入管難民法改正案でなにか改善するわけでもなさそうだ
人身売買罪の話の全貌がよく見えないので、当然、話もさしてまとまらないのだが、気になることでもあるので書いておきたい。
話はまず、入管難民法改正案が今国会で成立する予定ということ。日本経済新聞記事"人身売買罪を創設・刑法と入管難民法改正案を閣議決定"(参照)を引用する。
政府は25日の閣議で、人身取引の撲滅や密入国対策の強化を目指し、「人身売買罪」の創設を柱とした刑法改正案と、偽造旅券の授受や所持を罰する規定などを盛り込んだ入管難民法改正案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。
国際組織犯罪防止条約に付属する人身取引議定書などを批准するための国内法整備の一環。売春や強制労働など人身取引をめぐる日本の対応の遅れが国際的な批判にさらされてきたことから、対策に乗り出す。
これだけ読めば、それほど難しい話ではない。人身売買はよくないよね、国際間で協力しないとね、ということだ。ただ、この話の背景には外国人の人身売買が野放しになている日本の現状に対して国際的な圧力がある、というふうに読める。この話は以前も書いたが、日本という国は欧米などからはそう見られているようだ。
で、これに風営法改正が関連する。産経新聞記事"人身売買防止へ罰則強化 風営法改正、就労資格確認を義務付け"(参照)を引用する。
人身売買の温床となっている性風俗店での不法就労を防止するため、業者に就労資格の確認を義務付け、無届け業者の罰則強化を盛り込んだ風俗営業適正化法(風営法)改正案が二十五日、閣議決定された。人身売買で来日した女性はほとんど資格がないため店で働かせることができなくなる。
改正案は、風俗店や飲食店が外国人女性を従業員として雇う際、ビザでの就労資格確認を義務付け、違反すれば百万円以下の罰金を科すほか、刑法に新設される「人身売買罪」で摘発された業者を刑の終了後五年間、風俗営業の欠格とする。
この話もそれほど難しいわけでもない。「人身売買で来日した女性」(この表現もすごいものがあるが)は資格の有無によってフィルターできるというのだが、それも普通に考えると当然でしょとも思える。
よくわかんないのは、実態だ。
話が少し飛ぶようだが、先日17日付けの朝日新聞記事"女性来日、比大使館が仲介業から預託金 是正要請"(参照)で、興行ビザで来日するフィリピン人女性に興行仕事を斡旋する業者に対し、フィリピン大使館が手数料や預託金を徴収しているということが問題になった。
外務省によると、同大使館は業者の登録制をとっており、登録には2万ドル(約200万円)を「預託金」として納めなければならないとされていた。同大使館は外務省に対し、給料未払いなどの時に女性への補償に充てると説明していた。
また、登録業者が女性を日本に呼ぶ場合、「認証費用」などの名目で1人当たり7350円の手数料を大使館に支払っていた。03年の来日者数の8万人から単純計算すれば、大使館の手数料収入は6億円近くに上ることになる。
国際法では「行政面の公権力は他国の主権にかかわるため海外では行使できない」が原則。外務省は、フィリピン大使館が国内業者から預託金・手数料を徴収していることは、この公権力行使にあたると判断した。
これもこれだけ読んでいるなら、そりゃそうでしょなのだが、この問題は記事からもわかるようにこれまで外務省は黙認していた。それがここにきて強行した理由は、先の、人身売買対策に関係するというのだ。
日本は昨年6月、米国務省から人身売買の防止などへの対応が不十分な「監視対象国」と指定された。その理由の一つが、興行ビザで来日するフィリピン人ホステス問題への取り組みの不十分さだった。すでに日本政府は興行ビザの発給基準の厳格化を決めているが、今回、外務省がフィリピン大使館への是正要請という措置を取る方針を固めたのも、人身売買対策に前向きの姿勢をアピールする狙いがある。
外務省によると、問題となったのはフィリピン人女性が「歌手」や「ダンサー」として来日するケース。日本政府はフィリピン政府発行の「芸能人認定証」に基づいて興行ビザを発給し、来日を認めている。
回りくどく大人語で書かれているが、ぶっちゃけ、おっと、ここでぶっちゃけるとろくでもないが、ま、大人なら察してくれ、ということらしい。
この事態にフィリピン政府はかんかんに怒っているらしいが、確かにこうした上納金の制度はまずいとしても、ようするにこれはフィリピン人労働者の排除なのだから、怒りも当然ではないかとも思う。
ここで、私はよくわからないのだが、無資格者の労働者を排除するというなら、「芸能人認定証」があればそれを資格とみなしていいのではないか。だめ?
19日付朝日新聞社説"興行ビザ――やっと動いた外務省"では、このあたりをこう言ってのけている。
批判を受けて、政府は人身売買を防ぐための議定書の批准手続きを急いでいる。乱発気味の興行ビザについても、「人身売買に悪用されかねない」として発給の基準を厳しくすることを決めた。
私はナイーブすぎるのかもしれないが、人身売買と興行ビザにはなんの関係もないと思うし、朝日新聞のこの誘導的な書き方も変だと思う。
さて、実態はどうなっているのだろうと、といって紅灯の巷を彷徨う金も気力もないのでネットなんぞをピーピングするだけなのだが、CASA ROSSA"現場のデカは知っている"(参照)が興味深かった。
実際どういうことになっていくのか?
一番怖いのは、北海道のように警察が、「資格外活動」で活発に動き出せば、現在の形態の店舗は全滅してしまうだろう。入管と警察の温度差、各都道府県警間の温度差がどの程度に出てくるのか?今回の興行査証を絡んだPP問題、今のところフィクサーは誰も手を上げたがらない様だ、全く落としどころが無い状況なのか?とりあえず「落として」、時間経過で法改正へ持っていくなど、手はいろいろあると思うのだが・・・・。
よくわからないが、この問題は今後「入管と警察の温度差、各都道府県警間の温度差」に出てくるのか、というのはなるほどなと思う。地方ニュースとかワッチしておこう。
他にも同ブログで興味深い話があったのだが、"人身売買罪の新設で、ほくそえむヤクザ"(参照)には考えさせられた。
今、米国務省が指摘する 《日本の組織犯罪集団(ヤクザ)》 が大忙し。人身売買罪の新設で、笑いが止まらないらしい、もっとも当局は彼らと米国務省のために人身売買罪の新設を急いだわけだから当たりまえかもしれない。
特にシノギが無くきつい犯罪集団には、新しいビジネスがたくさん生れてくるこの外人ビジネスはうまみがある。
シノギは、昔はシャブやチャカ ・・・ 今は、外人ビジネス ・・・ というわけ、さらに人身売買罪がビジネスに拍車をかけてくれた。
『稼ぐだけ稼いで、帰国したくなったら 「私、人身売買の被害者です」 と話して、帰国経費も国費で帰れる。ブラックにもならないですむ、今帰国したらもう日本へはこれないよ!』 式の勧誘が続いている。
率直に言って、私はこの手の世界について無知すぎて実態をどう捕らえていいのかわからない。が、私が知っていることもある。入管難民法改正案では、従来ならただちに強制送還となった人身売買の対象者を、日本国は一時的な滞在を含めて保護しなくてはならないということだが、どこに保護するのか? 婦人相談所らしい。そこは受け入れた体制はできているか? そうでもないらしい。また保護の期間もよくわからない。1か月程度で強制送還ということらしい。
入管難民法が改正されても実質は従来どおりということ、じゃないのか。
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コメント
入管は必死こいて法律守る集団じゃないんで、法の文面はあまり関係ない気がします。
投稿: kamiya | 2005.02.27 15:14