題の根幹は、フランス人の過激派がファルージャで例の4月ごろから活動していたというより、その組織性にある。この先の背景の構図については、国内報道は欧米紙に比べると弱い。ニューヨークタイムズ記事"3 Frenchmen Among Those U.S. Military Holds in Iraq"(参照)はこの点に触れている。
According to lawyers involved in the case, Mr. Benyettou held court in the mosques, preaching jihad and benefiting from his aura as the brother-in-law of Yousef Zemmouri, a member of an Algerian terrorist organization, the Salafist Group for Preaching and Combat, who was deported in 1998. Many people involved in the case suspect that there are more authoritative figures behind Mr. Benyettou, though there is no evidence that his activities are part of a larger network. Similar recruitment rings have been discovered in Germany and Italy.
現状ではそのフランスにおける背後組織は充分に解明されていないのかもしれないが、より広域な国際的な組織的なネットワークがあると推測してもいいだろう。この記事でも触れているが同様のケースはドイツやイタリアにも見られた。
ファルージャで反米活動を行う国際的な組織が単一なものなのか、あるはどのような構図になっているのか、日本との関連があるのかといった点が、今後注視していく必要はあるだろう。
話が少しずれるのだが、この対外的な反米活動家が4月にイラク入りしたのはシリアが拠点だった。ここでは端折るが他のケースでも、反米テロのヘッドはシリアにあるという情報は散見しているが、対シリアの米国の外交は、制裁を行っているというわりには弱い。陰謀論的なスジを考えたいわけではないが、なにか面倒な経緯があるのだろう(参照・参照)。
今回のフィガロ発の報道だが、状況から見れば、ライスの渡仏にきっちりスケジュールを合わせましたということから見て、米国側のリークなのだろう。明日8日に予定されているライス米国務長官とシラク大統領及びバルニエ外相との会談でもこの話題がふっかけられるのは火を見るよりも明らか。ライスはなかなかしたたかということなのだろうか。"Forgive Russia, ignore Germany and punish France"、なるほどね、かも。
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コメント
今日は。新読者のオーロラです。宜しくお願いします。
私の日本語の勉強のために極東ブログを読んでみようと思いました。分からない所をまず辞書で探しています。まだ不明と、同僚に聞いていますが、その人たちはこの日本語がおかしいと言っていたんです。筆者は外国人ですかという疑問が出てきました。
それを解くために、ちょっとプロファイルを読みました。ですが、まだ不明です。東京生まれって書いていますが。
余計な質問かもしれませんが、あなたは日本人ですか。ずっと日本に住んでいましたか。もしぶしつけでしたら、お許しください。
お便りをお待ちしております。
投稿: the auroran sunset | 2005.02.07 12:16
the auroran sunsetさん、こんにちは。ブログを執筆しているものです。ハンドル名としてfinalventとしています。このハンドル名にはそれほど意味はありません。国籍は日本です。
日本語が読みづらいのは、多分に、私の日本語の作文能力が低いためです。文法ミスや書き間違いも多いためです。拙くて、読まれるかたに申し訳ないなと思っています。
投稿: finalvent | 2005.02.07 14:25
“ロシアを許し、ドイツは無視、そしてフランスを罰する”というライスの呪いは解かれた、という英文記事をどっかで読んだばかりだったのですが。どこだか忘れた。
フランスの郊外ゲットーから(今回はパリの19区)モスクでリクルートされ、アルカイダ合宿に参加するパターンは以前からたびたび報道されてます。広い範囲で言えばこれはフランスばかりではなく、ロンドンのスニーカーTNT男、パリ米大使館爆破未遂元スポーツ選手、ハンブルグのイスラム街が欧州から中東にわたる前のストップオーバー地点になっている、といった現象もあり。
アフガニスタンやイラクで死んだ若いヨーロピアン・ジハード(豪州人等も含む)や今もグアンタナモに拘禁されてる/あるいは拘禁されていたムスリム・ヨーロピアンは少なくないです。てなわけで、自分自身はフィガロ記事の米国リーク説は買わない。(フィガロは仏政府リーク御用達です)
だいたい、しばし中断してたブッシュ-シラク業務連絡電話が再開した。2月にはブルッセルでブッシュ-シラク夕食会がスケジュールに入ってるといった事実を考えると、(オールブライトできて大変うれしい)ライスおばさんの欧州デヴュー+米仏国交再開への根回しと見たほうが現実主義に沿っている。逆に米国を許していないのは欧州人民なわけで、これをいかに鎮めるかがこれからの各国政府と御用達メディアの任務でしょう。
ただライス婆がまずイスラエルでデヴューツアーを始めたってのが注目に値する。欧州はその次。オルブライト婆がイス・パレ問題に大きく関与していた。オルブライトの父親がライスの師匠にあたるセンセなのでここはちょっと深読みできます。
自分の見方は『ブ政権はまだはっきりした外交ガイドラインを持っていない。チェスボードに駒を置いてみただけ』というル・モンド紙に近い。
それより、相変わらず米政権内で続く共和党右と中道、それにリアリズムにかけるネオコン残党の内部抗争が気になります。
あとCPAでケチが付いたブレマーって、ネオコンが押してたんでしたっけ?
投稿: ねこ仏少年 | 2005.02.07 23:35
フィガロの元記事を訳してるエライサイトがあったのでupします。
ttp://blog.livedoor.jp/media_francophonie/archives/13674814.html
投稿: ねこ仏少年 | 2005.02.08 02:27
ねこ仏少年さん、こんにちは。ちょっと、予想して書いた面もありますが…、コメント中、「国を許していないのは欧州人民なわけで、これをいかに鎮めるかがこれからの各国政府と御用達メディアの任務でしょう」は、なるほどと思いました。なるほどです。ただ、怒りの矛先はEUに向くだろうなと私はちょっと思いますが、今後の国民投票がお楽しみです。
ライスの立場というか思想というか実力なのですが、現状を見ると、すごいタマかもという感じはします。ネオコンかについては、日本でも、欧米でもややそうだけど、ネオコンが人脈というか人の範疇になっているけど、私はこれは、思想だと思うのですよ。もちろん、派閥とか権力攻勢もあるでしょうけど。私なんかもかなりネオコンだし。その点からするとライスも思想的にはネオコンかな、と。あと、日本ではよってたかってブッシュをアホとか言っているけど、今回の人事の斬りのよさをみると、なかなかかも。
ブレマーはわかんないです。ネオコンの押しなのか? れいの消えた一兆円もバックレていたし、選挙前にこっそりブッシュの足をひっぱっていたり、でも、愉快なキャラですね。
繰り返しますが、ネオコンがいわゆる米政権内の権力闘争的に見るというより、意外に思想の範疇かな、と。つまり、闘争はもっと別の利害で現れるのか、とも。
投稿: finalvent | 2005.02.08 11:23
finalventさんこんにちは、冬もやっと峠を越しそうです。
>>予想して書いた面もありますが…、
了解済み。世界情勢はもうスルーのはずがどうしても反応してしまうのはまだまだ修行が足りないと認識しています。御存知のように、これだけ差がある意見が交差するってのはタコツボ式ブログ情況内では面白いかも、とも思うんですが、老人は自己ブログをオッタテタばかりでまだ人目にさらせる状態ではないので、申し訳ないがコメント欄でカランでいるうわけです。いつも長文、ごめんなさい。
私は、ライス叔母はあまり買っていない。以前、ラムとパウエルの激しい意見交換場面で真ん中の目がロンパリになってるお嬢の写真が米ネットに流通してたが、これって彼女の立場を良く表してた。つまりユ系理想主義者軍団のネオコンの弱みはリアリズムにかける、現場を知らないことなんだけど、ここをパウエルのようには正面から対処するのではなく、ネゴしてく人材だと考えたい。ただ現在の共和党リアリズムは軍産とかに直結してるのでこれも困ったことです。あと米国の思想はやっぱり甘い。ネオコンの中核思想はStraussだと思うけど。
EUに関する欧州国民投票はそんなに荒れないでしょう。シラクにしても、トルコ問題はEUコンスティとは切り離す線で解決を図るようです。各国元首、自分たちの首がかかってるもんね、必死です。
ブレマーはたしかに絵(マンガ)になる。イラクで愛人作っちゃうなんて欧州の風を感じます。このユのひとはチェイニー・ヲルフォに近かったんだと記憶してる。
投稿: ねこ仏少年 | 2005.02.08 22:31