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2005.02.21

尻割れならぬ札割れ的世界

 ふざけたタイトルにしたが、話は量的緩和政策と実質的な増税論のことだ。が、さして私が詳しいわけでもないので、簡単に雑記しておくだけのことになる。
 話のきっかけは、この手の話題の毎度毎度の毎日新聞社説"量的緩和策 金融政策は自然体が一番だ"(参照)である。毎日新聞の経済担当というか財務省の一部なのかが言いたいのかのは、量的緩和政策の出口論である。


 景気の先行きについては、強気論もあれば弱気論もある。だが、いずれにしても30兆~35兆円を日銀に積んでおくべき合理的な理由は見当たらない。すでに日銀内でも論議されているようだが、4月のペイオフ凍結解除をひとつの区切りに、量的緩和の出口を模索するのがよいだろう。
 この先には消費税増税問題などが控えている。待てば金融政策の正常化が容易になるというものではないのである。

 一読、わっははなのだが、こうしたことが国内世論にならないように、先日OECD対日経済審査報告が出ていたことについては、極東ブログ「OECD対日経済審査報告と毎日新聞社説でちと考えた」(参照)で触れた。
 たまたま典型的なので毎日新聞の社説を取り上げたのだが、この議論がまたぞろ出てきたのは、やはり昨今の札割れである。

 しかし、日銀の資金供給が予定額に達しない「札割れ」がしきりに起き、30兆円以上の残高維持が難しくなっている。景気が回復し金融不安も遠のいたため、市中銀行も巨額の資金を日銀に積んでおく必要性を感じなくなった。日銀の政策委員の間から、当座預金残高の引き下げ論が出てきたのは当然である。また、目標は引き下げないまでも、一時的に30兆円を割り込むのは容認しようという意見もある。これまた、当たり前のことではないか。

 私もこれはなんだろうと思った。毎日新聞が意図的にミスリードしているのか周到にミスリードしているのかわからないのだが、単純に受け止めると、札割れ(参照)しているのだから、日銀の言葉を借りれば、「資金供給オペレーションで札割れが起こっているということは、金融機関に十分な資金が既に行き渡っているため、金融機関がオペレーションに全額は応じようとしなくなるほど、日本銀行が豊富に資金供給を行っていることを意味します」ということで、ふーん、リフレ政策も終わりか、ふーん、リフレ政策なんてたいしたもんじゃないな…なんて言おうものなら総叩きになるくらいの空気は読めるのだが、さて、いわゆるところのリフレ派はこの札割れをどう見ているのか…と気にはなった。もっとも、現状の課題としてはOECD対日経済審査報告が示すとおりなので、別に政策転換の必要性はないのだが、ま、言い方まずいと反リフレ派みたいく思われるのもなんだしな、と。
 で、これがよくわからない。まず、昨年の非不胎化介入は効果があったでしょみたいな意見もあるようだが、ま、それについては、当時極東ブログ「グリーンスパンは日本の円介入をリフレと見ていた」(参照)で触れていたとおり。専門筋はあたりまえでしょということなのだが、この時点で私なんぞがこれを明確に言うのは、けっこうきつかったなと思い起こす。
 それはそれとして、その後はどうよ、と。そこがはっきりしない。リフレ派的にみるとどうなのか、と愚問を抱き続けていたのだが、bewaad institute"[economy][BOJ]日銀券残高と長期国債保有額との関係等"(参照)で取り上げていただいた(謝々)。

単なる量的緩和では無意味で、将来においてもそれをきちんと継続し、足りなければさらなる緩和をするというコミットメントが重要だと考えています。日銀の量的緩和は、前者はまあある程度満たしていますが、後者がまるで欠けているので、リフレ派から見ると不徹底で不十分なものだと映ります。

 この文脈にテクニカルな説明が続くのだが、とりあえず上記の部分でいうと、やはりOECD対日経済審査報告と同様でまず常識的な見解にはなる。
 ただ、それでも札割れといわゆるリフレ政策の具体的な提言みたいなのは見えないなと思ってはいたのだが、そもそも、今回の札割れという事態もわからない。当然、当方の知識が足りないせいもあるのだろうが、この点は、マーケットの馬車馬(参照)で取り上げていただいた(謝々)。3回シリーズになっている。

  1. 札割れのお話(1) 日銀当座預金というキノコの苗床
  2. 札割れのお話(2) 札割れのメカニズム
  3. 札割れのお話(3) 傾向と対策

 これが非常に興味深い内容で、特に私などには次のように指摘してもらえるだけで、ああ、そうかと思う。

だが、この説明で最近の札割れを理解しようとするのは無理がありすぎる。マネーマーケットにキャッシュが溢れているのは今に始まった話ではない。2年前から当座預金残高は30兆円を超えていたのだから。一方で札割れが頻発し始めたのは昨年の10月くらいからだ。

 内容を端的にまとめる能力が私にはないが、特に、「札割れのお話(3)」での具体的な提言は今後の予想の部分が含まれているので、そのあたりを指針に今後の動向を見ていこうかと思う。
 話を毎日新聞社説に戻すのだが、読みながら、先日のフィナンシャルタイムズ"Japan's recession"(参照)を思い出していた。あたかも、こうした議論が日本で沸き起こるのを想定していたかのタイミングだったからだ。
 フィナンシャルタイムズの経済見通しなんて毎度外すじゃんという意見もあるのだろうが、まず同紙は標題が暗示するように日本はまだまだ不況だよと見ている。内容を読むとフィナンシャルタイムズらしい慎重な物言いなのだが、いずれにせよ、欧米からは日本がそう見えるという例証にはなる。

The bare statistics published yesterday about the world's second-largest economy make grim reading. Not only did Japanese gross domestic product shrink in the three months to December, it also declined - according to revised figures - in the previous two quarters. Three consecutive quarters of negative growth are more than enough to count as a recession. On the face of it, Japan's recovery of the past three years has come to a juddering halt.

 フィナンシャルタイムズはかくどよ~としたトーンで切り出すのだが、国内では奇妙なラッパが鳴り響いていた。日銀が大丈夫と言ったからでもあるのだろう。そのあたりの記事として"(2/17)日銀総裁「春以降、再び成長軌道に」・設備投資拡大続く"(参照)がある。

 日銀の福井俊彦総裁は17日の記者会見で、景気の現状について「好調な企業収益を背景に設備投資は増加を続けており、景気回復の基本的なメカニズムは維持されている」と強調した。日本経済は昨年10―12月期にマイナス成長となったが、情報技術(IT)産業の在庫調整が終わる春以降、再び成長軌道に乗るとの見解を改めて示した。

 この点についても実際的には「春以降」を見ていけばいいのではあるだろう。ただ、実は、フィナンシャルタイムズはこの日銀アナウンスを受けての記事だった。

Yesterday, the Bank of Japan, which has been consistently over-optimistic about economic growth, began a two-day meeting at which it had been expected to discuss a possible tightening of the ultra-loose monetary policy that has kept interest rates at zero. Meanwhile, the tax bureau, which remains disconcertingly independent of political control, is still considering the kind of tax increases that would throttle another recovery at birth.

 かくフィナンシャルタイムズでは、量的緩和政策についてはすでに今朝の毎日新聞的な議論は外されているが、増税の効果を懸念している。

Neither of these ideas is wrong in principle. Interest rates and taxes will both have to rise eventually as Japan emerges from deflation and recession and begins to tackle the problem of budget deficits and high public debt. But the timing is all-important. With the economy in a recessionary trough, the time is not now.

 フィナンシャルタイムズとしては、日本が増税へシフトする施策の議論は可能だろうとしているし、その必要性をも理解はしているが、とにかくタイミングが重要だとしている。確かにタイミングなのだろうと私も思う。
 先日、京都議定書関連の話をしつこく3つも書いたが(参照参照参照)、環境問題の実際的な施策は経済とのバランスが必要になる。まじでもう不況はやめにしてもらいたい。
 と、以上、毎日新聞社説をくさしたようになったが、次の視点は重要だと思う。

 半面、年金システムはずたずたになり、預金者の金利は銀行に吸い取られ、財政規律は緩んでしまった。国債市場はバブル状況であり、副作用も無視できないレベルとなった。

 経済通には失笑されるのだろうが、この間、銀行は、生活者の金利を吸い上げていただけではないかという思いはぬぐい去れない。

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コメント

取り上げていただきましてありがとうございます。
なんだか自分の文章の勘所を逆に教えていただいた気分です。
ものすごく端的にまとめるならば、今回の札割れはテクニカルな、(そしてかなりの確率で)一時的なものなので、この札割れを持って金融政策の限界を云々するのは無理、というところでしょうか。

銀行は生活者の金利を吸い上げていただけ、とのご指摘ですが、預金者の金利を吸い上げていたという点は確かなのだと思います。ただ、銀行とは所詮仲介期間に過ぎず、貸出金利も下がってしまうとあまり利益は上がりません。一般的に、銀行は金利上昇局面では預金金利の引き上げを遅らせ、金利下降局面では貸出金利の引き下げを
遅らせることで利益を増加させていると言われていますが、低金利で固定化されてしまうとそういう利ざや稼ぎは出来なくなるわけです。

結局、最終的に銀行からお金を借りて消費なり投資なりを行う人たちが預金者の金利を吸い上げているわけですが、一部アグレッシブな消費者・投資家を除くと今バリバリお金を借りて消費と投資を増やしているのは政府であるわけで。で、利払い額の軽減の恩恵は納税者に還元されるわけですね。(そもそも、民間部門が消費も投資もしないから金利が下がるわけですが)

ただ、納税額の少ないお年寄りはこの還元がないので、彼らにとって見れば取られ損と言う側面は存在します。まぁでも、皆さん年金を満額もらってるんだから勘弁してよ、と言いたい気持ちもあるのですが。

投稿: 馬車馬 | 2005.02.22 09:51

>生活者の金利を吸い上げていただけではないか

2chの厨房以下です。実質金利と名目金利の区別ぐらいつけましょう。デフレの弊害を理解していないことが丸わかりです。

言質を取られないよう警戒するのも無駄ですよ。本人が気づかない間違いは警戒しても防ぎようがありませんから。どうぞ堂々と反リフレ派として電波を振りまいてください。

投稿: ほんと失笑ですね | 2005.02.23 07:42

blogも今や人気商売ですので、アンチがついて
ナンボのものかと思います。
ノイズは適当に流しつつ、まったりと続けてくださることを
祈念しております。

投稿: rowlock | 2005.02.25 00:44

断っておきますが、そしてもう誰も見てないと思いますが、経済問題以外の記事は大変有用だと思いますし、finalventさんのことは尊敬してますよ。某所でウンコだなんだと騒いでいる輩がいるようですが、ウンコなのはあくまで経済問題だけですので、誤解のなきよう。

投稿: ほんと失笑ですね | 2005.02.27 12:36

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一言で申し上げれば「また毎日か」なのですが(笑)。勝手に量的緩和の目的をプルーデンスにするなとか、札割れが起きるからもう無理だって主張してるけど日銀は札割れが起... [続きを読む]

受信: 2005.02.22 04:13

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