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2005.02.25

[書評]サーノ博士のヒーリング・バックペイン(ジョン・サーノ)

 現在発売中のTarzanが腰痛・肩こりを特集していた。へー、Tarzanがこの特集ですかと冷やかしに立ち読みでぱらっとめくりつつ、微笑みながら、あれ、PNFが載ってらとちょっと驚いたので買うことにした。とはいえ、PNFやその関連についてはこのエントリでは触れない。でもそういえば、と、標題の本のことを思い出した。ネタにしようとして、していなかった。

cover
サーノ博士の
ヒーリング・
バックペイン
 この本は、日本版の副題に「腰痛・肩こりの原因と治療」とあるように、とりあえず腰痛について書かれた本だと言っていい。米国では"Healing Back Pain(腰痛治療)"として1991年に出版され、話題となった。というのもこれを読んだだけで腰痛が完治したという人が多数出現したからである。ちょっと宗教みたいな状況だった。
 と、書きながら、少しためらうのは、そう書くことでいかがわしい本であるかのような印象を与えるのではないかということだ。実は、この本をどう伝えるかということが非常に難しい。つい尻込みしてしまう。
 本の帯には「腰痛、肩こり、関節痛患者が最後に読む本 投薬、手術、物理療法によらない画期的治療プログラム」とあるが、本書を読めばそれがある程度よく練られているもののアオリだとわかるだろう。「プログラム」というのは違う。本書でサーノ博士はこう明言している。

 断っておくが、本書に書かれているのは、背腰痛の「新しい治療法」ではない。TMSはこれまでなかった「新しい疾患概念」である。となれば、その「疾患概念」に合った方法で治療しなくてはならない。

 正確に言えば、本書は、腰痛や肩こりの治療法ではなく、サーノ博士がTMSと呼ぶ疾患、緊張性筋炎症症候群(Tension Myositis Syndrome)について本だ。なんとなく、TMJ(temporomandibular joint Syndrome)に似ているが、こちらは医学的に広く認められた疾患であるの対して、TMSについては、現代医学からは、どちらかというトンデモの部類になっている。というのは、TMSは、ある意味、腰痛の原因は心だというふうに受け止められているせいでもある。確かに広義には心因性ということになる。
 しかし、本書を直に読むとわかるが、TMSはかなりきちんと医学的に整理され、限定された概念であり、現象面では筋肉の部分的な機能原因による酸欠状態を指している。その酸欠状態は、人間のなんらかの神経系の指示によって、ある利得のために発生しているのだろうも、としているがそれはある意味で推測として区別されている。
cover
腰痛放浪記
椅子がこわい
 TMSにはそうした現象の考察と原因についての考察の二面があり、むしろ、サーノ博士が本書を著したのは、原因がある種の心因であることの一つの社会的な説得なのかもしれない。
 ただ端的に言って、腰痛のある人に向かって、「それって心の問題ですよ」と言っても通じない。いや、通じないことにサーノ博士の内省の部分の呼応があるので、その意味では、日本版の帯にあるように、腰痛治療にすべて諦めた状態になってから読むのがいいのかもしれない。また、そのあたりのことは夏樹静子の「腰痛放浪記 椅子がこわい」が参考になる。こうした問題の機微をこの本はよく描いている。ある意味でホラーとも言えるほどだ。夏樹はその後、サーノ博士の本を訳した長谷川淳史の「腰痛は<怒り>である」なども推薦しているので、心因について深く思うところはあるのだろう。が、そこはそれほど表層的な理解でもない。
cover
腰痛は
<怒り>である
 ところで、こちらの「腰痛は<怒り>である」だが、私はこちらも読んだのだが、取りあえずサーノ博士の本をわかりやすくアレンジしたともいえる。ちなみに、アマゾンでのサーノ博士の本の評価であまりに絶賛が多いのも、どうやら長谷川の影響のようでもあるようだ。それはそれで実際的なTMS理論の普及でもあるのだろう。ただ、私は、両者、つまり、サーノ博士の理論と長谷川の理解には大きな違いがあるようにも思う。が、非難の意図はないので、それ以上は述べない。
 ブログでもあるので私と腰痛の話も少し書いておく。高橋源一郎よろしく私も30歳を少し過ぎた頃、ぎっくり腰というのをやった。朝起きたら、毛虫になっていたというくらいの変容だった。いや、朝起きたらではない、起きられないのだ。腰から全身に激痛が走った。知り合いに石坂宗哲(参照)の系譜を引く闇鍼を打つものがいて、応急処置をしたものの、へっぴり腰とはこのことかと思った。まわりの者というか、やや年長者から「そうなんだよ、30歳過ぎにくるんだよ」「治らないないよぉ~」「いや、おまえも腰痛持ちか、童貞でよかったな、※EXは難儀だぞ」と祝福していただいた。るせーっ。
 幸い、呪いは解けた。最近では一年に一度は腰がちょっと痛いかなということがあるが、「かな?」程度ですむ。そういうこともあり、腰痛については随分考えさせられたし、いろいろ試みた。結果として一番効果があったのは……なにかの機会にふれるかもしれないが、こうした問題は人それぞれなので各人の工夫あるべしだろうし、大筋でサーノ博士の見解は正しく、心や生き方の問題も関連してはいる。
 現状、すべて良好かというとそうもいかない。昨年は、40肩かな、情けねーことになった。これは意図的な筋トレでかなり改善した。その後も、肩だの背筋だのはごちごちとしているが、ま、歳相応こんなものでしょという感じではある。

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コメント

こっちでは肩こりと言うのはありません。というか、あれは腰痛のカテゴリーに入ってしまうらしい。

ちなみに私は、肩も腰も膝も水泳でOK。年もあるが、結局のところ血液循環の問題でしょう。

で、ここって第三世代ブログでしたっけ?

投稿: ねこ仏少年 | 2005.02.25 13:03

ぼそっと書きますが、どうも細胞レベルでの低酸素適応、低栄養適応といった現象が存在するように思います。で、神経系みたいにこの適応能力をまったく持たないものと、筋肉のように強力に持つものがある、でもってコンパートメント症候群なんかもこっちで説明した方がいいんじゃないか、みたいな。これだけ書くとトンデモですか。

投稿: Sundaland | 2005.02.25 14:30

お手数かけます。で、あまりに舌足らずなんでもうちょっと。
自律神経の血流コントロールに、どうも通常のストレスフェイスとは異なったモードが存在するのではないか、ストレス(含精神的)に対応して、筋への血流を絞り、低酸素低栄養適応に追い込み、結果的にアミノ酸経由糖新生→高血糖というパスウェイを持っているのではないか、さらにさらにこれがいわゆる廃用萎縮と同根なんではないか。
筋肉とは一義的には貯蔵アミノ酸であり、だからこそ人類は脂肪からの糖新生機能を欠損させることができ、なるべく脂肪を脂肪として運用することを可能にしたのではないか。とま鳥羽市ですね。

投稿: Sundaland | 2005.02.25 14:51

なんか、今日は痛そうな話題ですね。

みなさんのお話の流れを追ってみて、要は、腰痛には筋肉と心が関係しているということなのでしょうか。

水泳はいいですよね。浮いてるだけでも結構疲れるし、全身の筋肉がしまる気がします。

「心」の方には、アロマセラピーってどうでしょうか。我慢できないニオイもありますけど、種類はいっぱいあるし、気分転換、リラックスにはもってこいだと思います(ほんとに鼻腔から脳を刺激されるって感じです)。マッサージもいいけど、部屋を気に入った香りでムンムンにしておくのも結構楽しいです。私は、今、フローラル系、特にローズにはまってます。

投稿: むぎ | 2005.02.25 19:32

ちょっと書きそびれたので、もう一度。。。

筋肉を運動することによって柔らかくすると、血行をうながし、神経にも刺激を与えることになるので健康体になる、ということなのかなと。

投稿: むぎ | 2005.02.25 19:53

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本の話題ですが、変わった本ですね。 http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2005/02/post_22.html [続きを読む]

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腰痛と首痛の記事が続きましたが、ようやく元気になりました。 先週は仕事が忙しく、心身ともに疲れていて、ストレスフルだったのでそこから来たのだと思います。 腰痛の記事を読んだ知人が勧めてくれた本「サーノ博士のヒーリング・バックペイン—腰痛・肩こりの原因と治療」に、腰痛をはじめとした身体のあちこちの痛みは精神的なストレスが原因となっているのではないか、といったことが書かれています。 簡単にまとめると (1)身体的に欠陥があるのではない。 (2)ストレスや悩みや不安があり、それに目を向けないように脳が血管... [続きを読む]

受信: 2011.01.29 05:11

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