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2005.02.17

結局、京都議定書ってどうよ

 三回シリーズでお届けする京都議定書をどうするだが…ってシリーズにする気もなく、原油ピークアウト説のネタでもと思ったのだが、一昨日「ブルガリアといえば、ヨーグルト、琴欧州勝紀、そして…」(参照)でグリーン投資スキームを看板とした企業の奇怪な動きに簡単に触れ、昨日まさに議定書発効日に「環境税(温暖化対策税)はしばらくやめにしたらどう」(参照)を書いてみて、心に残るものがまだある。というか、考えが少しずつ変わりつつある。そのあたりを書いておきたい。結局、京都議定書ってどうよ、ということでもある。
 私は、すでにこのブログの過去の論調でもわかるように、京都議定書なんてくだらないと思っていた。最大の理由は、地球の気温変動は小賢しい人間の仕業なんぞに左右されるものではない、まして、最大の温暖化排出国である米国と中国が含まれていない国際協定になんの意味もないと考えていたからだ(米国は州単位で環境問題に取り組んでいる)。そして、この環境テーマはEUの世界戦略に関係しているのも、笑い飛ばしたい一因でもあった。
 しかし、率直に言って、考えは変わりつつある。一昨日、昨日と、どちらかというと、グリーン投資スキームや環境税に批判的なスタンスでいたのだが、いや、これは肯定的に考えるべきか、という思いが強くなってきている。温暖化ガスの抑制は地球に対して微々たる影響力あっても、無視できるわけでもないと言えるまでに研究が進んでもいるようだ。
 そして恥ずかしいことだが、私は、自然に対して倫理的でありたいとさらに願う気持ちが強い。いや、そう言って、すごいこっぱずかしい。だが私は多分ヒューマニズムを越えていけないように古風な自然愛好の心情を越えてはいけないのだろう。あと何年この地球にいられることやら。そしてさらに個人的なことだが、好きだった沖縄でも、八年の後東京に戻り、その関東の雑木林や河川の土手などを歩きながら、この自然が自分を育ててきたのだ、これに守られてきた子供だったのだと感慨深く思った。もちろん、沖縄にも自然がある。でも、自分の自然とはこういうものだったのだと強く思った。感傷域になりそうだが、特に松の木の衰えには泣きたい気持ちになる。
 ま、それはさておくとしても、京都議定書に取り組むというより、それを一環としたある倫理的な生き方をしたいと願う人が増えてきてもいいだろう。現代は、個人の美学は個人の勝手で許されるというか罵倒されるが、倫理的な生き方については、ナショナルなものしか見えなくなりつつある。が、それは違うと私は思う。日本ナショナルなものは、日本の自然とその自然を育てた伝統の後から来るものだろう。
 で、京都議定書なのだが、わかりやすい問題点は、1990年を基準にあと8年ほどで6%削減するはずが京都議定書採択後7年で8%増え、結局、14%削減が迫られるということ。つまり、現状の努力では、常識的に考えても無理がある。なので、とてつもない産業構造の変換とライフスタイルの転換が求められるはずだ。
 日本で温室効果ガスを排出している最大のセクターは言うまでもなく産業部門なので、京都議定書を推進していくには、当然、そこが改善されなくてはならない、と私は考えていた。当然、これは、産業界からは反発があり、その反発は、昨年時点までけっこう稚拙なものだった。現在、実際に議定書が発効され、産業界はどう考えているのか。
 昨日の時点では、その代表ともいえる日本経団連のアナウンスが読めなかったが、今朝は公開されている。15日付の"地球温暖化防止に取り組む産業界の決意"(参照)がそれである。ポイントは実際的な削減見込みが成立しているかということだ。


昨年11月に発表した2004年度のフォローアップ結果では、2003年度のCO2の排出量は1990年度比で0.6%の減少となり、2010年度のCO2排出量の伸び率を1990年度比±ゼロ%以下に抑えるとの目標を4年連続で達成することができた。主要業種の見通しをもとに予測した2010年度の排出量も1990年度を下回る見込みであり、各業界が推進中の様々な対策を着実に実行すれば、目標は十分達成可能である。

 これはまとめ部分なので詳論ではないが、概ね、これは正しいだろう。つまり、産業セクターでは現状の努力で「1990年度比±ゼロ%以下に抑える」ことが可能であるということであり、もう一つの側面はその程度しか削減できないということでもある。ドイツの大幅な削減と比較するとあと二歩踏み込んだ対策が必要になるだろう。が、EU全体でみればドイツが例外なのであまりそういう議論もどうかとは思う。具体的に今回のアナウンスでそのからみで問題となるのは、次の点だろう。

環境税や経済統制的、規制的な対策には強く反対
 政府は国民や企業の自主的な取り組みを促すような施策を温暖化対策の中心とすべきであり、個人や企業の自由な活動を阻害する管理型の施策をとるべきではない。
 欧州等の他国の政策を先進的とみなして、無批判に後追いしてはならない。わが国はすでに世界最先端の省エネ国家を実現しており、産業部門の追加的な限界削減コストの大きさや、米国やアジア諸国とのグローバルな競争の激化といったわが国の実情を十分に踏まえた政策が求められる。
 環境と経済の両立への配慮を欠き、持続可能性のない一時しのぎの政策は、国民や企業の理解を得られないばかりか、産業の海外移転や輸入の増大により地球的規模での温暖化問題の解決にかえって逆行する。
 
1.環境税には強く反対
実質的な企業課税となる環境税は、わが国産業の国際競争力に大きな影響を及ぼすばかりでなく、産業界が更なる温暖化対策を進める上で不可欠な、研究開発や設備投資の原資を奪うものである。
温暖化対策予算としては、毎年1兆円を超える予算が充てられており、財源を新たに求める必要はなく、既存予算の効果的・効率的活用を考えるべきである。
 
2.わが国の実情にあわない国内排出量取引制度
本年EUで導入された欧州排出権取引制度(EUETS)は、域内貿易取引が太宗を占める欧州企業を対象とする制度であり、また中東欧諸国などに排出量の削減余地が大きい企業が存在するなど、日本とは異なる事情の中で成立するものである。
 そもそもキャップ・アンド・トレード型の排出量取引制度は、実質的にエネルギー使用量を政府が決定・管理するものであり、公平な制度構築は不可能である。またわが国企業の削減ポテンシャルを考えても認められるものではない。

 環境税の認識も間違っており、排出量取引制度を国内で反論しながら海外に推進していくという矛盾などがある。いずれにせよ、こうした未熟な議論はあたりはいずれハンマーアウトしていくしかないだろう。つまり、産業セクターの根幹を改革しなくてはならなくなる。ただし、経団連懸念しているように、場当たり的な政府にそれができるのかという不信感があるのだろうし、そこが大きな問題だとは思うので、早急に産業界に変革を期待すべきではない。
 問題はあるとしても、産業セクターは概ね見通しがあると見ていいだろう。とすると、やはり民生・運輸のセクターが大きな問題となるというスジは正しい。経団連の言葉を借りるとこうだ。

翻ってわが国全体のCO2排出量の動きを見ると、1990年度比で民生・運輸両部門のCO2排出量は20%~30%と大幅に増加しており、両部門の対策強化が京都議定書の目標の達成に向けた最重要課題となっている。

 1990年からのセクターごとの排出の変動を見ると、特に大きいのは、運輸のセクターだ。やっかいだが、ここにかなり大きな変革が求められる。民生のセクターは、端的に言って、現状より消費を縮小させるわけにはいかないので、むしろ、公的な部門をさらに縮小することが先決だろう。と、ブログのネタとしてはつまらない話になりつつはある。
 1990年からの生活の変化として私の生活感として変わったなと思うのは宅配だ。最初に言うが、宅配が悪いというのではない。むしろ、宅配は消費側からはコストゼロにしなくてはいけないとすら考えている。今後さらに消費のメインストリートに出てくるはずの通販でボトルネックになるのはそこだからだ。しかし、宅配を含めた運輸の全体像はどうなっているのか、そこは気がかりだし、私もそこをこれからワッチしていこうと思う。
 話を戻して、どうしてこんな議定書を追米というか事実上米国占領下にある日本が率先して採択したのか疑問でもあったが、先の産業セクターの努力を見ていて、当初は、軽い気持ちだったのだろうなと思うようになった。
 結果としてこの問題を放置したために、14%削減という数値が浮上したのだが、当初は6%削減でしかなかった。しかも、この6%の内、3.9%は森林吸収、1.6%は対外的な排出量取引と見ていた。これだけで5.5%になる。残りの0.5%が、日本国民の生活面と産業界の努力に課せられていた。そう、たった0.5%の話と甘く見ていたのが、ヤミ金融の金利みたいに14%に膨れてしまったのだろう。
 そう考えると、京都議定書の問題というのは、年金問題などと同じように、責めるようだが官僚のシミュレーションの甘さと無責任さが国民にじわっと広がったのと同じ構造にある。タメのようだが、ドイツと比較すると、政治の不在でもあるのだろう。
 で、結局、京都議定書ってどうよなのだが、産業セクターは大きな節目であと数パーセントの削減が迫られ、残り、民生・運輸のセクターではまず、政策的な転換による大幅削減、そして、実際に国民の努力がそれに続くのだろうと思う。そして、そこにどう環境への個人の倫理性が旧来のイデオロギーに収斂されず起立しえるだろうかが課題になる。
 これから日本は人口が縮退化し、さらに産業構造としても温暖化ガスをばかばか出す一次産業が伸びていくわけでもない。それらが大きな、産業全体の縮退の圧力となり、結果として温暖化ガス削減にも援軍とはなるだろう。

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コメント

日本はやたら町中電気つけすぎ。

でも大枠で見れば努力する優等生と見られています。(合衆国と)大国になってしまったあるいはなるだろう中国・インド・ブラジルを引っ張る外交力が欲しいとこです。

投稿: ねこ仏少年 | 2005.02.17 11:56

グリーンな人たちの恩恵を、一番受けてる企業がトヨタなんですけどね。

投稿: Cyberbob:-) | 2005.02.17 17:57

ガス排出を抑えるだけではね~。欧州と比べると、自然保存型、循環型の人や町や企業が、どのくらい昔からあったでしょうかということなのかも。

京都決意書の意義って、達成することだけではないと思う。(。。。日本では)

投稿: むぎ | 2005.02.17 18:49

自動販売機をなくすだけで、かなりの電力が不要になるような。

投稿: むにゅう | 2005.02.17 23:23

京都プロトコルについては「いままできいた中で一番ひどいウソ」
とドイツ人の夫が申しておりました。

ウソからでたまことを目指していくのでしょう。
お互い。

投稿: のっち | 2005.02.18 01:00

戯言ですが...

288Kの地表からの放射は8-12μmを除いてほぼ完全にH2Oに吸収されます。
CO2が吸収する波長は15μm付近です。
ですから、地表はCO2なんかなくても完璧に近い温室でしょう。

たまった熱量は水蒸気に潜んで上昇して、低温界面で雲になるときに顕れた熱の半分くらいが
より上層に伝わるわけですが...
地球が冷めないように熱を貯めるのも水なら、たまった熱を捨てているのも水なわけで、
温室効果ガス?の効果っていまいちピンと来ませんね。

ミランコビッチ周期に従って氷河期がやってきて、数千年後に再び日本と朝鮮半島
が地続きになる心配でもした方がいいんじゃないでしょうか(これは冗談)

投稿: Lou | 2005.02.18 13:30

企業が高いリスクを払ってでも支那に進出して工場を作る理由の一つはこれなのかもしれませんね。

投稿: D | 2005.02.18 16:58

「京都議定書、本当の問題点を言おう」 [ブログ時評11]を書く上で参考にさせていただいたので、引用はしませんでしたが、トラックバックしました。

投稿: dando | 2005.02.20 19:04

この記事へのコメントは終了しました。

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