漁業に遠慮して日本のスパイ衛星打ち上げは延期だ、とBBCが伝える
今朝のエントリにアップすべくたるいネタを用意していたのだが、なんとなく、H2Aの話に急遽差し替え。とはいえ、重要というほどの話でもないし、日本の衛星ビジネスに当方が詳しいわけでもない。クサシという意図はないのだが、なんだかなぁコレという思いが強くなったのでざっと書いておきたい。
私の見落としってことはないと思うが、H2A打ち上げ成功について、大手新聞社社説では朝日新聞だけが触れていない。なぜなんだろう? 余談だが、朝日新聞のサイトはニュースをちょこちょこ書き換えているようだ。Irregular Expression"朝日新聞は自社の「記事改変問題」をどう説明するか?"(参照)にその経緯があって笑った…で済まされることじゃないな。せめてdel/insタグで修正の履歴は残してほしいものだ。もう随分昔の話だが、こういう笑い話があったのを思い出した。「スターリンでもできないことがある。それはプラウダを発行しなおすことだ。」 ところが朝日新聞ってそれやっているじゃん。
さて、他紙の社説でのH2A打ち上げ成功の話だが、読売"H2A成功 復活への足がかりが得られた"(参照)が、いけいけどんどん、といったところか。そう悪い話でもない。今回のキモは気象衛星だったが、情報収集衛星についても言及している。
H2Aは来年度、三回の衛星打ち上げを予定している。災害監視に力を発揮する陸域観測技術衛星、MTSAT2号、日本の安全保障に重要な情報収集衛星と、どれも失敗は許されない。
毎日"H2A成功 信頼性向上へさらに努力を"(参照)はややテクニカルな話に傾き、情報収集衛星の話はスルー。ちょっと国寄りのトーンは強い。
ロケット打ち上げをはじめとする宇宙開発は、やはり自前の技術を確保しておきたい。その期待に、JAXAもメーカーも協力して応えてほしい。
産経"打ち上げ成功 さらなる努力を重ねたい"(参照)がなぜか情報収集衛星に触れていない。代わりに衛星ビジネスに主眼を置いている。このあたりの産経のスタンスがよくわからない。もしかすると手の込んだアイロニーなのかもしえない。私は日本の衛星ビジネスは絶望的だと思う。
日本の宇宙開発は、H2Aロケットの民間移管の途上にあり、三菱重工業が主役になることが決まっている。今回の打ち上げでは株式会社のロケットシステムが中心的な役割を果たし、形の上では日本初の商業打ち上げが実現した。
だが、世界の衛星打ち上げビジネスの市場は以前に比べて一段と厳しさを増している。衛星打ち上げの需要減に加え、廃棄ミサイルを再利用したロシアのロケットは価格破壊をもたらしている。
H2Aロケットが国際市場で生き抜いていくには、これまでに倍する努力が必要である。
日経"H2A、信頼回復まだ一歩"(参照)は、遅れて出したわりに、特に見るべき内容はない。が、しいていうと、ここが重要か。産経の社説でも触れてはいたが、三菱重工業かぁ、と。
H2Aは、国産ロケットの高コスト批判を受けて、打ち上げ費用を抑え、宇宙ビジネスへの参入も狙ったロケットだ。すでに三菱重工業が運用する形で民間移管することが決まっている。だが、前回の失敗で移管時期など細目の協議は止まったままだ。移管を円滑に進め、外国の衛星打ち上げの商談も進むよう、さらに技術の完成度を上げ、高い信頼性、安定性を示すことが重要だ。
久しぶりに社説を舐めてみたわけだが、なんだかなという印象はある。NHK「あすを読む」で「科学大好き土曜塾」の隊長さんが詳しく説明していたが、衛星ビジネスの標準的な成功率である9割のラインに日本が乗るのはあと16回の連続成功が必要らしい。日本は年間3本くらいか。するとあと最短であと5年。失敗を含めて8年くらい……お話にならないのでは。
とはいっても、日本が衛星技術を持っているという誇示だけがその意味かもしれないとも思っていたのだが、昨日のBBC"Fishing season delays Japan satellites"(参照)には笑った。
Fishing season delays Japan satellites
The launch of two spy satellites in Japan has been put on hold for the third time - because it coincides with the fishing season.
【試訳】
漁業期間の都合で日本の衛星計画は遅れる
日本のスパイ衛星の打ち上げは三度目の延期に迫られた。理由はというと、漁業シーズンにかち合うからである。
その言い方はないだろとか日本人である私はちょっと思うのだが、記事を読むに、ふーん、そういうことなのか。つまり、国際的に見れば、ポイントはスパイ衛星を日本が自前で運用するということと、そうした国策レベルの話が漁業民の生活より優先順位が落ちる、と。
BBCの記事の文章は淡々として凝った皮肉というわけでもないが、こりゃ、しかし、結果として皮肉な話だな。というか、日本って外側からはこう見えるわけか。
そういえば、読売新聞でこのところ「国家戦略を考える」という連載をしていた。22日"第1部(16)宇宙開発、政府ちぐはぐ"を読み返すと、ちゃんと漁業保護について触れている。
仮に商業衛星を二月末までの打ち上げで契約した場合、悪天候で二月中の打ち上げを見送ると、次に打ち上げが可能なのは六月二十六日以降になる。「こうした遅延は賠償金の対象となる恐れがあり、受注自体がおぼつかない」と中間報告は記している。
他に滑走路の問題の問題にも触れていたが、要するに、種子島じゃ、衛星ビジネスって話はむりむりという結論しか出ないようだ。いや、それって外国でやればという結論が出る。ということで、キリバス共和国を借りる話が進んでいたらしい。
日本は二〇〇〇年、キリバス共和国との間で、約22億円を投じて周辺整備を行う代わりに飛行場を借用する協定を結んだ。「日本版スペースシャトル」と言われる無人宇宙往還技術試験機(HOPE―X)の着陸場として使うためだった。だが、予算削減のあおりでHOPE―X計画が凍結され、昨年秋、借用協定を打ち切ることになった。
ま、キリバスはダメでしょう。もうすぐ沈むしって、ブラックジョークはやめとけか。それにしても、こうなったらひょっこりひょうたん島の精神である。つらい時には笑っちゃえ、進めぇ、ひょっこり日本島。
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