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2005.02.06

国連によるイラク石油食糧交換プログラム不正問題、動向など

 米時間で3日、ヴォルカー元連邦準備制度理事会前議長を委員長とする、国連によるイラク石油食糧交換プログラム不正問題の、国連側の独立調査委員会が、このプログラムの最高責任者だった国連幹部ベノン・セバンの不正を認める報告書を出した。これを受けて、アナン事務総長は、歌舞伎縁者演技のごとく衝撃を受けたとか言ったものの、しゃらっとセバンの不逮捕の外交特権を停止する声明を出した。
 国連不正をワッチして来た者には、内容については特にどってことないものだが、私の率直な印象では、やっぱし尻尾切りはしましたか、とは思った。米国の昨今の動向を見ているとアナンをレイム・ダックにしたほうがメリットがあるので追及はこのあたりでシャンシャンになっているのだろうと推測していたからだ。今後、この不正追及がアナンの息子コジョに及ぶか、さらに端的に言って、フランス大統領シラクに及ぶかだが、どうだろうか。ま、ないかな。
 今回の発表では、さすがにもう完全に国連不正疑惑、といった段階を終えたので、国内メディアもバックレは効かないでしょうから、さて、どう出ますか、というあたりが興味の的でもあった。特にこの問題をスルーし続けたNHKと、できるだけスルーしたかった朝日新聞が見ものである。なお、読売新聞については内部にこの問題を扱うだけのインテリジェンスがないようにも見受けられる。毎日新聞は実は内部的にはこの問題を経時的に追及しているのだが他の問題でもそうだが、現代音楽的な不協和音にしかならない。共同は、すでに投げやりというか適当に垂れ流し始めている。
 朝日新聞としては1月の時点である程度内部で摺り合わせがあったのだろう(外部でも摺り合わせしたい社風なのだろうけど)。前回の報道"イラクでの「石油と食糧の交換計画」疑惑で報告書公開"(参照)では、疑惑はまだ明らかになったわけではないととりあえずしているものの、今回の動向を読んでダメかのトーンはあった。


 旧フセイン政権時代のイラクに向けた国連の人道支援をめぐる疑惑について、独立調査委員会(委員長・ボルカー米連邦準備制度理事会前議長)は9日、国連から提出された内部報告書を公表した。汚職の証拠は見つからなかったが、国連の管理や運営に「落ち度があった」とする内容。
 疑惑は「石油と食糧の交換計画」に関するもの。旧フセイン政権高官がリベートをとり、アナン事務総長が任命した国連高官もわいろを受け取ったとの疑いが浮上していた。米議会は不正額を213億ドルに及ぶとしている。

 今回の"国連幹部の行動「不適切」 イラク支援疑惑で独立調査委"(参照)では、私の印象だが内部的な摺り合わせ報告のように聞こえる。

 疑惑に関連して独立調査委が中間報告をまとめたのは初めて。最終報告は今年夏までにまとめられる予定。

 そして次の手も打っているようだ。

 中間報告は、96年に国連が計画遂行のための銀行を選定する際、ガリ前事務総長が、決められた入札規則に反し、フランス系銀行を選んだことも指摘。今後、国連による人道支援事業の進め方や、国連改革議論などにも影響を与えそうだ。

 全文を引用するわけにもいかないのだが、参照先で読んでいただければわかるが、これが結語になっている。問題の核心は、朝日の記事では触れていないが、これもあっさり言ってしまえば、フランスはこの不正に深く噛んでいたから、フセイン擁護をしていただけなのである。次回の報告でフランスの関与がどこまで出るかなと朝日新聞内部では摺り合わせしているのではないか、というのは半分洒落。
 朝日新聞は、セバンについても、その弁護士の言い分「セバン氏は1セントたりとも受け取っておらず、報告も証拠を示していない。政治状況の中で、調査委にスケープゴートにされた」を強調していた。たしかに、セバンについてはたいしたことではない。というか、朝日新聞も後に触れるNHKもこの問題を日本の自民党議員の汚職みたいな構図に持ち込もうとしているのだろう。が、それはそれほどたいした問題でもない。また、朝日新聞はアナンの息子コジョの疑惑には触れていない。コジョが切られればアナンは終わる。国連の一つの時代が終わるというか、国際的にはすでにそうなのだが。
 今回の報道では、私がワッチしてきた範囲ではNHKが始めてこの問題に触れた。ちょっと感慨深かった。先日のイラク選挙後、さすがに柳沢秀夫解説員だけに勝手にしゃべらせるのはまずいんじゃないの空気をなごませるために外信関連の解説委員が「あすを読む」で雁首を揃えていた(オヤジばっかし)。ふーん、和やかな摺り合わせだなというか、奇妙な大人な人たちでしたが…と、ちなみに柳沢解説員の単独の「あすを読む」の回では、スンニ派をどうするのかぁということを異様なまでに強調していた。滑稽だった。だって、フセイン体制下でシーア派とクルド人がどんな扱いになっていた考えてもみなはれ、であるよ。この人、よほど石油不正にまみれたフセイン独裁体制がよかったのだろうね。とま、NHKはもうしばらくこの分野の偏向は続くのだろう。ま、この問題ではNHK批判している声はあまり聴かないし、面白いなNHKと受け止めてもいい。
 で、NHKの記念すべきニュース"国連幹部 石油不正提供に関与"(参照)だが、実に要領を得たもので、この文章量ならこう報道するしかあるまいが完璧になっている。こうした点、NHKってやっぱ職人だよね、この伝統芸は守らなくてはとは思う。いずれにせよ、新聞社のように枠を広げて報道するのは難しいだろうから、とりあえずはこんなものだろう。
 以上、朝日とNHKの報道だが、これで取り敢えず、日本国内でも、国連に多大な拠出をしている日本国民の誰もが、国連によるイラク石油食糧交換プログラム不正問題を考える土台はできた。なので、さて、大手紙は社説で扱うのかなと思ったら、スルーでした。欧米紙は一様に社説で触れていたのだが…ちょっと、この状況はなんなんでしょ、苦笑、か。
 産経新聞の外信は以前からそうだが、今回"国連幹部の不正確認 独立調査委が暫定報告書 イラク石油食糧交換プログラム事件"(参照)でもかなりしっかりしたものだった。

【ニューヨーク=長戸雅子】イラクの旧フセイン政権時代の国連石油食糧交換プログラムの不正事件を調査している独立調査委員会(委員長・ボルカー前米連邦準備制度理事会議長)は三日、プログラムの最高責任者だった国連幹部の不正を確認する暫定報告書を公表した。この幹部に不正はなかったとしてきた国連の内部調査の甘さが露呈され、同時に旧フセイン政権と癒着した国連が、結果的に同政権の延命を手助けしたとの疑惑がさらに強まった。

 問題の核心は、まさに「旧フセイン政権と癒着した国連が、結果的に同政権の延命を手助けしたとの疑惑」なのだ。もうちょっというと、日本では、大量破壊兵器が見つからないことから米国は大義なき戦争をしたということに納めているが、多少親米的というかブッシュ贔屓に見るならそういう隘路に押し込まれただけでもある。とか書くと反発を招くのだろうが、私はそれほどこの点に関心があるわけでもない。問題は、今後、こうした事態に国際社会がどう機能するかということだ。
 産経新聞の記事で、産経色かなと思うのは、ヴォルカーの置かれた状況について言及しているくだりだ。

 一方で、不正事件を同様に調査している米議会やその関係者からは、ボルカー氏率いる独立調査委員会の中立性そのものに疑問を示す声もあがっている。
 有力シンクタンク、ヘリテージ財団の研究員は、独立委員会のボルカー氏が米国連協会など親国連組織の要職を務めたことがあり、そうした経歴がきちんと公開されていないと指摘。国連協会が事件をめぐる国連やアナン事務総長への批判に対し、「政治的意図に基づいた攻撃」と国連擁護に回っていた点などを指摘し、独立委員会の中立性に疑問を呈した。

 しかし、これはそれほどたいしたことではない。所詮、国連側の調査委員会なのだし。
 米英圏での報道では、今回のヴォルカー報告はすでにそれほどインパクトはなく、むしろ、アナンのレイムダック化でどうよ、また、この不正疑惑は米国が知りつつ黙認していたのではないか、という論調が出てきている。痛い腹はあるだろうとは思う。ブレマーだのチャラビだのあの愉快な人々のスラップスティックには、愉快な陰謀論みたいな筋書きはあるのだろう。
 今回の報道に合わせたわけでもないだろうが、この問題は、シェル石油にも、当然波及してきている。サロン・コムでは"Shell denies any knowledge of kickbacks"(参照)がそのあたりを伝えていた。記事冒頭にAPの明記はないが、ソースはAPのようだ。

Feb. 4, 2005 | Geneva -- The Royal Dutch/Shell Group denied Friday that it had any knowledge of kickbacks paid by a Geneva-based middleman it used to buy oil from Iraq under the U.N. oil-for-food program.

Shell bought about 6.4 million barrels of Iraqi crude oil from African Middle East Petroleum, or AMEP, which has told U.N. investigators that it paid an illegal surcharge to obtain contracts from Saddam Hussein's regime.


 常識的に見ると、クロでしょ。しかし、この話は、示し合わせたようにフィナンシャルタイムズが出した記事"Shell's year of extremes"(参照)にも関係しているのだろう。

Oil companies are experiencing extremes: record highs in profit and lows in reserve replacement. The most egregious example is Shell. Yesterday it posted record annual earnings for a European company, but yet again cut its overall reserve figure and admitted that last year it could book only enough new proved reserves to cover between 15 per cent and 25 per cent of that year's production.

If such a ratio of stocks to output continued, Shell would obviously soon run dry. The company will probably be able to make up some reserve ground quite legitimately, simply by re-booking as marketable over time some of the reserves it has just had to downgrade in acknowledgement that it has flouted industry reserve accounting rules. But it is clear Shell will struggle to get reserve replacement back to 100 per cent, a level that its better managed peers are only barely achieving.


 石油業界について私は詳しいわけではないのだが、シェル潰しあり?みたいになってしまっては世界は困るのだろう。今回の国連不正疑惑とシェルの関連とかきちんと読んでみたいようにも思うが、いずれにせよ、この問題は過去や国際政治の力学というより、国際世界の台所の問題なのだろう。
 現状の世界の原油はサウジにかなり依存しているが、これがそのまま推移していけるのかわからない。中国はなりふり構わず世界の油舐めひょんと化している(環境も問題なんすけど)。ロシアのユコスは実質国有化され、しかも、ロシアの産油能力はサウジを上回ったようだ。石油にまつわる陰謀論はそのスジのエンタテイナーに任せるとしても、こうした配分の見取り図の変化は、ジオポリティックス的な効果を世界にもたらすだろう。ライスがロシア政治の専門家というのは、吉と出るか凶とでるかスカと出るか…いずれ、世界はそういう台所事情に大きな変動要因を持つのだろう、なと思う。っていうか、国連不正問題は、その意味では、すでに歴史の領域に半分足を突っ込んでいる。

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コメント

ルモンドでも今回はかなり詳しく報道してますね。Sevanが16万ドル受け取っているが、贈与したはずの亡くなった叔母は裕福ではなかった。電話盗聴の結果、彼は以前の事務総長ブートロ・ガリのいとこであるエジプト人Fakhry Abdelnourとつながりがあったことが分った。このエジプト人は自分の石油利権を売って1.5百万ドル懐に入れてる、、などなど。
http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3220,36-396860,0.html
また、フランス銀行BNPが石油合法売却金の受け口だったわけですが、ここでスイスの銀行が選ばれなかったのはどうも米国が監査不能なんで嫌がった。仏籍銀行を選んだのはフセインだったらしい。どうもユーロ換算を狙ったようだ。これが米政府の逆鱗に触れたと読めます。
ま、どこまで表に出てくるか、問題はそこですねえ。ところでCPAについてのフォローはまったく無いです、隊長。

投稿: ねこ仏少年 | 2005.02.06 10:09

今回は、ルモンドかなり本腰入れて本件を扱ってます。
以下に4日付けの記事URLあげておきます。興味があたら仏→英の翻訳エンジンBabel Fishとかで訳すといい。

Paul Volcker, l'enquêteur "enquêté"
http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3220,36-396862,0.html
Benon Sevan, 40 ans dans la machinerie onusienne
http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3220,36-396861,0.html
Contournement et noyautage, la stratégie américaine pour affaiblir les Nations unies
http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3220,36-396863,0.html

投稿: ねこ仏少年 | 2005.02.06 10:37

石油の癒着は国連も。
なら、アメリカが疑惑のやり玉にあがる
9/11→アフガン→イラクも
ただの独走とは言いにくいね。

投稿: にゃーご | 2005.12.10 22:22

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