負けたのか、ホリエモン
フジテレビを含めフジサンケイグーループを事実上乗っ取るというホリエモンの大勝負だが、概ね、終わり。この点については、ホリエモンの負けのようだ。
当事者とも言える産経新聞だから共同をべたに引っ張っているのか、22日19時の"ニッポン放送株、フジが30%超を確保へ"(参照)では、ご覧のとおり30%の数字が浮いて出た。
フジテレビジョンが実施しているニッポン放送株の公開買い付け(TOB)について、目標に設定している発行済み株式の25%を超え、議決権ベースで30%超を確保できる見通しになったことが22日、分かった。フジサンケイグループや親密な金融機関などがTOBに応じる構えを示したため。
フジ側としては25%が死守できれば、取り敢えず勝ちのラインだから、それを楽勝に越え、しかも、同記事に言う「株主総会で新株発行や合併などの重要事項に拒否権を持つことができる33%」のラインも目指せるかということだが、23日1時の"「25%超は間違いない」 フジ会長、目標達成へ自信"(参照)ではややトーンが弱い。
フジテレビジョンの日枝久会長は22日夜、記者団に対し、同社が進めているニッポン放送株の公開買い付け(TOB)について「25%超は間違いない」と述べ、TOBの取得目標である25%超について主要株主から同意を取り付けることへ自信を示した。
ま、しかし、これは、余裕の表現と見ていいのだろう。当方の素人考えでも、メディアとしてのフジテレビは買えるかもしれないけど、産経新聞は無理なんじゃないかという印象は持っていた。産経新聞がホリエモンの狙い目と読むスジもあったが、私はそれは無理なんじゃないかと思ったのは、至極単純で、産経新聞にまで手を伸ばされることにはかなり御不快な御老人が多いだろうし、彼らは最終局面で動くのではないか、というか、もともと今回の事件の発端は日本放送がフジテレビを持つという古い時代の名残が原因であり、それゆえ古層は古層なりの動きをするのではないかとも思ったからだ。事態がそういうことなのかは真相はわからないがいずれにせよ産経新聞は守られた。しかし、それが結果的にどうよという問題は残る。が、それはまた別の話題だろう。
今回の勝負、銭の世界の玄人筋には世間とは別につまらぬ勝負と見えていたのかもしれない。私としては、ホリエモンはそうしたことを承知でやったのか、ただのアマチュアリズムでやったのか、その奇妙なアマルガムだったのか、さて、どんなだろう。いずれ銭の世界は銭の世界の論理でカタが付くとして、むしろ、アマチュアリズム的な爆走に関心を持った。王様は裸だと言うのは愉快じゃないかと。
だが、率直に勝ち目というのがあるのかもしれないとも思っていた。そう思ったのは彼の将棋の比喩からだ。ネットに残っているニュースとしては"堀江社長「将棋でいえば詰んでいる」"(参照)があったのでひいておく。
ライブドアによるニッポン放送株取得問題で、ライブドア堀江貴文社長(32)が11日、「将棋でいえば詰んでいる。穴熊やっててもしょうがない」と語った。ニッポン放送の子会社化を目指し株式公開買い付け(TOB)を実施しているフジテレビが「最低取得株式の引き下げ」という“裏技”を使ったことを、将棋にたとえて皮肉った。フジの対応については「気にしていない。予想の範囲」とした。
「穴熊」というのはいい表現だなと思った。現代の将棋で穴熊がどう評価されているかわからないが、これはヘボ将棋にはほとんど禁じ手だ。折角のへぼ勝負の醍醐味がなくなってしまう。ただの時間稼ぎ将棋だかパソコン相手の詰め将棋で手をとちっているのかわからなくなる。ホリエモンがそう事態を認識しているなら、なにか目あるのかもしれないとこの12日の時点で思った。もう少し引用する。
今回の問題について既に「詰んでいる」と豪語。企業防衛に走るフジを、将棋の「穴熊」にたとえて皮肉った。一方でフジの25%取得が実現すれば、ニッポン放送の株主上位10社の持ち株比率が75%超になり、上場廃止に追い込まれる可能性もある。
堀江氏「上場廃止になろうが、1年間の猶予があるので我々の持ち分が棄損することはない」。
エコノミストの紺谷典子氏は「常識的に上場廃止となれば株価の値下がりは避けられず、株主にダメージは及ぶ。持ち分が棄損しないというのは強がりにも聞こえる」とも指摘する。
この記事に限らず、この時点ではホリエモンはフジの25%の取得を難しいと踏んでいたと読んでいたようだ。が、当のホリエモンはそれを予想の範囲だと言っているのに。
ここで私はまた率直にホリエモンの言葉を聞いてみる。こういうことではないか……ちゃんと言っているのに通じないやつらだよなぁ。既存メディアっていうのはこれだからだめなんだよな。ちゃんと言っているのに、変な読みばかりしてボクの言うこと聞かないじゃないか……と。
しかし、世間的には今週開け、村上ファンドが日本放送の保有株をすでに売却したという話が出たあたり(参照)で勝負ありとはなった。これでホリエモンは日本放送の株50%以上の取得は無理だろう。世間的には終わった話となった。
さて、ホリエモンどんな泣き言を言うのだろうと、"livedoor 堀江社長所信表明"(参照・会員のみ)を聞いてみた。負け惜しみと聞こえないこともないのだが、面白かった。率直に言って、私は腰を抜かしそうになるほど驚いたのだが、すごい素人くさいのだ。わざとそうやっているのかと疑ったが、ホリエモンとしては、どうです、ニュースがこんなに簡単にできるんですよ、ということの実証のつもりのようなのだ。すごいなと思った。ニュース報道やテレビというものを舐めきっているこの壮大なアマチュアリズムに感激してしまった。
同じ感覚で、ホリエモンはテレビの広告が事実上独占的になっているのおかしいんじゃないのと思っているのだ。広告の現場を知らないというか、頭がいいのか、単なるアマチュアリズムなのかだが、アマチュアリズムなのでしょう。
一昨日の彼の社長日記も面白かった(参照)。ここにも泣き言はない。
しっかし、今の日本って株主の権利が激しくないがしろにされているなあ、と感じる。なんで命の次に大事なお金を投資しているのに、会う必要がないなどとふざけたことがいえるんだろうか。失礼にもほどがある。株主が投資した資本金がなければ会社はスタートできない。そのことを日本の多くの経営者は忘れてしまっているのではないか?自分たちの力だけで会社が運営できているとでも思っているのだろうか。
自社株をあれだけ下げるトリックに参加してよく言うよというか株主は激怒するのだろうが、傍からみていると、おもろいやっちゃで、ということになる。
経営に 終わりはない |
たまたまネットを見ていたら、"堀江貴文 株式会社ライブドア代表取締役社長 兼 最高経営責任者/社長対談~デキる男社長に会いに行く"(参照)という記事があって、内容はどってことないのだが、そこにホリエモン社長の格言があった。なんだと思う? 「諸行無常」だそうだ。すごいな。ホンダ創業藤沢武夫の「万物流転」に通じるものがあるな…な、わけはない。
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コメント
勝ち負けを問う問題にいているようでは新橋の赤提灯のオヤジと変わらない。マスコミはいつから野次馬と同じようにロープの外で騒ぐようになったのだろうか。
投稿: 極西ブログ | 2005.02.23 14:40
ニッポン放送は23日、同日開催の取締役会でフジテレビジョンに新株予約権を発行することを決議したと発表した。〔NQN〕 (16:11)
「ルールにはルールで」ということなんでしょうか…
大人気ないというか、何というか
投稿: neda | 2005.02.23 16:57
諸行無常ですね。
投稿: maro | 2005.02.23 18:49
よけいなお世話かもしれませんが「すごい(形容詞)」と
「すごく(副詞)」の使い分けをしっかりされた方がよい
と思います。
投稿: (anonymous) | 2005.02.23 18:58
ほりえもんの落としどころがわからない。
あまり考えていないのではないかと正直思う。
まあかき回してくれるのは面白いのでもっとやって欲しい。
投稿: aa | 2005.02.23 19:36
アフォルダーの動向と日本在住の海外の投資家の動向が気になるところですが頭痛いのですごいどうでもよくなってきた。これだけ露出して売名できればゼロからスタート三十路杉としてはかなり良い結果かと。
すごいの副詞形っつーのは現代口語ですね。
投稿: 丹 | 2005.02.23 20:25
結局、TV業界に新規参入ができないことが、問題の根底にあると思います。
例えば、ほりえもんに買収をあきらめさせる代わりに、TVの空いてるVHFチャンネルを一つ与えて、新たにTV局を作らせるというような解決策ができれば面白いと思うんだけど(ついでにソフトバンクと楽天にチャンネルを与えても良い)、それができない理由って何なのかな?
投稿: Baatarism | 2005.02.24 10:59
新株予約権の発表後に、フジがニッポン放送の株を買ったら、インサイダーのようなものに引っかからないのでしょうか。
この発表により流通している株が下がり、TOB価格まで落ちてフジが買い集めるのなら、明らかな株価操作になると思うのですが・・・。
こんな事が日常的に起きたら、偽装TOBが流行して、株の信用不安につながると思うのですが???
誰か、教えてください。
投稿: YO | 2005.02.24 21:35
追記
私としは、最近のテレビの腐り具合が気になっていたので、なんとかホリエ氏に勝ってテレビに風穴を開けてほしいです。
未成年アイドルの集団窃盗の話やお笑い芸人の芸歴(犯罪歴)自慢を平気で流すテレビにうんざりです。
ついには、細木かず子のズバリいうわよという番組で、舘ひろしが中学の時にジャックナイフを持ってカツアゲ(強盗)をしていた事を自慢げに話していました。(つい先日、学校で殺傷事件が報道されたばかりなのに。)
日本人は、倫理観よりも恥じの意識を無くしてしまったのかなと・・・悲しくなりました。
投稿: YO | 2005.02.24 22:29
>ホリエ氏に勝ってテレビに風穴を開けてほしいです
穴をあけてもあの人がちゃんと埋めるかどうか疑問を感じます。だって産経新聞もオピニオン誌の正論も否定してるんですよね。
そもそも、何やるかという前向きな構築の話をほとんど聞かないし「新聞テレビを殺します」って言ってた人間ですからね。
ネットとのシナジーって・・・
後、人の人生詮索する気は無いけど「命の次に大事なお金」という台詞はちょっともの悲しい。かぶいているってのもあるんだろうけど。
投稿: (anonymous) | 2005.02.26 02:29
確保と取得では意味がまったく違います。なぜTOB期間延長したのですか?
投稿: まるこ | 2005.02.27 14:32