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2005.02.02

iPodで笠碁を聞きつつメディアの将来を憂う

 雑談。先日、ラジオ名人寄席を聞いていたら春風亭柳橋(六代目)の笠碁をやっていた。春風亭柳橋といえば昨年いや一昨年亡くなった春風亭柳昇の師匠だなと思った。さて笠碁は、と、まさに名人の力量を示すに格好な題目だが、目線の芸などはラジオを聞いてでは味わい尽くせない。あの時代に、現代の映像メディアでもあれば、そのあたりをくっきりと見ることができるだろうか。いや、そうでもあるまい。などと思って聞いていた。話は手短に20分ほどで終わり、そのあと番組では石庭玉置宏がラジオが娯楽として広まる前の話をしていた。それが面白かった。
 私は知らなかったのだが、ラジオ以前の時代、SPレコードに吹き込んだ落語に人気があったらしい。昭和の一桁の時代だ。柳橋もそうした時代に、SPレコードの落語家としても人気が高かったそうだ。
 SPレコードといえば、あの落とせば割れるというやつだ。そう昔のものでもない。私が小学生のころにはあった。小柳ルミ子の「私の城下町」とか「シェルブールの雨傘」とかよく聞いたものだ。追記同日この2つはSPレコードではないらしい。
 ソノシートというのもあった。アスキーの創刊号にも付いていた…そこまで話はずっこけないとして…、SPレコードだから、今でいうシングルカットくらいしか入らない。時間として3分ほど。玉置もつい高橋圭三の「歌は三分間のドラマと申します」に振っていたが、そうそう。
 SPレコードは裏面と合わせて6分ほど。そんな短い時間で落語になるのかとも思うが、それでも大人気のメディアだったようだ。それなりの工夫も当然あったとのこと。こうしたメディアの制約に合わせて、柳橋も新作小話を作っていた。柳昇の師匠でもあるし。
 そうした柳橋のSPレコード向けの話に「そば屋」というのがあるらしい。元の企画では「うどん屋」とのことだが6分に収まらない。そこで、「そば」ということなのだが、この「そば」が「中華そば」だ。もちろん、歴史的には「支那そば」なのだろう。昭和の一桁の時代だな、なるほどなと私は思った。沖縄のいわゆる「沖縄そば」だがこれの起源はこの数年なにかといろんな人が調べたところ、だいたいこの時代の内地からの支那そばが起源のようだ。なんのことはない、まるで日本語の起源と同じように、本土のラーメンと姉妹麺類だった。
 LPが出るのは戦後のこと。そして、LPの落語もあったらしい…というか、自分の記憶を探ってもそうした名残があったように思う。それがカセットテープに移行したのは私が中学生くらいのことだろうか。そうだそうだ。1970年ころのことである。
 外人宣教師なんかとも知り合いがあったらしい私の父親が、私が小学六年生のとき、田崎英会話のテープを買ってくれたことがある。あのテープはリールだった。再生機もそういうものだった。テープに音が録音できるということだけで不思議に思えた時代だった。

cover
iPod 20GB
 と、なんとも古い話だなとも思うし、そんな昔のことじゃないよとも思うが、メディアというのは時代ともに変わる。そして、この六代目柳橋の笠碁だって、ラジオからタイマー録音しMP3でエンコードしたのを、iPodで聞いているのである…。
 自分としてはNHKのメディアというのは、ラジオ名人寄席とかラジオ深夜便とか、その手のものがあればもう充分だという感じもするのだが、時代はラジオからテレビに移った。その話もいろいろ思い出すことがあるが、それはさておき、そして、現代いよいよそのテレビというメディアも変わらざるをえないのだろう。
 そんなことを思いつつ、SPAに連載されているコータリ(神足裕司)のコラム"海老沢会長が強気でいられた理由はデジタル放送にあり!?"(vol.423, 2/8)をよんでふーんと思った。コータリは、海老様が強気なのはNHKがデジタル放送を基盤に経営の前途は盤石の構えだと考えているからだとしている。

 TV放送は、'11年に完全デジタル化される。ハイビジョンを試聴するには、視聴者のIDを入れた受信カードが必要になる。
 今は玄関先や銀行で支払い拒否ができるだろう。しかし6年先には、誰にもそれはできない。

 もちろん、その話は私も知っている。むりむりとか思っているのだが…、現在のNHKのハイビジョン化の流れを見ていると、価値の高いコンテンツをそちらに移していく傾向はよくわかる。

 近い将来、NHKを視るには必ずお金を払わなければならなくなる。民放のほうはまだ不明だ。しかし、有料でバラエティ番組を視るか? 私は地球大進化を選ぶ。

 そのあたりはどうなのだろうか。しばし考えた。笠碁はたぶんラジオで聞けるかな。それより、この問題は民放のほうが大きな問題でもあるのだろう。

 6年後に始まるデジタル放送では「ハードディスク視聴」が始まり、視聴者はCMを飛ばす。今のような民放経営はなりたたなくなり、ペイTVやインターネットのバナー広告のような試みが求められる。

cover
HDD搭載
DVDレコーダー
SONY
RDR-HX70
 このあたりの技術認識はあれま?とも思うのだが、というのも私はすでにTVはHDレコーディングでしか見ない。民放をまれに見るときはすいすいとCMを飛ばす。ありがたいことにCMの前後はかぶるかぶるなので、飛ばしのコントロールがしやすい。そこまで民放が配慮してくれる時代なのである…ってことではないのだろうが。
 問題は…コンテンツということだろうか。でも、コンテンツというなら、寄席に行って現代の落語家の笠碁を見にいくほうがいいようにも思う。よくわかんないなと思うし、自分などは、所詮、映像メディアの時代から取り残されていくのだろうか。

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コメント

TV放送は生で見るものですよ、finalventさん。
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0410/06/news077.html

投稿: 博報堂電通 | 2005.02.02 13:54

むしろ、これからもテレビが「娯楽の王様」でありつづけるという認識自体がおめでたい、と思えます。
そして、今お金をはらっていないような人が、お金を払ってまでNHKをみたいと思ってくれる、という認識です。
はっきりいってそれはありえないでしょう。

またお金はらうなら、NHKのような総花的チャンネルよりディスカバリーチャンネルといった専門チャンネルのほうがはやるのではないでしょうか?

投稿: ゆーき | 2005.02.02 16:43

アノー、「傘碁」は「笠碁」ではないかと。私の持っている「この前死んだ小さん」のCdでは「笠碁」になっています。「談志」の全集でも「笠碁」になっています。「かさ」はアンブレラではなく頭にかぶる「笠」なのは、間違いないです。
ところで、小さん治は結局、「小さん」を襲名できないのでしょうか。本人が予想しているとうりですかね。
談志が、師匠を見限ったのがなんとなく分かるような気がします。

投稿: tamamikemids | 2005.02.02 17:40

2011年の地上波アナログ放送中止は本当にできるんでしょうか?あと6年しかないのに。
そのころになってもデジタル非対応の機器を持ってる人はたくさんいるでしょうから、絶対大反発が起こると思うんですが。
今みたいにデジタル放送がコピーワンスの制限を付けてれば、デジタルに移行する人はなかなか増えないだろうし。

投稿: Baatarism | 2005.02.02 17:48

メディアの変遷が時々憎く思える、寄席はおろか
映画館さえない僻地に住んでるワタクシです(;´Д⊂

投稿: TDF-III | 2005.02.02 18:01

tamamikemidsさん、こんにちは。お恥ずかしい。そうです。笠碁です。ご指摘、ありがとうございました。修正しました。

投稿: finalvent | 2005.02.02 18:27

>SPレコードといえば、あの落とせば割れるというやつだ。
>そう昔のものでもない。私が小学生のころにはあった。
>小柳ルミ子の「私の城下町」とか「シェルブールの雨傘」とかよく聞いたものだ。


「私の城下町」は71年のヒット曲。
SPレコードの生産高については、(社)日本レコード協会のページにあります。

http://www.riaj.or.jp/data/quantity/index.

それによると1963年に約25,000枚生産したのが最後のようです。
ですので、小柳ルミ子の「私の城下町」はSPで発売されたとは思えません。


投稿: zzz | 2005.02.02 21:05

>SPレコードの生産高については、
>(社)日本レコード協会のページにあります。

「ディスク・テープ種類別生産数量の推移」でググって下さい。


投稿: zzz | 2005.02.02 21:11

zzzさん、こんにちは。ご指摘ありがとうございます。なるほど、確かにこれはSPレコードではありませんね。本文中には追記を加えました。

投稿: finalvent | 2005.02.02 21:34

> むりむりとか思っているのだが…

これはなぜでしょうか?カード本来の機能を殺してまでタダ乗り可能なシステムにすればますます受信拒否が増えるし、他のメディアも黙っていないと思います。
また、神足氏の技術認識がおかしいというのはどのあたりでしょうか。「というのも~」以下は神足氏が言っているのと同内容のような気がするのですが。

投稿: anonymous | 2005.02.02 21:40

TDF-IIIさん、
そしたら、おフランスに住むあたしはどうしたらいいんでがしょ。
《らくだ》が見たい聞きたい。

投稿: ねこ仏少年 | 2005.02.03 10:37

ねこ仏少年さん
海外でテレビならソニーのロケーションフリーテレビ 『LF-X5』ってのはどうでしょう。
それから落語のTV、ラジオ番組についてはぴあのMOOK「落語ワンダーランド」にまとめてありますね。
ガイド本としてはお勧めです。

投稿: ITAL | 2005.02.03 14:50

ITALさん、貴重な情報ありがとうござんす。
しかし、それはそれIT技術低開発国に住む極貧ですから、辛いものはある。

ひとまずは脳内DVDで志ん生の《らくだ》再生を努力。無理か(ヘタレル)

IPラジオがやはり正解ですね。

投稿: ねこ仏少年 | 2005.02.03 21:35

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極東ブログ: iPodで笠碁を聞きつつメディアの将来を憂う 結論から言えば、旨すぎる文章にご馳走様。(それがトラバの結論なのか。) それはさておき、ここ最近... [続きを読む]

受信: 2005.02.03 00:39

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