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2005.02.14

ヴァレンタイン・デー…起源を知れば、いー感じぃ

 クリスマスは冬至の祭である。建国記念の日は春節である。ヴァレンタイン・デーについてははっきりとはわからない。でも、こんなところでしょという、お話を書いておこう。
 ヴァレンタイン・デーの起源について、歴史家は概ね古代ギリシアのゼウスとヘラの婚礼月(ガメリオン)に由来すると見ている。ギリシア文化をパクった古代ローマでもこの月を婚礼の月と呼んでいたようだ。そのあたりから、現在のヴァレンタイン・デーに関連付けられたのだろうと思われるが、実際にこの日がカトリックの聖者ヴァレンタインに関連づけらたのは欧州が中世に入ってからのことで、カトリックとしてもこの日は聖ヴァレンタインを祝う日とはしていない。つまり、これについては異教の祭としているに等しい。
 ヴァレンタイン・デーが古代ギリシアに由来するとしても、14日という日付についてはギリシア文明には直接遡及できそうにもない。ギリシアのヘラ神、またそれをパクったローマ神話のユノ神を祝う日とも言われるが、その翌日15日、古代ローマではルペルカリア祭として豊穣の神ルペルクス(Lupercus)を盛大に祀るので、おそらくこちらが実際の起源なのだろう。
 ルペルクス神は、神話学ではファウヌス(Faunus)神と同一視されているというか、エイリアス(別名)のようだ。ファウヌス神は、二月(如月)を表す英語Februaryの語源になっている。つまり、二月はファウヌスの月という意味だ。
 余談だが、Februaryの発音は、つい字面に引かれて「フェブラリー」みたいに発音する日本人が多いが身近に生粋の、頭はいいけどつまりちょっとたらんかな的な米人がいたら発音させてみると面白い。彼らは「フェビュラリー」と言うはずだ。この字面の発音は米音ではできないのである。

cover
火の鳥
冨田勲
 ファウヌス神はローマ神話に取り入れらているが、直接的には、エトルリアの神話に由来するらしい。ローマ人はその言語であるラテン語も古典ギリシア語をパクってつくったほど表面的にはギリシア文明を継承しているが、こうした傾向は一種の劣等コンプレックスみたいなものではないか。現在日本人は呑気に「ローマ字」と言っているが、このアルファベットも、もともとギリシア文明に精通していたエトルリア人を経由してローマ人がパクったものである。エトルリア人とその文明にはいろいろ謎が多いが、そこまで余談に突っ込むわけにもいかない。
 エトルリアの文明に由来すると見られるファウヌス神だが、おそらくこの神はエトルリア起源というより、古代ギリシア文明の神話に由来するものだろう。ギリシア神話では、この神はパン(Pan)神として知られている。トリビア的な話をすると、日本語にもなっているパニック(panic)は、パン神が引き起こすとーんでもねーことというのが語源だ。そう、パン神はけっこう碌でもないことをするというか、ま、そんな感じなのである。その感じはこういう感じだ。
cover
 パン神は、上半身は人間だけど下半身は山羊で、角と蹄をもっているアレである。明治時代の日本の文学者たちはこれを「牧神」とか訳している。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」はステファヌ・マラルメの詩「牧神の午後」に由来するが、これだね。と書いたものの、こんなふうに芸術的な文脈で書くと気高いおフランスみたいに誤解されるが、実態は、違う。どう違うのか…といい解説の絵はねーかなと、ぐぐると。"ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲 :小林Scrap Book"(参照)が大変によろしい。リンク先の絵をよくご覧あれ。これだ。ふっ、ふらちなぁ、というのが牧神の基本イメージなのである。Wikipediaにもよろしい写真があったので貼っておく。クリックすると気になる部分がもうちょっと大きく見えるはずである。
 話がヴァレンタイン・デーからすごく離れてしまったみたいだが、いやいやそうずっこけて書いているつもりはない。要するに、ヴァレンタイン・デーの本質はパン神のこの、いー感じぃ、なのである。なにしろ、上半身は人間だけど下半身は山羊である。うちなーんちゅなら、ヒージャーやっさである。食ったら慌てて冷水を飲むなである。
 というわけで、チョコのネタもちょっと考えていたけど、それはパスしよう。日本や米国のチョコレートは最近では、vegelate(ベジレート)と言われるらしいってな話などは、別の機会にでも。

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コメント

古代ローマが古代ギリシアのアンチ、古代ギリシアが古代ペルシアのアンチ、でもってその淵源のアレクサンダーは、fertile crescentのアンチ・・・でいいのかな?単純化しすぎですか。

投稿: Sundaland | 2005.02.14 13:18

vegelate とは、あの vegemite を思わせる名前ですね。私は vegemite や marmite が結構好きなので、vegelate は私にとっては蔑称になっていません(笑)。それでも、アメリカのチョコは口に合わない…

投稿: synonymous | 2005.02.14 15:38

finalventさん、こんばんわ、

子どもっぽいですが、ファウヌスをファーンといいかえると、ナルニア国物語の「魔女とライオン」(ISBN:400204128X)を思い出してしまします。

先日、CD版の朗読を手に入れて一人悦に入っております。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0064471195/

映画化される予定もあるそうですね。

http://www.eiga.com/cgibin/chart/chart.cgi?id=0060

投稿: ひでき | 2005.02.14 20:44

グリーナウェイのプロスペローの本でも、
マラルメやドビュッシーに連なる
パーンの豊饒祭を描いていましたね。
この映画には豊饒祭の映像イメージ的に、
非常に良いものを感じましたね。
http://cinema.intercritique.com/movie.cgi?mid=944

投稿: kagami | 2005.02.15 08:39

ギリシャ在住のものです。私はアテネで聖バレンタイン(イタリア語でサン・ヴァレンチノ、ギリシャ語でアイオス・ヴァレンティノス)の眠る教会を知っています。この遺骨は過去に18人いた聖バレンタインの中の1人です。あの268年2月14日に殉教した方です。その顛末は私のブログに書きました。よろしかったらご覧ください。私は日本人で最初に聖バレンタインと対面したものです。

投稿: lemonodasos | 2005.02.15 23:29

とても参考になりました。まだはじめたばかりで恥かしいのですが、TBさせて頂きました。
また寄らせてくださいませ。

投稿: 明るい空 | 2005.03.14 17:53

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いや、これには驚きました。 余談だが、Februaryの発音は、つい字面に引かれて「フェブラリー」みたいに発音する日本人が多いが身近に生粋の、頭はいいけどつま... [続きを読む]

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 洋菓子業界の広告戦略に踊らされてんじゃねえェェェッ!! クソったれどもがあ... [続きを読む]

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