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2005.02.01

イラクで一兆円近いカネが消えてましたとさ

 国内でまったく報道がなかったわけではないが、イラク選挙に示し合わせたかのように、30日、ボーエン米特別監査官が連合暫定当局(CPA)の予算管理の問題点を指摘した。もっとも期日を示し合わせたわけではなく、議会への四半期の報告だったからにすぎないので、この点について深読みはご無用。
 報告書によれば、CPA下で約88億ドル(9100億円)の使途が確認できなかったということ。もっとも以前からこの問題は指摘されていたのだが、まったくもって洒落にならない額だ、ということで、イラク選挙の成功に合わせて欧米ではけっこう重要なニュースになっていた。簡単に見ると、CPAの問題だから反米のネタにでも使えそうなものだが、朝日新聞も特にピックアップしている様子はない。
 国内のニュースは昨今の傾向でもあるのだが、共同がさらっと流していた。"CPAがずさん経理/イラク復興で"(参照)が該当ニュースだがそっけない、というか、ロイターの垂れ流しであり、日本のジャーナリズムというか報道メディアにおいて共同にかなり問題があるようにも思う。


【ワシントン30日共同】イラクに主権移譲された昨年6月末まで同国を統治した米英主導の連合国暫定当局(CPA)が、復興予算88億ドル(約9100億円)について、ずさんな経理を行っていたことが、米特別監査官の議会向け報告書で明らかになった。ロイター通信が30日報じた。

 というわけでロイターなのだが、日本版でも該当ニュースは流れていた。"旧CPA、イラク復興予算の監督不十分だった=米監査報告"(参照)がそれだ。

 監査報告はその上で、CPAが昨年6月イラク暫定政権に主権を委譲するまでイラク予算について、適切な監督を怠ったでことを批判した。
 報告は「予算配分でイラクの各省庁に渡った開発基金(DFI)資金約88億ドルに関して、CPAの監督は不十分だった」と指摘。

 ロイター・共同系だと今一つこのニュースがわかりづらい。CNN日本"旧イラク暫定当局の経理、「不透明」と指摘 米報告書 "(参照)ではもう一つインフォを加えていた。

同氏らによると、旧政権のある省庁では警備員8206人に給料が支払われていたが、実際には602人しか確認できなかった。報告書は「何千人もの『幽霊職員』がいたことになる」と指摘する。

 この点が重要なのだが、そこに踏み込む前に、このニュースの伝搬の他の側面を見ておこう。つまり、問題の重点と、それって反米で使えるネタかな、というあたりだ。
 まず、この問題の核心だが、要するに一兆円近いカネが米統治下のイラクで消えたということなので、欧米メディアはそこをずばりと斬り込んでいる。かねてよりこの問題をワッチしていた英国公共放送(と強調するのはだめな某国公共放送への当てつけです)BBCは"Iraq reconstruction funds missing "(参照)としてこの点を第一に強調している。

Almost $9bn (£4.7bn) of Iraqi oil revenue is missing from a fund set up to reconstruct the country.
【試訳】
約9000億円ものイラクの石油収入が消失していた。このお金はイラク再建に当てるものであったにも関わらずだ。

 つまりイラクの国富が盗まれたということがこの問題の重要点だ。FOXニュースなどでも扱っているので、欧米のメディアではこの問題の扱いの偏りはあまりない。が、日本ではちょっと違っていた。
 冒頭にも触れたようにこの問題は以前から話題にはなっていた。赤旗などがユーモア記事のようにクリスチャン・エイドの情報を"石油収入30億ドルが消えた"(参照)と書き飛ばしていた。他に、ブログ「暗いニュースリンク」でも"主権移譲前倒しの裏側:イラク再建用の石油収益200億ドルが行方不明に"(参照)と軽いネタに上がっていたことがある。

イラク主権移譲手続きの直後に、大急ぎでヘリに乗り込み帰国の途についたブレマー元CPA代表。そのタイミングは、クリスチャン・エイドの報告書がメディアに伝達される直前だったという。現地の愛人問題以外にも、ブレマー氏には隠し事がたくさんありそうだ。

 話が前後するが、なので、このネタはけっこう反米スジが釣れるかと思ったのだが、現状それほどでもない。不思議なほどだ。ネタの出所が甘すぎるからなのだろうか。
 もう少しちゃんと見るなら、クリスチャン・エイド系のスジではなく、きちんと国際通貨基金(IMF)下の国際顧問監視理事会(IAMB)の報告が重要になる。日経系"イラクの石油収入、管理に不備・国連などが監査報告"(参照)が参考になる。

連合国暫定当局(CPA)統治下の管理不備で大量の石油が密輸されたことが明らかとなり、IAMBは統治を引き継いだイラク暫定政権に、石油生産量の計測徹底などを求めた。
 報告書は米大手会計事務所のKPMGに依頼して作成した。CPA統治下で成立した石油事業を巡る契約のうち「6件は正当な手続きを経ず、4件は競争入札なしで認可された」などと具体的な事実を挙げ、混乱の中で数十億ドル規模の石油収入が管理漏れした構図を浮き彫りにしている。

 当の問題の構図に戻る。1兆円近いオイル・マネーはどこに消えたのか? CNNの示唆では幽霊職員ということになっている。また、このニュースの欧米での広がりは端的にCPAのボスであるブレマーへのバッシングになっており、ブレマー自身も混乱していてわかんねーよという開き直ったコメントを出している。確かにブレマーがどの程度関与しているのかということが問題ではある。
 だが、幽霊職員への不正が賄賂というのならカネがでかすぎる。当然ながら、IAMB報告のように、石油の密輸に関わっていると見るべきだろう。とすると、その密輸が、フセイン政府崩壊後、即座にCPA下で出来たのかというと、私としては、その陰謀説は考えにくいと思う。この不正は巨大なビジネスなのだし、ビジネスには相応の組織性なりが必要になる。
 先のCNNのニュースに戻るが、そももそもこのマネーの出所は、れいの石油食糧プログラムであった。

CPAは03年10月から04年6月にかけ、国連の食料石油交換計画からの資金や旧政権から押収した資産など88億ドルを、復興事業の運営費や人件費、設備投資などに使ったとされる。

 なにも陰謀論を展開したいわけでもないが、妥当に考えて、このリソースはこの構造ともにごそっとCPAに表向き動いただけで、中では、その不正システムが止まっていないか、あるいはそれなりに稼働していたと見るべきなのではないだろうか。こう推理することはそれほど陰謀論でもないと思うのだが。
 この問題に関連してもう一つ気になる問題がある。端的に言って、現状はどうか? この不正のシステムは改善されているのか。当たり前だが、この不正のシステムに米国がまったく汚れていないわけもない。現状イラクに主権は戻り、また、大筋で石油歳入権もイラクに戻っている。しかし、現在の暫定政権が米国から独立してこの巨大な金の鶏を管理できるわけもない。それでも米国の議会鑑査が入り、過去の問題を暴露している以上、いわゆる不正という構図ではなくなってはいるのだろう。
 それにしても、まだ、根の深い問題だし、意外に難解なネタだなと思う。

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コメント

> 反米スジが釣れるかと思ったのだが、現状それほどでもない。

旬を過ぎただけです。

投稿: at | 2005.02.01 10:31

finalventさん、こんにちわ、

なんか妙になるほどと思っている自分がいます。昨年、CPAの予算書を読んだときからあやしい予算だとは思っていました。でも、ここまで露骨にやるとは...

投稿: ひでき | 2005.02.01 16:47

反米スジ国の老人ですが。

ググッて見ましたが、AFP発のタイム誌記事を紹介する何行かがル・モンドの最新報欄においてあったぐらい。まあ週末明けだし、すでにイラク選挙報が多いからってこともあるでしょう。

あとル・モンドにしても複数外国紙を同時に読んでる読者が多いんで、独自のソースなり見解なりがない場合は大きく扱わない傾向があります。

はっきり言って、そんなにビクーリするネタでもない。もともと、コミッション・調査費・それに各国政府が吸い取る税金で雪だるま式に膨れ上がるのが石油の値段です。

投稿: ねこふつ少年 | 2005.02.01 20:25

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